米アマゾンがひっそりナチス本狩り

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 アマゾンはかつて「いいものから悪いものまで何でも売る」としていたが、ヘイト溢れる本や、鉤十字のイメージを写真集から消すなどしているとニューヨーク・タイムズが伝えている。

 この1年半で、クー・クラックス・クランのリーダーだったデイビッド・デュークの本2冊、米ナチス党創設者のジョージ・リンカーン・ロックウェルの著書を数タイトルが売られなくなった。

 こういったヘイト本がなくなるのを惜しむ者は多くはないだろうが、アマゾンのマーケットプレイスに出品している第3業者は、どういうガイドラインで決められているのかが具体的にわからないことに懸念を示している。とある業者の元には「お客様が許容できる体験を提供するコンテンツかどうかは、アマゾンがこれを決定する権利を有する」という文面の告知が送られてきただけだという。

 近年、フェースブック、ツイッター、ユーチューブなどのSNSでは「表現の自由」か「不快なコンテンツ」かを巡る議論が喧しい。これまでアマゾンにはあまり影響がなかったが、自社以外の商品を出店する業者を何百万と抱えるアマゾンにとって、そんな悠長な時代は終わろうとしている。

 品揃えや値段設定の決定権、さらに膨大な読者評をコンテンツとして抱えるアマゾンは、消費者が得られる情報に対しても大きな影響力を持っているにもかかわらず、禁書リストを公開したり、その基準を議論できる場は提供していない。これまで、ナチス関連のグッズは「不快で反対意見の多い商品」として削除してきたが、書籍に関しては例外を通してきた。

 だがここにきて急に積極的にナチス関連のコンテンツを制御しだしたようだ。第二次世界大戦に勝ったのはドイツと日本だったというストーリーで語られる、アマゾンが製作したドラマ『高城の男』を扱ったファン向け写真集からも鉤十字や鷲をあしらった国章を消しているが、これはドイツでもこの写真集を売りたい版元のタイタン社の希望で決定したことだという。

参考リンク

ニューヨーク・タイムズの記事

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著者について

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NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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