「ダウンロード違法化検討会報告書まとまる」「アメリカの書籍出版産業2020:書店編」など、出版業界気になるニュースまとめ #407(2020年1月13日~19日)

出版業界気になるニュースまとめ

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 2020年1月13日~19日は「ダウンロード違法化検討会報告書まとまる」「アメリカの書籍出版産業2020:書店編」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

ポッドキャスト

国内

ワコム、スマホにも対応する「Wacom One 液晶ペンタブレット 13」を発表〈HON.jp News Blog(2020年1月13日)〉

 株式会社ワコムは1月7日、デジタル初心者向けの「Wacom One 液晶ペンタブレット 13」を発表、ワコムストアと一部家電量販店で1月16日から販売を開始する。WindowsやMacだけでなく、一部のAndroid OS搭載スマートフォンやタブレットにも対応しているのが特徴。 Wacom Oneは、13.3型のフルHD(1920×1080)液晶パネルを搭載した、液晶ペンタブレット。折り畳み式内蔵スタンドを引き出すことで、使用スタイルにあった角度に調整...

 デジタル初心者向けとのこと。ワコムストアでは税込4万2900円と、エントリーモデルらしい値段。Androidスマホに別売りアダプターで繋げた写真、なかなかインパクトがあります。

漫画村元運営者、広告収入隠匿疑い 4回目逮捕〈日本経済新聞(2020年1月16日)〉

 続報です。年末には、初公判で起訴事実を認めたという報道(↓)もあったのですが、犯罪収益隠匿については黙秘しているとのことです。

漫画海賊版サイト対策で報告書 2次創作物ダウンロードは容認〈共同通信(2020年1月16日)〉

 報告書がまとまった、とのことですが、本稿執筆時点でまだ文化庁のサイトにはアップロードされていないようです。第3回検討会の資料は出ています(↓)が、こちらも議事録はまだです。

侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会(第3回)についての議事次第・配布資料を掲載しています。

 前回のメルマガで「議論が紛糾、どうなるか予断を許さない状況に」と書いた「著作権者の利益を不当に害する場合」についてですが、検討会構成員の方々によると、結局「両論併記」で政治判断に委ねるという形になったようです。うーん、もうしばらく目が離せませんね。

[追記:1月16日付の報道発表で資料が公開されましたが、PDFの更新日は1月20日。そして、1月17日のWayback Machineには、1月16日付のこの報道発表は載っていないことが確認できます……。]

ICタグ、価格5分の1 東レ、IoT普及後押し〈日本経済新聞(2020年1月19日)〉

東レは衣料など商品の在庫管理などに使うICタグを、1枚2円以下と従来の5分の1程度のコストで生産できる技術を開発した。情報などを記録する集積回路を特殊な素材で直接印刷し生産工程を大幅に減らせる。ICタグはあらゆるモノがネットにつながる「IoT」にとって重要な部品だ。価格が大幅に下がり、関連サービスの普及を後押しすることになる。東レは2022年度にもICタグ事業に参入する。ICタグはICチップと

 既存の他社製品が1枚10円くらいのところに、1枚2円以下で2022年に参入予定とのことです。日本出版インフラセンター(JPO)にも以前はICタグ研究委員会があり、書店での万引き防止や物流の効率化などを目的としたICタグ導入の可能性が検討されていましたが、実現には至っていません。当時の資料(↓PDF)を見ても、なぜ話が止まったのかよく見えてこないのが正直なところ。タグが安くなっても、製本段階での貼付けコストや古紙として再生する際の混入などに難がありそうな感じではありますが……? なお、JPOのICタグ研究委員会は2015年1月に廃止されています。

海外

全米ロマンス作家協会が空中分解の危機に〈HON.jp News Blog(2020年1月13日)〉

 人種差別に関する問題で理事会のメンバーが対立し、協会員も巻き込んだ論争で今年度の全米ロマンス文学賞がキャンセルになり、協会の存続さえ危うい状態だと複数のメディアが伝えている。 会員9000人を抱え、今年は創立40周年を迎える Romance Writers of America(以下RWA)だが、ノミネート作家や選考員が次々に事態を発表したため、7月に開催予定だったRITA賞をキャンセルすると発表した。 事の発端は人気のある会員ライ...

 人種差別的な表現を指摘した人の会員資格が停止される処分が出て、問題だと騒ぎになり、裏取引が発覚というなんだかもうボロボロの状態になっているそうです。今年は創立40周年を迎えるのですが……。

ニューヨーク公共図書館125周年記念で貸し出しトップ10を紹介〈HON.jp News Blog(2020年1月14日)〉

 ニューヨーク公共図書館がこの125年で最も貸し出しが多かった本を発表した。 貸し出し回数トップは1962年の刊行以来、のべ48万5583回貸し出された「The Snowy Day」(エズラ・ジャック・キーツ著、日本語版は偕成社『ゆきのひ』)。ピーターという男の子が積もった雪の中、冒険に出かけるお話の児童書で、カルデコット賞受賞作品。他にも古くから愛されてきた古典がトップ10に並ぶ。トップテンの著書 / 著者(貸し出し回数)...

 125年間の貸し出し回数がちゃんとデータで出てくるのですね。1位の「The Snowy Day」は、のべ48万5583回。すごいなあ。

アメリカの書籍出版産業2020:これまでの10年と、これからの10年について(4)~ 出版社のこれからの10年を握るカギはやっぱりアマゾン/書店の二極化:大手チェーンとインディペンデント書店〈HON.jp News Blog(2020年1月14日)〉

 大原ケイ氏に、アメリカの書籍出版産業の過去10年と、これからの10年について解説いただきました。第4回は、「出版社のこれからの10年を握るカギはやっぱりアマゾン」と「書店の二極化:大手チェーンとインディペンデント書店」です。第1回はこちら。第2回はこちら。第3回はこちら。出版社のこれからの10年を握るカギはやっぱりアマゾン この5年、毎年微減してきた出版社の総売上げだが、また今後10年で上向きになっていくだ...

アメリカの書籍出版産業2020:これまでの10年と、これからの10年について(5)~ インディペンデント書店はなぜリバイバルできたのか?〈HON.jp News Blog(2020年1月15日)〉

 大原ケイ氏に、アメリカの書籍出版産業の過去10年と、これからの10年について解説いただきました。第5回は、「インディペンデント書店はなぜリバイバルできたのか?」です。第1回はこちら。第2回はこちら。第3回はこちら。第4回はこちら。インディペンデント書店はなぜリバイバルできたのか? その一方で、アメリカのマスコミでもしばしば取り上げられてきたニュースがインディペンデント書店のリバイバルだ。全米書店協会(...

 3回目を公開した時点ではまだ続きの原稿を頂いてなかったので〈続くかも〉と微妙な書き方で締めておいたのですが、ばっちり続きました。今度は書店についてです。巨大チェーン店バーンズ&ノーブルの再建や、インディペンデント書店の取り組みなど。続きは大原さんの note で(↓)。取次、印刷、コンテンツ、そして未来予測について書かれる予定とのことです。

最近は東京ベースの文芸エージェント。日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。Hon.jp、文化通信にて海外の出版ニュースやコラムを提供中。

アマゾン傘下のオーディブル、オーディオブックのテキスト表示機能で出版社と和解〈HON.jp News Blog(2020年1月15日)〉

 アマゾン傘下のオーディオブック配信サービス「オーディブル」(Audible)は、朗読部分の数行をAIでテキストに自動変換して表示する機能「オーディブル・キャプション」を昨年7月に発表(記事)、その後、ビッグ5を含むアメリカの大手出版社7社から出版契約違反として訴えられていた(記事)が、このほど和解が成立したとアマゾンが報告した。 オーディブルの担当弁護士の報告によると、協議はずっと続けられており昨年12月...

 続報です。オーディブルがフェアユースを主張しているという情報もあったのですが、結局、和解したとのこと。

リンクトイン「スライドシェア」からリンクされる海賊版〈HON.jp News Blog(2020年1月19日)〉

 ビジネス向けのプレゼン資料を一般公開できるリンクトイン(LinkedIn)の「スライドシェア(SlideShare)」で海賊版が横行しているとファスト・カンパニー誌が伝えている。 スライドシェアに本が全ページアップロードされているわけではなく、欲しい本を検索すると、パネルの1枚目に書影が表示され、別のサイトに飛び、そこでダウンロードするというやり方だ。ターゲットになっているのはベストセラーから、高額な大学教科書...

 説明通りに操作すれば、海賊版の本がダウンロードできる、というスライドのアップロードが後を絶たないそうです。こういうの、実際にはフィッシング詐欺も多そうですが、どうなんだろう? 試してみる気はしませんが。

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CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0

※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。

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著者について

About 鷹野凌 727 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学デジタル編集論非常勤講師 / 二松學舍大学エディティング・リテラシー演習非常勤講師 / 日本出版学会理事 / デジタルアーカイブ学会会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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