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2020年3月23日~29日は「コミケ、コミティア、文フリが開催中止」「遠隔授業阻む著作権法35条施行を前倒し?」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。
【目次】
ポッドキャスト
国内
ライトノベルレコメンドサイト「キミラノ」にKADOKAWA以外のレーベルが初参入〈HON.jp News Blog(2020年3月23日)〉
GA文庫、講談社ラノベ文庫、オーバーラップ文庫、HJ文庫、モンスター文庫が新規参入。残念ながら、小学館と集英社はまだです。
デザインエッグ、「パブー」のリニューアル予定を発表 ~ ドメインやエディタの変更、縦書き対応、紙本出版機能追加など〈HON.jp News Blog(2020年3月23日)〉
事業継承から半年でフルリニューアル。特商法の表記義務もなくなります。個人的には、縦書き対応が嬉しい。
アマゾンジャパン、「第1回 Kindleインディーズマンガ大賞」受賞作品を発表 ~ 大賞は河野大樹『ブス界へようこそ』〈HON.jp News Blog(2020年3月24日)〉
おめでとうございます。大賞賞金200万円。なお、著者の河野大樹氏によると、大賞作品『ブス界へようこそ』は電子書籍で単行本化、ナンバーナインを経由して各電子書店で有料配信を行うそうです(↓)。
App Annie、「トップパブリッシャーアワード 2020」の結果を発表 ~ 日本 非ゲームアプリ収益ランキング1位は「LINEマンガ」〈HON.jp News Blog(2020年3月24日)〉
非ゲームでは、マンガが圧倒的に強い、というランキング。なお、アプリ内決済限定で、ウェブからの購入は考慮されていないため、注意が必要です。要するに、アップル税(30%)を回避しているところは、このランキングに載りづらい、ということに。
【更新】大宅壮一文庫、記事索引検索サービス会員版の無料トライアルを個人向けにも期間限定提供 〜 新型コロナウイルス感染拡大を受け〈HON.jp News Blog(2020年3月11日配信/26日更新)〉
こちらのテレワーク支援、4月26日まで延長するという発表があったため、記事をアップデートしました。
セルシスの電子書籍ビューア「CLIP STUDIO READER」がTwitterでの閲覧に対応〈HON.jp News Blog(2020年3月26日)〉
セルシスのビューアを導入している電子書店では今後、Twitterでのプロモーションがやりやすくなる、というアップデート。最終段落にも書きましたが、同様のサービスは他社で2014年ごろから展開されており、正直「やっとか」と思わずにいられませんでした。
セルシス、「CLIP STUDIO PAINT」の在宅作業用ライセンスを教育機関・企業向けに無償提供 〜 新型コロナウイルス感染拡大を受け〈HON.jp News Blog(2020年3月27日)〉
少し前にモリサワがテレワーク実施企業向けに利用許諾緩和を行いましたが(↓)、それと同じような事例です。
先週のメルマガで「コンテンツ」と「SaaS(Software as a Service)」の違いについて言及しましたが、こういう「使い続ける」必要のあるソフトやサービスは、一時的な無料施策が打ちやすいと思います。
【更新】いまだけ無料で読める電子書籍・雑誌のまとめ(3月27日時点)〈HON.jp News Blog(2020年3月27日)〉
いわゆる「コロナ休校」対応で無料で読める系の記事は、今回もまとめのみ紹介します。HON.jp News Blogで3月2日から27日までに記事を配信した事例の、終了日順まとめです。48件あります。期間延長や追加コンテンツなどは、ひととおり再確認のうえアップデートしました。が、記事公開の翌朝に「ブックパス」が期間延長しているのに気づき、さらにアップデートしました。とほほ。
文学フリマ事務局、「第三十回文学フリマ東京」開催中止を発表 〜 新型コロナウイルス感染拡大を受け〈HON.jp News Blog(2020年3月27日)〉
