2024年出版関連動向回顧と年初予想の検証

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 HON.jp News Blog 編集長の鷹野が、年初に公開した出版関連動向予想12024年出版関連の動向予想〈HON.jp News Blog(2024年1月10日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/46075
を検証しつつ、2024年を振り返ります。

2024年概況

 まず概況から。出版科学研究所「出版指標マンスリー・レポート」2024年12月号によると、2024年1~11月期の紙の書籍雑誌推定販売額は9172億円で、前年同期比5.7%減でした22024年11月期 紙書籍雑誌推定販売金額は前年同月比5.7%減 ~ 出版指標マンスリーレポートより〈HON.jp News Blog(2024年12月25日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/53448
。うち、書籍は5471億円(同4.2%減)、雑誌は3702億円(同7.4%減)とのことです。通期に関しては「年間での販売金額1兆円割れを回避できるかどうかは12月期の結果次第と厳しい状況が続いている」とのコメントがありました。

通期の紙出版市場は?

 そこで例年同様、2023年12月実績に2024年1~11月期の前年同期比を当てはめて推計してみます。2023年12月実績は、書籍が483億1500万円、雑誌が404億7600万でした。書籍が4.2%減で約463億円、雑誌が7.4%減で約375億円。つまり年間では、書籍が5934億円、雑誌が4077億円、合計1兆0011億円、辛うじて1兆円は割り込まない計算です。

 ただし、毎回注意喚起しているように、出版科学研究所による出版物の推計販売額は、紙は取次ルートのみです。近年拡大しているとされる書店と出版社の直接取引や、出版社自身による直販も出版科学研究所の推計には含まれません。

 日本出版販売『出版物販売額の実態 2024』によると2023年度の販売ルート別出版物販売額で、リアル書店・コンビニ・インターネット(物理のみ)・その他取次経由・出版社直販のうち、対前年比で伸びているのは出版社直販だけ3書店7744億円、インターネット2834億円…出版物の売り場毎の販売額推移をさぐる(2024年版)(不破雷蔵) – エキスパート – 〈Yahoo!ニュース(2024年12月28日)〉
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/887209e1c8101816e673ce04f8766b41ec4ce5ee
だった点は指摘しておくべきでしょう。

 また、コミケ、コミティア、文学フリマ、赤ブーなどの同人誌市場も含まれていません。Shopify、BASE、STORES、BOOTHなどのネットショップ販売も同様です。矢野経済研究所による「オタク」市場調査によると、2023年度の同人誌市場は約1058億円にまで達しています(ダウンロード販売を含む)4「オタク」市場に関する調査を実施(2023年) | ニュース・トピックス〈矢野経済研究所(2023年12月27日)〉
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3383

電子出版市場

 出版科学研究所による電子出版市場推計は例年通り、現時点では集計中です。7月に発表された上半期(1~6月)の電子出版市場は2697億円(同6.1%増)でした52024年上半期出版市場(紙+電子)は7902億円で前年同期比1.5%減、電子は2697億円で6.1%増 ~ 出版科学研究所調べ〈HON.jp News Blog(2024年7月25日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/49877
。上半期、電子書籍・電子雑誌はプラス成長に転じています。下半期が上半期と同じ成長率と仮定すると、通期では電子コミック5145億円、電子書籍450億円、電子雑誌85億円、計5679億円となります。

 出版科学研究所の電子出版市場推計は「読者が支払った金額の合計」であり、定額読み放題は含まれますが、広告収入や電子図書館への販売額は含まれません。紙も電子も、統計に出てこない出版領域が、意外と大きくなっているかもしれないことには注意が必要です。

書籍:雑誌:コミックを紙+電子で考えると?

 出版科学研究所は、毎年1月25日に年間の出版市場推計を発表しています。しかしこのタイミングでは、紙の市場が「書籍」「雑誌」の2つだけなのに対し、電子の市場は「コミック」「書籍」「雑誌」の3つに分類されています。コミック市場の詳細は、2024年4月から「季刊 出版指標」春号での発表となりました。

内側の細い(濃い)線が1月25日発表の数字で、外側の太い(薄い)線がコミックを分離した数字のグラフ(2000年から2023年までの出版市場)
内側の細い(濃い)線が1月25日発表の数字で、外側の太い(薄い)線がコミックを分離した数字[オリジナルサイズの画像はこちら(ご自由にどうぞお使いください)
 紙の市場を電子と同様に「コミック」「書籍」「雑誌」の3つに分類しなおし、紙+電子で考えると、2023年の市場占有率はコミックが43.5%、書籍が39.9%、雑誌が16.6%でした62023年出版市場(紙+電子)の占有率はコミック43.5%:書籍(コミックを除く)39.9%:雑誌(コミックを除く)16.6%に ~ 出版科学研究所調査より〈HON.jp News Blog(2023年4月30日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/47277
。電子出版市場の拡大に伴い、コミックは2017年に雑誌を超え、2022年には書籍も超え、いまや出版物の販売市場で最大勢力になっています。

