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2025年12月14日~20日は「スマホ新法施行」「NDL書影APIサービス終了へ」「Google検索“優先ソース”機能がグローバル展開開始」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。
【目次】
- 総合
- 政治
- 社会
- これからはチャットボットや要約AIが記事の「読者」になる、そしてジャーナリストはAIのために記事を書く存在に 【生成AI事件簿】AI経由でニュースを消費する時代に求められるジャーナリストの能力と読み手に求められるリテラシー〈JBpress(2025年12月13日)〉
- AIが最初に奪うのは「新入社員の仕事」という無情な現実…なぜ若手社員は「不要になる」のか(小林 啓倫)〈マネー現代 | 講談社(2025年12月15日)〉
- 「嫌いな言葉は出版不況」GOATを大ヒットさせた編集長・三橋の信念〈YOUTRUST Studio(2025年12月15日)〉
- 2025年度のアクセシビリティへの取り組みについて〈小学館(2025年12月15日)〉
- 書影APIのサービス終了について(2026年3月31日(火))〈NDLサーチ|国立国会図書館(2025年12月17日)〉
- 新たなDRMフリーKindle本で高まる利便性~解説:鷹野凌さん〈クリエイターエコノミーニュース(2025年12月20日)〉
- 経済
- 技術
- アマゾン、Kindle本の内容を「ネタバレなし」でAIに質問可能に 作家は拒否できず〈CNET Japan(2025年12月15日)〉
- Google、Preferred Sourcesをグローバル展開。トップニュース枠でのクリック数が2倍に〈海外SEO情報ブログ(2025年12月15日)〉
- Creative Commons announces tentative support for AI ‘pay-to-crawl’ systems(クリエイティブ・コモンズ、AIによる「有料クロール」システムの暫定サポートを発表)〈TechCrunch(2025年12月15日)〉
- AI時代にSEOで勝ち続けるために知っておきたいこと【鈴木謙一の2025年SEO総まとめ】 | 海外&国内SEO情報ウォッチ〈Web担当者Forum(2025年12月19日)〉
- 白石書店 RFIDタグを活用した購入者キャンペーンを実施〈The Bunka News デジタル(2025年12月19日)〉
- お知らせ
- 雑記
総合
年忘れ、電子出版放談会 2025|日本電子出版協会〈YouTube(2025年12月16日)〉
例年、JEPA「電子出版アワード」の授与式後に開催されていた「今年の電子出版トレンド振り返り&討論」が、今年は単独での開催となりました。マンガ動向に菊池健氏、マンガ以外の国内動向に飯田一史氏、そして技術動向が私という布陣で、2時間みっちり語り合っています。
なお、JEPAからとくにお知らせは出ていませんが、残念ながら今年は「電子出版アワード」を開催していません。昨年まで選考委員でしたし、理事でもあるので事情は把握していますが、私から公にはしません。
政治
免税事業者からの仕入れ控除、8割→7割に インボイス巡り政府・与党〈日本経済新聞(2025年12月16日)〉
このままだと来年10月から「8割控除」の特例が「5割控除」に下がる予定でしたが、どうやらもう少しなだらかに下げていく形になるようです。財務省は「悪用事例がある」などと抵抗していましたが、政治的判断でこういう形に着地することに。折衷案ですねぇ。
第2回 出版産業における返品削減研究会〈経済産業省(2025年12月17日)〉
委員に野間省伸氏(講談社)など、出版関係者がずらりと並んでいる政府の研究会。委員の資料が軒並み非公開なので、表に出せない情報がいろいろあったのでしょう。事務局資料には、RFID対応機器の書店への導入を促進するための新たな補助金が準備されている、ということが書かれていました。
Googleに広告枠停止の理由開示を要請 経産省〈日本経済新聞(2025年12月17日)〉
こちらは、2021年に施行された「デジタルプラットフォーム取引透明化法」に基づく「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての評価」について。定期的に公表されているやつです。記事タイトルではGoogleだけ挙げられてますが、Amazon、楽天、LINEヤフー、Apple、Metaも対象です。3分野それぞれかなりのページ数がある評価資料が出ています。けっこう細かく指導しているようですね。
AppleとGoogleがスマホ新法への対応を相次いで発表 ~ついにApp Store以外のアプリを認める〈窓の杜(2025年12月18日)〉
スマホ新法が12月18日に施行されました。AppleとGoogleはどちらも、施行日に変更点や対応に関するお知らせを出しています。両社とも、意外とちゃんと従っているという印象です。欧州に対しては新機能の投入が遅れたりといった嫌がらせのような対応が行われていますが、日本ではひとまずそういうことはなさそう?
