「新型コロナウイルス対応で、無料公開とそれ以外の動きも続々」「ダウンロード規制、閣議決定」など、出版業界気になるニュースまとめ #415(2020年3月9日~15日)

出版業界気になるニュースまとめ
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 2020年3月9日~15日は「新型コロナウイルス対応で、無料公開とそれ以外の動きも続々」「ダウンロード規制、閣議決定」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

【目次】

ポッドキャスト

国内(COVID-19関連)

 新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大を受け、小中高校の臨時休校や図書館の休館、企業でもリモートワークが広がる中、先週も、出版業界では期間限定で電子版の無料公開に踏み切る事例が相次ぎました。前回のメルマガ3月9日版には一通り掲載しましたが、3月9日以降の事例があまりに多いので、まとめ記事のみ紹介させていただきます。

いまだけ無料で読める電子書籍・雑誌のまとめ(3月13日時点)〈HON.jp News Blog〉

 HON.jp News Blogで3月2日から13日までに記事配信した事例(約40件)を、終了日順でまとめてみました。COVID-19対応と明言されていない事例も一部含まれます。

 以下、上記まとめに載せていない(つまり単純な無料公開ではない)事例です。

著作権等管理事業者や関係団体、文化庁著作権課からの”格別なご配慮”の依頼に次々と協力を表明 ~ 新型コロナウイルス感染拡大を受け〈HON.jp News Blog(2020年3月9日)〉

 こちら、改正著作権法第35条(学校その他の教育機関における複製)と、授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS:サートラス)関連の、非常に重要な動きです。経緯と現状の解説もしてあるので、教育関係者の方にはぜひ読んでいただきたい。

図書館流通センター、電子図書館サービス「LibrariE & TRC-DL」導入館に一部のコンテンツを期間限定で無償提供 ~ 新型コロナウイルス感染拡大を受け〈HON.jp News Blog(2020年3月10日)〉

 直接的には対公共図書館の話なので、まとめ記事には載せませんでした。「こういうときこそ電子図書館の出番では?」という声を複数見かけていたので、ちゃんと動きがあってホッとしました。善哉。

エイシス「DLsite」が3月中の配信初日は手数料を無料に ~ 新型コロナウイルス感染拡大で中止になった即売会やイベント参加予定の同人サークル対応〈HON.jp News Blog(2020年3月10日)〉

 イベントも中止や延期が相次いでいるため、こういう対応も。イベント頒布がなくなって困ってるだろうから、24時間だけ手数料を無料にします、というのは、理にかなった施策と思います。ありがたいことですね。

リード、コンテンツ東京の開催延期を発表 ~ クリエイターEXPOなどは10月28日から30日にパシフィコ横浜での開催へ〈HON.jp News Blog(2020年3月11日)〉

 秋に延期で、図書館総合展(11月4日から6日)と連発に。同時開催のAI・人工知能EXPOとブロックチェーンEXPOも延期です。リードが国内でイベントを予定通り開催できなかったのは、これが初めてのことなのですね。いろいろ、大変です。5月20日から22日の教育総合展【東京】は、いまのところ予定通り開催するようですが。

大宅壮一文庫、記事索引検索サービス会員版の無料トライアルを個人向けにも期間限定提供 〜 新型コロナウイルス感染拡大を受け〈HON.jp News Blog(2020年3月11日)〉

 従来、法人向けだけだった無料トライアルを、個人向けにも解放。これ、恐らく事務手続が非常に煩雑で大変なことになると思うのですよね……財政難なのにこの対応。意気に感じた人は、ぜひパトロネージュに。

モリサワ、テレワーク実施企業の「MORISAWA PASSPORT」利用許諾を緩和、個人PCも利用可能に ~ 新型コロナウイルス感染拡大を受け〈HON.jp News Blog(2020年3月12日)〉

 前出のSARTRASと同様、ライセンスの縛りを緩くします、という施策。確かに、会社のパソコンなら使えるソフトが、家のパソコンでは使えないとなると、リモートワークに支障がありそうです。みんながVPNで繋げられるわけでもないでしょうし。

紀伊國屋書店、電子図書館「LibrariE」導入校に一部コンテンツを期間限定無償提供 ~ 新型コロナウイルス感染拡大を受け〈HON.jp News Blog(2020年3月13日)〉

 こちらは学校向け。図書館流通センターと同日に無償提供を開始していたようですが、リリースが配信されたのは13日でした。大学59館、学校33館。LibrariE全体では、もうすぐ150館になるそうです。

休館中「自宅で図書館楽しんで」 電子書籍を紹介 [新型肺炎・コロナウイルス]〈朝日新聞デジタル(2020年3月13日)〉

 電子図書館の取り組み事例や、デジタルアーカイブのアピール事例がまとまっています。

国内(その他)

