「クラウドフレアに発信者情報開示命令」「日経ストアサービス終了へ」「Google+サービス終了へ」など、出版業界気になるニュースまとめ #343(2018年10月8日~15日)

出版業界気になるニュースまとめ
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 2018年10月8日~15日は「クラウドフレアに発信者情報開示命令」「日経ストアサービス終了へ」「Google+サービス終了へ」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

国内

「有名作からの「記号的借用」と著作権 ~『ポプテピピック×サイコガン』事件覚書」〈HON.jp News Blog(2018年10月9日)〉

 メルマガ#2でピックアップした事件に、弁護士・福井健策氏が専門家の立場から解説してくれました。多くの人に読んで欲しいコラム。骨董通り法律事務所 For the Artsのウェブサイトでクリエイティブ・コモンズ 表示-非営利-改変禁止 4.0国際(CC BY-NC-ND 4.0)ライセンスで公開されていたので、HON.jp News Blogが非営利のメディアであることを活かし、事前に許諾を取らずに転載しました(公開後に報告しています)。元記事はこちら(↓)です。

「Google+」終了、Googleアカウントへのアクセス許可も変更〈ケータイ Watch(2018年10月9日)〉

 日本独立作家同盟(※HON.jpの前身)のコミュニティや「月刊群雛」の参加者募集などにフル活用してきたSNSが、来夏でとうとう終了に。いちおう、こうなることは見越した上て、受け皿としてFacebookグループ(↓)を立ち上げておいたわけですが、やはり寂しいものがあります。投稿のカテゴリわけができないなど、機能的には劣っていますし。

学術書出版の資金をクラウドファンディングで獲得 ~ 「academist」と「アスパラ」が事業提携〈HON.jp News Blog(2018年10月9日)〉

 資金調達から編集・制作・流通まで、トータルサポートに。アスパラでの出版には協力金(30万円から)が必要なので、9月のリリース時点では正直「厳しいな」という感想だったのですが、こういう体制を整えたとなると大きく印象が変わります。うまくいくといいですね。

クラウドフレアに「発信者情報開示」命令、海賊版サイト「ブロッキング」に影響も〈弁護士ドットコム(2018年10月9日)〉

 肖像権侵害に対する仮処分ですが、著作権侵害でも同じような判断になる可能性が高いという意味で、大きな判断。「漫画村」などが政府に名指しされた4月当初から、Cloudflare社の施設が東京と大阪にあるから日本の裁判所で仮処分が出せるのではないか? という意見は出ており、それが実証された形になります。キャッシュファイルの削除まで命じているところも大きい。あとは、Cloudflare社が素直に従うかどうか、でしょうか。

 また、今後のことを考えると、国内には施設がないCDNを使っている海賊版サイトには、通用しない手段であることも事実です。もっとも、通信速度を考えると、国内に施設がないと利用者増に耐えられない、という可能性もありますが。

海賊版サイト「漫画村」の運営者を特定か 法的措置へ〈BuzzFeed News(2018年10月10日)〉

 アメリカでの訴訟手続きを通じて、海賊版サイトの運営者とみられる人物が特定できたというニュース。日本と違って、被告が匿名者であっても提訴できるというのが大きいように思われます。

揺らぐ「ブロッキング必須論」…注目の仮処分決定〈読売新聞(2018年10月10日)〉

 こちらの報道によると、「出版各社はこれまでクラウドフレアに対して(直接要請はしてきたものの)裁判所での手続きは講じてこなかった」そうです。出版広報センターは、4月13日に発表した声明文で「私たちは長年、海賊版サイトに対してできうる限りの対策を施してまいりました」と主張していましたが、実は現行法の範囲内でも対抗しうる手段が他にもいろいろあったことは、もはやまぎれもない事実と言っていいでしょう。私は、刑法の緊急避難に基づくブロッキングには反対でしたが、法整備した上でのブロッキングはあり得ると思っています。ただそれには、事実関係をちゃんと確認した上で、もっと慎重に議論することが必要でしょう。

毎日フォーラム・特集:電子図書館 進まない公立図書館の電子書籍化〈毎日新聞(2018年10月10日)〉

 現時点での、国内公共図書館への電子図書館導入状況と事例のまとめ。出版社別の電子化率データを「ある調査」としていますが、数字が一致するので、安形輝氏と上田修一氏による「日本における電子書籍化の現状:国立国会図書館所 蔵資料を対象とした電子書籍化率の調査」(↓)を参照しているものと思われます。なぜ出典を書かないのでしょう?

