【更新】米中関税の拡大がアメリカの児童書に打撃を与える懸念

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 昨年から激化する米中貿易戦争の関税について、ドナルド・トランプ大統領が発表したさらなる関税が実施された場合に各産業にどのような影響があるかを問う諮問委員会が首都ワシントンで開かれている。1週間に渡り、業界ごとに50以上のパネルが開かれるが、書籍出版関係者はこの第10パネルに名を連ねている。(2019年8月14日:末尾に更新情報)

 トランプ政権は、中国からの輸入品に2500億ドル相当に上る関税を既にかけている。次なる拡大案では、中国で印刷されアメリカに輸入される書籍にも25%の関税がかかることになるが、いつから始めるのかははっきりしていない。全米出版社協会(AAP:Association of American Publishers)が出版社側の意見陳述を取りまとめた。

 業界誌パブリッシャーズ・ウィークリーは社説コラムで、関税実施でいちばんの打撃を受けるのは0〜14歳児向けの絵本で、児童書専門店も図書館もそれぞれに予算確保が年々難しくなっている状況で、2017年の段階で、イラストの入った子供向けの本の平均価格は20.01ドルとなっており、25%の関税によって値上がりすれば少なからぬ影響があるとしている。

2019年8月14日更新情報:米児童書は年末まで関税免除

 中国との関税競争で朝令暮改を続ける米トランプ政権だが、電化製品を含む輸入品の一部に対する10%の追加課税は12月15日まで延期となった。この中には「児童書、塗り絵本」なども含まれているが、紙の厚さが0.51ミリを超える本に関しては当初の発表通り、9月1日から10%の追加関税がかかる。

参考リンク

パブリッシャーズ・ウィークリーの記事
https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/trade-shows-events/article/80482-hearings-on-proposed-book-tariffs-start-today.html
公聴会予定表(PDF)
https://ustr.gov/sites/default/files/enforcement/301Investigations/Section%20301%20Hearing%20Schedule%20June%2017-June%2025%202019.pdf
パブリッシャーズ・ウィークリーの意見コラム「ソープボックス」

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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