2023年出版関連動向回顧と年初予想の検証

publishing is wonderful

Text to Image by Adobe Firefly Image 2 Model(陸上競技のトラックを走っている2本足の白いウサギが、緑竜に追い抜かれそうになっているイラスト)
Text to Image by Adobe Firefly Image 2 Model(陸上競技のトラックを走っている2本足の白いウサギが、緑竜に追い抜かれそうになっているイラスト)
noteで書く

《この記事は約 56 分で読めます(1分で600字計算)》

 HON.jp News Blog 編集長の鷹野が、年初に公開した出版関連動向予想1 2023年出版関連の動向予想〈HON.jp News Blog(2023年1月10日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/38390
を検証しつつ、2023年を振り返ります。

2023年概況

 まず概況から。出版科学研究所「出版指標マンスリー・レポート」2 出版指標マンスリー・レポート〈出版科学研究所オンライン〉
https://shuppankagaku.com/monthly-report/
2023年12月号によると、2023年1~11月期の紙の出版物推定販売額は9724億円で、前年同期比5.8%減でした。うち、書籍は5711億円(同4.4%減)、雑誌は4013億円(同7.6%減)とのことです。通期販売額の見込みや電子出版市場についてはとくに言及がありませんでした。

通期の紙出版市場は?

 そこで昨年同様、2022年12月実績に2023年1~11月期の前年同期比を当てはめて推計してみます。2022年12月は、書籍が522億0600万円、雑誌が449億9700万でした。書籍が4.4%減で約499億円、雑誌が7.6%減で約415億円。つまり年間では、書籍が6210億円、雑誌が4428億円、合計1兆0638億円となる計算です。

 ただし、出版科学研究所による出版物の推計販売額は、紙は取次ルートのみである点には注意が必要です。以前は巻頭に、取次ルートは「書籍の7割近く、雑誌の9割強を占めている」3 1995年に公正取引委員会が発表したとされる数字と記されていましたが、近年拡大している書店と出版社の直接取引や、出版社自身による直販などがいまどの程度の規模になっているかは不明です。

 たとえば女性誌「ハルメク」は50万部を超えマンガ誌以外で1位になっていますが4 読者の悩み言葉に、ハルメク快進撃 シニア女性誌、50万部突破〈毎日新聞(2023年2月1日)〉
https://mainichi.jp/articles/20230201/dde/007/020/034000c
、直接配送する定期購読誌なので5 雑誌ハルメク【公式】のよくあるご質問に「書店ではお求めいただけません」と明記されている
https://magazine.halmek.co.jp/faq/
、取次ルートを使っていません。つまり、ナンバーワン雑誌の実績が出版科学研究所の推計には含まれていないのです。

 また、コミケ、コミティア、文学フリマ、赤ブーなどの同人誌市場も、含まれていません。矢野経済研究所による「オタク」市場調査によると、2023年度の同人誌市場は約1058億円にまで達しています(ダウンロード販売を含む)6 「オタク」市場に関する調査を実施(2023年) | ニュース・トピックス〈矢野経済研究所(2023年12月27日)〉
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3383

電子出版市場

 出版科学研究所による電子出版市場推計は例年通り、現時点では集計中でしょう。なお、7月に発表された上半期(1~6月)の電子出版市場は2542億円(同7.1%増)でした7 2023年上半期出版市場(紙+電子)は8024億円で前年同期比3.7%減、電子は2542億円で7.1%増 ~ 出版科学研究所調べ〈HON.jp News Blog(2023年7月25日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/43931
下半期が上半期と同じ成長率と仮定すると、通期では電子コミック4851億円、電子書籍444億円、電子雑誌80億円、計5375億円となります。

 出版科学研究所の電子出版市場推計は「読者が支払った金額の合計」であり、定額読み放題は含まれますが、広告収入はもちろん含まれませんし、コロナ禍をうけ急激に普及拡大したはずの電子図書館への販売額も含まれません。紙も電子も、統計に出てこない出版領域が、意外と大きくなっているかもしれないことには注意が必要でしょう8 このことについて、「出版統計に関する基礎的な問題点について」(下間浩平, 情報知識学会誌 25巻(2015)2号)で「現状においては,統計に基づく出版業界に関する定量的研究は,ほとんど意味をなさないと言わざるを得ない.」と批判されているのを見つけたので記しておく
https://doi.org/10.2964/jsik_2015_009

書籍:雑誌:コミックを紙+電子で考えると?

 出版科学研究所は毎年1月25日に年間の出版市場推計を発表していますが、このタイミングでは、紙の市場は「書籍」「雑誌」の2つ、電子の市場は「コミック」「書籍」「雑誌」の3つに分類されています。これを不思議に思う声も、毎年のように見かけます。

2022年の市場占有率は書籍が41.0%、雑誌が17.5%、コミックが41.5%
2022年の市場占有率は書籍が41.0%、雑誌が17.5%、コミックが41.5%
 紙を電子と同様に「コミック」「書籍」「雑誌」の3つに分類しなおし、紙+電子で考えると、2022年の市場占有率は書籍が41.0%、雑誌が17.5%、コミックが41.5%でした9 2022年出版市場(紙+電子)はコミックが書籍を逆転、占有率はコミック41.52%:書籍40.97%:雑誌17.51%に ~ 出版科学研究所調査より〈HON.jp News Blog(2023年2月27日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/39390
。昨年末に「2022年の実績では、恐らくコミックが書籍を上回ることになるでしょう」と書いた通り、電子出版市場の拡大に伴いコミックと書籍の市場規模は逆転しています。

 一般にはあまり知られていないようですが、紙の「書籍」市場には「書籍扱いコミックス」が、紙の「雑誌」市場には「雑誌扱いコミックス」と「コミック誌」が含まれています。とくに「雑誌扱いコミックス」は2022年実績で1491億円と、比較的規模が大きいです。このコミック市場の詳細は、今年までは1カ月遅れの「出版月報」2月号で公表されていました。

 しかし、「出版月報」は2023年4月から「季刊 出版指標」に刊行変更されました10 出版科学研究所 『季刊出版指標』とPDF版「出版指標マンスリーレポート」発行開始 3月の書籍・雑誌販売は前年同月比4.7%減に〈文化通信デジタル(2023年4月26日)〉https://www.bunkanews.jp/article/327193/。そこで、来年はどうなるかを出版科学研究所に確認したところ、コミック市場の詳細は2024年春号(4月25日発売予定)に掲載予定とのことでした。つまり残念ながら、今後は3カ月遅れとなります。コミックスを除く「雑誌」の実情が、ますます見えづらくなってしまいそうです11 『パブリッシング・スタディーズ』第4章第3節 林智彦(日本出版学会編、2022年)などでも指摘されている。
https://www.shuppan.jp/books/2022/09/07/2374/

