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2019年2月18日~24日は「違法ダウンロード範囲拡大に権利者側からも異論続出」「国立国会図書館の書誌データがだれでも無償で利用可能に」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。
国内(違法ダウンロード範囲拡大関連)
こんな違法化「誰が頼んだ?」漫画家や専門家ら声上げる〈朝日新聞デジタル(2019年2月19日)〉
https://www.asahi.com/articles/ASM2L748HM2LUCVL04G.html
タイトルの「誰が頼んだよ」というのは、マンガ家・二ノ宮知子さんのツイート(↓)。日本マンガ学会や赤松健氏もそうですが、権利で守られるはずのクリエイター側からも強い反対の声が上がっているのが、昨年のブロッキングを巡る動きとの大きな違いだと思います。
「スクショ違法化」ってどういうこと? マンガ家などクリエイターが反対しているのはなぜ? 法学者や弁護士などの緊急声明「海賊版対策に必要な範囲に限定すべき」なのはなぜ?〈HON.jp News Blog(2019年2月21日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/19638
どうも「スクショ違法化」報道によって周囲に誤解が広がっている感が強まっていたので、緊急声明をただニュース的に流すだけではなく、なるべくかみ砕いて解説してみようと努めたコラムです。いやあ、難題だった。
「ダウンロード違法化の範囲は制限するべき」 講談社の野間社長、海賊版対策でコメント〈ITmedia NEWS(2019年2月21日)〉
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1902/21/news136.html
専修大教授で出版学会会長の植村八潮氏がYahoo!ニュース個人で2月14日に「出版業界内から違法化に対する懸念の声は、一人として聞こえてこない」と苦言を呈した(↓)のを受けたのでしょうか。クリエイター側の反対する声に後押しされたのでしょうか。講談社・野間社長からこんなコメントが出てくるとは。急に風向きが変わった感があります。
出版広報センター、ダウンロード違法化の対象範囲拡大方針に対し「ネットユーザーやクリエイターの表現行為を萎縮させるようなことがあってはなりません」という見解を発表〈HON.jp News Blog(2019年2月21日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/19651
講談社・野間社長とほぼ同時に、出版広報センターからも声明が。おお! これは! と思ったのですが……。
海賊版DL規制、自民が了承「権利者の指摘後に削除を」〈朝日新聞デジタル(2019年2月22日)〉
著作権法改正案、刑罰は「反復行為」に限定 自民部会が了承〈日本経済新聞(2019年2月22日)〉
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41608880S9A220C1EA1000/
自民党の部会は、文化庁案のまま承認してしまいました。赤池誠章部会長の「権利者に指摘されたら削除すればいいという話」という発言には、ちょっと首を傾げてしまいます。所持しているのが違法なのではなく、ダウンロード行為そのものが違法なのですが。本当に理解できているのか、疑問です。
出版社幹部「こんなことまで望んでなかった」 DL規制〈朝日新聞デジタル(2019年2月22日)〉
https://www.asahi.com/articles/ASM2Q0CP7M2PUCVL032.html
有料会員限定記事で、私は有料会員ではないため、タイトルにある「出版社幹部」の「こんなことまで望んでなかった」という発言の文脈がわからないのですが、本当にそう思っていたなら文化庁のパブコメ募集にそういう懸念を出版社側からも表明しておくべきだったのではないかと。もっともこれは、甘く見ていた私自身の反省でもあります。
国内(その他)
オリジナル作品展示即売会「COMITIA127」企業ブースのフォトレポート〈HON.jp News Blog(2019年2月18日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/15534
ひさびさに取材へ行きました。出張マンガ編集部もそうですが、企業ブース各社のクリエイター争奪戦が以前より激しくなっているなーという印象。
国立国会図書館、書誌データを4月1日からだれでも無償で自由に利用可能と発表〈HON.jp News Blog(2019年2月20日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/16307
びっくりするほど読まれた記事。ただ、どうやら「書誌データ」というのは業界周辺しか通用しない用語だったようです。言葉の意味を取り違えていた人も多かったようで、本文まで含まれるという勘違いを散見しました。もう少し丁寧に説明しておくべきだったと反省。
読書メーター、投稿レビューをダ・ヴィンチニュースへ連携掲載開始〈HON.jp News Blog(2019年2月20日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/16314
同じカドカワグループ内での展開ではありますが、よい連携だと思います。いずれ、グループ外との連携もあるでしょう。
インプレスR&D「著者向けPOD出版サービス」がアマゾンでの累計販売額1億円突破〈HON.jp News Blog(2019年2月20日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/16420
最近になって急速に伸びているそうです。直近3カ月の月平均販売額は1000万円とのこと。初期費用がかからず在庫リスクもないという出版者側のメリットと、マンガ以外はまだ物理本が主流である読者側のニーズが、うまく合致し始めたように思います。
講談社 純利益64%増 電子書籍好調 紙の不振補う〈日本経済新聞(2019年2月21日)〉
講談社、増収増益決算に〈新文化(2019年2月22日)〉
https://www.shinbunka.co.jp/news2019/02/190222-01.htm
日経には“人気漫画「進撃の巨人」や「転生したらスライムだった件」などの電子の単行本の販売が好調”と具体的なタイトルが挙げられているのと、数字的には新文化のほうが詳しいので両方ピックアップしておきます。「広告収入」が伸びていますが、これもデジタル系の伸びが牽引しているようです。
授業目的の公衆送信補償金制度が始動へ、対象外の著作物向けの新構想も〈日経 xTECH(2019年2月22日)〉
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00157/022100049/
改正著作権法第35条(学校その他の教育機関における著作物の複製)に基づく補償金制度を徴収・分配する権利を持つ団体が、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)に確定しました。構成員には書協、雑協や著作権管理団体など21団体がずらっと名前を並べており(↓PDF)、順当です。ただ、補償金額や徴収方法はまだこれから。別途、包括ライセンスも検討中というのがいいですね。
定額読み放題の「マガジン☆WALKER」が初の支店を展開 ~「MangaWith」でマンガ誌30誌以上を配信開始〈HON.jp News Blog(2019年2月22日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/19648
外販すると思っていなかったので、ちょっと驚きました。他にもどんどん展開されそう。定期刊行される雑誌は、サブスクリプションと相性がいいのですよね。
海外
芥川賞受賞作『コンビニ人間』がイギリスで再人気に〈HON.jp News Blog(2019年2月19日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/15566
書店のパワープッシュで人気に火が付いたというのが興味深い。日本だと2016年の、さわや書店フェザン店発「文庫X」みたいなムーブメントでしょうか。
読者からの購読料を増やすためにメディアができることは?〈HON.jp News Blog(2019年2月22日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/19644
アメリカでの、デジタルメディアの定期購読者を増やすための試みあれこれ。月何本まで無料で読める系の「メーター制」は、日本でも新聞社が採用しているのはよく見かけます。ガーディアン紙のようにミッションへの共感でサポーターが増やせるというのは、素直にすごいなあと思います。
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