 さらに、MANGA総研の推計によれば、コミックに加え映像・ゲーム・グッズ・イベントなどIP(Intellectual Property)全体で考えると、2022年の時点で国内約2.2兆円、海外約1.5兆円、合計3.7兆円超の市場規模にまで成長しているとのことです7MANGA総研が第0回マンガアニメのIPリサーチ調査実施マンガ・アニメIPのグローバル市場規模は約3.7兆円超に!IMART2024追加情報等〈一般社団法人MANGA総合研究所のプレスリリース(2024年11月8日)〉
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000145029.html

 ただしここには、コミカライズやアニメの原作にされることも多いライトノベル・ライト文芸などの数字は含まれていないようです。もっとも、私の試算でも紙と電子を合わせたライトノベル市場は2023年で510億円程度8『ライトノベル市場はほんとうに衰退しているのか? 電子の市場を推計してみた』〈HON.jp Books(2024年12月1日発売)〉
https://hon.jp/news/books/9784910832166-9784910832173
なので、マンガ・アニメのIP市場と比べたら誤差の範疇かもしれません。

 このように、コミックやライトノベルのようにIP展開しやすいジャンルと、それ以外のIP展開が難しいジャンルとでは、同じ出版物でも状況がまったく異なります。まさに“異世界”ほどの隔たりがあると言って良いでしょう。

年初にはこんな予想をしていた

 HON.jp News Blogでは2024年に、各SNSや「日刊出版ニュースまとめ」で5576本の記事を紹介し92024年のキュレーションログはこちらのスプレッドシートで確認できます
https://docs.google.com/spreadsheets/d/e/2PACX-1vTvMbkatEbCvyqU67myUyAOVCSMTCFBWsW91Xs4Bx7vNXkcYjBTdCHEgBfwRVfe41Nsl5q5a8C-rY3k/pubhtml
、その中から「週刊出版ニュースまとめ&コラム」で569本の記事にコメントしてきました(※補足の小見出しは除いた数字)。それらを踏まえて、年初の予想を検証します。私が年初に挙げた予想は以下の5つです。自己採点結果を右端に付けておきます。

  • 雑誌:D2Cなど広告以外へのビジネスモデル転換が進む → ◯
  • 書籍:読書バリアフリー対応が進む → △
  • マンガ:コンテンツの輸出がさらに拡大する → ◎
  • 編集:エディターシップのニーズがさらに高まる → ◯
  • 市場:ファンコミュニティ施策の重要性が高まる → ◯

 なお、12月28日には毎年恒例の年末特番「HON.jp News Casting」で識者の方々とともに1年間の振り返りを行いました10【年末特番】2024年の出版ニュースを振り返る ―― HON.jp News Casting / 大西隆幸×菊池健×libro×古幡瑞穂×西田宗千佳×鷹野凌
https://www.youtube.com/live/3odVPwysAiY
。こちらも合わせてご覧いただけたら幸いです。

D2Cなど広告以外へのビジネスモデル転換は進んだ?

 主に定期刊行物の「雑誌」や「新聞」という切り口での予想でした。メディアビジネスが広告依存からの脱却を図るため「D2Cなど」に力を入れていくだろうという予想です。サブスク、記事のバラ売り、まとめて書籍化、イベント開催、関連の物販、寄付など、広告以外のさまざまなモデルの模索が進められるだろうと考えていました。

嫌われるウェブ広告

 前述の年末特番でも大きな話題になりましたが、ウェブメディアの広告はいまだかつてないほど酷いありさまになっています。原因の1つは広告単価の下落で、それを補うため「広告面を増やす」という対処が採られた結果、多くのウェブメディアは広告だらけになってしまいました。

 ファーストビューがほとんど広告という状況も珍しくなく、記事本文の一段落ごとに広告が差し込まれていたり、記事が数百字レベルで何ページにも分割され[次へ]を押すと毎回全画面広告が表示されたり、一定時間広告を閲覧しないと続きが読めなかったりすることを、一日に何度も何度も経験します。

 ブラウザの[戻る]ボタンを押すと強制的に広告が差し込まれたり、Better Ads Standardsで禁止されているはずの音声付き自動再生動画広告11Ad Experience: Auto-playing Video Ads with Sound [Desktop]〈Coalition for Better Ads〉
https://www.betterads.org/desktop-auto-playing-video-ad-with-sound/
や、サイドメニューの上に表示され何度×で消しても復活するポップアップ広告など、多くのウェブメディアがユーザー体験を損なう状態に陥っています。そのうえ内容的にも不快な広告も多いという。

 とはいえ、不快なだけならまだマシなほうで、Facebookは一時期有名人を装った投資詐欺広告だらけになっていましたし、通知アイコンを装った詐欺広告も数回目撃しました。警察への対処要請が行われたり12広がるSNS上の「詐欺広告」被害、前澤友作氏は警察に対応要請 事業者側の責任どうなる?〈弁護士ドットコム(2024年4月22日)〉
https://www.bengo4.com/c_18/n_17479/
、米Meta社とFacebook Japanが前澤友作氏から肖像権侵害などで訴えられたり13前澤友作さんになりすましたSNS偽広告訴訟 メタ側が争う姿勢示す|IT・ネット〈NHK(2024年7月9日)〉
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240709/k10014506351000.html
、といった事態にもなっています。その後、あからさまな詐欺広告はあまり見かけなくなったので、審査体制が以前はザルだったということなのでしょう。

 そういうSNSの状況を批判していた大手新聞社のサイトにも、Microsoft Windows Defenderに似せた偽警告のサポート詐欺広告に何度も遭遇するという、なんとも皮肉な状況でした14サポートを装った怪しい警告にご注意を〈読売新聞(2024年7月19日)〉
https://www.yomiuri.co.jp/topics/20240719-SYT8T5591569/
。笑えません。ほんと、笑えない。ここは地獄か。

 もはや、アドブロックなしでのウェブは危険な場所で、安心して閲覧できない状態になったと言っても過言ではないでしょう。私自身は「いまウェブ広告がどういう状況なのか?」を把握するため未導入ですが、本音を言えば導入したいです。相当我慢しています。

 デジタル市場法(DMA)が発効してブラウザ選択画面が表示されるようになったEUでは、デフォルトでアドブロック機能が搭載されている「Brave」のインストール数が急増しているそうです15ウェブブラウザ「Brave」のインストール数が急増、Appleがデジタル市場法準拠のためブラウザ選択画面を追加した影響か〈GIGAZINE(2024年3月14日)〉
https://gigazine.net/news/20240314-web-browser-brave-installs-after-browser-choice-screen/
。また、アドブロックではありませんが、Appleがブラウザ「Safari」に新機能「気を逸らす項目を非表示」を搭載し、邪魔な表示を消せるようにしたことも大きな話題になりました16アップルの「気をそらす項目を非表示」から感じるウェブ広告への危機感〈HON.jp News Blog(2024年9月23日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/52120

 そしてアドブロックなどが普及することにより、真面目な内容で広告も控えめなメディアも巻き込まれてしまっているのが現状です17【お願い】広告ブロッカーの除外設定をお願いします。〈すまほん!!(2023年12月24日)〉
https://smhn.info/202312-please-exclude-our-domain-from-your-ad-blocker
。驚くことに、このようなありさまでも日本のインターネット広告全体はまだ成長を続けている18「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」 – News(ニュース)〈電通ウェブサイト(2024年3月12日)〉
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2024/0312-010700.html
そうです。しかし私は、このままでは広告収入に依存したウェブメディアに明るい未来はないと思います。

 なお、HON.jp News Blogでは2020年10月から、Google AdSenseなどの運用型広告をすべて止めています。また、2022年2月からは無料ユーザー登録で予約型広告や自社広告も非表示になるなどの特典を提供しています19広告掲載のご案内〈HON.jp News Blog〉
https://hon.jp/news/ad
。Googleが「自動広告」を始めたときに嫌な予感がして、その後、広告モデルに背を向けたのですが、その予感が的中してしまったことに暗澹たる思いです。

サブスクリプションはどうか?

 では広告以外のビジネルモデルの状況はどうなっているでしょうか?

 日本新聞協会による調査によると、ペイウォール型のメディアは2020年から2024年にかけて倍増し、無料メディアは約3割減少しているそうです20ペイウォール型配信事業が増加 メディア開発委員会調査〈日本新聞協会(2024年8月13日)〉
https://www.pressnet.or.jp/news/headline/240813_15548.html
。毎日ニュースウォッチをしている体感でも、ペイウォールに阻まれることが非常に多くなりました。もはや価値ある情報の多くはペイウォールの向こう側にある状態になっていると言えるでしょう。

 人間が生きていくためには必須である水や食べ物と違い、情報がなくてもいますぐ死ぬことはありません。けれど、情報は「知っていると得をする、知らないと損をする」性質のものです。無料の情報が劣化し、良質な情報はみな有料という状況が続くと、持てる者と持たざる者の差はますます開いていくことでしょう。

 サブスクリプション型メディアの明るい話題としては、日経電子版の有料会員がついに100万人を突破21日経電子版、有料会員100万人超 法人・教育に広がる〈日本経済新聞(2024年12月10日)〉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL062O50W4A101C2000000/
したことや、日経BPのデジタルメディアの有料会員数が15万人を突破22日経BPのデジタルメディア、有料会員数が15万人を突破〈日経BP(2024年1月10日)〉
https://www.nikkeibp.co.jp/atcl/newsrelease/corp/20240110_2/
したことなどが挙げられます。

