「中国メディア規制の実際」「拡大集中許諾制度を軸とした簡素で一元的な権利処理、中間まとめ素案が公開」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #498(2021年11月14日~20日)

TSUTAYA JR東所沢駅前店

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 2021年11月14日~20日は「中国メディア規制の実際」「拡大集中許諾制度を軸とした簡素で一元的な権利処理、中間まとめ素案が公開」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。

【目次】

政治

【独自】著作物利用 一元窓口…文化庁 データベースで効率化〈読売新聞オンライン(2021年11月16日)〉

文化庁は15日、映像や音楽、書籍など様々な著作物を二次利用する際に、分野を横断した一元的な窓口組織で相談できる仕組みを創設する方針を明らかにした。過去の放送番組や雑誌掲載写真のほか、インターネット上で増えているアマチュ

 文化審議会著作権分科会基本政策小委員会で審議されてきた、拡大集中許諾制度を軸とした簡素で一元的な権利処理を可能とする仕組みについて。中間まとめの素案が出たのを受けた、観測気球的な報道です。JASRACと同一視して反発するような人は意外と少なく、比較的前向きな反響が多いように思います。パブコメを先に実施したうえで中間まとめという異例のやり方も功を奏しているのかも。故・瀬尾太一さんの遺志は、これで実るでしょうか。

文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第7回)の議事次第・配布資料等について掲載しています。

中国「メディア規制」について考える――求められるのは出版人の「匠人精神」〈HON.jp News Blog(2021年11月19日)〉

 最近、インターネット報道など新興メディアに対する中国当局からの規制が話題になっています。実際のところはどうなのか? 出版業界はどうなのか? 北京大学・馬場公彦氏が解説してくれました。公開された「インターネットニュース情報源機関のリスト」 さる10月20日、中国共産党当局は、新版の「インターネットニュース情報源機関のリスト」を公布、インターネットを通して独自のニュースを配信できる1358の機関名を明らか...

 最近、ウェブ・アニメ・ゲームといった新興メディアに対する、中国当局からの規制がいくつか話題になっていました。実際のところはどうなのか、出版業界はどうなのか、といった疑問に、北京大学・馬場公彦さんが応えてくれました。確かに、中国の出版業界はずっと以前から規制され続けているわけですよね。つまり、当局が急に規制のベクトルを変えたわけではなく、既定路線をアップデートしたに過ぎない、ということなのでしょう。そんな中でも、過度な干渉を受けないよう巧みに立ち回る職人芸で、出版の営みを続けている当地の方々に共感します。

社会

LibraroEの導入館数が500館に到達しました。〈株式会社日本電子図書館サービス(2021年11月18日)〉

LibrariEの導入館が、2021年11月17日現在で500館となりました。 内訳は、 大学・短大 132館 高校・中学校 128館 公共図書館 233館 その他 7館 となっております。

 マイルストーンとして。「250館到達」のリリースが昨年9月なので、1年2カ月で倍増ということに。内訳は、公共図書館233館、大学・短大132館、高校・中学校128館、その他7館です。

Lawmakers Expand Inquiry into Library E-book Market〈Publishers Weekly(2021年11月19日)〉

After questioning the Big Five publishers in September, Senator Ron Wyden (D-Oregon) and U.S. Representative Anna Eshoo (D-California) this week expanded their ongoing inquiry into the library e-book market with questions for nine major library e-book distributors.

 アメリカの話。電子図書館サービスのライセンスが法外に高いのではと、議員がディストリビューターへのヒアリング調査を始めたそうです。アメリカでは公共図書館への普及率が90%以上と、日本とは状況がまったく異なりますが、いずれ日本でもそういう議論になるかもしれません。

 ただ、ディストリビューター側では複数のプランを用意していても、どれを選択するか、また、いくらで出すかは出版社側が決めることです。コラム「電子図書館(電子書籍貸出サービス)がコロナ禍以降も普及拡大を続けるための課題は?」でも書いたように、電子版配信には貸与権の権利制限が及ばないため、なにをするにもすべて権利者の許諾が必要となります。

 コロナ禍によって非来館型サービスのニーズが高まり、ようやく公共図書館に「電子図書館」サービスが導入されるようになってきました。しかしすでに、次の課題が見え始めているようです。前提 本題へ入る前に、本稿の前提についてご説明します。「電子図書館」という用語と、関連する著作権法についてです。本稿で扱う「電子図書館」について 「青空文庫」トップページ 電子図書館という言葉の示す範囲は、存外に広いもので...