年初にはこんな予想をしていた

 続いて、私が年初に予想していた2023年の動きについて。挙げたのは以下の5つです。自己採点の結果を右端に付けておきます。

  • メディアビジネスの転換が進む → ○
  • 書籍でもワークフローの見直しが進む → ○
  • コンテンツの輸出が拡大する → ◎
  • エディターシップの必要性が高まる → ○
  • 技能継承の必要性が高まる → △

メディアビジネスの転換が進む

 主に「新聞」や「雑誌」という切り口での予想でした。「広告」に依存するウェブメディアのビジネスモデルは、マスへアプローチするための「釣り見出し」「炎上商法」などを誘発してユーザー離れを起こす一方、サブスクを含む「販売」の比率はさらに高まっていくだろう、という予想です。

インターネット広告の悪質化

 今年は、ウェブメディアで広告枠が異様に増えた印象があります。わりとまともな印象のあった老舗が、気付いたらひと昔前の「2ちゃんねるまとめブログ」を彷彿させるような状態になっていたりします。ファーストビューの8割くらいが広告、というありさまを目撃することも珍しくありません。

 上下左右がバナー広告で埋まるのはもちろん、スクロール追従型広告で画面が狭くなったうえ、ポップアップバナー(しかも動画)が画面端から滑り込んで文章を読むのを邪魔します。また、400字ほどでページ分割された記事の[次へ]をクリックするといちいち全画面広告が表示されます。記事の途中に差し込まれる自動広告は、1000字ほど読む間に3回ほど広告が入ることもあります。そして、記事の末尾に置かれたレコメンドウィジェットは、関連記事がまばらで、大半が広告になっていたりします。

 メディアの広告枠が増えても、クリエイティブの質が高ければ「広告もコンテンツ」として楽しむことができますが、多くの場合、劣悪な、不快な、詐欺まがいな内容だったりします12 サポート詐欺とネット広告 100以上のGoogleの詐欺広告、その実例を集めました〈web > SEO(2023年12月18日)〉
https://webweb.hatenablog.com/blog/search-engine/support-scam
。ユーザーが広告ブロッカーを入れたがるのも無理はないと思える状況です13 【お願い】広告ブロッカー(Adblock)の除外設定をお願いします。〈すまほん!!(2023年12月24日)〉ではせめてホワイトリストに入れてほしいという訴えがなされていた。
https://smhn.info/202312-please-exclude-our-domain-from-your-ad-blocker
。日本における広告ブロッカーの利用率は2023年1月発表時点で約16%だったそうですが14 このネット広告、どこの会社? トヨタ系は番組配信〈日本経済新聞(2023年7月10日)〉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC216TJ0R20C23A6000000/
、この1年のありさまでは、もっと利用率が高まっていても不思議ではありません。

 アドブロックの普及拡大に加え、広告単価の下落、ソーシャルメディアや検索エンジンからの流入減など、広告収入に依存するウェブメディアには強烈な向かい風が吹いています。私が把握している範囲だけでも、バズフィードの報道部門閉鎖15米バズフィード、報道部門を閉鎖 運営困難、15%人員削減〈共同通信(2023年4月21日)〉
https://nordot.app/1021963439441248256
、朝日新聞「論座」の終了16 「論座」の終了と新たなオピニオンサイトの開始について – 論座編集部〈論座 – 朝日新聞社の言論サイト(2023年2月15日)〉
https://webronza.asahi.com/info/articles/2023020700002.html
、サイゾー「wezzy」の終了17 更新終了および閉鎖のお知らせ〈wezzy|ウェジー(2023年12月4日)〉
https://wezz-y.com/archives/95862
、「LINE BLOG」のサービス終了18LINE BLOG、6月29日にサービス終了〈ケータイ Watch(2023年1月30日)〉
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1474312.html
などはその影響でしょう。

 なお、年初の予想ではリテールメディア(=小売店の広告媒体化)の隆盛について、広告を出さないと売れなくなって販売価格が上昇する可能性や、ユーザー体験の悪化に伴うユーザー離れに繋がる可能性を危惧していました。いまのところまだニュースになるほどの事象は起きていないようです。

アマゾンの検索結果一覧
アマゾンの検索結果一覧(蛍光緑のところが広告)
 ただ、たとえばAmazonの検索結果一覧には「スポンサー」という表示がやたらと多くなっています。検証してみたところ、ファーストビューから4画面分くらいまでの半分くらいは広告が占めていました。この事実は記憶に留めておくことにします。恐らく今後、じわじわと影響が出てくる気がします。

「さようなら、Twitter」

 Facebookは、外部リンク付きの投稿が目立たないアルゴリズムに数年前から変容していますが19 頼れなくなったソーシャルメディア流入、データから知る【Media Innovation Weekly】5/8号〈Media Innovation(2023年5月8日)〉
https://media-innovation.jp/2023/05/08/post-138696/
、日本はFacebookの利用率が低いこともあり20 2023年12月更新!性別・年齢別 SNSユーザー数(X(Twitter)、Instagram、TikTokなど13媒体)〈株式会社ガイアックス(2023年12月1日)〉
https://gaiax-socialmedialab.jp/socialmedia/435
、諸外国に比べるとその影響は小さなものでした。逆にTwitterは、日本では突出して普及したSNS(MAUは2017年10月の時点で4500万人)であり、メディアにとってもクリエイターにとっても、「頼りになる存在」だったと言えます。

 イーロン・マスク氏が買収して以降のTwitterは、良く言えば「迅速で大胆な改革」が進められました。それが利用者にとって良い結果に繋がったかどうかは別として。名称が「X」に変わったのは、いままでとは違う存在になったことを象徴する出来事だったと言って良いでしょう。そのため幾度も「さようなら、Twitter」という言葉を目にすることになりました。

 HON.jpのカンファレンスでも、そういう趣旨のセッションを開催しました21 TwitterがXに名前を変え、サービス内容やコミュニティの雰囲気も変質していく中で、クリエイターやパブリッシャーはどうすればよいのか?【HON-CF2023レポート】〈 HON.jp News Blog(2023年11月2日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/45668
。そのときコーディネーターを務めていただいた堀正岳氏が、年の瀬に“2023年はTwitterが「死んだ」とされる年として記憶されるだろう”22 さようならTwitter!–歴史を振り返ると見えてくる、2024年“SNSの新潮流”〈CNET Japan(2023年12月29日)〉
https://japan.cnet.com/article/35213338/
と述懐していたのは非常に印象的でした。

 Twitterがメディアと蜜月だったころは「頼りになる流入元」で「バズるとでかい」存在でしたが、いまではFacebookと同じように外部への流出を嫌うようになり、他サイトへの誘導量は大幅に減少しているようです。日経新聞が「箱庭化」と評していたのは言い得て妙です23 箱庭化するSNS、他サイト誘導2〜4割減 XやFacebook〈日本経済新聞(2023年12月2日)〉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCA146FH0U3A111C2000000/

 私個人のことを言うと、Twitter APIを利用していたサードバーティーをばっさり切り捨てた4月の時点で「これ以上振り回されたくない」と心が離れてしまいました。アカウントは消していませんが、投稿するのは止め、たまに閲覧するのみになっています。

 代替SNSとして「Threads」「Mastodon」「Misskey」「Bluesky」などの名前も挙がりますが、往事のTwitterほどの拡散力や実効性はまだ望めないのが実情でしょう。利用者数の多い「Threads」も、親会社はFacebookの運営元であるMetaですから、アルゴリズムは予想通り外部リンクを嫌っているようです。

サブスクは伸びた?

