「違法サイト漫画BANK閉鎖」「サービス終了電子書店のユーザーをBOOK☆WALKERが救済」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #496(2021年10月31日~11月6日)

武蔵野坐令和神社
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 2021年10月31日~11月6日は「違法サイト漫画BANK閉鎖」「サービス終了電子書店のユーザーをBOOK☆WALKERが救済」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。

政治

米出版ペンギンによる同業買収阻止へ、提訴 米司法省〈日本経済新聞(2021年11月3日)〉

 ペンギン・ランダムハウスによるサイモン&シュスターの買収に、司法省から「待った」がかかりました。法廷で争われることに。合併が成れば、アメリカで刊行されるラインアップの3分の1が、文芸・一般フィクションのジャンルに限れば7割を占めるはずでした。

 大原ケイさんによる昨年末時点の解説によると、巨大化する理由はアマゾンと対抗するためとされていました。著者団体はアドバンスの減少が見込まれるため反対、編集者はリスクテイクしなくなるのではと観測されていましたが、これでどうなるか。

社会

図書館流通センター(TRC)、電子図書館サービス「LibrariE & TRC-DL」経由で利用できる電子雑誌コンテンツサービス「TRC-DL マガジン」の実証実験を開始〈カレントアウェアネス・ポータル(2021年11月5日)〉

 電子雑誌を図書館へ。紙の雑誌は製本が簡易で痛みやすく、販売期間も短いため再購入が困難です。そういう意味で電子雑誌は、図書館に向いていると思います。学術系の電子ジャーナルは、すでにかなり普及してますよね。一般向けの雑誌でも、2019年1月に「dマガジン for Biz」が共立女子大学・短期大学図書館へ導入されるなど先行事例はすでにあります。

 今回の実証実験は「LibrariE & TRC-DL」を導入している56自治体が対象で、2カ月間の期間限定です。「dマガジン for Biz」は指定Wi-Fiが届く範囲限定ですが、こちらは館外からでも閲覧が可能とのこと。どんな感じか試してみようと「千代田Web図書館」へアクセスしてみたんですが、バナーが見つからない……アレ? 対象外?

経済

「愛が重い」海賊版漫画サイトを味方に、小学館らの違法対策とは〈日経クロステック(xTECH)(2021年11月1日)〉

 正規の翻訳版が存在しないあるいは遅れてしまう地域で、ファンが勝手に翻訳海賊版を出してしまう事例への対策です。海賊版を翻訳している人に、正式に翻訳を依頼するというのは面白い。敵対して潰すのではなく、味方にする戦略ですね。映像系では「Crunchyrol」が、もともとは日本アニメの「ファンサブ」投稿サイトだったのを思い出します。

一般社団法人デジタル広告品質認証機構、「JICDAQ認証」の公開を開始〈MarkeZine(マーケジン)(2021年11月1日)〉

 アドフラウドを含む無効配信の除外と、広告掲載先品質に伴うブランドセーフティの確保の取り組み。認証された事業者が一斉にプレスリリースを出していました。ちょっとウチでも検討してみようかなと思ったんですが、料金表を見て諦めました。非会員だと自己宣言でも年間99万円……ウチのような零細には無理。

Kobo Plus eBook library subscription service launched in Australia〈Good e-Reader(2021年11月2日)〉

 2017年2月にオランダで開始された、Rakuten Koboの読み放題サービス。その後、ベルギーが追加され、昨年7月にはカナダでも展開。そしてこのたび、オーストラリア・ニュージーランド・イタリアで、続けざまにサービスが開始されました。日本はいつになるだろう? 調べてみたら、日本版のページが存在しているのは確認できましたが、まだ中身はありません。

「Neowing電子書籍ストア」がサービス終了を発表。購入済み電子書籍は「BOOK☆WALKER」へ引き継ぎ【やじうまWatch】〈INTERNET Watch(2021年11月4日)〉

 同じグループ内では「MFラノベ☆コミック」や「ニコニコ書籍」の吸収統合がありましたが、そうではないちょっと珍しい救済事例です。これ、技術的には可能でも、出版社との契約関係的にいろいろハードルがあるという話を聞いたことがあり。少なくとも、容易いことではなかったはず。お疲れさまでした。

「Google News」がスペインで復活へ–2014年の終了以来〈CNET Japan(2021年11月4日)〉

 スペインで成立したGoogleニュース狙い撃ちの法律に、サービスシャットダウンで対抗するという荒っぽい真似に、当時結構驚いた記憶があります。しかしまさかそれが7年も続くとは。Googleニュースは当時、フランス、ベルギー、ドイツなど、EU諸国から目の敵にされていたんですよね。最近になって「Google News Showcase」という収益還元の仕組みも始まり、だいぶ情勢が変わった感があります。

違法漫画サイト「漫画BANK」が突如閉鎖 集英社の訴訟準備が一因か〈ITmedia NEWS(2021年11月4日)〉

 こちらは日本国内からのアクセスを狙った海賊版サイト。弁護士の福井健策先生によると、アメリカでのディスカバリー(情報開示)手続きが大詰めを迎えた直後の閉鎖とのこと。3年前から対峙してたんですね。法律手続きは閉鎖では止まらないので、運営者に対し「少しでも処分が軽くなるように、この段階での自首を強く勧告します」と呼びかけていました。「最大のマンガ海賊版3サイトの一角」とのことなので、他の2つも早く潰したいですね。

技術

文化複合施設に電子通貨〈日本経済新聞(2021年11月2日)〉

 KADOKAWA「ところざわサクラタウン」で電子通貨決済の実証実験を開始。ブロックチェーン技術を活用したデジタル地域通貨です。スキーム提供は富士通で、電子コインの発行は埼玉りそな銀行。広告掲載可能なブロックチェーン技術(特許出願中)というのが興味深い。

KADOKAWA、デジタルから書店へ誘客 VR空間で購入も〈日本経済新聞(2021年11月6日)〉

 リアル書店でKADOKAWAの本を買うと、50%ぶんのポイント還元が受けられるなどの「出版DX」的取り組み。同じタイトルの電子書籍が贈呈されるのは、昨年のニコニコカドカワ祭りでもやってましたね。記事でコメントしているKADOKAWAの楫野晋司さんによると、売上は数億円になっており「苦節8年でようやく書店さんからご意見を伺えるようになったり、取材していただけるようになった」そうです。お疲れさまでした。

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雑記

 新型コロナウイルスの新規感染者数が激減。しばらく自粛していた、誰かに対面で会うといった活動を、ものすごく久しぶりに行っています。ただ、海外ではまた拡大しているというニュースもあり、油断はできないなと思いつつ(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0
※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

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著者について

About 鷹野凌 824 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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