「ダウンロード規制、政治判断も二転三転」「アマゾンの子供向け定額サービス国内提供開始」など、出版業界気になるニュースまとめ(2019年3月4日~10日)

出版業界気になるニュースまとめ
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 2019年3月4日~10日は「ダウンロード規制、政治判断も二転三転」「アマゾンの子供向け定額サービス国内提供開始」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

違法ダウンロード範囲拡大関連

「賛成意見を水増し」DL違法化、専門家が文化庁を批判〈朝日新聞デジタル(2019年3月4日)〉

https://www.asahi.com/articles/ASM3351BKM33UCVL007.html
 先週の弁護士ドットコムに続き、本件を熱心に追いかけている朝日新聞でも、明治大学知的財産法政策研究所の検証レポートが取り上げられました。先週は「自民党議員も怒ってしかるべきではないか」と書いたのですが(続く)

DL違法化、差し戻しでも修正せず 甘利氏「政治論だ」〈朝日新聞デジタル(2019年3月7日)〉

https://www.asahi.com/articles/ASM365PXNM36UCLV00D.html
 総務会で差し戻された案を、反対論・慎重論があるにも関わらず、甘利明議員が「悪質サイトはこの議論を注視し、どこに抜け穴があるか探している」と、役員一任で修正せず再度部会を通してしまったとのころ。え? えっと、すでにストリーミング配信というでっかい穴があいてますよ。ちなみに甘利議員の発言だという「政治論」云々は、他社の報道では見つけられず。

違法ダウンロード規制の項目を削除へ 「ネット利用萎縮」を懸念 自民了承見送り〈産経ニュース(2019年3月8日)〉

https://www.sankei.com/politics/news/190308/plt1903080002-n1.html

なぜ自民は了承したのか 首相の「鶴の一声」で違法DL項目削除へ〈産経ニュース(2019年3月8日)〉

https://www.sankei.com/affairs/news/190308/afr1903080003-n1.html
 これまであまり積極的に本件を取り上げてきていなかった産経から、いきなり「安倍首相の指示」で方向転換が行われる見通しだという報道が。しかも2本目の記事は「与党として法案チェックの特権を持つ自民党に猛省を促したい」と、かなり強い論調です。こういうときはクロスチェックが重要。「安倍首相の指示」というのは、翌日になって毎日新聞でも報じられました(↓)。
https://mainichi.jp/articles/20190308/k00/00m/040/277000c
 ところが朝日新聞(↓)や日経新聞(↓↓)は、MANGA議連会長の古屋圭司議員と安倍首相が協議した、程度の書き方で、「削除」までは踏み込んでいません。どうも、情報元やリーク先によって差があるようです。うーむ、これが政治的駆け引きか。なお、8日の総務会では議題にならず、今国会で成立させるには15日の総務会がタイムリミットとのことです。まだ予断を許さず。
https://www.asahi.com/articles/ASM3854F8M38UCLV00J.html
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42232630Y9A300C1EA3000/
 そんな中、ブロッキング法制化議論の際はとても積極的な報道をしていた読売新聞は、今回の違法ダウンロードについてはこれまでほとんど報道しておらず、あまりの態度の違いに首を傾げるほどです。なんなんだこれ。

国内(その他)

同人誌のダウンロード販売って売れるの? ~ マンガ家大塚志郎氏(うみはん)インタビュー〈HON.jp News Blog(2019年3月4日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21591
 インタビューしました。Twitterを見ていると「非エロの一次創作をデジタルで売っていくには、工夫が必要」とおっしゃっていた意味がよくわかります。ちなみにこの記事の数日後に始まった「モチコミ」の連載をTwitterで公開した投稿の1つが、万単位のRTでバズっていました。すごい。
https://twitter.com/shiro_otsuka/status/1103322135970275330

ebookjapanへの「お引越し」手続き開始 ~ 「新刊自動購入」など継承された機能と未継承の機能〈HON.jp News Blog(2019年3月4日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21602
 Twitterでユーザーの声を拾っていたらだいぶ炎上していることがわかり、ちゃんと継承された機能と、未継承の機能をちゃんと整理しておく必要があるだろうと書いた記事。「eBookJapan」ユーザーから見ると未継承機能が多いのですが、「Yahoo!ブックストア」ユーザーから見ると多くの点でアップグレードされているという。しかし、機能的なところとは無関係に、ヤフーやTポイント・CCCに対する不信感で離れていくユーザーも、わりと散見されます。とほほ。Twitter公式アカウントが、AM2時とか3時ごろまでアクティブサポートしている様子が見えて、辛い。