 では、広告から販売への移行は起きたのでしょうか? 世界のトップランナーであるニューヨーク・タイムズは11月に、グループ全体の購読者数が1000万人を突破したことを発表しました24 ニューヨーク・タイムズ、広告売上高6%増 購読者は1000万人超に〈AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議(2023年11月9日)〉
https://www.advertimes.com/20231109/article439078/
。そのうちデジタル購読者は941万人とのことです。

 また、日本のトップランナーである日本経済新聞は12月に、有料のデジタル購読数が100万を突破したことを発表しました25 日経、デジタル購読数100万に 専門メディアで法人開拓〈日本経済新聞(2023年12月8日)〉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL249F10U3A121C2000000/
。そのうち日経電子版の有料会員数は89万7000とのことです。グループ会社のフィナンシャル・タイムズとあわせると326万で、世界3位の規模なのだそうです。

 他に公表されている数字を調べてみたところ、朝日新聞「朝デジ」が30.3万26 「朝日新聞メディア指標」を更新 | お知らせ〈朝日新聞社の会社案内(2023年10月19日)〉
https://www.asahi.com/corporate/info/15031859
、NewsPicksが19.6万27 「それでもメディアで稼いでみせる」 「NewsPicks」CEOに聞く非上場化(下)〈日経ビジネス電子版(2023年2月9日)〉
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00304/020600118/
、ダイヤモンドオンラインが3万500028 老舗出版社ダイヤモンドで有料会員3万人超 前編集長が明かす極意〈朝日新聞デジタル(2023年8月16日)〉
https://www.asahi.com/articles/ASR8G5S0KR87ULFA00Y.html
、週刊文春電子版が1万29 「週刊文春電子版」が有料会員1万人を突破!〈株式会社文藝春秋のプレスリリース(2023年7月27日)〉
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000298.000043732.html
、十勝毎日新聞電子版が1万30 有料会員1万人以上 勝毎電子版 デジタルメディア局営業部長 桜庭弘子〈十勝毎日新聞電子版(2023年1月1日)〉
https://kachimai.jp/article/index.php?no=202311210734
、デイリーポータルZをはげます会が150031 「定年まで逃げ切れなかった」デイリーポータルZ独立 林さんに聞く不安と希望「もう一度、インターネットらしく」〈ITmedia NEWS(2023年12月22日)〉
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2312/22/news152.html
、などがありました。

 直近では、スマートニュースが複数の有料会員メディアからの記事をまとめて配信する「SmartNews+」を開始しました32 スマートニュース、月1480円の「プラス」開始 ダイヤモンドやWSJ参加〈Impress Watch(2023年12月12日)〉
https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1553638.html
。全国紙が未参加である点は気がかりですが、今後どうなるかが楽しみです。そういえば、日本ではまだ提供されていない「Apple News+」のことを思い出しました。

メディアの周辺事業

 広告でも販売でもなく、メディアの周辺事業で稼ぐ、という事例も散見されました。ウェブメディアでの先駆者としては、ほぼ日刊イトイ新聞の「ほぼ日手帳」が有名でしょう。CORECOLORではスイーツの専門サイトや33 PV数が価値を持たなくなる時代に我々は何を作るべきか。メディアの可能性をこじ開けるスイーツサイト「ufu.」坂井勇太郎さん【シリーズ編集者の時代/第4回】〈CORECOLOR(2023年3月10日)〉
https://corecolor.jp/3988
、広告掲載料0円のフリーペーパーといった事例が紹介されていました34 広告掲載料は0円。3万部がすぐに在庫切れ。京都の型破りフリーマガジン『ハンケイ500m』編集長/円城新子さん【編集者の時代 第8回】〈CORECOLOR(2023年12月19日)〉
https://corecolor.jp/6241

 東スポが餃子販売で復活という冗談みたいな話もありました35 社員3分の1をリストラ「東スポ」が復活を遂げた訳 | メディア業界〈東洋経済オンライン(2022年12月26日)〉
https://toyokeizai.net/articles/-/641472
。KADOKAWA「電撃G’s magazine」は休刊と同時にファンコミュニティー「G’sチャンネル」を立ち上げ、結果を出しつつあるそうです36 KADOKAWAに手応え 消える雑誌、そのブランドに命を吹き込む方法〈日経クロストレンド(2023年12月20日)〉
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00589/00085/
。各社、広告に依存しないビジネスモデルの模索を進めています。

書籍でもワークフローの見直しが進む

 主に「書籍」という切り口での予想でした。「また検証しづらい予想」と予防線を張ってしまっていたのですが、アクセシブルブックスサポートセンター(ABSC)の設立や37 JPO内に、アクセシブルブックス・サポートセンター発足〈 新文化オンライン(2023年4月3日)〉
https://www.shinbunka.co.jp/archives/4002
、EPUB 3.3とEPUB Accessibility 1.1のW3C勧告は38 EPUB 3.3がW3C勧告に〈W3C(2023年5月25日)〉
https://www.w3.org/2023/05/pressrelease-epub33-rec.html.ja
、予定通り進みました。

読書バリアフリーに注目

 しかし、関係者にとってもっともインパクトが強かったのは、重度障害者の市川沙央氏による当事者小説『ハンチバック』の芥川賞受賞と、授賞式での「なかなか電子化が進んでいません。障害者対応をもっと真剣に早く取り組んでいただきたいと思っています」などのコメントでしょう。

 作品内での「私は紙の本を憎んでいた」といった訴えは、紙の本を愛してきた著者の方々にも届いているようです39 市川沙央さんが桐野夏生さんと対談 読書バリアフリー「能動的に」〈朝日新聞デジタル(2023年11月20日)〉
https://www.asahi.com/articles/ASRCN5T10RCNUTIL018.html
。このことが電子出版物の点数増加という形で影響してくるのは来年以降のことになるとは思いますが、意識を変える大きなきっかけになったことは間違いないでしょう。