アップルとグーグル、アプリ外決済に最大15~20%の手数料課す方針…スマホ新法施行〈読売新聞(2025年12月19日)〉
こちら、私は「ああ、日本ではそこそこマシな料率を出してきたな」という印象だったんですが、反響を見ていると「外部決済なのに手数料とるのかよ!」みたいな反発が多く観測されます。私の感覚がちょっとズレてたかな……。
なにせAppleは、Epic Gamesとの独禁法訴訟が決着したあと「外部決済を認めるけど手数料は27%ね」という、判決を骨抜きにするような規約改定をやってきた企業なので。最大15%ってむしろ「公取委、頑張ったじゃん!」って思えちゃう。
Kindleアプリ、Webリンクから直接購入可能に〈Impress Watch(2025年12月18日)〉
スマホ新法関連で、サードパーティーアプリにも変化が。ただ、Kindle iOSアプリは少なくとも11月時点ですでにgetbookボタンが出ていたはずなんですよね。私自身も当時、確認済みだったのに忘れてた。トホホ。楽天Koboも同様のアップデートが確認できましたが、アプリの更新履歴を見たら6カ月前だったっぽい。まあどちらも、アプリ内から直接買えるわけではなく、リンクでブラウザを開く必要があり、Appleのセキュリティ警告が毎回出るのが実にわずらわしい。
社会
これからはチャットボットや要約AIが記事の「読者」になる、そしてジャーナリストはAIのために記事を書く存在に 【生成AI事件簿】AI経由でニュースを消費する時代に求められるジャーナリストの能力と読み手に求められるリテラシー〈JBpress(2025年12月13日)〉
小林啓倫氏による論考です。今後は「機械による正確な処理」が行いやすいような文章が求められるようになり、「印象的なリード文、物語的な構成、情緒的な表現」などはノイズになる、重視されるのは「事実の明確さと理路整然とした構造」だ――みたいな話です。それって新聞報道の書き方で求められてきたことのような?
あと、過去にもSEO対策で「検索エンジンに優しい文章を」みたいなことが言われてきたのを思い出します。AIボットを読者にしたいなら、それでもいいんでしょうけど、私は嫌だなあ……要するに「AIのエサになる」わけですよね。それを是としないなら、逆のことをやればいい。つまり、「印象的なリード文、物語的な構成、情緒的な表現」で、人間に読んでもらいましょう。
AIが最初に奪うのは「新入社員の仕事」という無情な現実…なぜ若手社員は「不要になる」のか(小林 啓倫)〈マネー現代 | 講談社(2025年12月15日)〉
令和の「若手社員」はなぜスキル不足なのか…ベテランだけが体得している“見えない技術”とは《AIでは再現困難》(小林 啓倫)〈マネー現代 | 講談社(2025年12月15日)〉
こちらも小林啓倫氏。量産してるなあ。これは恐らく「若手社員」に限った話ではなく、コンテンツ・パブリッシングの領域でも同じことが言えると思います。つまり、新人の育成が難しくなる。便利な道具でステップを飛ばして、いきなりそれなりのレベルの出力ができてしまう。プロセスまで熟知してないから、なぜそうなっているのかわからない。あるいは応用が利かない、みたいなことが起きそう。
「嫌いな言葉は出版不況」GOATを大ヒットさせた編集長・三橋の信念〈YOUTRUST Studio(2025年12月15日)〉
なんというか、売れてるのは良いんですけど、採算度外視だと続かないですよね……510円という値付けで、売れれば売れるほど赤字になる、という。そういう事業展開を許容している小学館の懐の広さ、というか余裕を感じてしまいました。まあ、認知媒体として割り切っているのかもしれませんが。コミック事業だと、マンガ誌単独では赤字みたいな話はよく目にしてきましたし、慣れているのかも。
2025年度のアクセシビリティへの取り組みについて〈小学館(2025年12月15日)〉
小学館がここ数年、毎年発表している「アクセシビリティへの取り組みについて」。取り組み自体は素晴らしいと思うのですが、このお知らせページそのものに一言申し上げずにはいられない。ウェブアクセシビリティを考慮してくださいよ。具体的には、WCAG 2.1 達成方法集にある「見出しを特定するために、h1要素~h6要素を使用する」を守りましょうよ。
書影APIのサービス終了について(2026年3月31日(火))〈NDLサーチ|国立国会図書館(2025年12月17日)〉
ぎゃああああああああああああ! と思わず声が出ました。「データ提供機関である出版情報登録センター(JPRO)の利用規約改定に伴い」とのことですが、該当するのは恐らく第6条でしょう。
「その他事業者」に対して別掲の出版情報項目利用一覧表の中の「画像等」(以下「画像等」という)を提供するに際して、提供者から使用について許諾申請を求められた場合は、各々の定められた書式による承諾がなされない限り、受信者は当該提供者の画像等の使用はできないものとします。
つまり、JPROから提供された画像を、自分のところで直接利用するだけでなく、外部へAPIで提供する仕組みが、提供者(出版社)から許諾されなくなった、ということでしょう。構図的には、版元ドットコムとopenBDプロジェクトのときとほぼ同じだと思われます。
新たなDRMフリーKindle本で高まる利便性~解説:鷹野凌さん〈クリエイターエコノミーニュース(2025年12月20日)〉
吉田喜彦氏にお声がけいただき、ポッドキャスト番組に急遽ゲスト出演しました。タイトルに「高まる利便性」とありますが、ほとんど影響ないんじゃなかろうか? という身も蓋もない予想をしております。だって現状でも、DRMフリーのKindle本って、見たことありますか? 探せますか? 書誌情報に「同時に利用できる端末数:無制限」と出ている本は実はDRMフリーってこと、恐らくほとんどの人が知らないですよね。
経済
【特集】メモリ価格が2.8倍に爆上げ。SSDも合わせて高騰中。それでも今買ったほうがいい理由とは?〈PC Watch(2025年12月15日)〉
来年以降、デバイスの販売価格にも大きな影響が出そうです。GIGAスクール端末の更新とか、めちゃくちゃ大変なことになりそうな気がします。必要数調達できないんじゃないだろうか?
チャットノベルアプリ「TanZak」 サービス終了のお知らせ〈集英社(2025年12月15日)〉
お疲れさまでした。チャットノベルは、本邦ではあまり流行りませんでしたねぇ……。2019年に新規のノベルサービスがばんばん始まって、年末の回顧記事で「ノベルサービス戦争勃発」と書いたのを思い出しました。当時私が挙げたうち「セルバンテス」「LINEノベル」「ポルティ」「まいどく」「ヨムト」はすでに終了し、「角川文庫・ラノベ読み放題」は「ブックウォーカー 読み放題」にサービス変更しています。そして新たに「TanZak」が終了、と。そういえば、アメリカで「Kindle Vella」が終わったのも今年のことでした。うーん、中国の「網絡文学」はなぜ成功できたのだろうか。無料ではなく有料サービス(話売り)なんですよね。
French Publishers Association Looks to Compensate Authors for Used Book Sales(フランス出版協会、古本販売による著者への補償を検討)〈Publishing Perspectives(2025年12月15日)〉
日本でも昔、ブックオフが日本文藝家協会などに「著作物使用料に類するものを支払いたい」との意向を示したことがあるのを思い出しました。その後、出版社がブックオフに出資って動きもあったんですよね。しかし結局ブックオフは、古本販売からの対価還元を継続的に行うことはありませんでした。最近だと、バリューブックスが2017年から提携出版社に対価還元する取り組みを行っています。先駆者!
