「LINE BLOG、サービス終了へ」「OpenAI、AI生成テキストの判別ツールを提供開始」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #557(2023年1月29日~2月4日)

有斐閣

《この記事は約 13 分で読めます》

 2023年1月29日~2月4日は「LINE BLOG、サービス終了へ」「OpenAI、AI生成テキストの判別ツールを提供開始」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります(ISSN 2436-8237)。

【目次】

政治

権利者不明のドラマや動画、二次利用促進へ法改正 ※有料会員限定〈日本経済新聞(2023年1月30日)〉

文化庁は権利者が分からない著作物の二次利用の手続きを容易にし、デジタルコンテンツ市場の活性化を図る。文化審議会の小委員会が30日に開かれ新制度の報告書をまとめた。利用者から相談を受ける窓口組織を新設し、一定額を支払えば速やかに利用できる制度の導入を求める内容だ。同庁は通常国会への著作権法改正案の提出をめざす。制作当時にデジタル配信を想定していなかった古いテレビドラマや演劇などは二次利用に原則出

 文化審議会著作権分科会法制度小委員会で検討されてきた「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元の制度化」(記事で触れているのはこれだけ)と、「立法・行政・司法のデジタル化に対応した著作物等の公衆送信等」「海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し」「研究目的に係る権利制限規定の創設」の4つについての報告書案が、パブコメを反映した上で了承されたことを受けての報道です。確定した報告書はすでに文化庁のサイトで公開されています。

文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第9回)の議事次第・配布資料等について掲載しています。

 次のステップである文化審議会著作権分科会(親会)が2月7日に開催されますが、傍聴申し込むのを忘れてました……まあ、法制度小委員会でもすんなり決まったので、恐らく親会でもとくに波乱などなく進むのではないかと思われます。

社会

※デジタル出版論はしばらく不定期連載になります。ご了承ください。

読書バリアフリー法を知ってますか?出版業界で対応がはじまります〈Romancer(2023年2月2日)〉

ABSC準備会が発行する「ABSC準備会レポート(創刊号)」の電子配信が始まりました。以下から、どなたでも無料でお申し込みできます。   閲覧お申込みへ(電子配信...

 「ABSC準備会レポート」創刊号(2022年7月号)が、リフロー形式のEPUBで公開されました。ボイジャー「BinB」ブラウザビューアで閲覧できます。JPOのお知らせを確認したら、2号のリフローEPUBは準備中、PDF版は2号ともすでに公開済み、マルチメディアDAISY版も準備中とありました。いろいろ進捗してますね。

電子書籍版(EPUB リフロー) 2022年7月号(創刊号) 2023年2月号(...

 日本出版学会でも、アクセシビリティ対応の研究をしなければと、いろいろ動いています。「InDesign」から書き出したEPUBはやっぱりダメだね、とか。紙版のページ番号(ノンブル)を電子版に埋め込む作業は結構大変だね、とか。せっかくページ番号を埋め込んでも、対応しているビューアがほとんどないよね、などなど。現時点でどういった課題があるのかを、抽出している段階です。

 5月13日の春季研究発表会では、ワークショップをやる予定で準備しています。とくに、EPUB制作ツールやビューアの開発運営関係者には、ぜひご参加いただきたいと考えています。詳細はまた後日。お楽しみに。

経済

Twitterを使い続けるか、やめるべきか。迷っている人が検討すべき6つの選択肢〈WIRED.jp(2023年1月30日)〉

混乱の渦中にあるTwitterを今後も使い続けるかどうか、移行先をどこにすべきか迷っている人もいることだろう。そんな人たちが検討すべき6つの選択肢について解説する。

 Twitterの代替手段についての話題が続いています。この記事では「Mastodon」「Post」「Hive Social」といった新興サービスや、「Instagram」「Facebook」「LinkedIn」などのすでに定着したサービスの名前が挙がっています。

 私の周囲でも「Bondee」や「Nostr」を始めましたという報告が多く観測されます。私もいろいろ試しています。ただ、このWIREDの記事にも書かれているように、結局のところ「実力が未知数のソーシャルネットワーク」に労力を費やすのはリスクが大きいんですよね。「Google+のような末路」って、やかましいわ(泣)

 イーロン・マスク氏がTwitterを買収してからの動きは、正直言えば、方向性はそれほど間違っていないと思うのです。でも、やり方に問題がありすぎる。それだけ切羽詰まった状況だった、ということなのかもしれませんが。

LINE BLOG、6月29日にサービス終了〈ケータイ Watch(2023年1月30日)〉

 LINEは、ブログサービス「LINE BLOG」を6月29日にサービス提供を終了すると発表した。

 またひとつ、ブログサービスがお亡くなりに。2019年4月には「Yahoo!ジオシティーズ」が終了し、2019年12月には「Yahoo!ブログ」が終了しています。[2023年2月16日追記:同グループ系では他にも、2020年9月に「NAVERまとめ」、2022年5月に「BLOGOS」が終了していますね。抜けてました。]つまり、これでZHD系からはブログサービスがすべて消滅することに。

 まあ、個人発信のコンテンツは検索で上位に出づらくなっていますから、ブログサービスを無料で提供して広告で収益を得るようなビジネスモデルはもう限界なのかもしれません。ZHD、LINE、ヤフーの合併という発表もありましたし、不採算事業は今後もバシバシ終了していくことでしょう。次はなにが終わるかな?

Zホールディングスは2月2日、同社と完全子会社であるLINE、およびヤフーを2023年度中に合併させる方針を決定したと発表した。

 で、こういう事態になってから初めて知ったんですが、「LINE BLOG」ってエクスポート機能がなかったんですね。サービス終了が決まってから他社サービスへの移行手段の準備を始めるというのが、なんとも……もちろん、用意しないより断然マシではありますが。

なぜいま「日本産ウェブトゥーン」の「中国アニメ化」なのか…中国の動画配信サービス大手ビリビリが見据える未来(飯田 一史)〈マネー現代 | 講談社(2023年1月31日)〉

中国の動画配信サービス大手bilibili(哔哩哔哩)は、ライブ配信やアニメの製作・制作やゲーム事業、そしてマンガ/ウェブトゥーンも手がけ、今では日本法人も4事業部100人体制で展開している。目下、新規事業として取り組んでいるのが、日本や韓国で作った新作ウェブトゥーンを中国で二次展開(とくにアニメ開発)する、というものだ。この新規事業の室長が金 春成(きんしゅんせい)氏だ。、2010年から日本コンテンツの中華...

 今年の予想「マンガの輸出」関連でピックアップ。韓国のウェブトゥーンは、アニメ化をあまり想定していない(実写ドラマ化はよくある)というのが、少し意外でしたがなるほど感。垂直統合と水平分業の違いといった話なども、興味深い。

 ただ、このインタビューでは触れられていませんが、ビリビリって上場後もずっと赤字続きなんですって。知らなかった。この記事とちょうど同じ日に、ビリビリが「オタクによって生かされ、オタクによって殺される」という記事が出ていました。つまり表題の「なぜ」には、懐事情があるのかもしれません。

オタク向け動画共有サービス「ビリビリ」が窮地に立たされている。インストリーム広告、有料配信、縦型ショートムービーと収益化をねらった施策が、いずれも視聴者からの不評に合い不発に終わっているからだ。赤字幅は拡大する一方で、活路が見えてこないと黒馬公社が報じた。 上場後も黒字化を果たせないビリビリ ビリビリは、初音ミクの動画を共有する場所として2009年に始まり、以後、ACG(アニメ、コミック、ゲーム)の動画...

講談社が“イッキ読みできる教養新書”を創刊した理由──現代新書・編集長と副部長に聞く、多忙で不透明な時代の「教養」のかたち〈XD:クロスディー(2023年2月1日)〉

 薄型新書シリーズ「現代新書100」についてのインタビュー。どういう経緯、どういう発想で始められたのかがじっくり語られており、興味深いです。オックスフォード大学出版局から出ている「Very Short Introductions」というシリーズがロールモデルなのですね。

 そのいっぽうで、どうしても紙の本の話が中心になってしまうのだなあ……という思いも。同じ判型のバリエーションを増やすことにより、書店の棚を少しでも確保したいという狙いがある(けど語られていない)ようにも感じます。ページ数が少ないのにわざわざ厚い紙を使って束を確保しているあたりは、逆のほうがいいんじゃないかな……という気も。

 短い本といえば「イーシングル」。すぐ読み切れるから、読まれた数に応じて収益配分される読み放題サービスとの相性は良いはず、と私は思っています。しかし「現代新書100」は、Kindleストアには配信されているものの、単品販売のみ。つまり「Kindle Unlimited」には非対応です。なぜ。

漫画雑誌も苦境の時代? 漫画編集者に聞くそれでも出版社が雑誌を重視する理由〈Real Sound|リアルサウンド ブック(2023年2月1日)〉

年々発行部数が激減する雑誌 漫画業界が盛り上がっている。近年立て続けに『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『チェンソーマン』『SPY×FAMILY』などのヒット作が連発し、爆発的に単行本が売れているのだ。コロナの巣ごもり需要などもあって電子書籍が浸透したため、漫画が読まれる機会は増え、海外にもファンを…

 雑誌は新人漫画家の認知手段としての役割が大きい――といまだに語っている「現役の漫画雑誌の編集者」が、どこの出版社・編集部所属なのかが気になります。いや、もちろんいまでもそういう役割が残っていることは否定しません。しかし、新たな認知手段として「TwitterやInstagram、YouTubeなど」ではなく、「マンガアプリ」について一言も触れないのはどうなのか。「少年ジャンプ+」の成功が目に入っていないのでしょうか。

「dマガジン」未契約のdアカウントでも、毎週3分無料で雑誌が読める「3分サク読みチケット」〈ケータイ Watch(2023年2月4日)〉

 NTTドコモは、dアカウントを持っていて「dマガジン」を契約してないユーザーを対象に「dマガジン」で配信している一部の雑誌を3分間無料で読める「3分サク読みチケット」を提供開始した。

 「なるほど!」と声が出ました。時間制限付きのお試し機能。「BOOK☆WALKER」には、小説・ライトノベルを1日10分だけ読み放題の「まる読み10分」がありますが、それを少しアレンジして「dマガジン」へ持っていった感じでしょうか。

冒頭からでも、途中からでも、最後からでも、本屋さんで立ち読みをするのと同じように、好きなページから無料で試し読みができます。ぜひお試しください。※ご注意は最下部をご覧ください。

 本は、中身を読んでみないと価値判断ができない「経験財」ですから、こういうリアル書店やコンビニでの「立ち読み」に似たお試し機能って、効果が出そう。読み放題だけでなく、単品購入への誘導があってもいいように思います。「dマガジン」だと読めない記事も多いですし。

技術

AIが生成した文章、判別の研究進む AI研究団体などデモを公開〈AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議(2023年1月31日)〉

「ChatGPT」は、対話型でプログラミングができるなどの可能性を秘める一方、偽情報の流布や論文執筆などへの悪用なども懸念されている。

 「ChatGPT」を開発・提供しているOpenAIが、AI生成テキストかどうかを判別するツールの提供も開始しました。まるで、地雷をばら撒くいっぽうで地雷探査機を提供する、武器商人みたいな動きです。「現時点では英文のみに対応」とありますが、試してみたら日本語でもチェックは可能でした。ただ、精度が落ちるみたいですね。

 残念ながら「最低でも1000字」という制限があるので、私が講義で学生に課している程度の短いレポートだとチェックできません。まあ、ある程度の長さがないとAI特有の癖が判別できない、というのは理解できます。そういう意味では、AI生成画像のほうが検出はしやすいでしょうし、ニーズも高そう。

ChatGPTが鳴らした号砲、グーグルは自ら主力ビジネスを破壊できるか〈日経クロステック(2023年2月3日)〉

 ChatGPTはAI(人工知能)の世界を一変させてしまったようだ。つい3カ月前まで、AIがデタラメな文章を出力するのはタブーとされていた。しかしChatGPTの登場以降、人々はAIの過ちに突然寛容になり、チャットボットAIが一気に社会に受け入れられようとしている。

 「ChatGPT」がいきなり話題になりましたが、GoogleがAIの分野で負けているわけではない、という話。AI倫理での批判を避けるためであったり、広告ビジネスへの影響を考慮した結果、遅れをとったように見えてしまっている、という状況なのでしょう。学習用データはどこよりも持っているはずの企業ですし。今年の「Google I/O」では「これでもか!」と言わんばかりの新技術が披露されそう。楽しみです。

 実際のところ「ChatGPT」は、ジェネレートされた文章そのものより、人間が自然文で入力した質問をあたかも「AIが理解している」ように見える答えを返すことができるあたりが長けてるように感じます。つまり、AIというより、チャットで受け答えするUIが優れている、ということなのでは。

 Googleの検索窓は、キーワードを入力しやすいインターフェースです。しかし、自然言語処理技術の「BERT」が出たころ、英語なら文章で質問したほうが精度の高い検索結果が返ってくる、みたいな話を読んだ記憶があります。あるはずなのですが、掘り出せない……ぐぬぬ。

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雑記

 法人として「弁護士や税理士等に対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料、講演料等」で「同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50,000円を超えるもの」は、1月末までに支払調書と法定調書合計表を税務署へ提出する必要があります。もちろん終わってますが、意外と面倒なのです。でも、e-taxでオンライン手続きできるぶん、意外とラクだったりもします(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0
※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

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著者について

About 鷹野凌 727 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学デジタル編集論非常勤講師 / 二松學舍大学エディティング・リテラシー演習非常勤講師 / 日本出版学会理事 / デジタルアーカイブ学会会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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