 日本出版学会の春季研究発表会では「アクセシブルなEPUB出版物の制作における課題――日本出版学会学会誌を事例にして」というワークショップも開催しました40 《ワークショップ》「アクセシブルなEPUB出版物の制作における課題」(2023年5月13日、春季研究発表会)〈日本出版学会(2023年12月4日)〉
https://www.shuppan.jp/reports/shunkikenkyu/2023/12/04/2864/
。事例は学会誌ですが、私は一般的な電子出版物全般を意識し、出版の過程(生産・流通・利用)とアクセシビリティ対応について、課題の切り分けとレベル分けを行ってみました。YouTubeで動画や資料も公開していますので参考にしてみてください。

 また今年は、ロービジョン(弱視)やディスレクシア(読み書き障害)の人でも読みやすい「UDデジタル教科書体」が話題になったり41 “奇跡のフォント”で小学生の正答率に差 開発者が語る「UDデジタル教科書体」の驚くべき効果とは〈デイリー新潮(2023年4月8日)〉
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/04081100/
、国立国会図書館から「電子図書館のアクセシビリティ対応ガイドライン1.0」が公開されたり42 「電子図書館のアクセシビリティ対応ガイドライン1.0」を公開しました〈国立国会図書館―National Diet Library(2023年7月19日)〉
https://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2023/230719_01.html
、日本電子出版協会「JEPAアワード2023」では読者バリアフリーを実現するための音声用見上げツール「YourEyes」(スプリューム)が大賞になったりもしました43 電子出版アワード2023は「Bingチャット」「世界J文学館」「コミチ+」「YourEyes」「Firefly」〈日本電子出版協会(2023年12月21日)〉
https://www.jepa.or.jp/pressrelease/20231221/

 HON.jpのカンファレンスでも「読書バリアフリー」をテーマとするセッションを行いました44 アクセシブルな電子書籍の市場を拡大するために、出版社、制作会社、電子取次、電子書店がやるべきことはなにか?【HON-CF2023レポート】〈HON.jp News Blog(2023年10月6日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/45345
。他にも、オーディオブックや電子図書館サービスの普及が進むなど、読書バリアフリー法が施行された2019年より、今年のほうが「読書バリアフリー」にまつわる話題が豊富だった気がします。

電子出版物の点数は?

 さて、年初の予想では「結果、電子出版物の点数増加という形で表われてくるのではないか」と書いたのですが、この検証が実はけっこう大変です。堀正岳氏と共同研究の電子化率調査(2020年版)でも課題として挙げたように45 「日本における電子書籍化の現状(2020年版)」鷹野凌・堀正岳(2020年9月12日、春秋合同研究発表会)〈日本出版学会(2021年5月29日)〉
https://www.shuppan.jp/reports/shunkikenkyu/2021/05/29/2138/
、とくにジャンル別の集計や出版社別の集計が難しい。

 それでも、国立国会図書館の書誌2022年版での調査を独自に行っています。ISBN有が9万0427件、コミックを除くと7万8404件(分母)。BOOK☆WALKERの書誌とISBNでマッチした3万4418件(38.1%)からマンガを除くと2万2395件(分子)。つまりコミック以外の電子化率は28.6%でした。2019年時点では約25%だったので、少し増えています。

コンテンツの輸出が拡大する

 主に「マンガ」という切り口での予想でした。予想のときに挙げた財務省「貿易統計」(印刷物の輸出額)46[ 印刷物は11年連続の輸入超過、アジアがシェア7割〈JAGAT(2022年8月19日)〉
https://www.jagat.or.jp/archives/102166/mfn]や総務省「情報通信産業連関表」46 令和4年版 情報通信白書|ICT分野の輸出入〈総務省〉
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd231400.html
のことを、そのままきれいさっぱり忘れていたことに、いまこの原稿を書いていて気付きました。やっちまいました! さすがにいまからでは年内公開が間に合わなくなりそうなので、来年の課題とします。申し訳ありません。

輸出に関する話題は多かった

 ただ、マンガの輸出に関する話題は非常に多い1年でした。私が把握している範囲だけで、ソラジマ「SORACOMI」47 株式会社ソラジマがオリジナル漫画アプリ「SORACOMI」を開発。日本に続きアメリカでもリリースを達成!〈株式会社ソラジマのプレスリリース(2023年1月23日)〉
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000084922.html
、アムタス「Comicle」48 米国向け電子コミックアプリ「Comicle」を提供開始〈株式会社アムタスのプレスリリース(2023年1月27日)〉
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000472.000022277.html
、ブックウォーカー「BOOK☆WALKER Thailand」49 KADOKAWA、タイ本格参入 電子書籍サイト3月から〈日本経済新聞(2023年2月21日)〉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC212RM0R20C23A2000000/
、講談社「K Manga」50 「日本のマンガ」をもっと世界へ…新たに始動した「K MANGA」が見据える挑戦(飯田 一史)〈マネー現代 | 講談社(2023年5月26日)〉
https://gendai.media/articles/-/110190
、集英社・小学館系のViz Media「VIZ Manga」51 Viz Media Simultaneously Releases Shogakukan Manga Titles in New VIZ Manga App – News〈Anime News Network(2023年5月9日)〉
https://www.animenewsnetwork.com/news/2023-05-09/viz-media-simultaneously-releases-shogakukan-manga-titles-in-new-viz-manga-app/.197912
が今年ローンチしています。

 それ以外にも、2022年に開始されたNTTソルマーレの北米向けサービス「MangaPlaza」や52 デジタルコミックで北米市場を攻めるNTT西日本の勝算〈ニュースイッチ by 日刊工業新聞社(2023年1月10日)〉
https://newswitch.jp/p/35317
、集英社「MANGA Plus」のサブスク開始53 少年ジャンプ+:海外向けマンガアプリがサブスクサービス開始 連載中80作品以上が読み放題〈MANTANWEB(2023年10月4日 )〉
https://mantan-web.jp/article/20231004dog00m200008000c.html
、NTTドコモ・アカツキ・メディアドゥ・MyAnimeListが業務提携契約を結びアメリカ向けマンガ配信サービスの構築検討を始めるニュースなどもありました54 日本マンガの米国向け新配信サービス開発、ドコモ、アカツキ、メディアドゥ、MyAnimeListが連携〈アニメーションビジネス・ジャーナル(2023年12月11日)〉
http://animationbusiness.info/archives/15292

