「公取委、デジタル広告取引実態の最終報告書を公表」「公共図書館向け電子書籍貸出サービス急増」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #461(2021年2月14日~20日)

週刊出版ニュースまとめ&コラム

《この記事は約 15 分で読めます》

 2月14日~20日は「公取委、デジタル広告取引実態の最終報告書を公表」「公共図書館向け電子書籍貸出サービス急増」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。

【目次】

政治

悲鳴嶼行冥も涙。「STOP! 海賊版」の新プロジェクト“きみを犯罪者にしたくない”が本日始動〈GAME Watch(2021年2月16日)〉★

https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1306732.html

 1月1日から施行された改正著作権法のダウンロード違法範囲拡大に伴う、注意喚起のキャンペーン。人気作品の人気キャラクターの、泣いている顔や悲しそうな顔が用いられています。悲鳴嶼(鬼滅の刃)は、だいたいいつも泣いているような気がしますが。

フェイスブック、豪でニュース閲覧禁止 記事対価巡る法案に反発〈ロイター(2021年2月18日)〉

https://this.kiji.is/734928065630027776?c=491375730748638305

 オーストラリアでGoogleとFacebookを狙い撃ちにした法案が検討中ですが、それに反発したFacebookがオーストラリアのメディアをシャットアウト。現地に住んでいる人だけでなく、世界中の誰もがオーストラリアのメディアをFacebookでシェアできない状態になっています。恐ろしいことをやってのける。

北米日本研究資料調整協議会(NCC)、「日本著作権法第31条改正に関するNCCの声明」を公表〈カレントアウェアネス・ポータル(2021年2月18日)〉★

https://current.ndl.go.jp/node/43322

 著作権法第31条(図書館等での権利制限)をデジタル対応にする法改正が検討中ですが、これを海外からも利用可能にして欲しい、という要望が出ています。現時点の「図書館送信」サービスはすでに海外の図書館も対象になっていますが、参加館へ訪問しなければ利用できないのは国内と同じ。こういう要望が出てくるのは非常によく理解できます。恐らく法文には明記せず、ガイドライン運用の範疇に入ると思われますが、どうなるか。なお、同様の声明は、東亜図書館協会(CEAL)からも出ています(↓)。
https://www.eastasianlib.org/newsite/ceal-statement-in-support-of-the-revision-of-article-31-of-japanese-copyright-law/

 そういえば何年か前の図書館総合展で、電子図書館サービス関連のフォーラムの質疑応答の際、海外の日本研究者が「日本語のままでいいから、海外から日本の文献にアクセスできるようにして欲しい。そのために、とにかく電子版のラインアップを増やして欲しい。中国語や韓国語に比べると、日本語のデジタル資料は数が少なすぎる」という趣旨のことをおっしゃっていたのを思い出しました。入手困難資料のデジタル配信が進むと、こういうニーズに応えることにもなるわけです。

焦点:巨大IT企業のネット広告、必要なら規制対象に 公取委が一石〈ロイター(2021年2月19日)〉

https://this.kiji.is/735373906258771968?c=491375730748638305

 公正取引委員会が2月17日に「デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書」を公表しています。広告主や代理店と、広告を掲載するメディアとを繋ぐプラットフォームに対し、優越的地位の濫用などが独占禁止法違反となる可能性がある、と指摘しているそうです。報告書はこちら(↓)ですが、150ページ以上ある……。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/feb/210217.html

Google、Facebookの「ニュース使用料戦争」勝ったのは誰か?〈新聞紙学的(2021年2月19日)〉

https://kaztaira.wordpress.com/2021/02/19/why_google_pays_for_publishers_in_australia/

 Googleが「ニュースショーケース」を通じたニュース使用料支払いに前向きなのに対し、Facebookは前述のようにオーストラリアでメディア排除を始めるなど強気に出ています。メディア帝国の交渉力はまだ強かったけど、それは地盤沈下への猶予時間に過ぎない、というのが「新聞紙学的」平氏の見解。

 なお、前述の公取委の報告書についても触れられていますが、プラットフォームからメディアに対する配信料算定基準について「根拠等が明確化されることが望ましい」という見解も示されているそうです。それ、地方紙で1PVあたり0.025円にしかならないという、ヤフーニュースへの配信(↓)が真っ先に叩かれそうな気が……?
https://www.chunichi.co.jp/article/82559

社会

福島の図書館 震度6強の2日後に開館 東日本大震災の経験生かす | 福島宮城地震〈NHKニュース(2021年2月17日)〉★

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210217/k10012872231000.html

 2月13日の地震、うちのあたりでも震度4くらいありました。床に散らばった本の写真をTwitterなどで見かけましたが、まあ、まず棚が倒れないことが対策の最優先でしょう。うちの本棚はつっかい棒を使っていますが、少しずれた程度で済みました。記事にある滑り止めのシートは、食器棚などにも良さそうですね。ただ、高い位置の物だけ落ちないようにすると重心が上に偏ってしまい、かえって棚が倒れやすくなるという問題もあるようです。難しい。

