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文化庁著作権課は3月4日、新型コロナウイルス感染拡大対策で、政府が小中高校へ臨時休校を要請したことに伴い、教育機関がICTを活用した遠隔指導などを行う際の著作物利用について、著作権等管理事業者や関係団体に対し“格別の御配慮”をお願いした。これを受け、各団体は次々と協力を表明している。
前提として、現行の著作権法には第35条(学校その他の教育機関における複製)の権利制限があり、「対面授業のための複製」と「対面授業と同時中継の遠隔合同授業のための公衆送信」については、無断・無償で利用できる(※ただし「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は除く規定になっており、一般社団法人日本書籍出版協会はガイドライン(PDF)を公開している)。
2018年5月に改正された著作権法では、教育の情報化に対応した権利制限が整備された。たとえば、対面授業の予習・復習用の資料をメールで送信したり、オンデマンド授業で講義映像や資料を送信したり、スタジオ型でのリアルタイム授業配信したりといった、「授業目的の異時公衆送信」も、補償金を支払うことにより無断で利用が可能となった(※参考:日本著作権教育研究会による35条改正シンポジウムのレポート)。
ただ、補償金の額などは現時点でまだ確定してしていない。公布日から3年以内(2021年5月まで)の施行を目指し、いまなお著作物の教育利用に関する関係者フォーラムで議論が続けられている最中である。つまり現時点では未施行なので、本来なら「授業目的の異時公衆送信」を行う場合は、著作権者等の許諾が必要なのだ。
ただ、今回は新型コロナウイルス感染症対策で急に臨時休校することになった緊急事態であることから、文化庁から著作権等管理事業者や関係団体に“格別の御配慮”がお願いされた、という少々複雑な経緯がある。対応を表明している団体は、本稿執筆時点で以下のとおり。
なお、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)は、文化庁長官により指定された、授業目的公衆送信補償金を受ける権利を行使する国内唯一の指定管理団体だ。SARTRASは、創設時42の権利者団体を、新聞教育著作権協議会、言語等教育著作権協議会、視覚芸術等教育著作権協議会、出版教育著作権協議会、音楽等教育著作権協議会、映像等教育著作権協議会の、6つの協議会に分け、その協議会を社員とする一般社団法人として2019年1月に設立された。
SARTRASの声明に記された権利者団体は、本稿執筆時点で以下のとおり。
- 一般社団法人新聞著作権管理協会
- 公益社団法人日本文藝家協会
- 協同組合日本脚本家連盟
- 協同組合日本シナリオ作家協会
- 一般社団法人日本写真著作権協会
- 一般社団法人日本美術著作権連合
- 公益社団法人日本漫画家協会
- 一般社団法人日本雑誌協会
- 一般社団法人日本書籍出版協会
- 一般社団法人日本音楽著作権協会
- 公益社団法人日本芸能実演家団体協議会
- 実演家著作隣接権センター
- 一般社団法人日本レコード協会
- 日本放送協会(NHK)
- 一般社団法人日本民間放送連盟
- 一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟
- 一般社団法人学術著作権協会
参考リンク
文化庁著作権課のお知らせ(※表明のあった団体は随時更新されるとのこと)