 また、「ダイヤモンド・オンライン」の有料会員が4.3万人を突破したり23市販No.1のビジネス経済誌『週刊ダイヤモンド』が「サブスク雑誌」として30年ぶりの大幅リニューアル!〈株式会社ダイヤモンド社のプレスリリース(2024年10月22日)〉
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000264.000045710.html
、「近代麻雀」がnoteで年間4000万円の収益を上げた24炎上中のプロ雀士に必ずLINEを送る…廃刊寸前だった麻雀雑誌に年間4000万円をもたらした編集長のアイデア 「麻雀の雑誌」というオワコンの代表格の大逆襲〈PRESIDENT Online(2024年4月12日)〉
https://president.jp/articles/-/80422
など、専門性や趣味性が高いメディアでは成功事例も出ています。

 そういう意味で、KADOKAWAが小説投稿サイト「カクヨム」で、有料会員向けの読書サービス「カクヨムネクスト」を開始25KADOKAWAがサブスク読書サービス「カクヨムネクスト」 人気作家の最新作がいち早く読める〈ねとらぼ(2024年3月13日)〉
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2403/13/news172.html
したことには注目しています。休刊した雑誌「電撃文庫MAGAZINE」や「ザ・スニーカー」のような、作家に連載で原稿料が支払われる場として機能するようになることを期待しています。

 そのいっぽうで、朝日新聞の「朝デジ」有料会員数は、4月時点の30.6万から10月には30.3万に減少しています26「朝日新聞メディア指標」を更新 | お知らせ〈朝日新聞社の会社案内(2024年10月31日)〉
https://www.asahi.com/corporate/info/15487077
。「月額4000円の新聞購読料は、若者には高すぎる」などという識者の声も目にしましたが27【詳報】第77回新聞大会 研究座談会 パネルディスカッション第1部「新聞は生き残れるか」〈The Bunka News デジタル(2024年10月24日)〉
https://www.bunkanews.jp/article/397644/
、月額980円の安価なベーシックコースがあってもこのありさまです。少なくとも料金プランだけの問題ではないでしょう。

 年初には「SmartNews+」が提供開始1カ月半で1万人突破28有料ビジネスニュースとクーポンを集約した購読サービス「SmartNews+」、提供開始1カ月半で累計購読者数1万人を突破〈スマートニュース株式会社のプレスリリース(2024年1月25日)〉
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000595.000007945.html
という話題もありました。しかし、同じように複数メディアの雑誌を束ねて提供している「dマガジン」は一時期300万人を突破していた29報道発表資料 : (お知らせ)「dマーケット」の契約数が1,500万を突破 | お知らせ〈NTTドコモ(2016年3月22日)〉
https://www.docomo.ne.jp/info/news_release/notice/2016/03/22_00.html
ことを思うと、複数のニュース提供社に分配するモデルとしてはまだ2桁数字が足らないと言わざるを得ません。今後に期待しましょう。
 
 サブスクリプション型モデルがダメなのではなく、やり方次第でしょう。内容に関しては、やはり専門性や趣味性の高さが重要だと思います。総合型のメディアでも、無料でどこでも読めるような浅く薄い情報ではなく、徹底的な深堀りや考察のようなもっと付加価値の高い情報がペイウォールの向こう側にあるなら(そしてそれが認知されれば)、対価を払う人も増えるのではないでしょうか。

 「週刊ダイヤモンド」編集長の浅島亮子氏がインタビューで、記事の書き方について「冒頭に答えを書く従来の逆三角形型の構成では、ペイウォール(有料課金の壁)を越えてもらえない」と答えていたのが非常に印象的でした30「週刊ダイヤモンド」が書店販売をやめる…創刊111年「老舗経済誌」のデジタルシフトを、担当局長&編集長が語った〈デイリー新潮(2024年12月23日)〉
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/12230601/
。メディアが変われば、文章もそれに適した形に変わるということでしょう。

他のビジネスモデルは?

 では、サブスクリプション以外のビジネスモデルはどうでしょうか?

 予想文の冒頭にある「D2C」はDirect To Consumerの略で、自社の商品を小売店などの中間業者を挟まずに直接顧客に販売することです。しかしいま、このD2Cビジネスは冬の時代を迎えているそうです31D2Cはオワコンなのか 多くのブランドが淘汰された背景に“闇深い”事情:日本のマーケティング最前線〈ITmedia ビジネスオンライン(2024年3月19日)〉
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2403/19/news035.html
。主に化粧品や健康食品などの領域の話ですが、ステマ規制の強化に伴う顧客獲得コストの高騰、解約トラブルの頻発、類似品参入による価格競争の激化などが要因として挙げられています。これはむしろ、D2Cビジネスの健全化が進んでいると言えるのかもしれません。

 独立した「デイリーポータルZ」が黒字化という喜ばしいニュースもありました32「黒字、出ちゃいました」 独立から半年、デイリーポータルZの今 林雄司に聞く〈デイリーポータルZ(2024年8月1日)〉
https://dailyportalz.jp/kiji/DPZ-semi-annual-report-20240801
。広告は読者体験を損なわない程度に残しつつ、サポーター制度(はげます会)やBOOTHでのグッズ販売などで収益を得ています。テキスト中心の静的サイトなのに以前はサーバー代がかかりすぎていたのもありますが、このモデルで費用を適正規模に抑えば黒字化できることを示した意味は大きいです。

