「講談社などホワイトハッカーと海賊版対策」「静岡新聞がマスコミをやめる宣言」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #456(2021年1月10日~16日)

週刊出版ニュースまとめ&コラム

《この記事は約 15 分で読めます》

 2021年1月10日~16日は「講談社などホワイトハッカーと海賊版対策」「静岡新聞がマスコミをやめる宣言」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。

【目次】

政治

【独自】図書館蔵書 新刊 ネット送信除外を…書籍出版協会 文化庁に要望〈読売新聞オンライン(2021年1月13日)〉

 こちらの記事は[読者会員限定]で、読売新聞で時々見られる「ウェブ配信はタイトルのみ、本文はゼロ」という強烈なハード・ペイウォール。しかしそれでもタイトルに強い興味を惹かれ、近所のスーパーまで1部150円の本紙をわざわざ買いに行きました。ところがこの【独自】の[読者会員限定]記事の内容はたったの40行で、非常に残念な気持ちに。とほほ。この記事がもしデジタル版でバラ売りされてたら、たぶん私は買うと思うのですけど、文字数の事前開示はもちろん、文字数(情報量)相応の値段設定にして欲しいとも思いました。

 さて肝心の内容ですが、要するに、図書館資料の複写(著作権法31条1項1号)を公衆送信に対応させる議論に対する、書協のパブリックコメントです。ぶっちゃけ、この記事の2日後の1月15日に公開された文化審議会著作権分科会法制度小委員会資料の、意見募集の結果に載っています(↓p33)。そして、2日後に公知となる情報以上でも以下でもないような記事でした。さすが40行。いや、少しでも早く情報を知ることに価値は間違いなくあるんですけど、【独自】で[読者会員限定]にするほどのことか? とも。とほほ。

文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第3回)の議事次第・配布資料等について掲載しています。

 で、新刊を除外して欲しいという書協の要望そのものが、報告書に反映されたかというと……いちおう「市場で流通している資料」に付記されていた「新刊本を含む」という記述が、「自明なので」と削除されたのが成果でしょうか。ワーキンググループでも小委員会でも繰り返し「紙でできることは、デジタルでも」という前提が強調されてきたので、「紙より限定的に」という要望は厳しいように思うのですが。法改正後の関係者協議はどうなるか。

 なお、入手困難資料の家庭配信(著作権法31条3項)に対しては、あまり権利者側から強い意見や要望が出ておらず、こちらは比較的スムーズに行きそうな印象です。個人的には、こっちを早く実現して欲しいので、楽しみです。そもそも売ってないから買えないんです。売ってるものなら買いますよ。

中国でネット通販全盛の中、リアルな「書店」が増えている理由〈ダイヤモンド・オンライン(2021年1月13日)〉★

中国で空前の「おしゃれ系書店」ブームが巻き起こっている。中でも注目を集めているのが日系の書店や日本関係の書籍だ。2020年10月には杭州に蔦屋書店1号店が、12月末には上海に同2号店がオープンしてにぎわっている。ネット通販の利用が多い中国で、なぜ、リアル書店に足を運ぶ人が増え、日本関係の書籍も人気があるのか?

 これを【政治】の欄に入れたのは、「政府が書店の入居するビルのテナント使用料の補助を行ったり、税の優遇措置などを行った結果」という記述があったから。馬場公彦さんのレポートでも「巨大ショッピングモールに格安テナント料で入居するモダンな書店」という話がありました(↓)が、要するに政府が強力なバックアップをしていたわけです。それは強い。蔦屋書店が今後、中国で100店を目指す計画というのも、そういう背景があるなら納得です。

 北京大学・馬場公彦氏による中国の出版事情レポート、今回は児童書市場について。前後編でお届けする。児童書は不動の市場占有率トップ 先の連載記事で、中国の出版市場において、全売り上げにおける児童書部門の占める割合が大きいこと、コロナ禍の本年第1四半期において、児童書の好調さが際立ったことを報告した。今回はこの児童書について、具体的なデータを踏まえつつ、その市場の特徴・趨勢・人気の背景・コンテンツな...