電子書店「日経ストア」が来夏でサービス終了 ~ 購入済みコンテンツは一部を除き「honto」へ移行可能〈HON.jp News Blog(2018年10月10日)〉

 日経ですら、直営ストアを継続していくのは難しいのかと、驚かされました。また、記事への反響を見ていると、ちゃんと移行先が用意されているこれほど模範的な畳み方であっても、「これだから電子書籍は信用できない」と叩く人は現れるのですね……とはいえ、電子出版がすべての人に受け入れられることはないでしょうから、過度に気にする必要もないかもしれません。

Googleの「Pixel 3」「Pixel 3 XL」が日本発売 9万5000円~ FeliCaも搭載〈 ITmedia Mobile(2018年10月10日)〉

 ハイエンド機ということもあり、思っていたより高額。愛用してきた2代目iPhone 5sがそろそろ限界なので、乗り換えを検討していたのですが、気持ちが萎んでしまいました……毎日使うものとはいえ、十万円を超えるような端末が数年の使用に耐えないというのは、ちょっと厳しいものがあります。Android Oneにしようかな。

雑誌「出版ニュース」が休刊へ 75年の歴史に幕〈朝日新聞デジタル(2018年10月10日)〉

 まずは、長年お疲れさまでした。私も数年前から隔月で「Digital Publishing」というコーナーに寄稿していますが、予定通りならあと3回で終わりということに。「HON.jp News Blog」の役割が、ますます重要なものになりそうです。気を引き締めていきたいと思います。

メディアドゥ、投資株式で特別損失計上 通期業績予想を最終赤字に修正〈アニメーションビジネス・ジャーナル(2018年10月10日)〉

 資本業務提携したCreatubbles社とインターネット総合研究所の株式で、評価損を計上することに。これによって当期純利益見込みが純損失、つまり赤字転落見込みに。厳しい予想です。上場以来、積極的にM&Aを行ってきた同社ですが、今後は投資方針や投資基準を見直すとのこと。アクセル踏みっぱなしでコースアウトするわけにもいかないので、いったんブレーキを踏んで体勢を立て直す、といったところでしょう。

News Up 文系も知りたい「技術書典」〈NHKニュース(2018年10月11日)〉

 「技術書典」が回を重ねるごとに規模を拡大し、とうとうNHKニュースでも取り上げられました。私たちの「NovelJam」も、NHKが取材に来るくらいになりたい……!

海賊版サイト運営者の情報開示に成功した弁護士・山口貴士氏と情報法制研究所(JILIS)が、政府検討のブロッキングには前提条件に重大な過誤があるとの意見書を発表〈HON.jp News Blog(2018年10月12日)〉

 政府の「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(タスクフォース)」で検討されているブロッキングの法制化には、「運営管理者の特定が困難であり、侵害コンテンツの削除要請すらできないマンガを中心とする巨大海賊版サイト」という前提があったのですが、それが崩れてしまったことに。次の検討会議は10月15日に行われますが、そこでこれらの事実がどう判断され、どのような結論が出るか。要注目です。

日本マンガ学会、自治体による「有害図書」指定範囲拡大に対する反対声明を発表〈HON.jp News Blog(2018年10月12日)〉

 3月のできごとに対し、半年経っての声明。「もう少し早く、声明を出して欲しかった」といった声も散見されました。が、団体内で意見をまとめ、対外的に発信するのは、側から想像している以上に大変なこと。まずは、クリエイター側からこういう声が上がったという事実が、大事でしょう。

海賊版誘導:「リーチサイト」規制へ 運営者らに罰則〈毎日新聞(2018年10月14日)〉

 ブロッキング以外の対策案。これはこれで「リーチサイトの定義をどうするか?」という難題を抱えているわけですが、過去数年にわたって討議されてきた積み重ねもあり、実現度は高そうです。9月に行われた、文化庁の文化審議会著作権分科会 法制・基本問題小委員会(第3回)で提出された資料「リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応に関する論点整理(案)」はこちら(↓)。

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著者について

About 鷹野凌 823 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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