「漫画村元運営者、逃亡先で拘束」「作家や出版社の法務を支援するリーガルテックサービスとは」など、出版業界気になるニュースまとめ #381(2019年7月8日~14日)

週刊出版ニュース&コラム

《この記事は約 10 分で読めます》

 2019年7月8日~14日は「漫画村元運営者、逃亡先で拘束」「作家や出版社の法務を支援するリーガルテックサービスとは」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

【目次】

国内

APL、日本語書記技術WG報告書を公開 ~ W3CでのCSSやEPUB規格に日本語組版要件を適切に反映し実装を促進するために〈HON.jp News Blog(2019年7月8日)〉

 慶應義塾大学SFC研究所 Advanced Publishing Laboratory(以下、APL)は6月18日、日本語書記技術ワーキンググループの報告書(3月31日付)を公開した。これは、EPUB 3の規格策定に大きな影響があった JLreq(Requirements for Japanese Text Layout)を、電子化における優先順位の観点で記述し直すため、2017年11月からほぼ毎月1回行われてきた議論をまとめたもの。 この議論は、JLreq の個々の要件がどういう理由で何のため...

 非常にボリュームのある、重厚なレポート。記事を書くより、読むほうに時間がかかりました。ただ、日本語の組版に少しでも関わっている人は、目を通しておいたほうがいいでしょう。

ニコニコ漫画、作品を応援するスタンプギフト機能を追加 ~ クリエイター奨励スコアも加算〈HON.jp News Blog(2019年7月9日)〉

 株式会社トリスタは6月26日、運営するウェブサービス「ニコニコ漫画」のアプリ版に、新機能「スタンプギフト」を追加したことを発表した。読者は「ニコニコ漫画コイン」を使い、作品に対しスタンプを投稿することで、視覚的な応援とともにクリエイター奨励スコアも加算される。 スタンプギフトは、2月20日に追加された「読了後ギフト」に続くギフト機能。対象は投稿ユーザーまたは出版社が参加登録を行った作品で、ビューア...

 事前に予告されていた「春」より少し遅れましたが、追加機能がリリースです。スタンプが「投げ銭」とほぼ同じような機能を兼ねる形になっています。

オーディオブック定額サービス「audiobook CAMP」が個人向けの利用受付を開始〈HON.jp News Blog(2019年7月9日)〉

 株式会社オトバンクは6月27日、オーディオブック定額サービス「audiobook CAMP」の個人利用受付を開始した。6人の識者が選んだオーディオブックを毎月2冊、月額3000円(税込)で聴くことができる。 audiobook CAMPは4月に法人向けサービスとして展開が開始されたが、「個人でも使いたい」という要望を受け、個人利用の受付も開始することになったとのこと。提供内容は法人向けと同じで、オーディオブック専用アプリ「audiobo...

 法人向けを先に出したら、個人から使いたいという要望があって、追加することになったそうです。ラインアップが気になっていたので、リリースに添付されていた画像から拾い出してみました。

活字文化議員連盟公共図書館プロジェクトが答申を公開 ~ 司書の社会的地位向上や地域書店を優先した図書納入などを提言〈HON.jp News Blog(2019年7月9日)〉

 公益財団法人文字・活字文化推進機構は6月27日、活字文化議員連盟 公共図書館プロジェクトがまとめた「公共図書館の将来―『新しい公共』の実現をめざす―」(答申)を公開した。公共図書館の現状と、改革への課題や提言がまとめられている。 この答申は、公共図書館プロジェクトの委員や、公共図書館、システムベンダー、指定管理者、書誌情報作成企業、書店、装備団体、司書、有識者など13団体6個人からのヒアリングも含め、...

 図書館関連の方々は、目を通しておいたほうがよさそうな答申。地域書店を優先すべしというのは、税の域内還流という観点からの提言。なるほど。

講談社、海賊版リーチサイト「はるか夢の址」運営者に損害賠償請求〈ITmedia NEWS(2019年7月9日)〉

講談社が海賊版リーチサイト「はるか夢の址」に損害賠償を求める民事訴訟を提起。大阪地裁が7月9日に受理した。

 今年1月に実刑判決を受けた主犯格の3人に、1億6000万円の損害賠償請求。興味深いのは「編集著作権が侵害された損害」についての請求のみであるという点。単行本の権利侵害も、電子出版権が設定されている作品は、出版社が当事者になれるはず。なぜ編集著作権だけなのか。もっと言うと、恐らく講談社は2015年1月改正以前の契約でも、書協の2010年版テンプレートを使って電子出版に対応していたのではないかと思われるのですが……? 様子見なのでしょうか?