米コネティカット州、アマゾンのデジタル書籍事業を調査〈ロイター(2021年1月14日)〉

米法律事務所、電子書籍の価格吊り上げでアマゾンを提訴〈ロイター(2021年1月15日)〉

 Kindle Storeで反競争的な行為が行われていると、調査と提訴のニュースが続けざまに。とくに後者は、2011年にアップルを訴えた法律事務所ということで、今後の動向が注目されます。

社会

2020年のパソコン出荷台数は2億7,500万台。過去10年間で最高の成長率~Gartner調べ〈PC Watch(2021年1月13日)〉

 市場調査会社のGartnerは11日(米国時間)、2020年第4四半期の全世界PC出荷台数が7,940万台に達し、前年同期比10.7%の成長を達成したとの中間集計結果を発表した。2020年の年間PC出荷台数は2億7,500万台で2019年から4.8%増加しており、過去10年間で最高の成長率だとしている。

 全世界の出荷台数。パンデミックにより、需要がスマートフォンからパソコンへとシフトしているようです。長時間使おうと思うと、小さな画面は作業効率的に厳しいですからね。なお、これはChromebookを含まない数字で、Chromebookは年80%以上増加しているそうです。すげぇ。

米・OverDrive社、公共図書館および学校における電子書籍貸出が前年比33%増加したと発表:新型コロナウイルス感染症感染拡大等の影響〈カレントアウェアネス・ポータル(2021年1月14日)〉

 先週、OverDrive社のプレスリリースをピックアップしましたが、カレントアウェアネス・ポータルで取り上げられたので改めて。WIREDでは、この伸びによって図書館と出版社のあいだの緊張感が高まっている、という記事も出ていました(↓会員限定)。図書館向けの配信を締め付ける動きは、パンデミック以前のほうが強かったように思うのですが、どうなんだろう?

図書館の電子書籍貸し出しサーヴィスの人気が膨らんでいく一方で、気をもんでいる人たちもいる。売り上げの減少を懸念する出版社だ。パンデミック以降、図書館の電子書籍の取り扱い期間や部数をどうするか判断が分かれるなか、ライセンス条件を厳格化した出版社の本に対しては不買運動にまで発展した例も。政界も注目するこの「緊張感」の根っこには、デジタル時代の書籍をめぐり両者の間で長年くすぶっている問題があった。

経済

2021年のネット広告関連で予測される10のこと〈株式会社キーワードマーケティング(2021年1月4日)〉

 よいまとめ。規制が強化され、クリエイティブに品位が求められ、アドネットワークが衰退して直接販売へシフトし……など、私もおおむねそういう方向性だろうと思っています。「ネットのマス化」という表現は、ちょっと微妙な感じがしますが。だれもが使う媒体になったのは間違いないですが、テレビほど同じ情報が大量に大衆へリーチするわけではなく、むしろミニコミ誌が大量にあるようなイメージではないでしょうか。投下されている広告費の総量だけで比べるのは、ちょっと違う気がします。

ホワイトハッカーと組み海賊版対策 講談社など32社〈日本経済新聞(2021年1月9日)〉

講談社や東映アニメーションなどコンテンツ大手32社は企業の側に立つホワイトハッカーと海賊版サイト対策で連携する。2019年の日本のコンテンツ全体の海賊版被害は4000億円前後に上ったがサイト運営者の摘発は遅れている。ハッカーは高度な技術と国際的な情報網を持つ。協業により通常では見つけにくい犯罪証拠を集め民事訴訟などにつなげる。国際的に活動するホワイトハッカーの集団に摘発のための調査を依頼する。

 面白い動き。経済産業省の支援で、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が主体となって、ホワイトハッカー集団に委託費や成功報酬を支払うそうです。記事には「ホワイトハッカーの集団」とあるのみで具体名は挙がっていないのですが、そもそもホワイトハッカーの集団ってどういう組織なんだろう?

