「安易な検索を懸念するより、課題の出し方を工夫すべき」「ニールセン調査でピッコマがコミック1位」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #519(2022年4月17日~23日)

東京堂書店

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 2022年4月17日~23日は「安易な検索を懸念するより、課題の出し方を工夫すべき」「ニールセン調査でピッコマがコミック1位」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります(ISSN 2436-8237)。

【目次】

政治

巨大ITに包括規制、EUが合意 違法コンテンツに対応義務〈日本経済新聞(2022年4月23日)〉

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)は23日、巨大IT(情報技術)企業に違法コンテンツへの対応を義務付けるデジタルサービス法案に合意した。日々複雑さを増すインターネットから消費者を保護するとともに、影響力の強い巨大プラットフォーム企業が負う責任を明確にして対応を促す。ヘイトスピーチや児童ポルノ、海賊版の販売といった違法コンテンツや商品について、削除を含めた対応を義務付ける。SNS(交流サ

欧州規制強化、Googleは「歓迎」 Twitterも「支持」〈日本経済新聞(2022年4月23日)〉

【シリコンバレー=奥平和行】米グーグルは米西部時間22日、欧州連合(EU)の欧州委員会などが巨大IT(情報技術)企業にコンテンツ管理の強化を求めるデジタルサービス法案で合意したことを受けて、「インターネットの安全性を高めるといった法律の目標を歓迎する」とのコメントを発表した。広報担当者は法案について、「ネットの安全性、透明性、説明責任を高めると同時に、欧州の利用者やクリエーター、企業がオープン

 巨大プラットフォームを規制するデジタル市場法(DMA:Digital Markets Act)に続き、違法コンテンツへの対応義務を求めるデジタルサービス法(DSA:Digital Services Act)も合意に。この欧州の規制強化にGoogleやTwitterが「歓迎する」「支持する」という声明を出しているのが、なんかある意味すごい。欧州の動向は日本政府ももちろんウォッチしてますから、今後の法規制検討に影響がありそうです。ダークパターンの禁止なんかは、本邦でも導入したほうがよさそう。

社会

検索結果がそのまま「答え」、試行錯誤し考える力が伸びず : ニュース : 教育 : 教育・受験・就活〈読売新聞オンライン(2022年4月20日)〉

小中学校への学習用端末の配備で、インターネットによる調べ学習がより身近になった。検索機能をうまく使えば、子供が自ら情報を集め、主体的な学びも進めやすくなる。ただ、安易に検索に頼り、自ら考える力を低下させかねない状況も生

 タイトルが変わっていますね。「デジタル教科書を問う」という特集記事のうちの一つ。なんというか……そろそろ足を引っ張るのやめません? デジタル情報端末が無かった時代にはもう戻れないんですよね。あることを前提に、うまく活用する方向へシフトしたほうが建設的だと思うのですよ。

 目の前にある箱で「ググる」ことは、もはや自然に行われることです。あっというまに答えっぽいものに辿り着いてしまうのが現実。であれば、それを前提とした課題を出すべきでしょう。私はそう考え、たとえば「コピペしてもいいけど出典を必ず書け」という若干トリッキーな課題を出しています。回答そのものではなく、出典がどこかを見るわけです。答えっぽいものに、安易に飛びつくと失敗するぞ、と。

梅棹忠夫「情報産業論」は60年経っても古びていない〈HON.jp News Blog(2022年4月20日)〉

新聞(Newspaper)とは? 次のメディアは「新聞」です。こちらも定義から。 精選版日本国語大辞典(小学館)によると、メディアとしての新聞は「新聞紙の略」で、「広い読者に時事に関する報道、解説を中心に、知識、娯楽、広告などを掲載伝達する定期刊行物」です。多くは日刊ですが、それ以外の発行サイクルのものも存在します。 雑誌の定義と比べると、「時事に関する」あたりがポイントでしょう。より新鮮さが求められて...

 デジタル出版論の連載。新聞、ラジオ、テレビ。これで主なメディアのうち、本と4マスまで終了です。次のインターネットはあとの章でもいろいろ出てくるので、ひとまず概略だけとします。「インターネットのビジネスモデル」だと広すぎるので、「デジタルコンテンツのビジネスモデル」にフォーカスする予定です。たぶん、それでも広すぎる。1回で収まるかな……?

行政マンとして「図書館員」が忘れていること…予算減の危機的状況を前に何ができるか(飯田 一史)〈マネー現代 | 講談社(2022年4月21日)〉

茨城県鹿嶋市、長野県塩尻市で図書館長を務め、現在は古書店を経営する編著者の内野安彦氏は、図書館側が「行政マン」だという認識を欠いていることこそが、公共図書館が年々予算を減らされていく要因になっていると語る。どういうことなのか。内野氏に訊いた。

 来館ユーザーのことだけを見ていてはダメだ、という指摘。これを読んで、先日、某大の新入生研修をお手伝いしたときのことを思い出しました。学生からのインタビューで「本が好きじゃない人に、どんな本を薦めますか?」と問われたのです。

 私は「いや、本が好きじゃない人にこっちの好みを押しつけても読まないですよね?」と答えました。まず本ありきではなく、まず相手が何に興味を持っているか次第じゃないか? と。興味を持っていて、もっと知りたいと思っている事柄についての本なら、読んでもらえるかもしれない。

 「図書館に来ない7割の市民」というのは、そういうことではないかな、と。まあ、もっと知りたいと思ったとき、いまは動画を検索して観るパターンが多いかもしれません。ならば内沼晋太郎さんが言うように「本の定義を拡張」すればいい。「YouTubeも本」なのだ。

電子コミック視聴者数、コミックでは「ピッコマ」が最多の821万人、ニールセン調査〈ケータイ Watch(2022年4月21日)〉

 ニールセン デジタルは、電子コミック配信サービスを対象にした「コミック」ジャンルの視聴状況を発表した。

 1位 ピッコマ、2位 LINEマンガ、3位 コミックシーモア、4位 ebookjapan、5位 めちゃコミック。数字的にはピッコマが頭1つ抜けています。閲覧のみの利用も含むので、「待てば無料」みたいな施策を積極的にやっているところが強い調査とみていいでしょう。

 で、インプレス「電子書籍ビジネス調査報告書」の利用率と比べると、「Kindleストア」や「楽天Kobo」が上位に存在していないことに気づきます。おや? と思い、ニールセンの広報へ問い合わせてみたところ、「(電子)コミック配信サービスにフォーカスしたサービス」をピックアップしているとのことでした。つまり、このランキングで総合型電子書店は対象外です。ebookjapanは例外で、いまもコミック中心であると判断しているそうです。なるほど。

国会図書館、ネットで絶版本閲覧 5月19日からサービス開始〈共同通信(2022年4月23日)〉

絶版本など入手困難となった貴重な書籍や資料を、インターネット経由で提供する国立国会図書館のサービスが...

 サービス開始が近づいてきました。わくわくしますね! 利用には登録が必要です。もう済ませましたか? 郵送で手続きできますよ。詳しくは国立国会図書館のプレスリリースをご参照ください。

国立国会図書館が発信する新着情報の一覧です。プレスリリース、ニュース、刊行物、採用情報の新着情報の一覧があります。

 少し関連する話。山田奨治さんが「国立国会図書館デジタルコレクションの著作権処理に驚愕した件」というエントリーを書かれています。引用元の保護期間も考慮したり、謝辞に載っている校正者や索引作成者も「著作者」として扱っているなど、かなり厳格な運用がなされていることがわかったそうです。

 ただ、これは誰でもアクセス可能な「インターネット公開資料(57万点)」から除外されるか否かの話。恐らく5月19日以降は、この個人送信(現・図書館送信資料約153万点)で閲覧可能になるのでは。だから、今後はあまり問題にならないような気がしています。

経済

「読者は支援するためにお金を払う」Quartzがペイウォールを廃止した理由〈Media Innovation(2022年4月20日)〉

 揺り戻し、でしょうか。2万5000人の有料会員を抱えているメディアがペイウォールを廃止、今後はニュースレターで魅力を訴求していく計画とのことです。はじめからそういうスタンスならともかく、あとからペイウォールを外してなお「サポートしたい」と思ってもらえるものなのでしょうか。「ペイウォールがトラフィックも損ない、メディアとしての影響力を制限していたのではないか」という見解には強く同意。タイトルしか読めないようなハードペイウォールはキツイ……。

初のレーベル大型フェア「新潮新書・新潮選書祭2022」 が電子書店で開催中!〈株式会社新潮社のプレスリリース(2022年4月22日)〉

株式会社新潮社のプレスリリース(2022年4月22日 11時00分)初のレーベル大型フェア が電子書店で開催中!