技術
アマゾン、Kindle本の内容を「ネタバレなし」でAIに質問可能に 作家は拒否できず〈CNET Japan(2025年12月15日)〉
New Kindle Recaps feature provides story refreshers for eBook series(キンドルの新機能では、本に関する質問にネタバレなしで即座に回答します)〈Amazon News(2025年12月11日)〉
これまで読んだあらすじや登場人物をAIに質問できるKindleの新機能に賛否【やじうまWatch】〈INTERNET Watch(2025年12月18日)〉
現時点では米国のKindle iOSアプリのみで展開され、対象は数千冊の英語書籍だけ。「数千冊」という表現が同じなので、4月に始まった「Recaps」機能と対象範囲は恐らく同じだと思われます。対象範囲が同じでも、ただ単に要約が出力されるだけではなく、ユーザーからの質問に回答するチャット機能になっている点が新しい感じでしょうか。当時「これはただの様子見で、いずれ対象を拡大してきそうな気もします」と書いたんですが、予感的中ですかね? これは。既に視界の範囲ではとくに「書き手」から強めの反発を複数観測しています。燃えそう。
Google、Preferred Sourcesをグローバル展開。トップニュース枠でのクリック数が2倍に〈海外SEO情報ブログ(2025年12月15日)〉
JEPA「年忘れ、電子出版放談会 2025」に登壇した際、「むしろこれから展開されるPreferred Sources(優先ソース)の影響のほうが大きいかも?」という予想を語らせていただきました。これにより検索結果のパーソナライズが進むと、十把一絡げなSEOでは通用しなくなるからです。つまり、ユーザーが優先ソースに選んでくれるような、メディアのブランド価値を高める方向の施策が強く求められるようになるかもしれません。
Creative Commons announces tentative support for AI ‘pay-to-crawl’ systems(クリエイティブ・コモンズ、AIによる「有料クロール」システムの暫定サポートを発表)〈TechCrunch(2025年12月15日)〉
Cloudflareが始めたのは“pay par crawl”ですが、こちらは“pay-to-crawl”とのこと。自動で、というのは理想的なんですが、どうやって実装するんだろう?
AI時代にSEOで勝ち続けるために知っておきたいこと【鈴木謙一の2025年SEO総まとめ】 | 海外&国内SEO情報ウォッチ〈Web担当者Forum(2025年12月19日)〉
鈴木謙一氏による2025年SEOまとめ。AI関連だらけです。とくに「AIO/GEO/LLMOは必要なのか?」とか「『AIの普及でグーグル検索のトラフィックが減少』は本当なのか?」などは、なかなか痛快です。
検索へのAI統合は「拡大の瞬間」、Google検索SVPが語る〈海外SEO情報ブログ(2025年12月18日)〉
関連で。下記の箇所を読んで、笑ってしまいました。
パブリッシャーのトラフィック減少への懸念に対しては、あるサイトでトラフィックが 50% 減少したのは AI Overviews の導入前だったという事例を引用し、内部データは外部レポートと矛盾することが多いと指摘しました。
私が以前から何度か言及している「AI Overviews開始以前に、寄生サイト対策のペナルティでアクセスが激減しているメディア」について、とうとうGoogleの中の人からも指摘されちゃいましたね。
白石書店 RFIDタグを活用した購入者キャンペーンを実施〈The Bunka News デジタル(2025年12月19日)〉
RFIDを使い、対象店舗で購入しないと抽選に参加できない仕組みでキャンペーンを実施したそうです。ということは、過去には他店で買った本を持って来てぬけぬけと抽選に参加する人もいた、ということなのでしょう。RFIDがなくても、入荷数と販売数はわかりますから、抽選回数が過剰だったのでしょうね。うへぇ。
お知らせ
イベントについて
年の瀬に今年の出版ニュースを振り返ろう! 今回はリアル会場からの配信です(前半だけ無料)。登壇者と直接会いたい方、全編視聴したい方は、Peatixでチケットをご購入ください。12月26日(金)19時受付開始、19時30分配信開始!
新刊について
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日刊出版ニュースまとめ
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雑記
12月29日は休刊しますので、年内は今回が最後です。年明け1月5日号で年末年始の2週間分を配信します。今年も1年お世話になりました。良いお年を! ……って、まだ12月26日の出版ニュース振り返り特番(リアル参加有)と、2025年回顧記事が残っています。まだ今年は終わらんよ!(鷹野)




































