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夏目漱石『草枕』―― 松岡正剛の電読ナビ

8月26日号(最終回)  15世紀のグーテンベルクの活版印刷機発明以来、人はみな「グーテンベルクの銀河系」に住んでいる、とマクルーハンは言いました。集団の場で共有されていた口伝の物語は、活字となって個々に伝わることで「個人」の発生を促した、また、それまで音読されていた本が、このころから黙読され始めて、読書が心の中の行為になり、「無意識」さえ生まれた、と言うのです。わたしたちが知の道具として使ってい […]

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滝沢馬琴『南総里見八犬伝』―― 松岡正剛の電読ナビ

8月12日号  お楽しみいただいた本連載も、今回含めてあと2回で終了となりました。そこできょうは、1年前、『千夜千冊』の1000冊到達まであと2冊を残した、ぎりぎり瀬戸際の第998夜に書かれたこの一夜を紹介しましょう。岩波文庫で10巻分もの分量、また、30年もの歳月を掛けて書き継がれたというおそるべき大河ぶりを誇る物語。江戸の戯作家馬琴が生涯をかけて描いたのは、15世紀、室町日本を舞台にした“侠気 […]

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ヴェルヌ『十五少年漂流記』―― 松岡正剛の電読ナビ

7月25日号   さあ、夏休み! お盆休みしかない大人となっても、あの永遠のように続くと思った子ども時代の興奮は忘れられませんね。そこで今日はこの一夜をご紹介します。ロビンソン・クルーソーにも影響されてヴェルヌが描きだした冒険物語。少年たちのけなげなで一途なチームワークを描いて、胸迫る読書体験を与えてくれます。原題は『二年間の休暇』、現在はこのタイトルを使う場合も多いようです。 『千夜千冊』第38 […]

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良寛『良寛全集』―― 松岡正剛の電読ナビ

7月8日号  きのうは七夕。『千夜千冊』が4年半かかって1000冊に到達したのは、1年前の7月7日の夜でした。記念すべき第1000夜には、どんな本が登場するか? とあるブログが開いた予想投票には、たくさんの参加がありました。それぞれが『千夜千冊』の本すべてをふまえて、熱くコメントする大予想バトルとなり、本をめぐる知のイベントはこんなに盛り上がるのか、と大きな反響を呼んだのです。ちなみに一番人気は紫 […]

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シェイクスピア『リア王』―― 松岡正剛の電読ナビ

6月24日号  このごろはやっている本が、古典といわれる本の内容を短く手軽にわかるようにしてくれる解説本。えっ、そんなの邪道だといいたいんだろうって? いえいえ、とんでもありません。本について語る本のカタチが、いろいろさまざまあることが、「本」本来の自由を語っているのです。そこで、今回ご紹介するこの一夜。映画デビュー!?に中学劇の思い出から、だんだんハードになっていく語り口にのせて、シェイクスピア […]

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倉橋由美子『聖少女』―― 松岡正剛の電読ナビ

6月10日号  昨年7月に足かけ5年で1000冊に到達した『千夜千冊』。しかし、それで終わったわけではありません。来年はじめの出版を控え、本で世界を語り尽くすために、松岡正剛は現在も週に2-3冊のペースで書き足しているのです。きょうはその中から、1040夜として紹介された倉橋由美子をご紹介。現代小説の母でもある作家への限りないオマージュが綴られます。 『千夜千冊』第1040夜 2005年5月25日 […]

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ダシール・ハメット『マルタの鷹』―― 松岡正剛の電読ナビ

5月27日号  今日5月27日は、ちょうど111年前に作家ダシール・ハメットが生まれたメモリアル・デイです。サンフランシスコのピンカートン探偵局の一員だったその人は、ハードボイルドというあまりにかっこいいスタイルを作り上げたのでした。乾いた、短い台詞を吐く、女に弱いアメリカンヒーロー、サム・スペードこそ、アメリカとは何かを考えさせる大切な存在なのです。 『千夜千冊』第363夜 2001年8月23日 […]

