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慶應義塾大学SFC研究所 Advanced Publishing Laboratory(以下、APL)は6月18日、日本語書記技術ワーキンググループの報告書(3月31日付)を公開した。これは、EPUB 3の規格策定に大きな影響があった JLreq(Requirements for Japanese Text Layout)を、電子化における優先順位の観点で記述し直すため、2017年11月からほぼ毎月1回行われてきた議論をまとめたもの。
この議論は、JLreq の個々の要件がどういう理由で何のために成立したかを、活版印刷以前の和本の伝統にまで遡って検証し、日本語書記技術の機能論的検討を行うことにより、W3CでのCSSやEPUBの規格に日本語組版要件を適切に反映させること、また、電子書籍制作や閲覧、ウェブブラウザなどへの実装を促進することを目的としている。
議論の第1層は「〈本〉とはどのようなものか」で、本と書記という表記、本・書物・書籍の違い、物之本と草紙、本の価値、冊子本と巻子本、装幀・判型、安定した参照引用の可能性と書記群の線形化、ハイパーテキストとしてのウェブドキュメントなどについて議論している。
第2層は「読みやすさとはどのようなものか」で、版面設計の呪縛からの解放、行長と読み速度、縦組機能の維持、版面設計の見直しの必要性、柱とノンブルなどについて。第3層は「リフロー可能文書における具体的な実現要件」で、約物の詰め処理、改行時の禁則文字処理、ルビの処理とアクセシビリティなどについて議論している。
日本語書記技術ワーキンググループのメンバーは、小林龍生氏(同ワーキンググループのとりまとめ担当)、小林敏氏(W3C『日本語組版処理の要件』主執筆者、JIS X 4051原案作成委員会幹事)、村田真氏(慶應義塾大学特任教授、APL研究員)、木田泰夫氏(元Apple Inc.シニアソフトウェアマネージャー)、Florian Rivoal氏(W3C CSSワーキンググループ、ACボードメンバー)、小林潤平氏(大日本印刷株式会社)、橋口候之介氏(古書肆誠心堂店主/同ワーキンググループでは客分)。
参考リンク
慶應義塾大学SFC研究所 Advanced Publishing Laboratory