「韓国NAVER、Wattpadを買収」「写研、モリサワとOpenTypeフォントを共同開発」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #457(2021年1月17日~23日)

週刊出版ニュースまとめ&コラム
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 2021年1月17日~23日は「韓国NAVER、Wattpadを買収」「写研、モリサワとOpenTypeフォントを共同開発」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。

【目次】

政治

(社説)図書館サービス ネット時代の姿探って〈朝日新聞デジタル(2021年1月18日)〉★

 図書館関係権利制限規定の見直しについて、朝日新聞社説。複写サービス(著作権法31条1項1号)公衆送信に絞って論じています。パブコメでも権利者側が強く警戒しているのは複写サービスなので、今後のガイドライン策定やその調整が難しいという見解には同意です。個人的には、入手困難資料(31条3項)のほうが影響(ユーザーの恩恵)は大きいと思うのですが。ちょうど、文化審議会著作権分科会 法制度小委員会の報告書も出ていますので、興味のある方はどうぞ(↓)。

米国国立公文書館(NARA)、トランプ政権の公式ソーシャルメディアのすべてのコンテンツを収集・保存・提供すると発表〈カレントアウェアネス・ポータル(2021年1月18日)〉

米国国立公文書館(NARA)、ドナルド・J・トランプ大統領図書館のウェブサイトを公開〈カレントアウェアネス・ポータル(2021年1月21日)〉

 Twitterがトランプ氏のアカウントを永久凍結にしましたが、大統領時代の発言記録はどうするんだろう? と思っていました。罵詈雑言含め、全ての記録をきっちり残すのですね。「大統領記録法」というのがあるそうです。Twitterでの発信も例外ではない、と。さすがアメリカ。のちのち検証できるようにしておくことが重要ですね。

米政府、アマゾンを「悪質市場」指定 2年連続 「当社に対する報復、政権末期の捨て鉢の行動」と批判〈JBpress(2021年1月19日)〉

 アメリカのアマゾンも、マーケットプレイスの悪質化が問題になっているようです。日本のアマゾンも「闇市場」などと揶揄されるようになり、つい最近も「裏コマンド検索」で絞り込む技についての記事がバズっていました(↓)が、こういう日本の状況を見るに、アメリカもトランプ氏との確執だけが理由ではなさそうです。

米グーグル、豪から検索サービス撤退も 報道機関への支払い法案めぐり〈BBC NEWS JAPAN(2021年1月22日)〉

グーグル、仏で記事使用料 報道各社と初めて合意〈共同通信(2021年1月22日)〉

Googleがメディアに報酬、陽動作戦が明暗を分ける〈新聞紙学的(2021年1月23日)〉

 Googleはフランスとは記事使用料を支払うことで合意する一方、オーストラリアは法規制したら撤退だと脅しにかかっています。平和博氏の「新聞紙学的」では、両国への対応の違いがどこにあるかが解説されています。

 対Google規制では、2014年にスペインで「Google News」が閉鎖された前例があります(↓)。だから、Googleは脅しではなく、ガチでやるでしょう。まあ、営利企業ですから、商売にならないなら手を引くのはむしろ当然のことかな、と。なお、ドイツのパブリッシャーは当時、スニペット表示への対価を諦め譲歩しています。

社会

iPad届いたのに制限だらけ 学校間で広がるIT格差〈朝日新聞デジタル(2021年1月18日)〉★

小中学生に情報端末配備、現場の課題は 「GIGAスクール構想」前倒し、教員ら座談会〈朝日新聞デジタル(2021年1月19日)〉

 国がドカッと予算を付け、端末の配備は進んだものの、制限が厳しすぎて使いづらいという声が強くなっています。学校現場というより教育委員会の意向が強く、自治体によってもかなり対応が違う様子。電子図書館サービスも私立への導入はどんどん進んでいるようで、公立との差がますます広がっていくことが懸念されます。「あれダメこれダメ」って子供を型にはめる教育って、もうナンセンスだと思うのですけどねぇ。

2月の「COMITIA135」コロナ禍で中止に 3度目の中止に「忸怩たる思い」〈KAI-YOU.net(2021年1月19日)〉

 2度目の緊急事態宣言を受け、イベントの中止も相次いでいます。この状況下では、いかんともしがたい。開催している同人誌即売会も、来場者があまりいない様子の写真がTwitterで流れてきて、辛い。1年前にはHON.jpもまだリアルイベントを開催していましたし、まさか世界がここまでの状況に陥るなんて思ってもいなかったのですが……。

コロナ禍で参加者を3倍まで増やしたhontoのオンライン読書会「ペアドク」に潜入〈ITmedia ビジネスオンライン(2021年1月19日)〉

 そのいっぽうで、honto主催のオンライン読書会が伸びている、というレポート。hontoポイントサービス実施店で対象書籍を購入した人は、参加チケットが割引になる、という方式です。書店でのトークイベントってどうしてもその地域周辺の方だけがターゲットになりがちでしたが、オンラインなら遠隔でも参加できます。こういう状況でも、できることはある! ということでしょう。頑張らなくては。

経済

創業から10年、「マンガKING」運営のロケットスタッフをアニメイトが買収〈BRIDGE(2021年1月20日)〉

 アニメイトの買収攻勢。「マンガKING」は、広告収入を権利者と分配する方式のマンガ読み放題アプリです。同グループ内では「pixivコミック」に近い事業ですが、「マンガKING」は旧作中心、「pixivコミック」は新作中心と、ラインアップ的にはあまり重ならない印象です。

 また、GyaOと合弁で設立・運営している電子書店「アニメイトブックストア」や、pixiv「BOOTH」とも近い事業と言えそうですが、こちらもあまりユーザー層は重なっておらず、むしろシナジー効果が期待できそう?

社員2000人「7割がリモートワーク」実現 KADOKAWAが“出社前提・紙文化”から脱却できた理由──きっかけは「マンガ」作戦〈ITmedia ビジネスオンライン(2021年1月20日)〉

オフィス移転計画中にコロナ襲来──混乱の中で1000人以上が一斉リモートワーク、KADOKAWA“総力戦”の背景〈ITmedia ビジネスオンライン(2021年1月21日)〉

 大企業かつ出版社の働き方改革やリモートワーク移行で、どのような工夫が行われているか? という記事前後編。マンガで興味を惹くとかクイック朝礼とか、遠隔中心のチームプレイでどんな工夫をしているかが、非常に参考になります。KADOKAWAの場合、コロナ禍以前から所沢オフィス移転計画が進められていたのが、不幸中の幸いだったとも言えそうです。

出版広告を“再発明”する デジタルの売上げ比率は6割へ 講談社はいかにしてDXを実現したのか?〈AdverTimes(2021年1月20日)〉

 講談社の決算発表は2月19日と聞いていますが、この記事では2020年のデジタル広告売上比率が6割に達した、という情報が既に出ています。さすが(?)は宣伝会議。ここ数年伸長している「広告収入」はもちろんですが、急成長している電子書籍や版権収入の「事業収入」はどこまで伸びているか。2019年11月期で占有率45%に達していたので、2020年11月期には50%超えてくると思いますが。

 そういえば、コロナ禍のバタバタで頭からすっかり飛んでしまっていたのですが、講談社のライブエンターテインメントビル「ミクサライブ東京」は、もともと2020年3月の開業予定だったんですよね。ちょっと気の毒なタイミングでした。開催イベントをオンライン配信前提のものへと再構築するなど、苦しい境遇の中でも工夫している様子が伺えます。

沈黙の巨人、「写研」が動いた “愛のあるユニークで豊かな書体”がわれらの手に届くまでの100年を考える〈ITmedia NEWS(2021年1月21日)〉

 写研の書体がOpenTypeフォントとして、なんとモリサワと共同開発されるというニュース。私と同年代以上の出版関係者が騒然としていました。「せめて10年前に写研の手で発売することはできなかったのかという思い」がひしひしと伝わってくる、歴史や経緯をよく知る方による振り返り記事です。勉強になりました。