 英語圏は話者人口が多いことと、寄付文化が根付いていることもあり、以前からこういうビジネスモデルのメディアが運営されてきました。たとえばイギリスの「The Guardian(ガーディアン)」は、記事は無料で公開していますが、読者からの寄付は通年で約3000万ドルにも及んでいます33英国の「ガーディアン」が米国でも記録的な寄付を集める、その成功の背景〈Media Innovation(2024年1月27)〉
https://media-innovation.jp/article/2024/01/27/141322.html

 日本で同じモデルを同じ規模でやることは難しいかもししれません。しかし、日本ファンドレイジング協会の「寄付白書」によれば、日本でも徐々に寄付文化は広がりつつあります。佐藤友美氏のメディア「CORECOLOR」のように、クラウドファンディングで600万円以上集める事例も出てきました34WebメディアCORECOLOR(コレカラ)をもっとたくさんの人に届けたい!〈CAMPFIRE(2024年12月18日終了)〉
https://camp-fire.jp/projects/800273/view
。寄付型メディアにも、まだまだ可能性はあると思えます。そういう期待も込め、2024予想の自己採点は◯としておきます。

読書バリアフリー対応は進んだ?

 主に「書籍」という切り口での予想でした。電子出版物の点数増加はもちろんですが、電子図書館サービスや電子書店でのアクセシビリティ対応が進むことを期待しての予想でした。

業界団体の動き

 2023年に芥川賞を受賞した市川沙央氏『ハンチバック』の広げた波紋は大きく、業界関係者にも強い影響を与えました。2024年には、読書バリアフリーやアクセシビリティに関連する記事が以前より目に付くようになりました。

 業界団体にも動きがありました。4月には、日本文芸家協会、日本推理作家協会、日本ペンクラブが「読書バリアフリーに関する三団体共同声明」を発表しました35ペンクラブなど文芸3団体が読書バリアフリーに関する共同声明を発表〈朝日新聞デジタル(2024年4月9日)〉
https://www.asahi.com/articles/ASS4933XKS49UCVL00NM.html
。それに答える形で、6月には日本書籍出版協会、日本雑誌協会、デジタル出版者連盟(旧・電書協)、日本出版者協議会、版元ドットコムが「読書バリアフリーに関する出版5団体共同声明」を発出しています36日本書籍出版協会・日本雑誌協会・デジタル出版者連盟・日本出版者協議会・版元ドットコム、「読書バリアフリーに関する出版5団体共同声明」を発出〈カレントアウェアネス・ポータル(2024年6月28日)〉
https://current.ndl.go.jp/car/222191
。これにより、著作者や出版者側は、対応していく意思を示したことになります。

 しかし、2024年予測でも指摘したように、制作プロセスだけが対応してもダメで、流通や利用の過程も変わっていく必要があります。2024年予測のとき示した表を、改めて掲出します。

 ABCの3列あるうち、著作者や出版者が関わる「A.生産(制作)の課題」がクリアできても、電子取次・電子書店・電子図書館が関わる「B.流通(購入)の課題」と「C.利用(読書)の課題」がクリアできていなければ、視覚障害のある読者には本を届けることができないのです。たとえば、2022年8月に制定された、電子書籍のアクセシビリティを評価する日本産業規格 JIS X 23761の要件の一つに、印刷版ページ番号情報(ページナビゲーション)があります。

 ところが、本の制作段階でこの印刷版ページ番号情報を埋め込んでも、現状では「埋め込まれている」という情報が電子書店での購入前・電子図書館での貸出前に表示されないのはもちろん、本を閲覧するビューア側もほとんどが対応していません37リフロー型電子書籍に印刷版のページ番号が表示されない(できない)現状について。〈日本電子出版協会(2024年6月1日)〉
https://www.jepa.or.jp/keyperson_message/202406_6541/
。せっかくJIS規格になったのに、対応は進んでいないのです。

 実は、カンファレンス「HON-CF2024」のセッション1「EPUB 3.3普及へ向けた課題」には、デジタル出版者連盟で「電書協ガイド」のアップデートに関わっているKADOKAWA高見真也氏に登壇いただきました38新たな仕様とどう向き合うか? EPUB専門家が語り合った【HON-CF2024レポート】〈HON.jp News Blog(2024年11月19日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/52835
。というか、関わっていることを知っていたので、お声がけしたら快く引き受けてくれたのです。感謝。

 おそらくそういったことも踏まえてだと思うのですが、この年末にデジタル出版者連盟から出たプレスリリースには「電書連は、今後もデバイス開発・製作会社や配信事業者の皆さまが、なお一層積極的に市場での合成音声読み上げ(TTS)への対応を進めていかれることに期待してまいります」39読書バリアフリー法への市場での対応に対する期待〈デジタル出版者連盟(2024年12月20日)〉
https://dpfj.or.jp/sites/wp-content/uploads/2024/12/20241220_dpfj_release.pdf
と記されていました。