見落としていたのですが、3月22日開催予定だった「第四回文学フリマ前橋」も中止になっていました。事務局代表の望月倫彦氏が、行政の「補填なき自粛要請」を批判しています。これ、劇場など他の芸術文化関係も同様で、「自粛要請」に応じると「自己責任」になってしまうという悪循環が起きています。
コミックマーケット準備会、「コミックマーケット98」開催中止を発表 〜 新型コロナウイルス感染拡大を受け〈HON.jp News Blog(2020年3月28日)〉
そしてコミケも中止決定。東京オリンピックの影響で7~8月に東京ビッグサイトが使えないため、前倒しでゴールデンウィークに開催予定だったのですが。この状況下では致し方なし。コミケの中止は、1975年の開始以来初めてとのことです。印刷や委託など、関連する各方面にも大きな影響がありそう。ちなみに東京オリンピックは1年延期なので、来年にもしわ寄せが及びます。
本離れ、図書カードの消息は QR決裁・電子書籍対応も〈日本経済新聞(2020年3月28日)〉
少し前にTwitterで「hontoなら図書カードNEXTが即ポイント交換できる」という投稿がバズった(↓)からでしょうか。その価値を再認識させようという動きが、徐々に活発化しているようです。
ちなみにHON.jp News Blogでは、紀伊國屋書店ウェブストアとKinoppyが対応した2019年5月時点で記事を配信しています(↓)が、その後に対応した他のネットストアは取り上げていませんでした……すみません。他に、honto、e-hon、学参ドットコムが対応しています(2020年2月13日現在)。
新型コロナで「ネット授業」阻む著作権 規制緩和求める声も〈日本経済新聞(2020年3月29日)〉
未施行の改正著作権法第35条の解説を含めた状況説明記事、なのですが、惜しいことに「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は除く規定であることには触れられていません。タイトルにある「規制緩和」などという次元の話ではなく、助成金もしくは補助金を出すべき事案だと私は思います。
遠隔授業での著作物を「補償金を払えば無断で利用可能」という制度にしたのは、スタジオ型でのリアルタイム配信授業やオンデマンド授業などを全面的に無償無許諾で可能にしたら、権利者の利益を不当に害する可能性が濃厚だから。著作権法第35条は「教育目的ならタダでいくらでも使える」ような免罪符ではない、という前提を認識する必要があるように思います。
だから法改正以後、教育業界側と権利者(出版社に限らず)側とでずっと協議が続けられてきたわけです。それを文化庁が「新型コロナ対策」という名目で、「格別なご配慮」をお願いして突破しようとしているのが現状(↓)。
要するにこの「格別なご配慮」というのは、「助成金や補助金は出さない。1年間タダで使わせろ」と言っているのに等しいわけです。これ、文学フリマの記事コメントで触れた、行政の「補填なき自粛要請」と同じこと。他に太い収益の柱がある事業者ならともかく、中小事業者は干上がってしまうことでしょう。うーん……。
海外
新型コロナウイルスで生物科学の論文出版が加速〈HON.jp News Blog(2020年3月25日)〉
40%近くが中国からの投稿ですが、他国からの投稿も増えてきたそうです。ちなみに「arXiv」は archive と読むそうです。なるほど。さて、日本からの論文は……?
博物館、図書館などの公共文化機関が再開 遼寧省〈新華社通信(2020年3月25日)〉
先に沈静化した中国の状況。とはいえ、入館には入り口で体温測定を受ける必要がある、などの厳戒態勢がまだ続いているようです。日本でも今後、施設を再開する際には参考にしたほうがよさそうですね。
新型コロナウイルスへの対応を迫られるいま、未来の出版を考える〈HON.jp News Blog(2020年3月26日)〉
ロサンゼルス・タイムズ掲載の、長めの考察。オチの「いちばん得をする出版社」が、まあそうだろうな、という感じ。みんな巣ごもりしてますからね。
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