「集英社チャット小説アプリ誕生秘話」「電子書籍に反対していた宝島社が電子化を解禁した理由」など、出版業界気になるニュースまとめ #378(2019年6月17日~23日)

出版業界気になるニュースまとめ
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 2019年6月17日~23日は「集英社チャット小説アプリ誕生秘話」「電子書籍に反対していた宝島社が電子化を解禁した理由」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

国内

第10回教育ITソリューションEXPOが開催 ~ 展示会場フォトレポート〈HON.jp News Blog(2019年6月23日)〉

 デジタル教科書・教材やそのビューア、電子図書館など、本(HON)に関連するブースを中心に回ってきました。このイベント、どんどん規模が大きくなっていて、半日ではとても回りきれません。当レポートでは触れていませんが、電子黒板やプログラミング教育などの展示も多かったです。

一人のファンとして、著者の新たな一面と出会えた日〈HON.jp News Blog(2019年6月20日)〉

 「COMITIAでこんな本に出会いました」というテーマで、小桜店子氏に寄稿いただきました。川崎昌平氏によるエッセイ同人誌『私の東京藝術大学物語』についてです。川崎氏から記事にコメントをいただき、再販希望が結構あるので8月のCOMITIAで2刷を用意する、とのこと。行かねば。

集英社初のチャット小説アプリ「TanZak」誕生秘話–“1話目を読む”ハードルを下げる〈CNET Japan(2019年6月20日)〉

 集英社担当者へのインタビュー。チャットノベルで収益化を図るというより、テキストに触れるハードルを下げることによって「読書習慣の獲得」を図ること目的とした取り組みとのこと。他社の動向も踏まえ「恐らく2019年は”デジタルノベル元年”になるでしょう」というコメントが。

海賊版対策、警告表示も断念=端末の「フィルタリング」強化-総務省〈時事ドットコム(2019年6月20日)〉

 ブロッキング法制化、ダウンロード違法化・リーチサイト規制に続き、アクセス警告方式も断念。昨年、政府のタスクフォースで挙がっていた海賊版サイト対策案は、①正規版サイトの流通促進、②海賊版サイト管理者の刑事告訴、③配信代行業者への民事手続き(差し止め請求、損害賠償請求など)、④検索結果表示の抑止、⑤海賊版サイトへの広告出稿規制、⑥フィルタリング、⑦教育、啓発活動、⑧ダウンロードの違法化、⑨リーチサイト規制、⑩ブロッキング法制化の10点ですが、ユーザーを規制する法整備が必要な対策案⑧⑨⑩は、いずれも頓挫したことに(当時の解説コラムはこちら↓)。

 以前、漫画村運営者が判明という情報もありましたが、その後、②刑事告訴に至ったという情報はありません。③民事手続きの簡素化という動きもあったはずなのですが、これもその後、どうなったのか……。

セルシス「国際コミック・マンガスクールコンテスト」の受賞作品が決定 ~ 世界67カ国・地域の639校から1400点超の応募〈HON.jp News Blog(2019年6月21日)〉

 受賞者は、アメリカ、台湾、アイルランド、イラン、シンガポール、ロシア、スペインなど、非常に多彩です。台湾の方はウェブトゥーン&縦書き、イランの方は横書き右綴じ(英語)で、文化的バックボーンをストレートに感じます。面白い。

「電子書籍に反対していた宝島社が電子化を解禁」 その理由を聞いた〈ねとらぼ(2019年6月21日)〉

 2010年11月に「宝島社は、電子書籍に反対です。」という刺激的な新聞広告を出した宝島社。先週末に、同社が刊行している『響け! ユーフォニアム』シリーズや『異世界居酒屋「のぶ」』シリーズなどが、ついに電子化されるという情報を目にして、なぜ方針を変えたのか理由が気になっていました。ねとらぼ編集部、ぐっじょぶ。「著者の方からの電子版発売の要望も増え、それに応える形で開始しました」とのこと。「書店を応援」という方針は変わっていないそうです。

「読書バリアフリー法」成立 超党派の議員立法〈毎日新聞(2019年6月21日)〉

 ついに成立。国が基本計画を策定、出版社が電子データを障害者などへ提供する取り組みの促進や、図書館が録音図書や電子書籍などの所蔵を増やすような施策を進めていくことになります。先月末に書いたコラム「誰もが読書できるアクセシブルな環境という理想と、データ流出への根強い懸念という現実」も参考に(↓)。

海外

乱射事件は政府のでっち上げという陰謀論を上梓した元大学教授が敗訴〈HON.jp News Blog(2019年6月19日)〉

 5月30日に配信した大原ケイ氏のコラム「歴史を扱う本にウソが見つかった時、アメリカの出版社ではどう対処しているのか?」関連(↓)。名誉毀損で訴えられ、敗訴、本は回収という、コラムで解説いただいた通りの流れになっています。

 では日本ではどうかというと、名誉毀損で訴えられて、著者・出版社の敗訴が確定した有名な事例(↓)がありますが、当該の本はいまなお普通に売られ続けていたりします。うーん。

米中関税の拡大がアメリカの児童書に打撃を与える懸念〈HON.jp News Blog(2019年6月19日)〉

 中国で印刷されアメリカに輸入される書籍にも25%の関税がかかることになるそうです。政治、というかドナルド・トランプ大統領に振り回されている感。

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CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 828 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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