 つまり、電子取次・電子書店・電子図書館の対応を促しているわけです。最近、毎年のように「電子書籍市場の拡大等に関する調査報告」40「令和5年度電子書籍市場の拡大等に関する調査」に関する報告書及び「出版者からの電磁的記録の提供」に係る事務連絡を公表しました〈経済産業省(2024年8月23日)〉
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/index.html
を出している経済産業省にも、最初に解消すべきボトルネックがどこにあるのかがおそらく伝わったのではないでしょうか。来年以降の動きに期待しましょう。2024予想の自己採点は△としておきます。

コンテンツの輸出はさらに拡大した?

 主に「マンガ」という切り口での予想でした。今年こそ実態をきっちり調べて記事にしたいと思っていたのですが、MANGA総研(代表理事 菊池健氏)がマンガ・アニメのグローバルIP市場調査を毎年行っていくと発表しました41MANGA総研が第0回マンガアニメのIPリサーチ調査実施マンガ・アニメIPのグローバル市場規模は約3.7兆円超に!IMART2024追加情報等〈一般社団法人MANGA総合研究所のプレスリリース(
2024年11月8日)〉
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000145029.html
ので、私は「あ、これはもうお任せしちゃえばいいな」と安心しています。

マンガの海外輸出は2022年2240億円

 そのマンガ・アニメIP市場調査によると、マンガの海外輸出は2022年の時点で2240億円だったそうです。これは内閣官房 新しい資本主義実現本部・新しい資本主義実現会議も参照しているヒューマンメディア「日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベース」42新しい資本主義実現会議(第26回)〈内閣官房ホームページ(2024年4月17日)〉
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai26/gijisidai.html※資料1.基礎資料
を基に、日本の出版物の海外市場3200億円のうち7割がマンガであると仮定して算出したものとのことです。おそらくこの「7割」という数字は、出版社などからのヒアリングによるものでしょう。

 また、海外マンガは「前年比15-18%(推定値)程度で拡大している」との推定もあります。さらに拡大しているのは間違いないでしょう。2024予想の自己採点は◎としておきます。

AI翻訳での大量生産は現地に受け入れられるか?

 海外ニーズの拡大に応えるため、急成長したAI技術を翻訳に活用する動きも出てきました。マンガ特化型のAI翻訳には、先行事例として東京大学発ベンチャーで大日本印刷も絡んでいる「Mantra」があります。2024年には、小学館やJICが計29億円出資した新興企業オレンジ43AI翻訳で漫画5万点輸出へ 小学館やJIC、新興企業に29億円〈日本経済新聞(2024年5月6日)〉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA030YP0T00C24A5000000/
が話題になりました。資金調達額が「Mantra」とは一桁違います。翻訳だけでなく、自ら海外向け電子書店の運営をするあたりが大きな違いです。

 ただ、この動きには日本翻訳者協会から懸念が表明44AIによる漫画の大量翻訳、日本翻訳者協会が懸念を表明「作品の価値大きく損なう」〈KAI-YOU.net(2024年6月4日)〉
https://kai-you.net/article/89763
されていたり、一部ファンからは反発の声もあるようです45生成AIで日本のマンガを爆速翻訳、日英同時配信で世界に挑む〈MIT Tech Review(2024年12月4日)〉
https://www.technologyreview.com/2024/12/02/1107562/this-manga-publisher-is-using-anthropics-ai-to-translate-japanese-comics-into-english/
。チームで数カ月を要する翻訳作業が数日に圧縮されたとして、品質が担保できるのか? が懸念されています。

 個人的には、JEPA副会長の下川和男氏がカンファレンス「HON-CF2024」の基調講演Ⅲ「電子出版・近未来」で予測46生成AIの進化によって、電子出版の未来はどうなるのか?【HON-CF2024レポート】〈HON.jp News Blog(2024年12月17日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/53352
したように、ウェブと生成AIの普及によりいずれ言語の壁はなくなると思います。細かなニュアンスの違いは人による翻訳でも発生しますし、もっと深く知りたいなら「現地語の原典を読め」ということになるでしょう。

エディターシップのニーズがさらに高まった?

