「コミケ、コミティア、文フリが開催中止」「遠隔授業阻む著作権法35条施行を前倒し?」など、出版業界気になるニュースまとめ #417(2020年3月23日~29日)

出版業界気になるニュースまとめ

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 2020年3月23日~29日は「コミケ、コミティア、文フリが開催中止」「遠隔授業阻む著作権法35条施行を前倒し?」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

【目次】

ポッドキャスト

国内

ライトノベルレコメンドサイト「キミラノ」にKADOKAWA以外のレーベルが初参入〈HON.jp News Blog(2020年3月23日)〉

 株式会社KADOKAWAは3月19日、運営するライトノベルのレコメンドサイト「キミラノ」の対象に、5社のレーベルが新たに参入したことを発表した。KADOKAWA以外のレーベルが対象となるのはこれが初めて。 新規参入するのは、GA文庫、講談社ラノベ文庫、オーバーラップ文庫、HJ文庫、モンスター文庫。レーベル追加を記念し、各レーベルの特集ページが公開、キミラノのパートナーキャラクターがオススメ作品をコメントつきで紹介し...

 GA文庫、講談社ラノベ文庫、オーバーラップ文庫、HJ文庫、モンスター文庫が新規参入。残念ながら、小学館と集英社はまだです。

デザインエッグ、「パブー」のリニューアル予定を発表 ~ ドメインやエディタの変更、縦書き対応、紙本出版機能追加など〈HON.jp News Blog(2020年3月23日)〉

 デザインエッグ株式会社は3月23日、運営する電子書籍の作成・販売サービス「パブー」のリニューアル予定を発表した。ドメインやエディタの変更、縦書き対応、紙本出版機能などが追加されたベータ版が、3月30日に公開される。 パブーは、電子書籍の作成・販売を誰でも簡単にできるサービスとして、2010年6月に株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)が「ブクログ」内で開始(記事)。分社化、株式譲渡、事業継承などを経て...

 事業継承から半年でフルリニューアル。特商法の表記義務もなくなります。個人的には、縦書き対応が嬉しい。

アマゾンジャパン、「第1回 Kindleインディーズマンガ大賞」受賞作品を発表 ~ 大賞は河野大樹『ブス界へようこそ』〈HON.jp News Blog(2020年3月24日)〉

 アマゾンジャパン合同会社は3月19日、「第1回 Kindleインディーズマンガ大賞」の受賞作品が決定したことを発表した。 大賞、準大賞、優秀賞を受賞したのは次の作品。なお、当初受賞は大賞1名、優秀賞3名の予定だったが、審査員全員が感銘を受けたことを踏まえて、大賞に続く賞として新たに準大賞が設立された。(※アマゾンへのリンクはアフィリエイトになっています)大賞:『ブス界へようこそ』(全23巻)ジャンル:少年(...

 おめでとうございます。大賞賞金200万円。なお、著者の河野大樹氏によると、大賞作品『ブス界へようこそ』は電子書籍で単行本化、ナンバーナインを経由して各電子書店で有料配信を行うそうです(↓)。

こんにちは、河野大樹(@tanakatamaka840)です。 2018年3月から自主連載を続けて来た『ブス界へようこそ』の電子単行本が、3月27日(金)に発売されました。 Twitterで告知しましたが、単行本と呼びつつ「電子書籍だけ」だったり、アマゾンのKindleでは発売しなかったりと分かり難いので、単行本の情報をまとめました。購入時の参考にしてもらえると嬉しいです。 はじめに:有料配信の目的 今回の単行本化(有料配信)は、...

App Annie、「トップパブリッシャーアワード 2020」の結果を発表 ~ 日本 非ゲームアプリ収益ランキング1位は「LINEマンガ」〈HON.jp News Blog(2020年3月24日)〉

 App Annie Japan 株式会社は3月24日、「トップパブリッシャーアワード 2020」の結果を発表した。「日本 非ゲームアプリ収益ランキング」では、「LINEマンガ」(LINE株式会社)が1位となった。 このランキングは、2019年の日本におけるゲームを除いたアプリの収益に基づくもので、iOS App StoreとGoogle Playの合計となる。つまり、アプリ内決済に限ったランキングであり、ウェブからの購入額は含まれないことに留意する必要...

 非ゲームでは、マンガが圧倒的に強い、というランキング。なお、アプリ内決済限定で、ウェブからの購入は考慮されていないため、注意が必要です。要するに、アップル税(30%)を回避しているところは、このランキングに載りづらい、ということに。

【更新】大宅壮一文庫、記事索引検索サービス会員版の無料トライアルを個人向けにも期間限定提供 〜 新型コロナウイルス感染拡大を受け〈HON.jp News Blog(2020年3月11日配信/26日更新)〉

 公益財団法人大宅壮一文庫は3月9日、雑誌図書館「大宅壮一文庫」の記事索引検索データベース「Web OYA-bunko 会員版」の個人向け無料トライアルと、コピー資料自宅取り寄せサービスの提供を、期間限定で開始した。新型コロナウイルス感染拡大を受け、在宅勤務が増えていることへの対応。 大宅壮一文庫は、評論家・大宅壮一の雑誌コレクションを引き継ぎ、明治時代以降130年あまりの雑誌1万2000種類80万冊を所蔵している図書...

 こちらのテレワーク支援、4月26日まで延長するという発表があったため、記事をアップデートしました。

セルシスの電子書籍ビューア「CLIP STUDIO READER」がTwitterでの閲覧に対応〈HON.jp News Blog(2020年3月26日)〉

 株式会社セルシスは3月26日、同社の電子書籍ビューア「CLIP STUDIO READER」がTwitterのタイムライン上での閲覧に対応したことを発表した。 CLIP STUDIO READERは、HTML5を利用したブラウザ型ビューアと、AndroidやiOS向けのダウンロード保存可能なアプリ向けビューアをラインアップ。ページ表示、縦スクロール表示、コマ送り表示に対応している。 今回のアップデートにより、以下のように、Twitterのタイムライン上からそ...

 セルシスのビューアを導入している電子書店では今後、Twitterでのプロモーションがやりやすくなる、というアップデート。最終段落にも書きましたが、同様のサービスは他社で2014年ごろから展開されており、正直「やっとか」と思わずにいられませんでした。

セルシス、「CLIP STUDIO PAINT」の在宅作業用ライセンスを教育機関・企業向けに無償提供 〜 新型コロナウイルス感染拡大を受け〈HON.jp News Blog(2020年3月27日)〉

 株式会社セルシスは3月26日、教育機関や企業向けに、同社のグラフィック制作ツール「CLIP STUDIO PAINT」の在宅作業用ライセンスを無償提供することを発表した。新型コロナウイルスの感染拡大防止支援が目的。 この施策は、「CLIP STUDIO PAINT」のボリュームライセンスを利用中の教育機関や企業が対象。テレワークや在宅学習の実施時に、ユーザーが在宅でも利用できるライセンスを3カ月間無償で提供する。ボリュームライセ...

 少し前にモリサワがテレワーク実施企業向けに利用許諾緩和を行いましたが(↓)、それと同じような事例です。

 株式会社モリサワは3月12日、テレワークを実施する企業向けに、「MORISAWA PASSPORT」利用許諾緩和の実施を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大防止に対応する企業を支援するのが目的。 MORISAWA PASSPORTの利用範囲は通常、ライセンスの取得者が所有、または、リースもしくはレンタル契約している端末に限定されている。テレワークで自宅PCなど別端末を使う場合に、MORISAWA PASSPORTが利用できない状態となっていた。...

 先週のメルマガで「コンテンツ」と「SaaS(Software as a Service)」の違いについて言及しましたが、こういう「使い続ける」必要のあるソフトやサービスは、一時的な無料施策が打ちやすいと思います。

【更新】いまだけ無料で読める電子書籍・雑誌のまとめ(3月27日時点)〈HON.jp News Blog(2020年3月27日)〉

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で臨時休校や出社禁止など、自宅で過ごす時間が増えている方々が多くなっています。そんな時間を読書に充てて欲しいと、出版社などが特別対応で“いまだけ無料”にしている事例を、終了日順にまとめてみました。3月13日時点の記事から、追加・更新してあります。【3月27日時点の情報に更新した記事はこちら】※ 3月19日時点の情報です(期間が延期される可能性もあります)※ HON.jp New...

 いわゆる「コロナ休校」対応で無料で読める系の記事は、今回もまとめのみ紹介します。HON.jp News Blogで3月2日から27日までに記事を配信した事例の、終了日順まとめです。48件あります。期間延長や追加コンテンツなどは、ひととおり再確認のうえアップデートしました。が、記事公開の翌朝に「ブックパス」が期間延長しているのに気づき、さらにアップデートしました。とほほ。

文学フリマ事務局、「第三十回文学フリマ東京」開催中止を発表 〜 新型コロナウイルス感染拡大を受け〈HON.jp News Blog(2020年3月27日)〉

 文学フリマ事務局は3月26日、東京流通センターで5月6日に開催予定だった「第三十回文学フリマ東京」の中止を発表した。新型コロナウイルス感染拡大を受けての対応。 サークルから支払われた出店料は、経費を差し引き50%を返金する。返金手続きの詳細は、出店者へ個別にメール済み。次回は「第三十一回文学フリマ東京」として11月22日に開催予定。 なお、3月22日に開催を予定していた「第四回文学フリマ前橋」も中止となっ...

 見落としていたのですが、3月22日開催予定だった「第四回文学フリマ前橋」も中止になっていました。事務局代表の望月倫彦氏が、行政の「補填なき自粛要請」を批判しています。これ、劇場など他の芸術文化関係も同様で、「自粛要請」に応じると「自己責任」になってしまうという悪循環が起きています。

コミックマーケット準備会、「コミックマーケット98」開催中止を発表 〜 新型コロナウイルス感染拡大を受け〈HON.jp News Blog(2020年3月28日)〉

 コミックマーケット準備会は3月27日、東京ビッグサイトで5月2日から5日に開催予定だった「コミックマーケット98」の中止を発表した。新型コロナウイルス感染拡大を受けての対応。コミックマーケットの中止は1975年の開始以来初めて。 サークル参加費は、東京ビッグサイトとの交渉も含め調整中。決定次第、公式サイトなどで告知される。サークル駐車券は返金される。4月11日発売予定のコミックマーケット98カタログ(冊子版)...

 そしてコミケも中止決定。東京オリンピックの影響で7~8月に東京ビッグサイトが使えないため、前倒しでゴールデンウィークに開催予定だったのですが。この状況下では致し方なし。コミケの中止は、1975年の開始以来初めてとのことです。印刷や委託など、関連する各方面にも大きな影響がありそう。ちなみに東京オリンピックは1年延期なので、来年にもしわ寄せが及びます。

本離れ、図書カードの消息は QR決裁・電子書籍対応も〈日本経済新聞(2020年3月28日)〉

休日に書店に立ち寄った記者(30)。本を買う際にふと「図書カードって今もあるのか?」と疑問が浮かんだ。子どものころに景品やプレゼントでもらった記憶があるが、最近はあまり見かけなくなった気がする……。失礼と思いながら、図書カードを発行する日本図書普及(東京・新宿)に質問をぶつけると「書店の閉店増加に伴って利用が減っているのは確かです」。同社の平井茂社長は実情を説明する。書店数は減り続けている。

 少し前にTwitterで「hontoなら図書カードNEXTが即ポイント交換できる」という投稿がバズった(↓)からでしょうか。その価値を再認識させようという動きが、徐々に活発化しているようです。

 ちなみにHON.jp News Blogでは、紀伊國屋書店ウェブストアとKinoppyが対応した2019年5月時点で記事を配信しています(↓)が、その後に対応した他のネットストアは取り上げていませんでした……すみません。他に、honto、e-hon、学参ドットコムが対応しています(2020年2月13日現在)。

 日本図書普及株式会社は5月8日、株式会社紀伊國屋書店が運営するオンライン書店「紀伊國屋書店ウェブストア」と電子書籍アプリ「Kinoppy」が、ギフトカード「図書カードNEXT」による決済を開始したことを発表した。 紀伊國屋書店ウェブストアもしくは Kinoppy for Android で買い物をする際、[お支払い情報設定]の画面で[ポイント/ギフトカード/図書カードNEXT/クーポン利用で全額支払]を選択し、図書カードIDとPIN番...

新型コロナで「ネット授業」阻む著作権 規制緩和求める声も〈日本経済新聞(2020年3月29日)〉

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、新年度の授業を遠隔で実施しようとする大学が著作権法の壁にぶつかっている。対面の授業では教材として著作物を許諾なしに無償で複製し利用できるが、オンラインの場合は、個々に許諾を得る必要がある。窓口に補償金を支払って利用する新制度は施行の予定が立っていない。政府による規制緩和を求める声も上がっている。(山岡亮)■教材利用 個々に許諾得る必要「通常の授業と違い、

 未施行の改正著作権法第35条の解説を含めた状況説明記事、なのですが、惜しいことに「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は除く規定であることには触れられていません。タイトルにある「規制緩和」などという次元の話ではなく、助成金もしくは補助金を出すべき事案だと私は思います。

 遠隔授業での著作物を「補償金を払えば無断で利用可能」という制度にしたのは、スタジオ型でのリアルタイム配信授業やオンデマンド授業などを全面的に無償無許諾で可能にしたら、権利者の利益を不当に害する可能性が濃厚だから。著作権法第35条は「教育目的ならタダでいくらでも使える」ような免罪符ではない、という前提を認識する必要があるように思います。

 だから法改正以後、教育業界側と権利者(出版社に限らず)側とでずっと協議が続けられてきたわけです。それを文化庁が「新型コロナ対策」という名目で、「格別なご配慮」をお願いして突破しようとしているのが現状(↓)。

 文化庁著作権課は3月4日、新型コロナウイルス感染拡大対策で、政府が小中高校へ臨時休校を要請したことに伴い、教育機関がICTを活用した遠隔指導などを行う際の著作物利用について、著作権等管理事業者や関係団体に対し“格別の御配慮”をお願いした。これを受け、各団体は次々と協力を表明している。 前提として、現行の著作権法には第35条(学校その他の教育機関における複製)の権利制限があり、「対面授業のための複製」と...

 要するにこの「格別なご配慮」というのは、「助成金や補助金は出さない。1年間タダで使わせろ」と言っているのに等しいわけです。これ、文学フリマの記事コメントで触れた、行政の「補填なき自粛要請」と同じこと。他に太い収益の柱がある事業者ならともかく、中小事業者は干上がってしまうことでしょう。うーん……。

海外

新型コロナウイルスで生物科学の論文出版が加速〈HON.jp News Blog(2020年3月25日)〉

 既にデジタル化により激変した科学論文出版界だが、新型コロナウイルス(COVID-19)の出現により、さらに加速しているとアメリカの統計ニュースサイトが伝えている。 新型ウイルスに関する疫病学的見解や予防・治療につながる生物学的情報は、一刻でも早く拡散する必要がある。昔は紙に刷った学術書を図書館に送っていたのが、信ぴょう性がバラバラな電子ジャーナルが登場し、オンラインでしか読めない論文も多い。 これま...

 40%近くが中国からの投稿ですが、他国からの投稿も増えてきたそうです。ちなみに「arXiv」は archive と読むそうです。なるほど。さて、日本からの論文は……?

博物館、図書館などの公共文化機関が再開 遼寧省〈新華社通信(2020年3月25日)〉

 先に沈静化した中国の状況。とはいえ、入館には入り口で体温測定を受ける必要がある、などの厳戒態勢がまだ続いているようです。日本でも今後、施設を再開する際には参考にしたほうがよさそうですね。

新型コロナウイルスへの対応を迫られるいま、未来の出版を考える〈HON.jp News Blog(2020年3月26日)〉

 新型コロナウイルス(COVID-19)により、出版産業がどう変わりつつあるのか、未来はどうなるのかを考察した記事をロサンゼルス・タイムズが載せている。 アメリカの出版産業の中心地であるニューヨークで感染規模が急激に拡大しており(オーバーシュートとは言わない)、出版は不要不急の産業とされ、多くの編集者やエージェントが休職か自宅勤務となっている。 だが、都市閉鎖で自宅に閉じこもらざるを得ない読者が大勢い...

 ロサンゼルス・タイムズ掲載の、長めの考察。オチの「いちばん得をする出版社」が、まあそうだろうな、という感じ。みんな巣ごもりしてますからね。

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CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 736 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学デジタル編集論非常勤講師 / 二松學舍大学エディティング・リテラシー演習非常勤講師 / 日本出版学会理事 / デジタルアーカイブ学会会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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