メディアドゥ、米国の出版情報やWebマーケティング会社を買収〈アニメーションビジネス・ジャーナル(2021年1月21日)〉

 昨年10月に基本合意書締結のお知らせが出ていましたが、ファイヤーブランド・グループの全株式取得が現地子会社によって成されたというニュース。クオリティ・ソリューションズ(Quality Solutions)の書誌情報管理事業・情報配信事業・電子書籍配信事業のことはよく知りませんでしたが、もう1つのネットギャリー(NetGalley)は日本でも「発売前作品のゲラが読める」サービスとして以前から展開しておりおなじみです。専用アプリもリリースされたばかり(↓)ですし、よりスピード感のある展開が期待されます。

韓国NAVERがユーザーがオリジナル作品を10億本以上公開するストーリープラットフォームWhattpadを買収〈TechCrunch Japan(2021年1月20日)〉

 カナダの小説投稿サイト「Wattpad」を、韓国NAVERが6億ドルで買収(TechCrunchのタイトル、綴りが間違ってますね……)。以前の「Wattpad」は日本の「小説家になろう」と同じような立ち位置で、出版社と組んでの投稿作品の書籍化を行っていたのですが、2019年1月に出版部門設立というニュース(↓)があり、驚いた記憶があります。この買収で、今後どうなるか。

技術

LINE、世界最高水準で低価格なAI-OCRをシステム開発不要で利用できる新サービスを提供開始〈Digital Shift Times(2021年1月18日)〉

 AI-OCRの動向としていちおうピックアップ。紙の帳票やPDFをアップロードするだけで簡単にテキストデータ化し、認識結果の確認や編集・出力・システム連携が簡単に行えるクラウドアプリケーションとのことです。請求書など経理・総務部門向けではありますが、既刊の電子化にも利用できそう?

 ちなみに同じようなタイミングで、電子出版ベンチャーのBooks&Companyから、既刊電子化の「Re本サービス」というリリースが出ていました(↓)。合わせて紹介しておきます。

メディアドゥがブロックチェーンを使った「ソーシャル映像視聴サービス」を開発〈Media Innovation(2021年1月19日)〉

 メディアドゥがブロックチェーンを使い、真っ先に「映像」視聴のサービスから展開すると思っていなかったので、ちょっとびっくりしたニュース。昨年9月の決算説明会資料に「音楽 本 映像」としっかり書いてありますから、予想はできたはずだけど予想できませんでした。とほほ。

 あと、昨年10月から始まっているという、関係者限定の「電子書籍」向けプロダクトも認識していなかった……そのタイミングでの「Amazon Managed Blockchain」正式採用のリリースには気付いていたのですが。うう、動きが追いきれなくなっている。まずい。

ニュース:大日本印刷、AIが読者の好みを診断して記事を抽出するサービス開始〈印刷ジャーナル(2021年1月19日)〉★

大日本印刷、ゴルフダイジェストと協業してAIが読者の好みを診断し最適記事を提供する「Myゴルフダイジェスト」を提供開始〈Media Innovation(2021年1月19日)〉

 読者が登録した悩みや好みのデータを基に、AIが最適な記事を抽出して提供するという、出版社が展開する月額課金制サービス向けのサービス第1弾。「EPIC 2014」で描かれた未来(↓)を思い出しました。グーグルゾンは実現しませんでしたが、AIによってパーソナライズされたニュースが配信されるようになる、というところに近いものがあります。

ブロードキャスティング

 毎週日曜日21時から配信しているライブ映像番組、1月24日のゲストは牧村朝子さん(文筆家)でした。上記のタイトル後ろに★が付いている3本について掘り下げています。番組のアーカイブはこちら。

 次回のゲストは小池みきさん(ライター・漫画家)です。配信終了後はZoom交流会もあります。詳細や申込みは、Peatixのイベントページから。

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CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 824 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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