 主に「人材」という切り口での予想でした。生成AIの普及に伴い編集能力(エディターシップ)のニーズがさらに高まるという予想です。2024年は、進化した生成AIが社会へ浸透していく過程で、さまざまなトラブルや軋轢も発生し続けた1年でした。

生成AIの出力に起因するトラブル

 前述のマンガ翻訳の事例もそうですが、生成AIの出力にはまだ品質の懸念があります。利用するサービスやプロンプト次第というところもありますが、トラブルが起きやすいのは「生成AIに“答え”を求める」「生成AIの出力を鵜呑みにする」ケースだと思います。

 典型例が、福岡県のPR記事が生成AIで作成され、実在しない観光名所などが案内されていたという事件でしょう47生成AIで福岡のPR記事作成→“架空の祭りや景色”への指摘が続出 開始1週間で全て削除する事態に〈ITmedia AI+(2024年11月8日)〉
https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2411/08/news167.html
「生成AIの知見不足だった」人による確認も不十分 誤情報を記事化〈毎日新聞(2024年11月17日)〉
https://mainichi.jp/articles/20241116/k00/00m/040/250000c
。記事制作を請け負った社長は「掲載情報が事実かどうか確認する視点は不十分だった」と述べていますが、人間の書いた原稿でも同じことをしたら痛い目にあいます。エディターシップが強く求められた事例です。

 また、大学生が生成AIの出力をそのままレポート課題の提出に使う事例48宿題もリポートも生成AIが作った「正解」丸写し、教諭は嘆く「これじゃ無料の代行業者だ」〈読売新聞(2024年4月30日)〉
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20240430-OYT1T50001/
もいくつか記事化されていましたが、これは多くの場合、ただの怠惰でしょう。生成AIの出現以前から行われてきた、先輩のノート丸写しとか、Wikipediaコピペの類例に過ぎません。単位がもらえればそれでいいと思われてしまっている、もっと学びたいと思ってもらえていないといった点を、教員の側も大いに反省すべきです。生成AIだけのせいにしたらダメ。

生成AIの利用自体のトラブル

 そのいっぽうで、「生成AIを使った」あるいは「使用が疑われた」だけでトラブルになるケースもまだ相次いでいます49【AI疑惑が拡散】ワコムの広告イラスト使用中止 ⇒「AIではない」の証明が必須の社会に? 懸念の声も〈BuzzFeed(2024年1月11日)〉
https://www.buzzfeed.com/jp/kenjiando/wacom-illust
クリスタに画像生成AIを搭載する予定ない──提供元セルシスが発表 「データセットがクリーンなものしか使わない」〈ITmedia NEWS(2024年2月22日)〉
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2402/22/news156.html
プリキュアの商品イラストに生成AI? Xで指摘相次ぐ→公式が否定する事態に 「現代の魔女狩り」との声も〈ITmedia NEWS(2024年3月22日)〉
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2403/22/news149.html
「この絵、生成AI使ってますよね?」──“生成AIキャンセルカルチャー”は現代の魔女狩りなのか 企業が採るべき対策を考える〈ITmedia AI+(2024年4月3日)〉
https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2404/03/news042.html
「AI脚本」を人気声優が朗読…銘打ったイベントは中止、「盗作」と批判相次ぎ〈読売新聞(2024年4月10日)〉
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20240410-OYT1T50098/
。その要因の一つに「(自他問わず)クリエイターがAIに仕事を奪われるのでは?」といった恐怖心があるように感じられます。そのためか、文章、翻訳、イラスト、マンガ、音楽、プログラミング、声の仕事など、表現手段によって反応の濃淡に差が出ているようにも思います。

 カンファレンス「HON-CF2024」の基調講演Ⅰではライター・エッセイストの佐藤友美氏に、人間とAIの違いはどこにあるのか? などについて語っていただきました50人間が書いたような文章を出力するAIが登場した時代に、生身の人間が書くことの意味【HON-CF2024レポート】〈HON.jp News Blog(2024年9月26日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/52186
。人間には取材ができる、書きながら考えられる、生老病死がある、アナログをデジタルにできるといった差異の明確化は、クリエイターのエディターシップのあり方を考える意味でも重要な指摘だったように思います。

ファンコミュニティ施策の重要性は高まった?

 主に「市場」との向き合い方、という切り口でした。今後は、広く一般大衆を対象とした「マスマーケティング」ではなく、ジャンルやターゲットを絞った、地味で目立たなくてもコツコツと堅実にファンの輪を広げていくやり方こそが求められている、という願望も入っていました。いま思うと、この予想は「雑誌」のビジネスモデル転換に含めたほうがよかったかもしれません。

 日本出版学会 出版デジタル研究部会では2022年10月に、KADOKAWAデジタル事業担当執行役員CDO(当時)の橋場一郎氏にご登壇いただきました。実はそのとき、今後のデジタル事業の大きな取り組み課題の1つとして「出版物という形だけに拘らない『Publishingの新しい形』をデジタルで実現する」という方向性を伺っていました51電子出版市場急成長の一翼を担う電子書店と電子取次――KADOKAWAグループのデジタル事業戦略〈YouTube(2022年10月20日)〉
https://www.youtube.com/watch?v=v8yaQtGpgkE

 正直に白状すると、そのとき資料で挙げられていた事例が「サクラナイツ(競技麻雀Mリーグのチーム)」と「FAV gaming(esportsのチーム)」だったこともあり、当時はあまりピンと来ていませんでした。しかしその後、KADOKAWAは雑誌「電撃G’s magazine」を休刊するのと同時に、ファンコミュニティサイト「G’sチャンネル」を立ち上げています52KADOKAWAに手応え 消える雑誌、そのブランドに命を吹き込む方法〈日経クロストレンド(2023年12月20日)〉
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00589/00085/