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手塚治虫『火の鳥』―― 松岡正剛の電読ナビ

5月13日号  会話していても知っている本が出てくるとウレシイものです。千夜千冊も有名な本はひときわアクセスが多い。そこで今回はあまねく知られたこのマンガ家の登場です。発表当時、このセイゴオ式の手塚論は、マンガ研究者たちでたいへんな話題沸騰となりました。そう、われらがテヅカこそは、国民作家ゲーテであり、大審問官ドストエフスキーであり、超文豪ユゴーであって、世界そのものを組み立てる巧緻なレオナルド・ […]

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須藤晃『尾崎豊 覚え書き』―― 松岡正剛の電読ナビ

4月25日号  1992年4月25日、未明。26歳のシンガー・ソングライター尾崎豊は、東京・足立区千住河原町の民家の庭で全身傷だらけの姿で発見され、同日12時過ぎ、肺水腫で亡くなりました。尾崎が発見された民家の一室はその後、ファンに開放され、「尾崎ハウス」と呼ばれています。”鮮烈”という言葉を身にまとい、痛切な歌をつくり続けた一人の若者。いまもなお人々に強く思われ続けている […]

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吉田満『戦艦大和ノ最期』―― 松岡正剛の電読ナビ

4月4日号  きょう紹介する「千夜千冊」は、1年前の4月6日に、60年前のその日に日本におきたある悲劇を思って書かれたものです。本の著者は、そのとき弱冠22歳の青年士官だった吉田満。敗戦直後に、ほとんど一日だけで書かれたというこの一冊は、漢字とカタカナという当時の戦闘詳報の体裁をとり、決して読みやすいわけではないのに、今なお心に深く彫り込んでいく言葉の力をもっています。海外でも『Requiem f […]

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稲垣足穂『一千一秒物語』―― 松岡正剛の電読ナビ

3月25日号  作家が「自分が生涯を通して書くものはすべて、最初に書いた本の脚注に過ぎない」と言い切った、そんな一冊があります。千夜千冊にも名前が数多く登場し、松岡正剛の考え方に多大な影響を与えた作家、稲垣足穂が、大正12年に23歳でまとめた本書がそれです。でも、その本が特別というよりも、そんなことを言える作家がまさに特殊な存在。タルホが自らの生き方から示したテーゼ、しかつめらしい「世界」というも […]

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黒岩涙香『小野小町論』―― 松岡正剛の電読ナビ

黒岩涙香『小野小町論』(3月18日号)  きょう3月18日は、精霊(しょうりょう)の日。万葉時代の最も優れた歌人、柿本人麻呂、平安王朝文化の立役者的な歌人・和泉式部、そして絶世の美女歌人で薄倖の生涯が伝わる小野小町の3人の忌日とされていることが由来です。そこで今回選んだのはこの一夜。明治中期の東京で最も発行部数が多かった新聞『萬朝報(よろずちょうほう)』を創刊したジャーナリスト、黒岩涙香のロマンテ […]

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メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』―― 松岡正剛の電読ナビ

3月11日号  名作古典の中では、よく知られているわりにはちゃんと読んだ人をあまり見かけないという本がたくさんあります。ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』しかり、ゲーテの『ファウスト』しかり、メルヴィルの『白鯨』もそうですね。今日はそんな読まれざる傑作の中でも、ヴィジュアル的には超有名な、あのシェリー夫人の『フランケンシュタイン』を紹介しましょう。『千夜千冊』は、現在でもいくつものスクリーン […]

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大槻ケンヂ『ボクはこんなことを考えている』―― 松岡正剛の電読ナビ

