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株式会社太田出版は10月17日、同社刊の『エロマンガ表現史』(稀見理都)が北海道青少年健全育成条例の「有害図書類」に指定されたことについて、公式サイトで声明を発表した。これまでメディアからの取材に対し個々に伝えてきた公式見解を、改めて声明として記したものだという。
同社によると、『エロマンガ表現史』の企画意図は「漫画における身体の記号的表現の進化史研究」にあり、文字どおり人間の身体を視覚的技術のもとに描写するエロマンガは、そのために外せないどころか最も重要な領域だと考えているという。そのため同書では、エロマンガの起源のひとつである春画を含め、多数のエロマンガ作品の図版を引用の範囲で掲載している。マンガという視覚表現の解説書であるため実例の掲載は不可欠であり、読者が表現の歴史的変遷を辿って研究するため、収録図版は最低限必要な点数と大きさにとどめ、すべてをモノクロで掲載しているという。
北海道青少年健全育成審議会ではこのことが「著しく粗暴性を助長し、性的感情を刺激し、又は道義心を傷つけるもの等であって、青少年の健全な育成を害するおそれがあると認められる」と問題視され、有害図書として指定されるに至った。しかし同社は、これらの図版類の掲載が「著しく青少年の粗暴性を助長し、性的感情を刺激」するとまでは考えにくいのではないか、という見解を示している。
また、ほぼ同時期に滋賀県で有害指定された『全国版あの日のエロ本自販機探訪記』(黒沢哲哉/双葉社)についても触れ、「個々の書物が持つテーマや文脈を無視した短絡的な判断がなされ、かつそのような傾向が加速しつつあることの顕れではないかという危惧を覚え」るとしている。そのうえ、北海道青少年健全育成審議会は有害図書指定に至った審議の議事録を残していないため、同社は「公的機関による、表現物の内容に関する審議の過程が結論ありきのブラックボックスと化している」ことに、違和感を表明している。
参考リンク
太田出版の声明文