 思い返すと、2022年当時の橋場氏の資料には既に「ファンコミニティビジネスと出版のシナジー」「雑誌ブランドをファンコミュニティ化」「メディア(広告)ビジネスの再定義」と書かれていました。紙の雑誌が消えても、雑誌のブランドを活かしたビジネス展開は可能だと考え、当時から具体化に向け動いていたわけです。

 実はその文脈で、オープンカンファレンス「HON-CF2024」のセッション6「クリエイターと雑誌の未来 ~ 今後も飯を食わせてもらえますか?」に登壇いただいた株式会社ヘリテージの齋藤健一社長(当時・現代表取締役)を橋場氏から紹介いただきました53雑誌ビジネスの構造は変わってしまったが、コンテンツの価値は変わっていない【HON-CF2024レポート】〈HON.jp News Blog(2024年11月7日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/52646

 ヘリテージは、枻出版社から「Lightning」「趣味の文具箱」などの雑誌事業を継承して“偏愛”コミュニティをビジネスとする企業です。齋藤氏は「趣味性の高い領域こそデジタルに取って代わらない要素が多く残っている」とおしゃっていましたが、もしかしたら趣味だけでなく「専門性の高い領域」についても同じことが言えるかもしれません。

 株式会社プレジデント社は、2025年から食雑誌「dancyu」を季刊化するのと同時に、ウェブ、SNS、イベント、EC、リアル店舗などさまざまなメディアを活用した「食の総合プロデュース業」として展開していく方針を打ち出しています54食雑誌「dancyu」季刊化のお知らせ〈プレジデント社(2024年9月17日)〉
https://www.president.co.jp/information/release/20240917/
。今後はPRESIDENTT・dancyuともに「会員コミュニケーションによる事業創造」をし、「雑誌事業からファン事業へ転換」することに全社でチャレンジしていくそうです55プレジデント社 岸本圭介氏 「会員コミュニケーションの事業創造を通じ、雑誌事業からファン事業へ転換」〈DIGIDAY[日本版](2024年12月29日)〉
https://digiday.jp/publishers/inout2025-president-kishimoto/

 改めて調べてみると、ファンコミュニティ専門のプラットフォームはすでに複数存在します。文脈は少し異なりますが、オンラインサロンのプラットフォームも以前から存在します。DiscordやSlackなどのチャットツールや、FacebookやX(旧Twitter)などのSNSにもコミュニティ機能があります。仕組みは古いですが、いまだに活発なメーリングリストだって存在します。

 そう考えると、道具はすでにあるので、あとはやるだけなのかもしれません。

その他の大きな動き

 これ以外にも、2024年にはさまざまなことがありました。今年とくに気になったニュースを政治(Politics)、社会(Society)、経済(Economy)、技術(Technology)の4分野にわけて、ピックアップします。

政治(Politics)

AI規制

IT規制

国内
世界

NHKネット配信本業化

海賊版対策

書店支援

政治その他

社会(Society)

メディアミックスと原作者

書店支援

社会その他

経済(Economy)

M&A

サイバー攻撃

縦読みマンガ

決済サービス表現規制

取次と書店

市況

  • 2023年出版市場(紙+電子)は1兆5963億円で前年比2.1%減、コロナ前の2019年比では3.4%増 ~ 出版科学研究所調べ〈HON.jp News Blog(2024年1月25日)〉
    https://hon.jp/news/1.0/0/46198
  • 続・ライトノベル市場とはなにか? 規模はどうなっているのか?〈HON.jp News Blog(2024年2月9日)〉
    https://hon.jp/news/1.0/0/46245
  • 2023年コミック市場は6937億円 前年比2.5%増と6年連続成長で過去最大を更新 ~ 出版科学研究所調べ〈HON.jp News Blog(2024年2月26日)〉
    https://hon.jp/news/1.0/0/46520
  • 2023年出版市場(紙+電子)の占有率はコミック43.5%:書籍(コミックを除く)39.9%:雑誌(コミックを除く)16.6%に ~ 出版科学研究所調査より〈HON.jp News Blog(2024年4月30日)〉
    https://hon.jp/news/1.0/0/47277
  • 2024年上半期出版市場(紙+電子)は7902億円で前年同期比1.5%減、電子は2697億円で6.1%増 ~ 出版科学研究所調べ〈HON.jp News Blog(2024年7月25日)〉
    https://hon.jp/news/1.0/0/49877

経済その他

技術(Technology)

ハードウェア

生成AI

技術その他

2025年はどんな年に?

 さて、2024年ももうすぐ終わりです。2025年はどんな年になるでしょうか? 毎年恒例、年始の動向予想をお楽しみに。それではよいお年をお迎えください。

脚注

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著者について

About 鷹野凌 832 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

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