 実際のところ北米ではまだ紙が強いようで、2022年のコミックス・マンガ市場は過去最大の3200億円に達したというニュースもありました55 北米のコミックス/マンガ市場 2022年は過去最大の3200億円〈アニメーションビジネス・ジャーナル(2023年10月17日)〉
http://animationbusiness.info/archives/15062
。ただ、2021年から2022年の前半にかけては好調だったものの、2022年下半期以降は売上が鈍化しているという少し気がかりな情報もあります56 Will Sales of Manga Ever Even Out?〈Publishers Weekly(2023年4月21日)〉 https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/comics/article/92089-will-sales-of-manga-ever-even-out.html
Covid Surge in Comics and Graphic Novel Sales Crested in 2022〈ICv2(2023年10月16日)〉
https://icv2.com/articles/markets/view/55334/covid-surge-comics-graphic-novel-sales-crested-2022
。2023年の数字がどうなったか、気になるところです。

縦スクマンガ市場は

 2022年回顧で「縦読みマンガ単独の市場規模がわからない」と問題提起したところ、インプレス総合研究所が「電子書籍ビジネス調査報告書2023」でコミック5199億円のうち約1割が縦スクという推計を発表してくれました57 2022年度の市場規模は6026億円、2027年度には8000億円市場に成長 Webtoonが電子コミック市場の1割の規模に 『電子書籍ビジネス調査報告書2022』8月10日発売〈インプレス総合研究所(2023年8月8日)〉
https://research.impress.co.jp/topics/list/ebook/673
。文字もの等(文芸・実用書・写真集等)601億円に迫る規模ということになります。これは来年の調査では、逆転する可能性もあるでしょう。

 今年はAppleやAmazonが縦スクのプラットフォームとして参入58 アップルやアマゾンも参入 「縦読みマンガ」のいま【西田宗千佳のイマトミライ】〈Impress Watch(2023年4月17日)〉
https://www.watch.impress.co.jp/docs/series/nishida/1493938.html
するいっぽう、韓国勢の「ピッコマ」「LINEマンガ」を“2強”と持ち上げる報道も引き続き散見されました59 韓国ネット2強ネイバーとカカオ、漫画で陣取り合戦 日本起点に世界へ〈日本経済新聞(2023年11月9日)〉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2235L0S3A021C2000000/
。しかし、根拠として引用されるMMD研究所の調査はマンガ専門のサービス限定60 コミックアプリ・サービスに関する調査〈MMD研究所(2022年7月25日)〉
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_2082.html
、Data.ai(旧App Annie)やSensor Towerの調査はApp StoreとGoogle Playだけの合計です。

 とくにそういう縛りなく調査しているインプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2023」では、「購入・課金したことのある電子書籍サービスやアプリ」の利用率は1位「Kindleストア」29.9%、2位に「LINEマンガ」15.3%、3位「楽天Kobo」14.8%、4位「ピッコマ」13.5%、5位「コミックシーモア」12.4%の順であることは頭に入れておいたほうが良いでしょう。

関係性開示:アマゾンジャパンは、HON.jpの法人会員として事業活動を賛助いただいています。しかし、本欄の記述は筆者の自由意志であり、対価を伴ったものではありません。

エディターシップの必要性が高まる

 主に「人材」という切り口での予想でした。生成AIの跋扈により、AI生成コンテンツの見極めや二次加工といった、いままでとは違った領域での編集能力(エディターシップ)が必要になるという考えでした。

生成AIに振り回された1年

 実際、今年は「週刊出版ニュースまとめ&コラム」61 週刊出版ニュースまとめ&コラム〈HON.jp News Blog〉
https://hon.jp/news/1.0/0/category/weekly-news-summary
で729本の記事をピックアップしてコメントをつけているのですが、そのうち235本が生成AI関連(“生成”ではないAIは除外)でした。つまり、今年は3分の1が生成AI関連の話題だったのです。

 私の関心がそちらへ傾斜していたのもありますが、取り上げていない生成AI関連の記事もたくさんありますから、世の中――少なくともメディアは生成AIに強く関心を寄せていたとは言えるでしょう。まさに、生成AIに振り回された1年と言っても過言ではありません。

 なかでもとくに印象的だったのは、アメリカのCNET(※日本のCNETは運営が違います)が生成AIを記事執筆にこっそり使っていたら大量の誤りを指摘された事件62 米CNET、記事の誤り指摘されAIによる執筆と認める。昨年から約75本掲載〈テクノエッジ TechnoEdge(2023年1月20日)〉
https://www.techno-edge.net/article/2023/01/20/739.html
。人間の書いた原稿なら、編集者がチェックせず公開なんてしないでしょうに。

 私も、大学で編集関連の授業を担当していますが、学生に「生成AI使っていいよ」と言ったらすべての事柄が捏造の生成AI製原稿が提出されたことがありました。日本語としては普通に読めるキレイな文章だからタチが悪い。ただ、生成AIを安易に使うとこういうひどい目にあうことが、学生たちにも骨身にしみたのではないかと思います。

 そのいっぽうで、集英社「週刊プレイボーイ」が画像生成AIで出力したデジタル写真集の発売を中止するといった事件もありました63 集英社、AIグラビア「さつきあい」写真集の販売終了「慎重に考えるべきだった」〈KAI-YOU.net(2023年6月7日)〉
https://kai-you.net/article/86949
。編集部からはあまり詳しい情報は開示されていないのですが、ひとつ言えるのは、AI生成コンテンツが世の中にどういう影響や印象を与えるのか? といった編集判断も今後は求められるようになること。つまり、人間の書いた原稿、人間の描いたイラスト、人間の撮った写真なら考えなくても済んだ領域も、考えざるを得なくなったということです。

 たとえば、SF誌に生成AIが執筆した投稿作品が殺到して受付を一時休止せざるを得なくなったとか64 AIが書いた小説の投稿激増、ヒューゴー賞受賞SF誌が受付を一時停止〈テクノエッジ TechnoEdge(2023年2月21日)〉
https://www.techno-edge.net/article/2023/02/21/903.html
、Kindleダイレクト・パブリッシングに生成AIによる作品がなだれ込み1日の出版数に上限が設けられるようになったといった事件は65 生成AIによる粗製乱造に対応か。KDPが1日あたりに出版できる本を上限3冊とするルールを追加【やじうまWatch】〈INTERNET Watch(2023年9月25日)〉
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/1533950.html
、編集部やサービス運営側が、これからはそういうことが起こり得ることも想定に入れなければならないことを意味しています。

技能継承の必要性が高まる

 こちらも主に「人材」という切り口での予想でした。「エディターシップの必要性」の延長上で、これまで出版産業内で育まれてきたさまざまな技能を次世代に継承していくことも求められるのでは、という予想でした。

