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2025年11月23日~29日は「政府が海外向けマンガ配信プラットフォーム構築のため産官学のコンソーシアム設立」「日本のGoogle検索経由サイト訪問が2年前から33%減」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。
【目次】
- 政治
- 社会
- 経済
- 図鑑4,000冊が10分で完売した日──本×ライブコマースが広げる書店の商圏〈mizuho furuhata(2025年11月22日)〉
- Google経由のサイト訪問、日本でも3割減 AI要約の浸透で〈日本経済新聞(2025年11月26日)〉
- 「Google激減」の衝撃とForbesの生存戦略──CEOが語る脱・検索依存と「コミュニティ」への回帰〈Media Innovation(2025年11月26日)〉
- 開業から15年、あの「代官山 蔦屋書店」の現状は?〈日経ビジネス電子版(2025年11月26日)〉
- ここは楽園か? 本が飛ぶように売れていく「本屋博」〈日経ビジネス電子版(2025年11月27日)〉
- 決算:紀伊国屋書店の25年8月期、純利益37%増 海外が好調〈日本経済新聞(2025年11月28日)〉
- 「マンガに続け」小説や実用書など輸出に奔走 出版大手〈日本経済新聞(2025年11月28日)〉
- 技術
- お知らせ
- 雑記
政治
日本のマンガの海外向け配信を強化…海賊版の根絶や需要掘り起こし狙いプラットフォーム構築へ〈読売新聞(2025年11月22日)〉
ナニコレ……「産官学のコンソーシアム」とか、嫌な予感しかしないんですが。「マンガを扱う世界的に有力な配信サービスはまだなく」なんて書いてありますけど、海外向け配信事業を行っている日本企業はすでに複数あるわけで。いちおう「配信プラットフォーム事業者」にも参加は呼びかけるようですが、どういうプラットフォームの「構築」を目指すのか。
文化庁 令和7年度 補正予算(案)関係資料(PDF)8ページに説明が載っているのを見つけましたが、ひととおり眺めてもいまいち釈然としない。「構築」だから、いちから新規で立ち上げるというニュアンスを読み取ってしまったのですが、単に既存事業者に対する補助金なのか、どこかに1本化しようとしているのか。うーむ、よくわからん。
アニメや漫画、コンテンツ支援に350億円 経産省〈日本経済新聞(2025年11月26日)〉
6月に出ていた経産省「エンタメ・クリエイティブ産業戦略(PDF)」のアクションプランでは「電子コミック先進国である日本のノウハウを生かしつつ、海外で通用するプラットフォーマーの育成支援を行う」という説明だったんですよね。こちらは補正予算案でも「拡大支援」となっているし、コンソーシアム云々って話は出ていません。でも右上に「(独)日本芸術文化振興会」とあるから、文化庁と同じく「文化芸術活動基盤強化基金」なのかな。
AI科学研究に1500億円計上 文科省、25年度補正予算案〈日本経済新聞(2025年11月28日)〉
文科省からは「AI for Scienceによる科学研究⾰新プログラム(補正予算370億円)」や「図書館・学校図書館と地域の連携協働による読書のまちづくり推進事業(補正予算1億円)」なども。としょかんかんれんはいちおくえんですか。そうですか。
P2Pファイル共有ソフト「BitTorrent」利用の違法アップロード者に発信者情報開示を命じる判決、日本レコード協会が発表〈INTERNET Watch(2025年11月25日)〉
日本レコード協会(RIAJ)だから出版とは直接関係しないニュースなんですが、ファイル共有ソフトは「海賊版」の流通を促進してしまうという広い意味では関係してくると思い拾いました。ただ、記事内のここを見てちょっと驚きました。
(RIAJが発信者情報開示を求めた)16社のうちソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が情報の開示に応じなかったため、東京地方裁判所に発信者情報開示請求訴訟を提起していた。
開示請求されたISP16社のうち、ソニーグループ系だけ拒否してるんですね。なんだそれ、面白い。RIAJの会員社にはもちろん、株式会社ソニー・ミュージックレーベルズが入っているわけです。つまり構図的には、同じソニーグループ内で争っていたことになります。
なぜ? グループ内で調整できなかったのか。まあ、ISPの立場からすると「通信の秘密を守る」という大原則があるから、裁判所から開示命令が出ない限り開示できないという立場も理解はできるんですが。でも逆に、他の15社はなぜ訴訟前に開示したのかという謎。
社会
Authors dumped from New Zealand’s top book prize after AI used in cover designs(ニュージーランドの最高図書賞の受賞作家、表紙デザインにAIが使用されたため受賞を逃す)〈The Guardian(2025年11月18日)〉
本文ではなく、表紙での利用でアウト判定ですか……さすがにちょっと対応が極端過ぎるのでは。いや、まあ、これからAI出力コンテンツが氾濫することで、むしろアナログ的なものに価値が出るだろうとは私も思っているのですが。
書籍「生成AIを活用したレポート・論文の書き方」発売へ 慶應義塾大学出版会から〈ITmedia AI+(2025年11月27日)〉
これは気になる。学生向けにどういう指南をしているのか? という意味で。
経済
図鑑4,000冊が10分で完売した日──本×ライブコマースが広げる書店の商圏〈mizuho furuhata(2025年11月22日)〉
ライブ配信での成功事例が出たのはいいニュースですね。バリューブックス「積読チャンネル」の8000冊は動画での事例でした(2024年)。日経トレンディが「TikTok売れ」とか言ってた2021年からここまで、意外と時間がかかった気もします。
Google経由のサイト訪問、日本でも3割減 AI要約の浸透で〈日本経済新聞(2025年11月26日)〉
先週のまとめで、昔の値と比較しないと「進んで」るかどうかわからないとツッコミを入れたんですが、この記事ではちゃんと比較してます。偉い! 1年前から16%減、2年前から33%減とのことです。でも、ヴァリューズのリリースにはそういう記述がないんですよね……詳細レポートには載ってるのかな? と思いダウンロードしてみたのですが、やはりそういう数字はありませんでした。日経がヴァリューズに取材したら出してきた数字ってことなのかな。
しかしこれ、ヴァリューズがどういうデータの取り方をしているか次第なのですよね……判断が難しい。モニターパネル250万人の行動ログデータの解析結果なのですが、そのパネルはどうやって集めているのか? 記事には「データをたどれる23年1月から減少傾向が続いており」とありますが、最初から一貫して減少してるならパネルのアクティビティそのものが減少している可能性は? 2年間でパネルの入れ替わりは当然発生しているはずだけどそれはどう考慮されてる? などなど。まあ、疑い出したらキリはないのですが、鵜呑みにもできないですよ。
「Google激減」の衝撃とForbesの生存戦略──CEOが語る脱・検索依存と「コミュニティ」への回帰〈Media Innovation(2025年11月26日)〉
うん、これは何度でも指摘しますけど、ForbesはAI Overviewsがリリースされる直前に「寄生サイト」ペナルティを食らってるメディアですからね。このインタビューでは、そのことに一言も触れていません。「AI Overviewsのせいにしてるけど、それ以前にペナルティ食らってますよね?」っていうツッコミを、私以外に見かけないのも不思議。なぜ。
開業から15年、あの「代官山 蔦屋書店」の現状は?〈日経ビジネス電子版(2025年11月26日)〉
これは本題に入る前の記述なのですが、さすがにちょっとそれは……という気持ちになりました。
しかし、直近の調査では、書店の倒産が急減し、業界持ち直しの機運も出てきた(*帝国データバンク「書店」の倒産動向 2025年1-5月)。
帝国データバンクのそのデータって「集計対象:倒産は負債1000万円以上、法的整理によるもの」と明記されてますからね。私的整理とか自発的な廃業は含まれていません。
ここは楽園か? 本が飛ぶように売れていく「本屋博」〈日経ビジネス電子版(2025年11月27日)〉
「梅田店では毎週末お渡し会を開催し、都度500~2000人の参加者が“お並び列”をつくる。」の写真は、先日の文フリ東京41でも見かけた光景です。それを毎週企画できるというのは強いなあ。しかし、本屋博にせよ文フリにせよ、年1回とか2回の「ハレの日」なんですよね。お祭りだから人が集まる。もちろんそれを否定するつもりはないけど、問題はケの日でしょう。日常の占める割合のほうが大きいんだから。と思いながら読んでいたら、最後のほうでハレの日ケの日の話が出てきて苦笑い。
決算:紀伊国屋書店の25年8月期、純利益37%増 海外が好調〈日本経済新聞(2025年11月28日)〉
高井昌史会長は「日本国内は出版不況といわれるが、海外に活路を求めれば出版業界は不況から脱することができる」と話した。
出版業界というか、書店業でそれが可能なのは大手だけじゃないだろうか。出版社や配信プラットフォーム事業者が海外市場で儲かったとしても、国内の中小リアル書店にはなにも恩恵ないですよね。
「マンガに続け」小説や実用書など輸出に奔走 出版大手〈日本経済新聞(2025年11月28日)〉
こちらはマンガ以外の輸出の話。TOKYO RIGHTS MEETING(東京版権説明会)や、講談社、新潮社、サンマーク出版、マイナビ出版の事例と、ヒューマンメディアが調査した数字など。
技術
ChatGPT took Press Gazette content then said that could not have happened(チャットGPTはプレス・ガゼットの(有料)コンテンツを取得し、そのようなことはあり得ないと主張した)〈Press Gazette(2025年11月26日)〉
「ChatGPTは有料コンテンツにアクセスする方法を見つけている」という主張です。どれどれ……とソースを確認してみたら“You’ve reached your limit of free articles(無料記事の上限に達しました)”という表示の先もソースで普通に読めちゃいました。私が以前から言ってる「なんちゃってペイウォール」の実装ですねコレは。ChatGPTがなんか妙な主張しているとかいうのは、ただのハルシネーションでしょう。
「ATOK Passport」に生成AI機能「MiRA」搭載へ 推敲や要約など“わたしらしい”文章を提案〈ITmedia AI+(2025年11月26日)〉
おー、ATOKにもついに生成AI機能搭載ですか。便利になるといいなあ。しかしこれ、今後はATOKを使ってるとカクヨムでは「AI補助利用」タグを付ける必要があることになりますね。「作者自身が書いた文章の校正をAIに行わせるなど、創作の補助的に利用したもの」という記述があるので。
お知らせ
イベントについて
年末恒例の出版ニュース振り返りはリアル会場から配信するハイブリッドイベントです! 登壇者と挨拶や名刺交換などをしたい方は、Peatixでチケットをご購入のうえ、日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホールまでお越しください。12月26日(金)19時受付開始、19時30分配信開始です。
新刊について
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雑記
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