オトバンクとシマラヤジャパンが業務提携契約を締結 ~ オーディオブック2万6000点を音声プラットフォーム「himalaya」へ提供〈HON.jp News Blog(2020年3月10日)〉

 himalayaへオーディオブックを提供したのは、やはりオトバンクでした。まあ、予想通り。他にそれだけ持っているところがない、とも言えますが。ちなみに、コロナウイルス対策で、Zoomを使ったリモート記者会見となりましたが、配信側の苦労が伝わってくる感じでした(汗)

JPRO、B向け書誌情報配信サービス「BooksPRO」をオープン〈HON.jp News Blog(2020年3月10日)〉

 リリースには「書店向け」と書かれていたのですが、事前説明会で今後図書館にも展開予定と伺っていたため、あえて「B向け」と表記させてもらいました。半年後くらいになるそうです。出版社側も、どうやって配信されているのか見ることができない、というのは少々不便かも。いずれアップデートされると思うので、今後に期待です。

集英社とtaskey、共同で「e-Story大賞」を開催 ~ チャットノベル/チャット小説を再定義〈HON.jp News Blog(2020年3月10日)〉

 taskey「peep」と、集英社「TanZak」のタッグ。「チャット」や「小説」、あるいは「マンガ」や「映画」の枠にもとどまらない、ということで、e-Storyと再定義したそうです。マンガ化や映像化が、副賞になっています。応募要項に「脚本形式でご応募ください」と書いてあるのが、なんだか新しい感じです。

フィーチャーフォン向け「Handyコミック」が2021年3月にサービス終了 ~ BookLive!コミックへ引き継ぎ〈HON.jp News Blog(2020年3月10日)〉

 いわゆるケータイコミックの老舗がまたひとつ。この3月末には、フィーチャーフォン向け「コミックシーモア」がサービス終了です。まあ、すでに各社スマホでサービス提供してますから、大勢に影響はないはずですが。ビットウェイ時代から引き継がれてきた「Handyコミック」という歴史ある名前が消滅するというのは、ある意味、時代の大きな変化の締めくくりを象徴する出来事と言えるのかもしれません。

違法ダウンロード、対象を拡大 漫画や雑誌、論文も刑事罰〈共同通信(2020年3月10日)〉

 閣議決定。マスメディアの報道でもようやく、リーチサイト規制が同時に行われることに触れられるようになりました。私は、2月末時点の情報で解説記事を書きました(↓)が、変更などはとくになく、この記事通りに決まりそうです。

 文科省が公開した法律案と説明資料はこちら(↓)

 文化庁著作権課が公開したQ&Aはこちら(↓PDF)

インターネット広告費が2兆円を超えテレビメディア広告費を上回る ~ 電通「2019年 日本の広告費」より〈HON.jp News Blog(2020年3月11日)〉

 ついにインターネットとテレビが逆転……とはいえ、インターネット広告費には制作費も含まれているので、媒体費だけで言えばまだ2000億円弱差があるわけですが。個人的には、マスコミ四媒体由来のデジタル広告費で、雑誌デジタルが405億円(前年比120.2%)というのが少々意外。もっと伸びると思っていたのですが。

【更新】KADOKAWA、宮城県石巻からのコミック&復興情報マガジン「マンガッタン=デジタル」の特設サイトをオープン、作品の無料公開を開始〈HON.jp News Blog(2020年3月11日)〉

 東日本大震災から9年の日に合わせた無料公開。新型コロナウイルス対応での無料公開が連発していて埋もれてしまいそうですが、これも大事な動きです。

インプレスR&D、「著者向けPOD出版サービス」を「ネクパブ・オーサーズプレス」に名称変更、ウェブサイトもリニューアル〈HON.jp News Blog(2020年3月12日)〉

 累計販売数10万部を突破したのを機に、ブランド名変更。リニューアルしたウェブサイトには、成功事例なども載っています。

海外

映画監督ウッディ・アレンの自伝が一転してキャンセルになり賛否両論〈HON.jp News Blog(2020年3月10日)〉

 娘に対する性的虐待行為があったとして抗議行動が起きていました。賛否の賛はともかく、否はなんとスティーブン・キング。ウッディ・アレンを擁護しているわけではなく、「次に口封じされるのは誰か」という懸念です。確かにそれはある。検閲(censorship)を懸念しているわけです。

新型コロナウイルスによる出版関連イベントへの影響まとめ(海外)〈HON.jp News Blog(2020年3月11日)〉

 イベント中止や延期が世界的な動きになっています。株価下落はリーマンショック超え。世界経済がヤバイ。

新型コロナウイルス関連の海外出版ニュースあれこれ〈HON.jp News Blog(2020年3月12日)〉

 Koboが大手出版社と組んでイタリア向けに無料ページを用意、という事例はありますが、日本のような各社が次々無料化、という状況にはなっていないようです。国民性の違いなのかしら? そしてアマゾン……。

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CC BY-NC-SA 4.0
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※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。
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著者について

About 鷹野凌 823 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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