 技能は紙だけでなく、ウェブやEPUBといったデジタル出版の領域にも対応していく必要があると考えています。これまたじつに検証しづらい予想なのですが、「電書協 EPUB 3 制作ガイド」66 電書協 EPUB 3 制作ガイド〈デジタル出版者連盟(旧・日本電子書籍出版社協会)〉
http://ebpaj.jp/counsel/guide
を「式年遷宮」のように定期的にアップデートしていく必要があることを訴える意味での提案でもありました。

 今年、EPUB 3.3がW3C勧告になり、W3C EPUB 3 Working Groupの共同座長を務めていた高見真也氏がJEPAで講演をされたとき67 2023年7月12日 高見真也 氏: W3C標準「EPUB 3.3」 とアクセシビリティ対応〈日本電子出版協会(2023年7月12日)〉
https://www.jepa.or.jp/sem/20230712
、そういう趣旨の質問をぶつけてみたところ、「検討はされている」「更新すべきではないかというムードにはなっている」という回答が得られました。今後、なにかしらの動きがあることを引き続き期待しています。

その他の大きな動き

 もちろんこれ以外にも、2023年にはさまざまなことがありました。今年とくに気になったニュースを政治(Politics)、社会(Society)、経済(Economy)、技術(Technology)の4分野にわけて、ピックアップします。

政治(Politics)

NHKインターネット業務

NHKのネット業務、「本業化」の方向で一致 総務省の有識者会議〈朝日新聞デジタル(2023年2月24日)〉
「NHKのネットテキスト業務は撤退を」 新聞協会、自民会合で主張〈朝日新聞デジタル(2023年8月2日)〉
新聞業界が難癖「NHKテキストニュース」の行方 「地方紙のデジタル化」が成功しない納得理由 | メディア業界〈東洋経済オンライン(2023年9月4日)〉

インボイス制度

インボイス登録、9月末まで受け付け可能に 半年延長〈日本経済新聞(2023年1月16日)〉
公取委、インボイス制度で発注元を注意 「独禁法違反のおそれ」〈朝日新聞デジタル(2023年5月17日)〉
インボイスで「負担増」半数超 免税事業者に「着服・ネコババ」批判〈朝日新聞デジタル(2023年11月13日)〉

ステマ規制

ステマを不当表示に指定 23年秋ごろ施行へ、消費者庁〈AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議(2022年12月27日)〉
令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。〈消費者庁(2023年9月1日)〉
インフルエンサーに影響する「ステマ規制」10月からスタート、広告とわかるように明示しなければ「違法」に〈弁護士ドットコム(2023年10月1日)〉

プラットフォーム規制

公取委、アプリストアの競争環境を調査「アップル/グーグルに独禁法問題となる懸念」〈ケータイ Watch(2023年2月9日)〉
作家や書店が、アマゾンによる書籍市場の支配を司法省に調査要求〈Media Innovation(2023年8月18日)〉
ヤフーはメディアに対して「優越的地位にある可能性」 公取委が調査〈朝日新聞デジタル(2023年9月21日)〉
Googleを独占禁止法違反で審査 公正取引委員会、検索寡占解明へ〈日本経済新聞(2023年10月23日)〉
デジタル広告、手数料の開示を 経産省が巨大ITに要請〈日本経済新聞(2023年12月5日)〉

海賊版対策

海賊版漫画「ただ読み」やめて 文化庁、若者向け動画教材〈共同通信(2023年5月23日)〉
文化庁の海賊版対策ハンドブック、新たにマンガのネタバレサイトやファスト映画も明記(コメントあり)〈コミックナタリー(2023年8月4日)〉
漫画村「悪だというなら…」 服役終えた元運営者、異例の再審請求〈朝日新聞デジタル(2023年9月22日)〉

書店議連の動き

「ネット書店の送料の実態、調査を」 消えゆく本屋支援、議連が提言〈朝日新聞デジタル(2023年5月24日)〉
図書館はベストセラー買いすぎ?ルール作り検討へ 「板挟み」の声も〈朝日新聞デジタル(2023年8月27日)〉
(取材考記)経営難で自民に接近 書店は言論機関の自覚を 宮田裕介〈朝日新聞デジタル(2023年9月28日)〉

生成AIと政治

米画家ら、画像生成AI「Stable Diffusion」と「Midjourney」を提訴〈PC Watch(2023年1月17日)〉
AIの無断学習、日本の著作権法ではOK 侵害にあたるケースは〈朝日新聞デジタル(2023年4月12日)〉
画像生成AI “クリエーターの権利脅かされる” 法整備など提言 | AI(人工知能)〈NHK(2023年4月27日)〉
新聞協会、「生成AI」に懸念 記事の無断利用、政府に対応要請〈共同通信(2023年5月17日)〉
生成AI画像は類似性が認められれば「著作権侵害」。文化庁〈PC Watch(2023年6月5日)〉
文化庁、「AIと著作権」の講演映像をYouTubeで公開 全64ページの講演資料も無料配布中〈ITmedia NEWS(2023年6月22日)〉
生成AIと著作権の論点整理へ 文化審議会著作権分科会の議論始まる〈朝日新聞デジタル(2023年6月30日)〉
OpenAIなど生成AI企業への訴訟がアメリカで相次ぐ〈読売新聞(2023年7月11日)〉
報道・メディア26団体が「世界AI原則」を発表、日本新聞協会も〈朝日新聞デジタル(2023年9月6日)〉
Stability AIらを相手取った米アーティストの集団訴訟が棄却〈PC Watch(2023年11月1日)〉
生成AIの学習に政府保有データを提供へ、国会図書館の蔵書や国の研究データも対象〈日経クロステック(2023年11月8日)〉
生成AIと著作権、文化庁が論点提示 審議会小委で年度内に方向性〈毎日新聞(2023年11月20日)〉
EU、AI包括規制案で大筋合意 対応怠れば巨額制裁金〈日本経済新聞(2023年12月9日)〉
AIイラストは“著作物”!? 中国で画像生成AIブームが大爆発したわけ〈ASCII.jp(2023年12月18日)〉

表現規制

記者の目:有害図書規制のあり方 「偏見」で指定していないか=小川祐希(仙台支局)〈毎日新聞(2023年11月8日)〉
社説:芸術助成で最高裁判決 表現の萎縮招かぬ戒めに〈毎日新聞(2023年11月22日)〉

政治その他

悪質「誇大広告」抑止へ、行政処分経ずに罰金 消費者庁〈日本経済新聞(2023年2月24日)〉
「著作権法の一部を改正する法律案」が成立:著作物の利用に関する新たな裁定制度の創設や立法・行政における著作物の公衆送信等を可能とする措置等〈カレントアウェアネス・ポータル(2023年5月31日)〉
図書館蔵書のネット送信認める新制度が施行 補償金は最低500円〈朝日新聞デジタル(2023年6月1日)〉
学校図書購入費57%しか使われず…自治体交付金、社会保障など優先か〈読売新聞(2023年6月6日)〉

社会(Society)

インボイス制度

交通新聞社、インボイス登録「強要しない」 指針公開は雑協加盟社初〈文化通信デジタル(2023年4月12日)〉
マスコミが絶対に書けない、複雑怪奇な「インボイス制度」が導入されることになったワケ(週刊現代)〈マネー現代 | 講談社(2023年8月24日)〉
【そもそも解説】インボイス制度 「個人事業者の負担増」の理由とは〈朝日新聞デジタル(2023年8月25日)〉

生成AIと社会

国際的写真コンテストでAI画像が優勝 「主催側にAIを受け入れる準備があるか試した」 作者は受賞拒否〈ITmedia NEWS(2023年4月18日)〉
画像生成AIの「悪用」に絵師たちが反発、pixiv上でイラスト非公開に…福井健策弁護士に聞く〈弁護士ドットコム(2023年5月11日)〉
生成AIで作成したレポート「見分けつかない」 大学の教育現場で困惑広がる…対応策は?〈弁護士ドットコム(2023年7月18日)〉
武蔵美のAI絵画コンテスト、「著作権侵害」批判で急きょ中止…400点以上の応募〈読売新聞(2023年8月5日)〉
「生成AI使用疑惑」でイラストレーターが制作工程を公開 ”AI警察”にクリエイターはどう向き合うべき?〈Real Sound|リアルサウンド ブック(2023年8月15日)〉
性描写のある書籍を「ChatGPT」で特定–19作が学校の図書館から撤去される〈CNET Japan(2023年8月17日)〉
生成AI画像は「二次的著作物」と日本写真家協会 「出典の明記を」〈ITmedia NEWS(2023年8月24日)〉
生成AIの急激な進化やSNSの変容とクリエイターやパブリッシャーはどのように向き合えばよいか?【HON-CF2023レポート】〈HON.jp News Blog(2023年9月13日)〉
AI新時代:「生成AIに聞けるので」と値下げ求められ 士業壊滅 に危機感〈毎日新聞(2023年9月19日)〉
クリエイターやパブリッシャーは、生成AIを敵視し規制強化を求めるべきか、あるいは、新しい技術を受け入れ生産性を高めるべきか【HON-CF2023レポート】〈HON.jp News Blog(2023年10月19日)〉
作家がセルフプロデュースし、生成AIが助けてくれる時代に、編集者にはどんな役割が求められるのか?【HON-CF2023レポート】〈HON.jp News Blog(2023年9月27日)〉

著作権

学校だよりのイラスト、著作権侵害で賠償金 フリー素材と誤認、12万円支払う 山武市の中学校で〈千葉日報オンライン(2023年3月11日)〉
大阪IR公表動画“利用許諾得ずの可能性高い著作物含まれる“|関西のニュース〈NHK(2023年4月17日)〉
「夏のイラスト フリー」で検索したのに…著作権者から賠償請求 学校だよりやHP掲載、明石市の小学校 | 明石〈神戸新聞NEXT(2023年5月26日)〉
「NURO 光」広告に既存イラストを使用? 写真素材サイトの無断転載が原因か…… イラストレーターの訴えに「広告は急遽停止」と謝罪〈ねとらぼ(2023年9月4日)〉
中学校「ほけんだより」にイラスト無断使用…教諭がネットから転載、25万3000円賠償:地域ニュース〈読売新聞(2023年11月28日)〉

表現規制

中川淳一郎に聞く雑誌の未来「ネットより雑誌のほうが自由な表現の場になっていく」〈Real Sound|リアルサウンド ブック(2023年2月23日)〉
漫画のエロ・グロ表現で犯罪が起こる? 「はじめの一歩」作者の憂い〈毎日新聞(2023年6月29日)〉
pixivのAndroidアプリ、Google Playストアから消滅。約1週間が経過するも復活せず【やじうまWatch】〈INTERNET Watch(2023年7月11日)〉
なぜ不健全図書を規制するのか 「必要」と主張する審議会委員に聞く〈毎日新聞(2023年7月19日)〉

社会その他

有償等オンライン資料の制度収集の開始について〈国立国会図書館―National Diet Library(2023年1月4日)〉
ジャニーズ事務所のメディアコントロール手法 「沈黙の螺旋」は破られるのか〈朝日新聞GLOBE+(2023年3月30日)〉
朝日新聞、講談社「ガーシー」本に厳重抗議 著者は元社員…「取材情報の無断利用」など問題視〈J-CAST ニュース(2023年3月30日)〉
出版市場が停滞するなか、じつは「児童書」は成長を続けているという「意外な事実」(飯田一史)〈マネー現代 | 講談社(2023年4月12日)〉
openBDプロジェクト、「openBD API(バージョン1)」の提供終了を発表〈カレントアウェアネス・ポータル(2023年7月28日)〉
開店意欲減退で書店数減に拍車 大手取次の取引書店推移で開店数減少顕著に〈BookLink(2023年9月15日)〉
電子図書館(電子書籍サービス)導入図書館(2023年10月01日)〈電流協(2023年10月24日)〉
第25回「図書館総合展」、4年ぶりにパシフィコ横浜で開催〈新文化オンライン(2023年10月27日)〉
JIAA ネット上の情報 信頼する条件は「不快な広告表示されないこと」〈文化通信デジタル(2023年10月30日)〉
文学フリマ東京、一般入場を有料化 東京ビッグサイトでの開催も発表〈KAI-YOU.net(2023年11月3日)〉
ライトノベルの人気は本当に衰えたのか? あらゆるジャンルに波及したラノベ的要素を考察〈Real Sound|リアルサウンド ブック(2023年11月12日)〉

経済(Economy)

サービス終了

未来屋書店「mibon電子書籍」8月終了 「honto」に引き継ぎ〈文化通信デジタル(2023年7月5日)〉
総合書店「honto」、本の通販サービスを終了へ ネットサービス縮小 大日本印刷が発表〈ITmedia NEWS(2023年12月1日)〉

企業業績

【決算・人事】講談社 84期売上金額ベースでは前期超え〈文化通信デジタル(2023年2月22日)〉
メディアドゥ通期減収減益、LINEマンガとの契約終了響く〈アニメーションビジネス・ジャーナル(2023年4月15日)〉
集英社 第82期決算は増収減益 デジタル収入が前期比15.9%増〈文化通信デジタル(2023年9月4日)〉

市況

2022年紙+電子出版市場は1兆6305億円で前年比2.6%減、コロナ前の2019年比では5.7%増 ~ 出版科学研究所調べ〈HON.jp News Blog(2023年1月25日)〉
2022年コミック市場は6770億円前年比0.2%増で微増ながら4年連続成長で過去最大を更新 ~ 出版科学研究所調べ〈HON.jp News Blog(2023年2月24日)〉

事業譲渡・買収

「マンガ図書館Z」運営のJコミックテラス、ナンバーナイン子会社に〈ITmedia NEWS(2023年3月28日)〉
ACCESS最終赤字14億円 2〜10月、電子出版事業売却〈日本経済新聞(2023年11月29日)〉

取次・書店流通

紀伊国屋書店・CCC・日販が新会社設立へ、AIなど活用し出版流通改革〈日経クロステック(2023年6月23日)〉
溜池山王に完全無人書店「ほんたす」1号店〈Impress Watch(2023年8月1日)〉
出版取次の日販、コンビニ雑誌配送を25年初めに取りやめ…書店配送への影響に懸念も〈読売新聞(2023年11月10日)〉
書店のドン「紀伊國屋」がTSUTAYAと組んだ裏側 紀伊國屋会長に合弁会社設立の狙いを直撃 | メディア業界〈東洋経済オンライン(2023年12月19日)〉

新商品・サービス

小学館が「次世代」文学全集 電子版で開く世界の扉〈中日新聞Web(2023年3月3日)〉
ショートマンガ特化サービス「YOMcoma」 投稿者と読者に刺さる〈日経クロストレンド(2023年7月12日)〉
「少年ジャンプ+」がアニメ、漫画など映像コンテンツのコンテや漫画ネームをつくれるアプリ「World Maker」をリリース〈GAME Watch(2023年7月12日)〉
JPIC・版元ドットコムなど 共同で「書店在庫情報プロジェクト」始動 書店在庫・図書館検索との連携など目指す〈BookLink(2023年12月15日)〉
Pontaポイントがたまる電子書店「Pontaマンガ」開始 「キングダム」「進撃の巨人」「SPY×FAMILY」など最大10万作を配信〈ITmedia Mobile(2023年12月21日)〉

生成AIと経済

「神絵が1分で生成される」 進化するAI、イラストレーターの仕事を奪うのか|オリジナル 特集〈Yahoo!ニュース(2023年2月4日)〉
中国、画像生成AIでイラストレーターの失業増加 求人7割減の都市も〈36Kr Japan(2023年5月1日)〉
AI画像で作った写真集で月10万円以上の副収入が得られる? AIアイドル、ヌード、グラビア写真集をKindle出版して稼ぐための注意点とは〈集英社オンライン(2023年5月28日)〉
「AI使うから報酬安く」フリーライターに突然の要求、違法の恐れも〈朝日新聞デジタル(2023年8月10日)〉
オンラインストアを侵食するAI生成本–実在の著者をかたるケースも〈CNET Japan(2023年8月17日)〉
グーグル、生成AI「Duet AI for Google Workspace」を企業向けに提供開始–月額30ドル〈CNET Japan(2023年8月30日)〉

経済その他

「この品切れ重版未定本を重版してくれ、全部買い取ってウチで売り切るから」 書泉グランデが強気すぎる重版実施→すぐに完売して話題に〈ねとらぼ(2023年3月29日)〉
講談社、「ゲームの歴史」を販売中止に 「事実と異なる記述あった」と認める 修正販売は予定なし〈ITmedia NEWS(2023年4月7日)〉
インボイス導入1カ月「想定以上に負担」 混乱続く企業〈日本経済新聞(2023年11月4日)〉
GoogleがAdsense広告を2024年に「クリック単価」から「インプレッション単価」に移行へ〈GIGAZINE(2023年11月7日)〉

技術(Technology)

生成AIと技術

AIでイラストを“トレパク”? 既存画像から再生成する「i2i」機能を巡る法解釈〈ITmedia NEWS(2023年1月25日)〉
AIが生成した文章、判別の研究進む AI研究団体などデモを公開〈AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議(2023年1月31日)〉
「画像生成AIから自分のイラストを守る」学習・模倣の対策ツール「Glaze」無償公開へ〈KAI-YOU.net(2023年2月22日)〉
「AIに仕事は奪われませんよ」から「今度は本当に奪われますよ」のヤバすぎる逆転…「第4次AIブームは《インターネットの発明》を超えるインパクトになる」と松尾豊さんが断言する理由(サイエンスZERO)〈現代ビジネス | 講談社(2023年3月13日)〉
AIフル活用の「Microsoft 365 Copilot」。文書もプレゼン作成もAIとの対話で完結〈PC Watch(2023年3月17日)〉
Adobeから画像生成AI「Firefly」登場。権利関係もクリア〈PC Watch(2023年3月21日)〉
AI成果物が急増したことで「AI生成コンテンツをAIが学習するループ」が発生し「モデルの崩壊」が起きつつあると研究者が警告〈GIGAZINE(2023年6月14日)〉
上原亜衣がAI写真集を出版。元トップセクシー女優が挑む“AI革命”〈日刊SPA!(2023年6月28日)〉
ガートナーが2023年の日本版ハイプ・サイクル発表、生成AIは過度な期待のピーク期〈日経クロステック(2023年8月17日)〉
アドビの生成AI「Adobe Firefly」が正式提供開始、商用利用も可能でフォトショやイラレとの連携も〈ケータイ Watch(2023年9月13日)〉
AI によるコンテンツ収集を止める効果的な手段はない? 懐疑の目を向けるメディアたち〈DIGIDAY[日本版](2023年10月6日)〉
AI製の偽画像、「見えない証拠」で暴く 生体情報や色調〈日本経済新聞(2023年10月23日)〉
自分の文章がAIに学習されているか調べるツール 米国チームが開発〈ITmedia NEWS(2023年11月20日)〉

技術その他

ネットの健全性確保へ、「フェイク」識別しやすく…国内外メディアなど技術研究組合〈読売新聞オンライン(2023年1月17日)〉
メディアドゥと早川書房、NFTの電子書籍付き新書〈日本経済新聞(2023年6月1日)〉
アップル、ゴーグル型のXRデバイス「Vision Pro」発表、米国で3499ドル〈ケータイ Watch(2023年6月6日)〉
アプリの9割に「ダークパターン」、消費者を欺く画面デザイン…国内の規制は遅れる〈読売新聞(2023年7月30日)〉

2024年はどんな年に?

 さて、2023年ももうすぐ終わり。2024年はどんな年になるでしょうか? 毎年恒例、年始の動向予想をお楽しみに。それではよいお年をお迎えください。

2023年のキュレーションログ

脚注

noteで書く

広告

著者について

About 鷹野凌 827 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
タグ: / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / /

コメント通知を申し込む
通知する
0 コメント
高評価順
最新順 古い順
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る