「ダウンロード違法化、特別な事情がある場合は除外に」「著者向けPOD出版サービス北米欧州6カ国に対応」など、出版業界気になるニュースまとめ #409(2020年1月27日~2月2日)

出版業界気になるニュースまとめ

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 2020年1月27日~2月2日は「ダウンロード違法化、特別な事情がある場合は除外に」「著者向けPOD出版サービス北米欧州6カ国に対応」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

ポッドキャスト

国内

人気じわり…“聴く読書”オーディオブックは出版業界を救うか〈ニュースイッチ by 日刊工業新聞社(2020年1月27日)〉

 ニュースイッチ編集長の葭本隆太氏による「連載・音の時代がやってくる」。冒頭、オトバンク 久保田裕也社長の「何もなかった更地に素地ができ、少しずつ作物が育ってきた。2020年は『オーディオブック元年』になるようなイメージがある」という力強いコメントに、期待が膨らみます。ほか、Voicy、TBSラジオ、耳に装着するヒアラブル端末の市場、音声感情解析AIなど。読み応えのある連載です。

新聞記事からAIでニュース動画を自動作成、博報堂DYメディアパートナーズとオープンエイト〈週刊BCN+(2020年1月28日)〉

 記事をアップすると、要約と読み上げ音声ファイル、報道写真や動画と組み合わせた動画も自動生成されるとのこと。GoogleやFacebookがよく、アップロードした写真から勝手に自動で動画を作って「どう?」と通知を飛ばしてきたりしますが、ああいうのを任意のテキストや写真から作成してくれるなら、意外と便利かも知れません。

漫画『窮鼠はチーズの夢を見る』、映画化を機に修正 予告なしの“修正版”切り替えにファン騒然〈ねとらぼ(2020年1月29日)〉

 電子版は、1月28日付けで“修正版”に差し替えられているそうです。電子書店に依っては、旧版がユーザーの任意で残せず自動で上書きされてしまうため、SNSなどでは「これだから電子書籍は信用できない」理論が再燃している様子が伺えます。しかしこれは、そう言われても仕方がないでしょう。

 せめて、旧版の販売を止め、修正版を新たに配信し直すことはできなかったのでしょうか? そうすれば、購入済みのライブラリが差し替わることはなかったはず。旧版を持っているユーザーが、比較のため新版を購入してくれる可能性だってあったでしょう。もったいない。誤字脱字程度の修正だったらそこまでする必要はないと思いますが、ここまで大幅な修正となると、もう少し配慮があって然るべきだったのでは。

 ちなみにKindleは、2009年のオーウェル海賊版削除事件(↓)で炎上して以来、ライブラリを勝手に触らないようにしており、「コンテンツと端末の管理」ページから手動で「更新」しない限り新版に差し替わることはないはずです。ただし設定で「自動書籍更新」が「オフ」になっている必要があります。

海賊版対策の著作権法改正、自民党が政府へ4項目を要請へ。スクショや軽微なコピペ、二次創作/パロディにも言及〈INTERNET Watch(2020年1月30日)〉

スクショ違法化の対象、「特別な事情」も除外へ 自民案〈朝日新聞デジタル(2020年1月30日)〉

 政治判断で「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く」が追加されることに。文化庁の検討会でのまとめでは、セーフガードは「違法アップロードだとを知らずにダウンロードした場合は除く(主観要件)」「スクショで付随するアイコンなどを除く(写り込み拡充)」「翻訳以外の二次的著作物は除く(二次創作対策)」「軽微なものは除く」まで合意に至っていましたが、この要件の追加で、公益通報用途など懸念されていた点が払拭できそうです。よかった。

「楽天ポイントカード」が全国の丸善ジュンク堂書店で利用可能に〈HON.jp News Blog(2020年1月30日)〉

 丸善ジュンク堂書店には2018年12月から「楽天ペイ」が導入されていましたが、楽天ポイントカードも利用可能に。hontoカードと併用可能で、いちど紐付けすれば、以降はどちらか提示するだけで両方貯まるそうです。

インプレスR&D、「著者向けPOD出版サービス」と「出版ブランド開設サービス」を北米・欧州6カ国に対応〈HON.jp News Blog(2020年1月30日)〉

 アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペインの6カ国で、Amazon PODによる紙書籍の販売が、誰でも無料で可能となりました。すごい! ただし、主に日本語以外の言語で書かれた本である必要があります。

Kindle Unlimitedで講談社の雑誌や書籍がふたたび配信〈HON.jp News Blog(2020年2月2日)〉

 日曜日の朝起きたら、Kindle情報サイト「きんどう」を運営しているzonさんから連絡が入っていて、驚き急いで記事化。講談社とアマゾン、仲直りできたのですね。私は以前、個人ブログで「Kindle Unlimited」の定点観測をやっていました。詳細情報がうまく取得できなくなり、やめて2年ほど経ちましたが、KADOKAWAが4700点以上配信していたり、集英社も配信を開始していたりと、だいぶ様相が変わっていますね。

海外

アメリカの書籍出版産業2020:これまでの10年と、これからの10年について(6)〜〜いわゆる取次や印刷はどうなっているのか|りんがる aka 大原ケイ〈note(2020年1月22日)〉

 続きが出ていたのを見落としていました。不覚。有料ノートですが、取次と印刷関係者の方々は必読だと思いますぞ。

アメリカの書籍出版産業2020:これまでの10年と、これからの10年について(最終章)メチャ売れしたのは「オンナコドモ」の本…だけどそれでいい気がする|りんがる aka 大原ケイ〈note(2020年1月27日)〉

 最終章は、売れてる本のトレンドについて。「腐女子」研究の論文、CiNii Articlesで検索したら64件でした。思ったより少ないですね……。

トランプ大統領弾劾裁判中にボルトン前補佐官の暴露本が刊行前リーク〈HON.jp News Blog(2020年1月28日)〉

 事前チェックのためホワイトハウスに提出したものが、コピーされリークしたとのことです。大統領弾劾裁判に関連する公益性の高い内容だから……という見方もあれば、本の予約開始日と同じ日にリーク? という疑問の声もあり。混沌としていて、正直よくわかりません!

文化の盗用か、駄作の後押しか、アメリカで議論を招く一冊の本〈HON.jp News Blog(2020年1月30日)〉

 文化の盗用問題、理解が難しいです……。まあ、向こうでも「表現の自由を奪うのでは?」という意見があるくらいですから、議論しながら落としどころを探るってことなのでしょうけど。

米インディー書店数は昨年も引き続き微増〈HON.jp News Blog(2020年1月31日)〉

 111店の増加とのこと。日本の独立系書店はいまどうなっているのか。アルメディアの調査(文化通信掲載↓)によると、2019年の新規出店数は99店、閉店数は650店だったようですが。

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CC BY-NC-SA 4.0
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※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。

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著者について

About 鷹野凌 788 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学デジタル編集論非常勤講師 / 二松學舍大学エディティング・リテラシー演習非常勤講師 / 日本出版学会理事 / デジタルアーカイブ学会会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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