マンガ家と創造性に富むプロが相互に刺激し合う生活拠点「Graphium House」1号拠点が今春オープン ~ トキワ荘プロジェクトのNEWVERYによるマンガ家支援新事業〈HON.jp News Blog(2019年3月5日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21640
 シェアハウス事業の新展開。マンガ家支援プログラムですが、マンガ家以外のクリエイターも対象にすることにより、相互に異なる視点や考え方に触れられる、ということになるでしょう。

AIデータ活用コンソーシアムが設立 ~ 学習用データの収集と共有のためのサービス基盤を構築・提供〈HON.jp News Blog(2019年3月6日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21669
 コンソーシアムの構成員に日本電子出版協会(JEPA)も入っていることから、取材に行ってきました。機械学習にはとにかくデータの「量」が必要なのですが、日本固有の自然言語や画像などのデータ集積が遅れている、という危機感があったそうです。

講談社、新小説投稿サイト「セルバンテス」をオープン ~ 「レジェンドノベルス」と密接な関係〈HON.jp News Blog(2019年3月7日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21681
 講談社の新しい小説投稿サイト。バックエンドはどうやら「あ」の企業みたい。「NOVEL DAYS」とどう住み分けするのか。講談社ではマンガでも、「DAYS NEO」と「マガジンデビュー」が別々で動いています。まあ、編集部が違えば集まる作品の傾向も変わるでしょうから、投稿する側としては選択肢が多くてもいいのかもしれませんが。

KADOKAWA、ライトノベルをレコメンドするスマホ向けサイト「キミラノ」を今春オープン〈HON.jp News Blog(2019年3月7日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21677
 こちらはラノベのレコメンドサイト。KADOKAWAレーベル横断型です。「好みのパートナーキャラを選ぶ」と、その好みに合わせて今日の1冊を紹介してくれるようなのですが、どういうアルゴリズムなんだろう?

扶桑社「ESSE」紙版の購読者特典で電子版が無料配信 ~ アイドックのブラウザ閲覧ソリューション「bookend view」が採用〈HON.jp News Blog(2019年3月7日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21711
 紙の購入者特典で電子版が無料で配信されるサービス。同様のサービスは他に、三省堂×BookLive!の「デジプラス」や(↓)、
https://www.books-sanseido.co.jp/service/ebook/digiplus/
文教堂の「空飛ぶ本棚」(↓)などがあります。
http://www.sky.co.jp/
 講談社の「codigi」(↓)は、昨年終了してしまいました。
https://codigi.jp/service/nc/0000000s/000000
 今回の扶桑社「ESSE」の試みは、閲覧期間が発売日から3カ月間と制限されている点が、ある意味特徴になっています。紙を保存用とし、電子を閲覧用として使い分けられる! のかな……?

アマゾン、子供向け定額サービス「Amazon FreeTime Unlimited」を日本向けにも提供開始 ~ 2年間破損故障無償取替対応「Amazon Fire HD 8 キッズモデル」も販売開始〈HON.jp News Blog(2019年3月7日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21699
 アメリカでは7年前から提供されているのですが、ようやく日本でも展開です。他誌の記事を見るにどうやら報道向けの発表会があったようなのですが、呼ばれてない……精進いたします。

マンガ家とアシスタントのマッチングサービス「GANMO」がバージョン2にアップデート〈HON.jp News Blog(2019年3月7日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21715
 マンガ家・赤松健さんが2012年に始めた、マンガ家とアシスタントのマッチングサービスがバージョンアップ。マンガ誌の編集者が重宝しているというのが面白い。デジタル作画の普及にともない、在宅アシスタント(通称:デジアシ)の需要が高まり、スタジオ形式が減っているとか。まさに働き方改革の最先端! という感じがします。

あのコルクがはじめる「マンガのお仕事依頼」のインパクト〈HON.jp News Blog(2019年3月8日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21685
 コルクの新サービス。リリースを見て、ただのニュースとして配信するのではなく少し深掘りしておきたいと思い、まつもとあつしさんにお願いしてコラムを書いてもらいました。エージェント事業の延長上で、新人作家の育成にも繋がるという見立てには、なるほどと頷かされます。

電子図書館サービス「LibrariE」の導入館100館到達、取り扱いコンテンツは4万8000点に〈HON.jp News Blog(2019年3月8日〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21732
 ついに、というか、ようやく100館。取り扱いコンテンツ数約4万8000点、今年中に6万点到達というのは、国内の電子図書館サービス的にはトップクラスなのですが、電子書店では2012年末くらいに達していた水準。以前から主張していることの繰り返しになりますが、とにかくまずは「量」が必要です。電子書店で多いところはすでに80万点が売られているわけで、電子図書館へのラインアップがその16分の1にしか満たないというのは、どういうことなのか。正直、不思議でなりません。

新刊発売、中国九州で1日遅れに 物流危機で書店逆風、4月から〈共同通信(2019年3月9日)〉

https://this.kiji.is/477017325307298913
 従来よりさらに1日遅れることになるというニュース。書籍より雑誌のほうが打撃が大きそうです。数年前、ジュンク堂書店の工藤社長(当時)が、那覇店をオープンする際のエピソードを語っていたのを思い出しました。沖縄では書店組合の協定で、それまですべての書籍雑誌が船便で送られていたのを、ジュンク堂書店だけ航空便で送って早く届けることによって喜ばれたそうです。ただ、続けて「でも、dマガジンの登場で……」という話にも。デジタルなら全国どこでも、同時に配信できちゃいますからね。

海外

日本の絵本が中国の書店で桁外れに売れる背景〈東洋経済オンライン(2019年3月4日)〉

https://toyokeizai.net/articles/-/267396
 去年の8月にダイヤモンド・オンラインで「中国で日本の絵本が爆発的に売れている」という記事(↓)がありましたが、
https://diamond.jp/articles/-/176906
 こちらは文化通信社星野渉氏による、さらに詳細な解説。ポプラ社(蒲蒲蘭)の話が中心ではありますが、周辺情報も盛りだくさんです。

オープンアクセスに応じないエルゼビアをカリフォルニア大学がボイコット〈HON.jp News Blog(2019年3月5日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21624
 エルゼビアの発行するジャーナルの購読料が高すぎると、ついにカリフォルニア大学がボイコット(取引拒絶)。「知識の代償(The Cost of Knowledge)」と呼ばれる、研究者からの抗議行動やオープンアクセス促進への要求活動が、Wikipediaで記事になっているくらい、学術系ではここ何年も問題になっている事象だったりします。

米セルフパブリッシング人材紹介のReedsyがディスカバラビリティサービスを開始〈HON.jp News Blog(2019年3月5日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21649
 セルフパブリッシング作品の、新しいプロモーション手段。これは商業でも同じですが、膨大な作品の中からいかに「掘り出す」かが至難の業。面白さを伝えるには「熱量」が必要で、アルゴリズムだけではまだ解決できない領域であるように思います。

ノーベル文学賞、セクハラ対策を実装して今秋から再開〈HON.jp News Blog(2019年3月6日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21665
 セクハラ問題で2018年は発表できなかったノーベル文学賞が、2019年は2年ぶん発表されることに。アカデミー会員の刷新と、外部のアドバイザーがセクハラ対策とのことです。

アマゾンが全米のポップアップ店を閉鎖、書店は引き続きオープン〈HON.jp News Blog(2019年3月7日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21705
 87箇所展開していたキオスク的店舗を、最近オープンしたばかりのところも含め、いきなりすべてクローズ。後述の、サプライヤーをマーケットプレイスへ半強制的に移行させる措置といい、なかなか激しい動きです。なにごとか。

米アマゾンに卸すサプライヤーがパニック、発注が突如停止〈Bloomberg(2019年3月8日)〉

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PO11A96TTDS301
 いきなり「マーケットプレイスで販売するように」と促すようになったとのこと。楽天化? 日本でもマーケットプレイス出品が増えているようですし、いつ同様の措置がとられることか。くわばらくわばら。

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著者について

鷹野凌
About 鷹野凌 517 Articles
HON.jp News Blog 編集長。NPO法人HON.jp 理事長。明星大学/二松學舍大学/実践女子短期大学の非常勤講師で、デジタル編集論/表象メディア演習/デジタル出版論/デジタル出版演習を担当。出版学会員/デジタルアーカイブ学会員。主な著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)。アイコンは©鈴木みそ氏
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