公立図書館もデジタル化 コロナで加速する電子書籍の貸し出し〈毎日新聞(2021年2月18日)〉

https://mainichi.jp/articles/20210218/k00/00m/040/181000c

 電子図書館サービスが公共図書館にも広がってきたことを受けての記事2連発。毎日新聞の記事には、「出版社側が貸し出しを認めている電子書籍が少ないため、『所蔵数』が数千程度にとどまる電子図書館が多い」と書かれていることに対し、出版関係者から「ラインアップは8万点あるのに」というツッコミを見かけました。

 気持ちはわかるんですが、電子書店ではすでに100万点(冊?)以上のラインアップを揃えているところもあるわけですよね。図書館側からするとまだまだ少ない、選択の余地が狭い状態だと思いますよ。トータル8万点って、1年間に出る新刊数と大差ないわけで。ラインアップの偏りもあると思いますし。まだ桁1つ足らない。

コロナ禍で急増の電子図書館 究極のサブスクになり得るか?〈NHK(2021年2月20日)〉

https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20210220.html

 こちらは、記事の内容はいいのですけど、タイトルにツッコミを入れたい。subscriptionって定期購読とか予約購読って意味ですけど、この「究極のサブスク」が指すものってなんだろう? この表現、タイトルにしか出てこないんですよね。

経済

“電子コミックの父”BookLive淡野社長が語る、「紙書籍と電子書籍」のこれまでとこれから:紙はなくなるのか、電子とどう共存するのか〈ITmedia ビジネスオンライン(2021年2月15日)〉★

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2102/16/news001.html

 PR記事ですが、良い記事なのでピックアップ。2005年に設立されたビットウェイ時代からのケータイコミック制作・流通の歴史を垣間見ることができます。淡野氏を「電子コミックの父」と呼ぶことについて違和感を覚える方もいるようですが、まあ、そのあたりは「PRだから」ということで、差し引いて考えれば良いかな、と。電子ペーパー端末「BookLive!Reader Lideo」を黒歴史とせず、ちゃんと触れている点も評価したい。

「鬼滅の刃」累計1億5000万部を突破!3月には塗絵帳が2冊同時発売〈コミックナタリー(2021年2月15日)〉

https://natalie.mu/comic/news/416305

集英社、『鬼滅の刃』海賊版確認で注意喚起 特徴発表で「排除のための協力要請をしております」〈ORICON NEWS(2021年2月18日)〉

https://www.oricon.co.jp/news/2184941/full/

 1億5000万部突破というマイルストーンとともに、「紙の」海賊版がアマゾンやメルカリなどに出没しているというニュース。ちょっと薄いのと、裏表紙カバーの定価表示が罫線で囲まれていない、という違いがあるそうです。紙だと海賊版製造コストに見合わないのではないかと思うのですが、出没するものなんですねぇ……。

日販との協業拡大と大手取引先書店の帳合変更 楽天ブックスネットワーク・川村興市社長に聞く〈文化通信デジタル(2021年2月16日)〉

https://www.bunkanews.jp/article/228542/

 楽天ブックスネットワーク(旧大阪屋栗田)が、赤字体質脱却のため日販との協業を拡大。また、ほぼ同時に、丸善ジュンク堂書店が仕入れ先を他の取次に変更することを発表しています。東西本社の一本化や図書館事業からの撤退などの経営改善により、来季から黒字化が見込まれているとのこと。まあ、いつまでも赤字垂れ流しだと、三木谷社長が許さないでしょうからねぇ。そのいっぽうで、「出版社に対する説明が無い」という怒りの声も見かけました。こういうときは丁寧さも大事と思うのです。

新聞は「オワコン」なのか 「桜を見る会」報道の受賞に寄せて〈毎日新聞(2021年2月16日)〉

https://mainichi.jp/articles/20210216/k00/00m/040/156000c

新聞発行部数、ついに「1年で271万部減」の衝撃…! 新聞業界に追い打ちをかける「ヤバい問題」(磯山 友幸)〈マネー現代 | 講談社(2021年2月18日)〉

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/80347

 早稲田ジャーナリズム大賞の公共奉仕部門大賞を受賞した毎日新聞記者による「新聞は読者が本当に知りたいことに真摯に向き合ってきただろうか」という自問と、新聞発行部数が激減しているいっぽう電子版契約数が伸びないというコラムをセットでピックアップ。

 タブー視されていた“押し紙”が裁判沙汰になるなど、紙の定期購読&戸別配達制度を支える販売店網というモデルがもう限界なのは間違いないでしょう。つまり「新聞“紙”」は「オワコン」。そのいっぽうで、埋もれた問題に光を当てる「ジャーナリズム」は、まだ必要とされているわけで。どういうビジネスモデルでそれを成り立たせるか? が問われている状況なのかな、と。