「漫画村」元運営者、フィリピンで拘束〈共同通信(2019年7月9日)〉

漫画村」関与の2人逮捕 運営者?にも逮捕状、友人か〈朝日新聞デジタル(2019年7月10日)〉

 人気漫画を無断で掲載していた海賊版サイト「漫画村」をめぐる著作権法違反事件で、漫画「ワンピース」の画像を誰でも閲覧できるようにしたとして、福岡県警などは10日、アルバイト藤崎孝太容疑者(26)=東京…

サイト閉鎖直後に出国逃亡か 「漫画村」運営主導の男〈日本経済新聞(2019年7月11日)〉

 先週の業界関連で最も話題になったニュースと言っていいでしょう。Cheena氏が個人調査により、運営者の名前を「星野路実」であると2017年8月2日時点で突き止めていたのがすごい(↓)。

 海外逃亡したのが2018年5月とのことですから、警察はそれまでのあいだになんとかできなかったのか……という気も。しかし、27歳とは、想像以上に若かった。2ちゃんねるまとめブログ「今日もやられやく」分裂騒動のころは、まだ20歳前後だったということに(↓このソースは真偽不明の匿名ブログであることをお断りしておきます)。

まだやってたの?→まだやってた。さすがにもう推理のドンデン返しはない、と思う。※この内容がどこまで正しいのか保証できません。細かい部…

メディアドゥ、AWSで構築した電子書籍の新流通システムをpixivコミックとマンガBANG!に提供開始〈HON.jp News Blog(2019年7月10日)〉

 株式会社メディアドゥは7月10日、クラウドを活用した電子書籍の新流通システムの開発が完了、ピクシブ株式会社「pixivコミック」と株式会社Amazia「マンガBANG!」への提供を開始したことを発表した。メディアドゥとシステム連携している電子書店はほぼすべて、2019年度中に新システムへの移管が完了する予定。 従来、メディアドゥのシステムはオンプレミス(自社運用)だったが、新システムはアマゾン ウェブ サービス(AWS...

 リリースでは触れられていませんでしたが、これが2019年2月期の決算説明資料に記されていた、出版デジタル機構とメディアドゥ合併に伴う「基幹システム統合」や「合従連衡フェーズに備えた基盤整備」(の一部?)ということになるのでしょう。「紙に比べて電子書籍が劣っている点(所有権や二次流通がない点など)」を解消するための取り組みだと理解しています。

好きな本を誰かにギフトとして贈ることが可能な電子書店〈HON.jp News Blog(2019年7月11日追記)〉

 あなたの好きな本を、家族や友人などにギフトとして贈ってみませんか? 金券的なギフトカードではなく、任意の本をギフトとして購入して誰かにプレゼントできる電子書店を集めてみました。もし他にもギフトができるところがあれば、情報をお寄せください。DLsite DLsite ゲオホールディングスのグループ会社、株式会社エイシスが運営する電子書店「DLsite」では、マイページ内の[購入履歴]から「ギフト」あるいは「ギフト...

 エイシス「DLsite」を追加。自分が購入済みの作品に限られるという点が、他にはない特徴です。なぜそういう形にしたのかを問い合わせてみたのですが、本稿執筆時点までに回答は得られませんでした……。

近代科学社Digital、理工系教科書の原稿を募集中 ~ 創立60周年記念で出版分担金がいまなら無料に〈HON.jp News Blog(2019年7月11日)〉

 インプレスグループの株式会社近代科学社は創立60周年を記念し、理工系の「教科書発掘プロジェクト」を実施している。近代科学社Digitalでは通常、出版分担金として基本費用10万円と編集支援費用が必要だが、同プロジェクトは無料。募集期間は7月31日まで。[8月1日追記:募集期間は8月31日まで延長された] 近代科学社Digitalは、株式会社インプレスR&Dの次世代型電子出版プラットフォーム「NextPublishing」を活用した...