 HON.jpでフェア情報は基本的に扱わない方針なのですが、新潮社が自ら大型フェア(つまり値引き販売)を大々的にアピールしていることに驚き、思わずピックアップ。新潮社の佐藤隆信社長は2014年に、朝日新聞のインタビューで「例えばフランスのように、電子も定価販売を可能にすべきだ」と、再販制度の導入を主張していたのを思い出しました。

毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「TSUTAYAの電子書店が終了、BookLiveへ引き継ぎ」「スキャン代行訴訟、知財高裁判決」などが話題に

 なお、再販制度は「小売店に定価販売を強制」する行為であり、出版社が小売店に対し「値引きOK」とすれば値引き販売は可能です。また、出版社自身の値引き販売を禁止するものでもありません。だから、今回のフェア実施が当時の発言と完全に矛盾しているわけではありません。ただ、そもそもの「なぜ出版物に再販制度が必要なのか?」という論理展開には、綻びが生じてしまったように思います。

出版事業に関わる活動を行う一般社団法人日本書籍出版協会(JBPA)は、再販制度、著作権、出版契約などへの取組みを行っております。

米ネットフリックス、株価が3割強急落 「会員数減少」に懸念〈BBC NEWS JAPAN(2022年4月22日)〉

米動画配信大手ネットフリックスの株価が20日、米株式市場で35%急落した。21日にはさらに3.5%下...

 映像ビジネスの話ですが、株式市場で資金を調達してオリジナルコンテンツを制作するモデルに対し、強い懸念を覚えざるを得ないケースなのでピックアップ。Netflixはここ数年、オリジナル作品にガンガン投資してきました。株主資本主義ですから、投資対効果が求められます。ひとたびこうやって業績が傾いて、株価も急落となると、投資は絞らざるを得なくなるだろうな……と思っていたら、やはり複数のアニメーションプロジェクトが中止という報道が。制作側としては、たまったもんじゃありませんね。まあ、また次のパトロンを探そう、ということになるのかもしれませんが。

技術

いつか終わるNFTブーム イノベーションは起こるのか〈日本経済新聞(2022年4月22日)〉

日本政府が毎年6月ごろにまとめる経済財政運営と改革の基本方針である「骨太の方針」。フィンテック関連では2021年は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の推進が注目された。22年は、ブロックチェーン上でデジタルコンテンツを唯一のものとして扱える非代替性トークン(NFT)が目玉となりそうだ。3月末、自由民主党デジタル社会推進本部のNFT政策検討プロジェクトチームが「NFTホワイトペーパー(案)Web

 えーっと……NFTマーケットの参入事例として楽天やLINEが挙げられていますが、この2社はプライベートチェーンを採用しているはずです。「Web3.0は分散型で参加者によって成り立つ非中央集権的なもの」という説明は、パブリックチェーンの特徴としては正しいと思います。しかし、プライベートチェーンは中央集権的な管理者が存在するシステムです。つまり、Web3.0の説明と、楽天やLINEのNFTマーケット参入の話が、繫がっていないように思われます。

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イベント動画

 ゲストに落合早苗さんを迎えて「出版DX これでいいのか、電子書籍市場」をテーマに開催された3月27日のHON.jp News Casting、見逃しアーカイブ視聴のチケット販売中です。

3月27日は2時間の特番! O2O Book Biz株式会社 代表取締役 落合早苗さんをゲストに迎え、コミックが4割超を占めるようになった出版市場のこの四半期の動向を中心に話を伺い... powered by Peatix : More than a ticket.

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日刊出版ニュースまとめ

 伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。TwitterやFacebookページは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
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雑記

 ロシアによるウクライナ侵略が始まってから2カ月。ここでは戦争反対! と言い続けています。いまの自分には、そんなことしかできません。でも、言い続けます(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0
※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

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著者について

About 鷹野凌 681 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学デジタル編集論非常勤講師 / 二松學舍大学エディティング・リテラシー演習非常勤講師 / 日本出版学会理事 / デジタルアーカイブ学会会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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