 気になって少し調べてみたら、IBMが2016年に立ち上げた「X-Force Red」という侵入セキュリティの調査サービスが、ホワイトハッカー集団と組んだ事例のようです(↓)。なるほどそういう。

IBMのハッカーのグローバル・チームが攻撃者志向のセキュリティー・テストを提供する、X-Force® Redペネトレーションテスト・サービスについて説明します。

U-NEXTが出版事業に参入!マイケル・ステイリー氏インタビュー:オリジナル電子書籍から紙書籍の出版、そして映像化へ〈ほんのひきだし(2021年1月11日)〉

映像配信サービスを中心に電子書籍も販売してきたU-NEXTが2020年8月、出版事業をスタートさせました。 第1弾として町田康さんや誉田哲也さんなど7人の書き下ろし小説を電子書籍として発刊。さらに同年11月には、7人のうちの1人、藤井清美さんの『#ある朝殺人犯になっていた』を紙の書籍として、初めて刊行しました。 今後もオリジナル作品を電子書籍で提供した後に、一部の作品を紙の書籍として刊行していく予

 そういうことだったのか! と思わず声が出た記事。マイケル・ステイリー氏は、講談社インターナショナルからアマゾンジャパンへ移籍し「Kindle Singles」の立ち上げを担った方。アマゾン時代に一度お会いしたことがあります。U-NEXTは昨年、オリジナル書籍の読み放題サービスを開始しましたが、この方が移籍して立ち上げに関わっていたわけです。なるほど! 人が動くと、事も動きますねぇ。

2020年の1年で2~3年分の成長を遂げた App Annie、「モバイル市場年鑑2021」を発表〈MarkeZine(2021年1月13日)〉

App Annie Japanは2021年1月12日、「モバイル市場年鑑 2021」のメディアブリーフィングをオンラインで開催。2020年のモバイル市場に関する結果を発表した。 モバイルアプリダウンロ...

 消費支出額の年間ランキング1位に「ピッコマ」、2位に「LINEマンガ」。以前書いたことの繰り返しになりますが、App Annieのランキングはアプリストア内決済だけという点に注意が必要です。とはいえ「ピッコマ」の急成長は2020年の大きなトピックス。

デジタル広告の「収益増」に湧く、日本の地方新聞社たち:「目標を2倍に上方修正した」〈DIGIDAY[日本版](2021年1月14日)〉

2020年は、多くの 地方新聞社 にとって苦汁を飲んだ年となった。コロナ禍の影響で紙の新聞広告のニーズが減少し、収益に大きな打撃をもたらしたのだ。しかし、デジタル広告への需要は増加。実際、中国新聞と埼玉新聞社のデジタル広告事業は大きく成長している。

 経営の厳しい地方新聞社に明るい話題……ではあるのですが、「倍増」と聞くとむしろ「これまでどれだけ少なかったんだろう?」と思えてしまいます。

「静岡新聞SBSは、マスコミをやめる。」社員809人が実名とともに決意を表明〈AdverTimes(2021年1月14日)〉★

静岡新聞SBS(静岡新聞社と静岡放送)は1月11日付の静岡新聞朝刊の11面から14面にかけて、企業広告を掲載した。

 静岡新聞SBS(静岡新聞社と静岡放送)の決意表明。前述の「ネットのマス化」という表現が微妙だと書いたのは、こういう動きがあるからでもあります。なんでも扱う一握りの大手を除けば、対象は「マス」ではないはずなんです。

「もはや、これ、ライターの仕事じゃない」 NHKねほりんぱほりん「こたつ記事」特集に反響〈J-CASTニュース〈2021年1月14日)〉★

 NHKの「こたつ記事」特集について、J-CASTニュースが書く、というのが多重に面白い。この記事を書いている記者自身も、これまで「こたつ記事」を量産してきた、と述懐しています。まあ、あまり取材せず書いている本稿も「こたつ記事」の一種だから他人ごとじゃない、とも思いますが。どこまでを「こたつ記事」と呼ぶのか? という定義にも依りますよね。

“寄付×サブスク”型メディアの先駆け「greenz.jp」に学ぶこれからのビジネスモデル | コミュニティメディアのつくりかた〈ダイヤモンド・オンライン(2021年1月15日)〉★

なぜウェブメディア「greenz.jp」は、PVではなく「読了数」を、広告ではなく寄付モデルを選んで成功できたのか? コミュニティ化にいち早く取り組んだからこそ見えてきた、これからのメディアのあり方とは。

 非営利メディアの先駆者「greenz.jp」について掘り下げた記事。「greenz people」という名称の寄付会員を募集し、その毎月の寄付金がベースになっているメディアです。2019年11月期の会計報告(↓)によると、その会費876万円に加え、メディア事業収入が1455万円(これが企業や自治体とのコラボと思われる)あるのがすごい。見習いたい。