大槻ケンヂ『ボクはこんなことを考えている』(3月4日号)  初シングルのタイトルが「元祖高木ブー伝説」、最初のアルバムが「仏陀L」、その後に「猫のテブクロ」「サーカス団パノラマ島へ帰る」「レティクル座妄想」、シングルタイトルでは「踊るダメ人間」「暴いておやりよドルバッキー」「君よ!俺で変われ!」などなど。こんなコトバ感覚の持ち主、元・筋肉少女帯のボーカル・大槻ケンヂ(現在のグループ名は「特撮」(! […]

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ステファヌ・マラルメ『骰子一擲』―― 松岡正剛の電読ナビ

ステファヌ・マラルメ『骰子一擲』(2月28日号)  今日ご紹介するのは、本による広大な知の世界を紹介する千夜千冊でも、書物そのものに深く迫った格別のテキストです。19世紀フランスの象徴詩派の詩人、マラルメの『骰子一擲(とうしいってき)』がその一夜。7種類の活字を使い、詩篇を特殊な組み方によって見開き11面に配分した、マラルメ晩年の最も冒険的な作品です。千夜千冊は、マラルメを詩人としてだけではなく、 […]

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星新一『ボッコちゃん』―― 松岡正剛の電読ナビ

星新一『ボッコちゃん』(2月18日号)  紙からパソコン、ケータイへ。活字を読むスタイルがどんどん自由に広がってきましたね。でも、今から50年も前に、本の語りのスタイルをスマートに一変させた小説家がいたんです。クールでおちゃめで上品な、SFショートショートというジャンルを作り上げた星新一がその人。文庫というかたちにものすごく似合っていた極小セカイは、21世紀にどんな読まれ方をするのでしょうか。今回 […]

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湯川秀樹『創造的人間』―― 松岡正剛の電読ナビ

2月11日号  『千夜千冊』には、人文系の本ばかりではなく、宇宙物理、数学をはじめ、自然科学の本がたくさんあります。『どんな「思想」も「表現」も、その起源には宇宙観が関与している』(1001夜(2))とあるように、本の知の全体をあらわす『千夜千冊』では、文の領域と理の領域の交差が重要な要素となっているんです。そこで、今回は日本初のノーベル賞受賞者、湯川秀樹を取り上げたこの一夜を紹介しましょう。現代 […]

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山本常朝『葉隠』―― 松岡正剛の電読ナビ

2月4日号  1703年(元禄16年)2月4日、302年前のきょう、東京・高輪の熊本藩細川家中屋敷など4ヶ所で、大石内蔵助良雄はじめ47人の元赤穂藩士が切腹しました。午後4時から6時までの間でした。まさに「武士道とは死ぬことを見つけたり」そのものの忠義心として語り継がれる赤穂浪士の討ち入り事件。しかし、この言葉を生んだ『葉隠』は、実は武士道を意外なキーワードに求めているのです。それは” […]

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マーク・トウェイン『ハックルベリイ・フィンの冒険』―― 松岡正剛の電読ナビ

1月28日号  子供たちに向けた本には、光り輝くヒーロー・ヒロインが大活躍しますね。でも、この一冊はちょっと違う。『トム・ソーヤーの冒険』を生んだマーク・トウェインが本当に書きたかったヒーローの話は、その後10年を掛けて構想した、この“不良少年”ハックの物語だったのです。『千夜千冊』では、なぜこの一冊が、いつの時代でも大人の心に響く作品になっているかの秘密が解き明かされていく。そこには、社会の「負 […]

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グレアム・グリーン『第三の男』―― 松岡正剛の電読ナビ

1月21日号  本という媒体は、映画や音楽、アートなど、目と耳のメディアと仲がいい。絵画から本へ、本から映画へ、と相互に変身・補完し、いっそう広がる情報世界を与えてくれます。そこで今日は、「千夜千冊」に多く取り上げられている芸術やエンタテインメントの本の中から、イギリス20世紀を代表する作家、グレアム・グリーンの一冊を取り上げました。古典的名作となったこの映画は、映画のために書き下ろされた一冊の本 […]