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【目次】
新聞(Newspaper)とは?
次のメディアは「新聞」です。こちらも定義から。
精選版日本国語大辞典(小学館)によると、メディアとしての新聞は「新聞紙の略」で、「広い読者に時事に関する報道、解説を中心に、知識、娯楽、広告などを掲載伝達する定期刊行物」です。多くは日刊ですが、それ以外の発行サイクルのものも存在します。
雑誌の定義と比べると、「時事に関する」あたりがポイントでしょう。より新鮮さが求められている印象があります。そのいっぽうで「綴じた」がありません。新聞紙は折ってあるだけなので、広げるだけでバラバラになります。新鮮な情報を届けるいっぽう、長期保存を考慮していないメディアです。そのため過去記事は、縮刷版が定期刊行されていたり、データベースとして提供されていたりします。
日本の新聞は、江戸時代の瓦版が前身です1ニュースパーク(日本新聞博物館)「新聞のあゆみ」より。
https://newspark.jp/permanent/ayumi/。日本で最初の新聞は1861年(文久元年)の英字紙「ザ・ナガサキ・シッピングリスト・アンド・アドバタイザー」、最初の日本語新聞は1862年(文久2年)の「官板バタビヤ新聞」、最初の日刊紙は1871年(明治4年)の「横浜毎日新聞」とされています2レファレンス協同データベース「日本で最初に発行された新聞について知りたい。」より。
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000254280。
新聞の先祖は、古代ローマの公刊議事録や9世紀終わりの中国宮廷官報など、手書きのものから始まっています。印刷物では15世紀の終わりごろから、報知草紙(風説草紙・罵倒草紙・中傷草紙など)と呼ばれる不定期刊行のニュース文書が存在していたそうです3ピエール・アルベール『新聞・雑誌の歴史』(斎藤めぐみ訳・白水社・2020年)p14~。定期刊行では、ドイツ・アウクスブルクの月報(1597年)、フランス・ストラスブールの週報(1605年)を経て、世界初の日刊紙は1650年の「ライプツィガー・ツァイトゥイング」とされています4メディアポ「新聞の歴史について」より。
https://www.homemate-research-newspaper-office.com/useful/newspaper/。
新聞のビジネスモデル
江戸時代の瓦版は、街頭で大きな声で読みながら売り歩かれていたので「読み売り」とも呼ばれていたそうです5メディアポ「新聞の歴史について」より。
https://www.homemate-research-newspaper-office.com/useful/newspaper/。それが明治以降「新聞」と呼ばれるようになって、ほどなく新聞配達が登場。1871年(明治4年)に誕生した郵便制度6日本郵政「前島密」より。
https://www.japanpost.jp/corporate/milestone/founder/により地方配送が始まり、1875年(明治8年)ごろには新聞販売店が開業7毎日小学生新聞「疑問氷解:新聞はいつどう広まった?」より。
https://mainichi.jp/maisho/articles/20161023/kei/00s/00s/009000c。家庭や職場へ毎日決まった時間に新聞を配達する「戸別配達制度」によって、飛躍的に部数を延ばしていきます。
本や雑誌とは異なる独自の流通網を形成することにより、新聞は小売店での「販売」より「定期購読」のほうが圧倒的に強いビジネスモデルを形成していました。また、発行部数の多さから、新聞紙面の「広告」売上は雑誌広告の3倍以上、新聞と一緒に配達される折込チラシ市場も雑誌広告の2倍以上となっています8電通「日本の広告費」によると、2021年の新聞広告費は3815億円、雑誌広告費は1224億円。
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/2021/media2.html
折込チラシ市場は2631億円で、新聞販売店の収益を支える大きな柱。
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/2021/media4.html。
ただ、その戸別配達制度を支える新聞勧誘員の営業活動は往々にして強引で、トラブルになることも多かったです。国民生活センターでも「断っているのに帰ってくれない!新聞勧誘」9国民生活センター「断っているのに帰ってくれない!新聞勧誘(見守り情報)」(2012年3月6日公表)より。
https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen131.html「初めての一人暮らし…悪質な新聞勧誘に注意!」10国民生活センター「初めての一人暮らし…悪質な新聞勧誘に注意!(見守り情報)」(2013年4月3日公表)より。
https://www.kokusen.go.jp/mimamori/kmj_mailmag/kmj-support62.html「宅配便かと思ってドアを開けたら新聞勧誘だった」11国民生活センター「宅配便かと思ってドアを開けたら新聞勧誘だった(身近な消費者トラブルQ&A)」(2014年6月9日公表)より。
https://www.kokusen.go.jp/t_box/data/t_box-faq_qa2014_07.htmlといった注意喚起がなされています。
対策として、景品表示法や特定商取引法(旧訪問販売法)による規制や、業界の自主規制ガイドライン12新聞公正取引協議会・日本新聞協会販売委員会「新聞販売のルール」より。
https://nftc.jp/rules.htmlも策定されていますが、元号が令和になってもいまだに自治体から消費者トラブルの注意喚起が行われていたりするのが現状です13たとえば「大阪府/新聞購読契約に関する消費者トラブルについての注意喚起」など。
https://www.pref.osaka.lg.jp/shouhi/jorei_johoteikyo/shimbun.html。また、公称発行部数を維持するため新聞社が販売店に押しつけたノルマは、配達されずに破棄される「押し紙」という別の問題も誘発。独占禁止法(優越的地位の濫用)違反の疑いで公正取引委員会から注意を受ける事態にまで至っています14講談社現代ビジネス「発行部数を「水増し」してきた朝日新聞、激震! 業界「最大のタブー」についに公取のメスが入った(幸田 泉)」(2016年4月11日)など。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/48396。
この押し紙が問題視されるようになったのは、インターネットが普及し始めてしばらく経ってから15私がこの「押し紙」問題を初めて知ったのは、河内孝『新聞社 破綻したビジネスモデル』(2007年・新潮社)だが、古いビジネスモデルへの警鐘という意味では歌川令三『新聞がなくなる日』(2005年・草思社 )のほうが早かったようだ(未読)。。新聞総発行部数のピークは1997年の5377万部で、以降は漸減し続けています16ガベージニュース「ピークは1997年…戦中からの新聞の発行部数動向(最新)」(2022年1月16日)
http://www.garbagenews.net/archives/1885417.html。戸別配達制度の成功体験から軌道修正がなかなか進まず、インターネットを活用した広告以外のビジネスモデル――電子版の収益化も遅れているのが現状です。
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