NPOグリーンズは、関係性のデザインを探究して「いかしあうつながりがあふれる幸せな社会」を目指す非営利組織です。 人・社会・自然の関係をデザインし直し、それぞれ

Mediumがソーシャル読書アプリの「Glose」を買収、電子書籍販売や教育分野に事業拡大か〈TechCrunch Japan(2021年1月16日)〉

Mediumは、パリに拠点を置くスタートアップのGloseを非公開の金額で買収すると発表した。Gloseはデバイス上で本を購入したり、ダウンロードしたり、読んだりできるiOS、Android、ウェブアプリを構築してきた。

 興味深い動き。「Medium」は広告が表示されないブログ・パブリッシングプラットフォームで、後発の「note」が強い影響を受けたと思われるサービスです。日本でも一時期事業展開していたんですが、撤退しちゃったんですよね。

 その後どうなったかあまりチェックしてなかったんですが、3年前に開始した月額5ドルのメンバーシッププランにいまでは数十万人が登録し、ライターやパブリッシャーに毎月200万ドル以上の報酬を支払うエコシステムが構築されているというから驚きです(↓)。ここへこの「Glose」買収がどう作用するか。再度注目したい。

技術

国立国会図書館デジタルコレクション、一部機能の追加・変更を実施:デジタル化資料(図書、雑誌等)の一部について全文検索が可能に〈カレントアウェアネス・ポータル(2021年1月13日)〉★

 より便利に。国立国会図書館のデジタル化資料は、要するにスキャン画像なのですが、OCR処理による全文テキストの検索が一部可能になったとのこと。OCRの精度と、検索サービスの能力が気になるところです。仮にOCRの精度に問題があったとしても、多少の字形違いくらいは軽く乗り越えて欲しいところ。Google検索が強い理由の一つは、入力キーワードが多少違っていようと、意図を汲んで類似表現も引っ張ってくるところなんですよね。

Web漫画サイト「コミチ」に電子出版サポート機能が追加 15分で同人誌の入稿データを作成するサービスも〈ねとらぼ(2021年1月15日)〉★

 新たな電子出版サポートツール。「コミチ」へ投稿した作品をEPUBに変換できます。ただ、この記事の「KDP用のePubファイルへ変換できます」という記述がちょっと気になり中の人(萬田大作さん)に尋ねてみたのですが、ダウンロードできるのは普通のEPUBフォーマットとのこと。つまりKDPだけでなく、楽天KoboやBOOK☆WALKERなど、EPUBが入稿できる他の電子書店でも販売できるそうです。良かった。

Facebookのニュース配信アルゴリズムがまたも更新…オリジナル性に乏しい記事は表示頻度が低下〈Media Innovation(2021年1月15日)〉

 ニュースフィードに表示される順序のアルゴリズム変更で、これまでより「オリジナル性」が求められるようになったそうです。Googleのようにボットが巡回して情報集めているならわかるんですが、そういうわけではないFacebookがその「オリジナル性」というのをどうやって判定しているのかが気になるところ。自社サイトで配信している記事と、ヤフーなど転載先の記事と、Facebookが区別できるのかしら?

ブロードキャスティング

 毎週日曜日21時から配信しているライブ映像番組、1月17日のゲストは海猫沢めろんさん(文筆業)でした。上記のタイトル後ろに★が付いている6本について掘り下げています。番組のアーカイブはこちら。

 次回のゲストは牧村朝子さん(文筆家)です。配信終了後はZoom交流会もあります。詳細や申込みは、Peatixのイベントページから。

メルマガについて

 本稿は、HON.jpメールマガジンに掲載されている内容を同時に配信しています。最新情報をプッシュ型で入手したい場合は、ぜひメルマガに登録してください。無料です。なお、タイトルのナンバーは、鷹野凌個人ブログ時代からの通算です。

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0

※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。

広告

著者について

About 鷹野凌 613 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学でデジタル編集論・二松學舍大学でエディティング・リテラシー演習担当の非常勤講師 / 日本出版学会員 / デジタルアーカイブ学会員 / 主な著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)
タグ: / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / /