「架空表現規制の国連委草案に見直し要請」「メディアドゥHD上場後初赤字決算」など、出版業界気になるニュースまとめ #369(2019年4月8日~14日)

出版業界気になるニュースまとめ

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 2020年4月13日~19日は「架空表現規制の国連草案に見直し要請」「メディアドゥHD上場後初赤字決算」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

国内

22歳以下なら約150タイトルが無料で読める! ~「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年マガジン」が初の共同プロジェクト〈HON.jp News Blog(2019年4月8日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/22206
 エイプリルフール企画で「少年ジャンマガ」というネタをやったばかりだったのですが、本当の企画が動いていたとは。しかし、記事末尾のオピニオンにも書いたのですが、1年前に鈴木みそ氏が「今の子供はそもそも漫画を読む習慣がないので、20歳未満は全部無料でいいのでは?」と提案したのに対し、かなり強い反発の声が挙がっていたのを思い出します。今回、とくに反発の声は観測できていないので、1年も経つと状況も印象も変わるのですね。

経産省、二次創作物の著作権や利益分配をブロックチェーン管理する技術的要件定義をまとめ報告 ~初音ミクやニコ動関係者・業界有識者らを招き検討会開催〈仮想通貨 Watch(2019年4月8日)〉

https://crypto.watch.impress.co.jp/docs/news/1178850.html
 報告書、まだ読めていないのですが、登録・分配・支払という3つの機能の「技術的な要件定義を含む」という点が気になります。こういう機能を持ったブロックチェーンで著作権管理をする仕組み、というICO(Initial coin offering)のホワイトペーパーはいくつもあったはず。国がやるプロジェクトなのに、中央集権型台帳システムではなくブロックチェーンを使う理由、というところがどう説明されているのか。

 国連のプロジェクトでは「不正行為やデータの管理機会を減らしつつ、取引処理の高速化」を図るためや、仲介業者が不要となるため手数料が最大98%削減できる、などが理由とされているのですが(↓参照)。

セルシス「CLIP STUDIO PAINT」の世界累計出荷本数が500万本を突破〈HON.jp News Blog(2019年4月8日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/22203
 これは体験版を合わせた数字なので、広報に体験版の割合を尋ねてみたのですが非公開とのことでした。ただ、以前に比べると数字の伸びるペースは上がっており、広がっているのは間違いないと思われます。

ラノベレコメンドサイト「キミラノ」正式オープン ~ 読書メーター、カクヨムとも連携してラノベを盛り上げる〈HON.jp News Blog(2019年4月8日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/22194
 最初からレーベル横断で、しかも、読書メーターやカクヨムとも連携するというのが、結構「本気」で取り組んでいる感があります。

日本マンガ学会理事会など、架空表現を規制対象に含める国連子どもの権利委員会策定ガイドライン草案に対し見直しを要請〈HON.jp News Blog(2019年4月8日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/22200
 本件、ずっと気になっていたのですが、クリエイター側からも声が挙がったというところで、記事にすることにしました。

Microsoft、「Chromium」ベースの新しい「Microsoft Edge」をプレビュー公開〈窓の杜(2019年4月9日)〉

https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/1178950.html
 気になっていたので、試してみました。EPUBファイルを開くことはできず。ストア閉鎖しちゃいましたし、対応するかどうか強い不安が……。

令和でKADOKAWAの「万葉集」本が爆売れの理由〈東洋経済オンライン(2019年4月10日)〉

https://toyokeizai.net/articles/-/275590
 4月1日の17時にPR TIMESから“新元号「令和」の典拠は「万葉集」梅花の歌32首「序」”という、かなりしっかりした内容のリリースが流れてきて、仰天しました。こういうのはとにかくスピード命なんですよね。

フロントライト搭載の新型「Kindle」出荷開始 ~ エントリーモデルが3年ぶりにモデルチェンジ〈HON.jp News Blog(2019年4月10日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/22243
 エントリーモデルにフロントライトが搭載。つまり、ライトが標準装備として位置づけられたことに。ただ、安いとはいえ解像度が 167ppi というのはちょっと辛い。

メディアドゥHDが上場以来初の赤字〈徳島新聞(2019年4月11日)〉

https://www.topics.or.jp/articles/-/187467
 ほぼ3Q時点の修正予想どおりの着地ではあります。通期決算説明資料はこちら。

 営業利益14.6億円(前期比+58%)と本業は好調。なのに、当期純利益が▲12.4億円。3Q時点の「その他投資有価証券評価損」が4.7億円見込みだったのが、 Creatubbles 7.6億円、メディバン 2.4億円、Lunascape 2.6億円と、3社合計で12.6億円に変わっています。いずれも2016年から2017年にかけて資本参加した企業です。

 他の子会社は、フライヤーは会員数2.5倍、事業拡大へ向け増資も実施済み。出版デジタル機構はメディアドゥと合併。アルトラエンタテイメントは遅延していた採用計画に目途がついて損益は改善傾向。Jコミックテラスは売上未達で損益改善に着手。マンガ新聞はのれん償却済み。まあ、投資案件すべてがうまくいくなんてことはないでしょうから、旧出版デジタル機構とフライヤーが順調なら、御の字ではないでしょうか。

 個人的に決算説明資料で興味深かったのは「当社流通総額は2018年2月期 710億円、2019年2月期 950億円」という記述があったこと。2018年2月期の電子書籍流通事業売上は362.23億円で、流通総額の約51.0%。2019年2月期の電子書籍流通事業売上は499.07億万円で、流通総額の52.5%、ということになります。思っていたより書店側の取り分が大きい……。

「G Suite」、Googleアシスタント対応や動画チャットのキャプション、Office編集などの新機能〈ITmedia NEWS(2019年4月11日)〉

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1904/11/news065.html
 従来のGoogleドライブは、Microsoft Office系のファイルを開くと「Google Docsなどの形式に変換したファイルを“新たに作成”した上で開く」という挙動でした(これが理解しづらいという意見も)。これが今後は、Microsoft Officeのファイル形式のまま開いて編集できるようになるそうです。NPO法人ではG SUITEを使っているのですが、本稿執筆時点ではまだリリースされていないようです。個人的には、Google Docsなどへの変換も選択できるといいと思うのですが、どうなるんだろう?[追記:Google Docsへの変換も可能でした]

キャッシュレス決済に書店が今対応すべき理由 PayPayを導入したリブロプラスの事例〈ほんのひきだし(2019年4月11日)〉

https://hon-hikidashi.jp/more/80639/
 PayPayなどのキャンペーン特需で、利用額がかなり伸びているようです。今後も、消費税率アップ時の景気対策で、国がキャッシュレス決済普及の動きをとることから、導入すべきだという論です。もう一歩踏み込むと、個人的には「どのポイント経済圏に入るか?」という話に繋がってくると思っています。
 クレジットカードの手数料は3~4%だから、利益率が低い商売だと結構痛いのですよね。QR決済も、いまは手数料無料だったり安かったりしますが、普及してきたころにどうなるか。

定額制サービス全般の利用者は2割強、そのうち読み放題の利用者は16.0% ~ マイボイスコム調べ〈HON.jp News Blog(2019年4月11日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/22262
 つまりこの調査では、読み放題サービス利用者は、全体では3%強ということに。ちなみに、MMD研究所が2018年8月に実施した調査では、読み放題は「dマガジン」と「Kindle Unlimited」が強かったのですが、いまはどうなっているか。 日本でも2017年10月に始まった「Prime Reading」が、どれくらい浸透しているか気になるところです。

テレビ東京+幻冬舎+noteで「#コミックエッセイ大賞」を開催 ~ 審査員に、けらえいこ先生、箕輪厚介氏、羽賀千恵氏、佐久間宣行氏、祖父江里奈氏など〈HON.jp News Blog(2019年4月11日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/22256
 テレビ東京とも組んで、映像化も視野に入れた賞だというのが興味深い。そういうことが可能なプラットフォームに成長した、ということに。しかし、コミックはどこでも優遇されているなあ……。

KADOKAWAの小説投稿サイト「カクヨム」が3周年。今年秋には稼げる仕組みを加え、新たなステージへ〈HON.jp News Blog(2019年4月11日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/22251
 投稿プラットフォームでユーザーに収益が還元される仕組みに先鞭をつけたのは、「ニコニコ動画」で2011年12月に始まったクリエイター奨励プログラムでしょう。最近では、広告収益を100%還元する「アルファポリス」のような事例(↓)も登場しています。クリエイターの囲い込み戦略が、どんどん激化している感。自社で囲い込まないスタンスの「小説家になろう」は、こういうモデルへ踏み込みづらいのが辛いか?

キングジム「ポメラ」が文学フリマ 第二十八回東京に出展〈HON.jp News Blog(2019年4月12日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/22265
 最新型の実機が触れるのはもちろん、歴代モデルも展示されるとのこと。行ってみようかな。

ヤフー社員、小学館漫画アプリを不正に改変した容疑で書類送検 ヤフー「疑いが事実であれば大変遺憾」〈ねとらぼ(2019年4月12日)〉

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1904/12/news089.html
 不正改造の手口を「自分のブログで公開」するという、アホですか事件。犯罪行為だと思っていなかったのでしょうか?

(活字の海で)著作権70年時代の出版界 権利者不明作品の活用が鍵〈日本経済新聞(2019年4月13日)〉

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO43669570S9A410C1MY5000/
 オーファンワークス(孤児著作物)実証事業の報告シンポジウム「著作権保護期間70年時代に裁定制度が果たす役割とは」のレポート。行きたかったのに、体調不良で行けませんでした……。福井健策先生の「著作権の終活」という提言ももちろん、なるほど確かにと思わせる言葉の選び方がうまい。

海外

米オーディブルが和解に応じて期限切れのキャンセル分を返却〈HON.jp News Blog(2019年4月9日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/22235
 和解はいいとして、最大1200冊分が無料というのがすさまじい。仮に1冊500円としても60億円。アマゾンからしたら、裁判が長引くよりマシなのかもしれませんが。

国際ブッカー賞の最終ノミネート作品発表、アジア勢はゼロ〈HON.jp News Blog(2019年4月10日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/22246
 「たまごっち(Tamagotchi)」という名の男が登場する『The Pine Islands』という作品がノミネートされているそうです。松尾芭蕉とたまごっち……?

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CC BY-NC-SA 4.0
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※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。

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著者について

About 鷹野凌 789 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 エディティング・リテラシー演習 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など
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