「日本の電子図書館事業OverDrive Japanはどうなるか?」「同人誌の海賊版サイトに賠償命令」など、出版業界気になるニュースまとめ #411(2020年2月10日~16日)

出版業界気になるニュースまとめ

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 2020年2月10日~16日は「日本の電子図書館事業OverDrive Japanはどうなるか?」「同人誌の海賊版サイトに賠償命令」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

ポッドキャスト

国内

NewsPicksパブリッシングと草思社の協業から生まれた成果 ~ 伝統的出版社と新興出版社が手を組んだ理由〈HON.jp News Blog(2020年2月12日)〉

 12月に草思社が刊行したスティーブン・ピンカー『21世紀の啓蒙』は、販促とプロモーションをNewsPicksパブリッシングがになっている。この共同企画はどのようにして生まれたのか、そして、どのような効果があったのだろうか? 出版ジャーナリストの成相裕幸氏に取材・レポートいただいた。NewsPicksパブリッシング×草思社の「協業」が生んだ成果 昨年4月に経済ウェブメディア、NewsPicksが立ち上げた出版レーベル「NewsPicks...

 なかなか面白いコラボ。出版ジャーナリストの成相裕幸さんに取材いただきました。

楽天の株式譲渡で日本の電子図書館事業「OverDrive Japan」はどうなるか?〈HON.jp News Blog(2020年2月13日)〉

 楽天株式会社は昨年12月25日、子会社で電子図書館プラットフォーム世界最大手である OverDrive Holdings, Inc. の全株式を、アメリカ最大手のプライベートエクイティ投資会社のKKR(コールバーグ・クラヴィス・ロバーツ)に譲渡する契約を締結したことを発表した。KKR側の意図については、すでに大原ケイ氏が解説しているが、では、日本で展開されている電子図書館事業「OverDrive Japan」はどうなるのか? 本稿ではこれまで...

 昨年末に、楽天がOverDriveを売却するというニュースが流れ、買収側のKKRについては大原ケイさんにコラムを書いていただきました。では、日本で展開されている事業はどうなるのか? という観点で書いたコラムです。実は、年末の時点でほぼ書けてたんですが、当事者からの情報が入るまで寝かせてありました。ひとまず、大勢に影響はなさそうです。

アマゾンジャパン、「第1回 Kindleインディーズマンガ大賞」の最終候補作品を発表 〜 授賞式は3月に開催予定〈HON.jp News Blog(2020年2月13日)〉

 アマゾンジャパン合同会社は2月4日、「第1回 Kindleインディーズマンガ大賞」の受賞最終候補作品を発表した。1000作品を超える応募のなか、最終候補に選ばれたのは10作品。 第1回 Kindleインディーズマンガ大賞は、2019年10月より募集を開始。セルフ出版の「Kindleダイレクト・パブリッシング」(以下、KDP)を通じてアマゾン「Kindleストア」でマンガを無料公開できる「Kindleインディーズマンガ」の一環として開催されてい...

 応募総数1000作品超。選考には読者からの声や反響が反映されているそうです。LINEノベルの令和小説大賞もそうですが、まず公開して読者の反応をいわば「下読み」的に使うというのは、とても合理的だと思います。投稿サイトと文学賞の中間に位置するようなイメージ。

インターネット白書ARCHIVESで2019年版が無料公開に ~ 最新版『インターネット白書2020』発行に合わせ〈HON.jp News Blog(2020年2月14日)〉

 株式会社インプレスR&Dは2月7日、『インターネット白書2020 5Gの先にある世界』を発行した。また、インターネット白書編集委員会は2月14日、昨年発行した『インターネット白書2019 デジタルファースト社会への大転換』の誌面内容を、ウェブサイト「インターネット白書ARCHIVES」にて無料公開した。 『インターネット白書』は、インターネットの最新動向を各分野の専門家の寄稿と統計資料によって報告するIT/デジタル業...

 毎年この時期恒例となった、前年版の無料公開。ありがたいことです。なお、2019年版の10大キーワードは、「キャッシュレス社会」「買い物革命」「DApps」「バーチャルYouTuber」「データエコノミー」「プライバシー保護」「5G」「LPWA」「サイバー戦争」「インターネット文明」でした。

同人誌の「海賊版サイト」に賠償命令…ウェブ広告をたどって「運営会社」を割り出す〈弁護士ドットコムニュース(2020年2月14日)〉

二次創作でも違法アップロード駄目――“違法同人誌サイト”運営会社に219万円の賠償命令 過去の取材には「存じ上げないサイトですね」〈ねとらぼ(2020年2月14日)〉

 論点がいくつもあって、興味深いニュースです。まず、広告代理店を辿ったら、海賊版サイトの運営事業者が特定できたこと。その運営事業者は、2018年6月時点で「ねとらぼ」が特定していたこと。また、海賊版サイトとは別に、「Comi★コミ」という正規版電子書店を運営していたこと(昨年11月末で閉鎖/インターネットアーカイブを確認したらABJマークが貼られていました……)。

 また、被告の「二次創作同人誌は、著作権を主張できない」という主張は、見事に却下されていること。そして、「SimilarWeb」のトラフィック分析を元に算出した被害額は、認定されなかったことです。2018年にブロッキング法制化の検討が行われていた時にも、「SimilarWeb」のデータを根拠とした3000億円という被害額が信用できる/できないと議論になっていました(↓)が、今回の地裁判決では「信用できない」に軍配が上がりました。

3時間半の激論の末、議論は平行線で終わり、報告書を作成するかすら結論が出なかった。会議は無期限の延期に。

海外

電子版の購読者が200万人に ウォールストリート・ジャーナル〈共同通信(2020年2月11日)〉

 電子版定期購読の成功事例としてはよく、ニューヨーク・タイムズ(総契約数490万件超)が挙げられますが、ウォールストリート・ジャーナルもスゴイですね。対抗意識もスゴイようですが。

米アマゾンがひっそりナチス本狩り〈HON.jp News Blog(2020年2月12日)〉

 アマゾンはかつて「いいものから悪いものまで何でも売る」としていたが、ヘイト溢れる本や、鉤十字のイメージを写真集から消すなどしているとニューヨーク・タイムズが伝えている。 この1年半で、クー・クラックス・クランのリーダーだったデイビッド・デュークの本2冊、米ナチス党創設者のジョージ・リンカーン・ロックウェルの著書を数タイトルが売られなくなった。 こういったヘイト本がなくなるのを惜しむ者は多くはな...

 どういう基準で消されているのか明示されていないので、出版業者側が懸念しているそうです。GAFA系のBAN基準は、振れ幅が大きくて曖昧、という印象があります。ちなみに日本のアマゾンには、東京都の青少年保護育成条例で「不健全図書」に指定されると、規約で取り扱いが禁止される(成人向けには販売できる)という、ある意味分かりやすいラインが1つあります。

米バーンズ&ノーブル、加インディーゴが暮れのクリスマス商戦で苦戦〈HON.jp News Blog(2020年2月12日)〉

 イギリスの書籍チェーン店・ウォーターストーンズを立て直し、昨年8月からアメリカの最大手書籍チェーン店・バーンズ&ノーブル(以下B&N)のCEOに就任したジェームズ・ドーントは「2011年のウォーターストーンズがそうだったように、B&Nは書店としてもいい状態ではないし、台所事情もメチャクチャだ」と発言した。 iNewsの取材に対し、イギリスのウォーターストーンズでは、クリスマスシーズンにミシェル・オバマ前...

 昨年8月からジェームズ・ドーントをCEOに迎えたバーンズ&ノーブルですが、まだ立て直しは図れていないようです。イギリスのウォーターストーンズのように再起できるといいのですが。

児童書ブックフェアで今年からグラフィック・ノベル賞設立〈HON.jp News Blog(2020年2月13日)〉

 毎年イタリアで開催されるボローニャ児童書ブックフェア(3月30日〜4月2日)では、今年から最優秀とされたグラフィック・ノベルにラガッツィ賞を贈る。合わせてグラフィック・ノベルの版権コーナーを設け、30社あまりが参加すると発表した。 この賞は early reader(初心者向け)、middle grade(おおよそ日本の小学生にあたる)、young adult(ティーンエイジャー)と対象年齢層別になっている。2020年の受賞作Early Reader...

 実は、ボローニャ児童書ブックフェア公式サイトには「category: Comics」と表記されています。ただ、この受賞作品を「コミック」と訳すと日本の漫画のようなものと勘違いされそうなので、「グラフィック・ノベル」としています。

30紙の地方新聞を持つマクラッチー社が会社更生法を申請〈HON.jp News Blog(2020年2月14日)〉

 「マイアミ・ヘラルド」「サクラメント・ビー」など30の地方紙を抱えるマクラッチー社は、退職年金の支払いができないことなどを理由に、7億ドルもの累積赤字解消への布石として会社更生法を申請した。 2006年にライバルの新聞チェーン、ナイト・リッダーを45億ドルで買収したマクラッチーだが、ここ10年ほど赤字が続いている。デジタル化の波でと不況のせいで新聞業界が暗転し、2020年末までに全ての新聞で土曜日版を廃止す...

 累積赤字7億ドルとのこと。昨年夏にはゲートハウス・メディア社がガネット社を統合吸収し、ローカル紙250紙以上を抱える大所帯に、というニュースもありました(↓)。どこも生き残りをかけて必死ですね。

 新聞社2社が併せ持つローカル紙(community paper)が250紙以上という状況は、日本の新聞読者にはわかりづらいかもしれない(8月8日の記事「米地方紙大手2社が合併、250紙以上を抱える大所帯に」を参照)。実際には、さらにその6倍もの数のローカル紙が全米に散在している。なぜ、そういう構造になっているのか、今回の合併でどういうことが起こるのか、アメリカの新聞産業の状況はどうなのかが、少しでも理解できるように説...

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CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0

※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。

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著者について

About 鷹野凌 596 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学でデジタル編集論・二松學舍大学でエディティング・リテラシー演習担当の非常勤講師 / 日本出版学会員 / デジタルアーカイブ学会員 / 主な著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)/ プロフィール画像は©鈴木みそ氏
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