 アメリカにはフェアユースがあるとはいえ、ビジネスに直接影響する領域には及ばないはずなので、この辺りの事情は同じだと思うのですよね。Publishers Weeklyの記事によると、議員は先に出版社へヒアリングしており、恐らく締め付けを食らうとしたらディストリビューター側ではなく出版社側なのかな、と。

経済

漫画海賊版サイト「漫画BANK」に集英社など4社が法的措置へ | IT・ネット〈NHKニュース(2021年11月14日)〉

【NHK】国内最大規模として知られる漫画の海賊版サイトの運営者の氏名や住所について、日本の大手出版社がアメリカのグーグルなどに情報…

 まとめ#496でのピックアップ時点では「集英社の訴訟準備」とのことでしたが、集英社だけでなくKADOKAWA・講談社・小学館の大手4社がそろい踏みで法的措置の準備を進めていることが明らかになりました。刑事処罰はもちろんですが、民事の賠償額も大変なことになりそうです。

 なお、本稿の見出しには「NHKが報じている」という意味を込めてNHKの記事を持ってきましたが、ねとらぼでは顧問弁護団の一人である中島博之弁護士と集英社の伊東敦編集総務部部長代理に取材し、どうやって運営実態を解明したのか? などを詳細に報じています。参考まで。

ヤフー、地方メディア配信料増額 今月から読者評価を反映〈共同通信(2021年11月16日)〉

ヤフーがニュースサイト「ヤフーニュース」で取り上げた記事に対する配信料の算定に、読者の評価を反映させ...

 PVだけで収益分配するのではなく、PVに対する読者のリアクション比率で上乗せ額を多くするという施策。Googleニュースショーケース対策でしょうか? 日本の場合、Yahoo!ニュースが圧倒的すぎちゃうので、もう少し競争してサービス改善を図って欲しいものです。

Webtoon Heads to Print Publishing with Webtoon Unscrolled〈The Hollywood Reporter(2021年11月18日)〉

'Tower of God' by SIU and 'True Beauty' by Yaongyi will be among the first wave of titles heading to bookshelves from Wattpad Webtoon Studio's new initiative.

 NAVER傘下のWattpad Webtoon Studioが、以前DCにいた編集者を迎え入れて「印刷出版」へ参入、Webtoon Unscrolled(スクロールしないウェブトゥーン)を展開するそうです。それは日本でかつて「comico」が通った道のような気が。「ページ」へ再編集する手間とコストが大きな足枷となる未来が待っているように思います。市場でまだ印刷版が支配的な、いまのうちはいいのかもしれませんが。

技術

QRコードでスキャンして聴く? 書籍のDXは“非接触”サービスでますます多様化へ〈Real Sound|リアルサウンド テック(2021年11月16日)〉

「紙の本が売れなくなった」「本を読まなくなった」と嘆く声を聞くことが多くなった。中国でもデジタル化が急速にすすみ、さらにコロナ禍の影響を受け、オンラインによる書籍購入や電子書籍へのニーズが高まり、書店のリアル店舗は、これまでのような、店舗で本を陳列し販売するだけでは生き残っていけない時代になってきた。…

 中国の話。実店舗をショールーム化し、オーディオブックの購入・聴取へ誘導する仕掛けです。マクドナルドの一角にデジタル図書コーナーというのが、既存の流通網を飛び越え拡張している感じで良いですね。

NFTで新刊販促、米作家が100万部売る〈WSJ(2021年11月17日)〉

 ビジネス書作家のベイナチャック氏をSNSでフォローする大勢のファンは、新刊本を購入して「非代替性トークン(NFT)」を獲得できるチャンスに飛びついた。

 新刊を12部購入した人にNFTをプレゼント。アメリカ版AKB商法といったところでしょうか。著者で仕掛け人のゲイリー・ベイナチャック氏のことを調べてみたら、暗号資産が盛り上がる前は「広告業界のトランプ」と呼ばれていたとか、CryptoPunksを376万ドル(約4億3000万円)で購入してNFTへ投資が急増するきっかけの1つとなったとか、NFT企業Candy Digital創業者の1人とか、いろいろ出てきてえーっと……うん、単純に「NFTで新刊販促」という事例だと思わないほうが良さそうです。

ギャリー・ヴェイナーチャック氏のソーシャルメディア手法と「目を覚ませ」という哲学は、感銘を受けるクライアントをたくさん生み出し、熱心な若い才能を引き寄せた。また、そのイメージによって、同じくらい妬みと嘲りの対象にもなった。「広告業界のドナルド・トランプ」と称する者もいる、そんな彼の半生を追った。
2020年のNFT(非代替性トークン)狂乱は、アート、トレーディングカードゲーム、豪華アバター、デジタル・オブジェクトなどさまざまな分野に暗号資産がなだれ込むきっかけとなったが、今のところ、機関投資家はこうしたブロックチェーンベース商品を注意深く見守りながら、背後にいるプラットフォームに株式投資べく資産を準備してい..
キャンディ・デジタルがソフトバンクらから約114億円調達 NFT企業キャンディ・デジタル(Candy Digital)が、シリーズAの資金調達ラウンドにて1億ドル(約114億円)を調達したことを10月21日に発表した。この調達はソフトバンク・ビジョンファンド2(Softbank Vision Fund 2)およびインサイト・パートナーズ(Insight Partners)が主導。キャンディ・デジタ

楽天による「NFTの民主化」は日本のIPコンテンツの世界をどう変えていくのか〈Business Insider Japan(2021年11月19日)〉

世界的に話題となっているNFT技術。楽天が独自のNFTサービスをローンチすることを発表、誰でも簡単にNFTでデジタルコンテンツを売買できるマーケットプレイスの意義とは何なのでしょうか。

 楽天が2022年に開始する「Rakuten NFT」マーケットについて、事業部のゼネラルマネージャーにインタビューしています。楽天IDのクレジットカード決済によって利用のハードルを下げる、二次売買で権利者に収益を還元する、一次出品は誰でもできるわけではなく楽天の認めたIPホルダーのみが「ホワイトレーベル」として扱われる、などの特徴があるようです。メディアドゥ「FanTop」と似ていますが、最大の違いはプライベートチェーンであること。

 これ、中央集権のクライアントサーバー型とほぼ同じなのですよね。楽天がサービス提供をやめた瞬間にNFTも消えます。利用者の意思がどうあれ、楽天の決断に従うしかない仕組みなわけです。プライベートチェーンが悪いとまでは言いませんが、それを「NFTの民主化」と言ってしまうのはちょっと違うんじゃないの? と。「大衆化」なら分かるんですけど。

 プライベートチェーンを選んだのは、管理者が存在することで要望が反映しやすいこと、セキュアであること、処理が速く環境負荷が少ないこと、と理由を挙げていますが、素直に「楽天ポイント経済圏へ引き込むこと」と言われたほうが理解しやすいし、納得もできると思うのですけど。

「漫画家の名刺代わりに」 集英社、過去作をまとめられるポートフォリオ作成サービスを提供〈ITmedia NEWS(2021年11月19日)〉

集英社は18日、漫画家専用のポートフォリオ作成サービス「MangaFolio」(マンガフォリオ)の提供を始めた。さっそくポートフォリオを公開する漫画家が続出している。

 4月にオープンした集英社のマンガ投稿サイト「マンガノ」に、ポートフォリオ作成サービス「MangaFolio」が追加。マンガやイラストを投稿せず、ポートフォリオだけの利用も可能となっています。わざわざ別途名称を付けたのは、単体でも使って欲しいからでしょうか。5月のインタビュー記事で、ユーザーからの期待度が高いことから優先度を上げて開発している、というコメントがあったのを思い出しました。

集英社の少年ジャンプ+編集部とはてなの協業という形でスタートしたマンガ投稿サービス「マンガノ」。集英社のマンガのノウハウを活用する一方で、“ジャンプ"の名を打ち出さない、ニュートラルさが特徴のサービスで、それまでとは異なる意識から生み出されたサービスになっている。

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雑記

 本稿を執筆しているあいだに、久しぶりの雨が降ってきました。11月下旬ともなると、さすがに太陽が出ていないと肌寒い感じ。今夜は鍋にしようかな(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0
※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

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著者について

About 鷹野凌 602 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学でデジタル編集論・二松學舍大学でエディティング・リテラシー演習担当の非常勤講師 / 日本出版学会員 / デジタルアーカイブ学会員 / 主な著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)/ プロフィール画像は©鈴木みそ氏
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