 周囲に理工系の先生がいたら、ぜひ教えてあげてください。在庫を持たないので、毎年改訂してもモーマンタイというのが大きい。なお、文系については別途、座組みが少し違う「アスパラ」という支援サービスがあります。

 株式会社インプレスR&Dは9月12日、イースト株式会社と株式会社マイクロコンテンツとの業務提携により、主に文系の研究者が学術書や専門書を1冊から出版できる支援サービス「アスパラ」の開設を発表した。ブランドオーナーはイーストで、編集はマイクロコンテンツ、制作と流通をインプレスR&Dの「NextPublishing」が担当する。 「アスパラ」は、少部数しか見込めない専門的な分野でも出版ができるよう、...

小学館と集英社とFringe81、複数のマンガアプリへ一元管理で広告出稿や運用が可能な共同プラットフォーム「MangaAdPlatform」を8月提供開始〈HON.jp News Blog(2019年7月12日)〉

 株式会社小学館、株式会社集英社、Fringe81株式会社の3社は7月10日、出版社が運営する複数マンガアプリに対し一元管理で広告出稿や運用ができる共同プラットフォーム「MangaAdPlatform」(以下、MAP)の提供を8月に開始すると発表した。 現状、多くのマンガアプリが登場し、利用者も伸び続けている。ところが、それぞれのマンガアプリに掲載基準やフォーマットが存在するため、広告主や広告代理店が広告効果の追求や最適化を...

 出版社自ら広告運用プラットフォームを用意。汎用的なアドネットワークを使うより、マンガアプリ専用で作ってしまったほうがいいという判断なのでしょう。それは良い判断だと思うのですが、マンガアプリに広告を入れること自体の是非も考えておきたいところ。カカオジャパンの「ピッコマ」が、もし広告を入れるとゲームが中心になって可処分時間を奪われかねないから、収益が上がるのはわかっていてもやらない、というスタンスなのとは好対照です。どっちが正しいかは、私には判断できません。しかし、紙のマンガ誌には広告がほとんど入っていなかったことを思うと、うーん……。

違法サイトと印鑑文化をテクノロジーで駆逐 ~ 作家や出版社の法務もITで支援する“リーガルテック”サービスのいま〈HON.jp News Blog(2019年7月11日)〉

 弁護士ドットコム株式会社は7月9日、渋谷区の hoops link tokyo にてイベント「Legal Tech Forum Vol.3 知財の未来」を開催した。同社が提供する違法サイト撲滅支援ツールと、印鑑文化に立ち向かうクラウド契約サービスを中心に、知財の問題や出版の課題について語られたこのイベントをレポートする。 リーガルテックとは、法律(Legal)とテクノロジー(Tech)を組み合わせた造語で、法務をテクノロジーで支援する取り組み...

 当初、法律(Legal)とテクノロジー(Tech)を組み合わせた造語「リーガルテック」から始まるタイトルにしていたのですが、あまりに反響が薄かったため、タイトルを変更することに。出版社の業務改善に関わるツールなので、もうちょっと関心が高いかと思っていたのですが。竹書房の竹村氏が「中小だと法務担当者がいない可能性も。うちも実はつい先日までいなかった」と言っていたことを思うと、本来強い関心を持つべき分野なのに、おざなりにされている可能性がありそうです。

経産省、ブロックチェーン活用コンテンツを支援するJ-LOD補助金採択事業11件を発表 ~平成30年度補正予算「コンテンツグローバル需要創出等促進事業費補助金」事業者一覧公開〈仮想通貨 Watch(2019年7月12日)〉

経済産業省は7月11日、平成30年度補正予算「コンテンツグローバル需要創出等促進事業費補助金」(通称J-LOD:Japan content LOcalization and Distribution)のうち、ブロックチェーン技術を活用したコンテンツの流通に関するシステムの開発・実証に関する間接補助事業を行う事業者(間接補助事業者)11件の採択を決定。J-LODに採択された事業者11者を発表し、採択事業者および事業概要について公表した。

 「ブロックチェーン技術を活用したコンテンツの流通に関するシステムの開発・実証に関する間接補助事業を行う事業者」の採択事業。コンテンツの権利処理と収益配分に関するものが多く、出版関連も複数あります。ビットコインなどの暗号通貨に興味がない方も、いま最先端の技術を使ってどんな試行が行われているのか、という点においては把握しておいたほうがいい動きだと思います。

海外

米風刺雑誌「マッド・マガジン」事実上の廃刊へ〈HON.jp News Blog(2019年7月8日)〉

 1952年創刊、アメリカのベビーブーマー世代の圧倒的な支持を受け、全盛期の1973年には280万部を誇っていた風刺雑誌「マッド・マガジン」が、あともう2号で、年末特集号を除いて新しいコンテンツを掲載しなくなり、書店での販売は停止、コミックショップでの販売のみになると複数のメディアが報じている。 アイゼンハワー政権時代からずっと表紙を飾り続けてきたマスコットであるアルフレッド・E・ニューマンだが、近年では読...

