教育の情報化に対応した著作権法改正で、なにがどう変わる? 〜 日本著作権教育研究会シンポジウムレポート

大野氏
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 一般社団法人日本著作権教育研究会は10月26日、「著作権法第35条の一部改正」に関するシンポジウムを開催した。第196回通常国会で可決成立した今回の著作権法一部改正には、教育の情報化に対応した権利制限規定などの整備が行われている。本稿ではまず、文化庁著作権課の課長補佐 大野雅史氏による、著作権法改正の概要説明をレポートする。

 今回の法改正の背景としてはまず、ICTを活用して教育の質を向上を図ることや、教育の機会拡大を図ろうという政府の方針があった。そういった中、著作権法の権利制限規定の見直しが課題となった。そのため、2006年から文化審議会著作権分科会で検討が行われてきた。結論がまとまったのは2017年のことだ。

 現行法でも学校においては「複製」が無許諾・無償で行うことができた。また、「遠隔合同授業のための公衆送信」も無許諾・無償で可能だった。今回の改正では、その他の公衆送信すべてが対象となる。たとえば、対面授業の予習・復習用の資料をメールで送信する、オンデマンド授業で講義映像や資料を送信する、スタジオ型のリアルタイム配信授業などだ。

 改正後は、文化庁長官が指定する補償金徴収分配団体に一定の補償金を支払えば、著作物を適法に利用できるようになる。対象施設は学校その他の教育機関(非営利)、対象主体は教員と学生・児童・生徒、利用目的は「授業の過程」における利用に必要と認められる限度までで、著作権者の利益を不当に害しないことが条件になっている。なお、複製・遠隔合同授業のための公衆送信については、従来通り無許諾・無償で行える。

 補償金額は、教育機関団体からの意見徴収に基づき、指定管理団体が文化庁長官へ認可申請を行い、文化審議会へ詰問後、認可されるという流れになる。現在、文化庁において、審査基準・標準処理期間(案)が作成され、パブリックコメントが実施されている(11月4日まで)。

 指定管理団体は、権利者の利益を代表する非営利団体を構成員とするなどの要件がある。業務執行に関する規定の策定・届出義務もある。とくに、どのように分配をするかが重要だとされている。分配を受けられない権利者が生じる可能性を踏まえ、権利者全体の利益となるような事業の実施も義務付けられている。

 今後のスケジュールは、2018年12月に補償金制度に関する政省令の制定、2019年1月以降に指定管理団体の指定。その後、徴収手続きや分配方法・利用実態調査の方法などを検討し、補償金額の決定・認可が行われる。施行は、公布の日(2018年5月25日)から3年を超えない範囲で、政令で定める日とされている。

 最後に文化庁大野氏は、著作権法の目的について改めて説明。「公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」という第1条の条文は、権利保護と権利制限のバランスをとることが重要だと締めくくった。

権利の保護と制限のバランス

参考リンク

35条シンポジウム開催内容(日本著作権教育研究会)

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NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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