「つくる」と「届ける」の分断。作り手の部品化とは?〈BOOKウォッチ(2021年2月18日)〉

https://this.kiji.is/734970992554803200?c=491375730748638305

 博報堂の雑誌『広告』の最新号(Vol.415)は「流通」特集。流通経路別に全250種類の表紙を用意しているという、変態誌になっています。装丁もダンボール。オンラインショップでの取扱いもあるとのことなので興味を惹かれ調べてみたのですが、アマゾン以外のネット書店にはラインアップされていませんでした。むむむ。なお、アマゾンでも販売者は「博報堂」なので、出品サービス(マーケットプレイス)を利用しているようです。

10億円で事業売却したSkeb創業者インタビュー、「コミュニティのプレイヤーであること」が個人開発の極意〈TechCrunch Japan(2021年2月19日)〉

https://jp.techcrunch.com/2021/02/19/skeb-buyout/

 Skeb創業者「なるがみ」こと喜田一成氏へのインタビュー。VRアバターでポーズを決めているところが素晴らしい(そこ?)。ヒットサービスを個人開発するコツとして重要な要素の1つに「自身がそのコミュニティに属しているプレイヤーであること」を挙げている点は、かくありたいと思わされました。問題点って、自分でやってみて体験しないと、わかりづらいんですよね。

講談社売り上げ、電子書籍・権利ビジネスで紙を上回る〈朝日新聞デジタル(2021年2月19日)〉

https://www.asahi.com/articles/ASP2L5TT0P2LUCVL007.html

 予想通り、ついに紙を逆転。電子書籍売上が対前年比19.4%増の532億円。権利ビジネス売上が170億円。当期純利益は100億円超と、集英社の200億円超には及ばないものの、充分に凄まじい数字を叩きだしています。

 しかしこの朝日新聞の記事、総会&決算発表が行われる前に出ているんですよね……どこかからリークしたみたい。まあ、上場企業じゃないから株価に影響みたいなことはありませんけど、なんか、なんだかなあという感じ。

少年ジャンプ+:ヒット作が続々生まれる理由 SPY×FAMILY、怪獣8号も〈MANTANWEB(2021年2月14日)〉

https://mantan-web.jp/article/20210213dog00m200021000c.html

少年ジャンプ+:アプリならではの緻密なデータ分析 よりとがったマンガ ライバルは「週刊少年ジャンプ」〈MANTANWEB(2021年2月20日)〉

https://mantan-web.jp/article/20210217dog00m200077000c.html

 少年ジャンプ+編集長の細野修平氏へのインタビューと、アプリでどういう分析が行われ新人漫画家へフィードバックされているかなどについて。それがいわゆる「ジャンプシステム」と噛み合って、ヒット作が生み出される土壌になっているのでしょう。このあたり、ライバル社や周囲の動向含め、2月26日・27日にオンライン開催される「IMART2021」(↓)でいろいろ話が聞けそう。楽しみです。
https://imart.tokyo/

技術

ブロックチェーン活用し「唯一無二」のアニメ原画データなどを販売する「AniPic!」が4000万円調達〈TechCrunch Japan(2021年2月19日)〉★

https://jp.techcrunch.com/2021/02/19/yuimex-fundraising/

 ブロックチェーン技術を活用した、アニメコンテンツの販売サービス。「唯一無二のデジタルブロマイド」って、アニメに限った話じゃないよね? ということでピックアップ。昨年、コミックスマートと業務提携したGaudiyの「データ所有型電子書籍」(↓)のことを想起しました。
https://jp.techcrunch.com/2020/07/14/gaudiy-comicsmart-ethereum/

ブロードキャスティング

 毎週ライブ配信している映像番組、2月21日のゲストは西島大介さん(漫画家)でした。上記のタイトル後ろに★が付いている記事について掘り下げています。番組のアーカイブはこちら。

 次回のゲストは竹田信弥さん(書店主 / 双子のライオン堂)です。配信終了後はZoom交流会もあります。詳細や申込みは、Peatixのイベントページから。

メルマガについて

 本稿は、HON.jpメールマガジンに掲載されている内容を同時に配信しています。最新情報をプッシュ型で入手したい場合は、ぜひメルマガに登録してください。無料です。なお、タイトルのナンバーは、鷹野凌個人ブログ時代からの通算です。

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0

※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。
HON.jpではこのような誰でも無料で閲覧できる記事を、運用型広告なしで、著者にはきちんと対価を払うという事業活動を、みなさまのご支援により非営利で行っています。賛助会員のご案内はこちら。

広告

著者について

鷹野凌
About 鷹野凌 563 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学と二松學舍大学の非常勤講師でデジタル編集論と表象メディア演習を担当 / 日本出版学会員 / デジタルアーカイブ学会員 / 主な著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)/ プロフィール画像は©鈴木みそ氏
タグ: / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / /

関連記事

guest
0 Comments
Inline Feedbacks
View all comments