 雑誌スタッフはSNSで職探しをしているそうです。Oh…

AI処理による偽ヌード写真を掲載するかどうかというメディアの選択の是非が議論に〈HON.jp News Blog(2019年7月8日)〉

 ポップカルチャーサイト「Vice」は6月下旬に、ディープヌード(DeepNude)というアプリで作られた全裸のテイラー・スウィフトの画像を掲載したが、批判を受けて削除した。このエピソードから、こういった画像をメディアが使うべきかが改めて問われていると、オンラインニュースサイト「Slate」が社説コラム「Future Tense」で論じている。 ディープヌードはAIを使ってデータベースから乳房の写真を選ぶアプリだが、この記事...

 そういえばつい先日、アドビが加工画像かどうかをAIで検出する技術を開発した、というニュースがありました。こういうニュースに接すると、フェイクを見破る技術の向上も、今後必要不可欠になってくるな、と思います。 

禁書目録データベースがカナダの大学で公開〈HON.jp News Blog(2019年7月9日)〉

 世界中の政府や公共機関によって禁書指定された本のデータベースが公開されていると、カナダのラジオニュースサイト「News 1130」が紹介している。 一般公開され、検索可能なリストを作ったカナダのブリティッシュコロンビア大学のフロリアン・ガスナー教授によれば、既に11万8000タイトルがリストアップされ、今も継続的に増えているという。このプロジェクトは「Die Kasseler Liste」と呼ばれ、ドイツで禁書を使って再現さ...

 確かに、なにをもって「禁書」とするかの定義こそが難しそう。残念ながら日本の本は検索しても見つかりませんでしたが、もし入れるとすると青少年健全育成条例で有害図書指定された本あたりでしょうか?

バーンズ&ノーブルのエリオットによる買収話、株主承認へ〈HON.jp News Blog(2019年7月11日)〉

 バーンズ&ノーブルは、8月6日までに過半数の株主票を得れば、エリオット・アドバイザーズに1株6.50ドル(総額約7億4500万ドル)で買収される運びとなったと、パブリッシャーズ・ウィークリー誌などが伝えている。 米証券取引委員会に提出された、株主に賛成票を促すTOB(株式公開買い付け)通知の書類で明らかになったのは、エリオットに先駆けて買収の話を持ちかけていたリーダーリンク社は、1株7.25ドルまで値段を上乗せ...

 続報。リーダーリンク社による再オファーの可能性は、ほとんどなくなったとのことです。 

英図書館で本の貸し出し数が落ち込み、原因はITか蔵書の劣化か?〈HON.jp News Blog(2019年7月11日)〉

 イギリスの図書館における1人当たりの貸し出し図書数が、2009/2010年度から2017/2018年度にかけ、5.7冊から3.1冊へと46%の減少となったことを、元ウォーターストーンズ書店のティム・コーツ氏が突き止め、蔵書数削減のせいだと警鐘を鳴らしていると、英業界誌ザ・ブックセラーが伝えている。 この調査は Institute of Museums and Library Services(博物館・図書館サービス機構)が行ったもので、同時期アメリカでは2006/2...

 日本の統計はこちら。

 なお、複数の方から指摘を受け、IMLSによる調査という箇所を削除してあります。

メルマガについて

 本稿は、HON.jpメールマガジンに掲載された内容を、1週間遅れで掲載しております。最新情報を入手したい場合は、ぜひメルマガに登録してください。無料です。

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0

※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。

広告

著者について

About 鷹野凌 705 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学デジタル編集論非常勤講師 / 二松學舍大学エディティング・リテラシー演習非常勤講師 / 日本出版学会理事 / デジタルアーカイブ学会会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
タグ: / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / /