読者からの購読料を増やすためにメディアができることは?

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 トリビューン出版、ガーディアン紙、そしてニュースウェブサイトであるスレート(Slate)をケーススタディとした2団体の報告書について、ハーバード大学のニーマン・ジャーナリズム・ラボがまとめている。

 デジタル広告費のうち、グーグルが37%、フェースブックが22%、そして成長中のアマゾンが8.8%を稼いでいるという現在の状況を念頭に、それぞれ Digital Content Next(編注:デジタルコンテンツ業界にポリシーガイダンスを提供する非営利の業界団体)と Lenfest Institute(編注:革新的なニュースイニシアチブを全国的に支援する非営利団体)がまとめた調査で、読者の貢献度を高めるための営利、非営利の2つのアプローチについて分析した。

 トリビューン社では、傘下の地方紙で月に10本程度の記事が無料で読めるメーター制を取り入れた定期購読モデルをテスト運用し、その後メーターを月数本にまで絞ったが、開始時に5万人に満たなかった定期デジタル版購読者が徐々に増え、22万7000人になった。同紙はボストン・グローブ紙の成功などを鑑み、定期購読料を最初のお試しは無料で、その後有料化後の最初の半年は毎週1.99ドルで設定し、さらに毎週3.99にしたところ、定期購読者1人あたりの購読料が33%増となった。

 一方でガーディアン紙とスレートでは、ジャーナリズムにおける自分たちのミッションを強調し、読者にサポートを訴えた。スレートは会員限定のポッドキャスト「Slow Burn」などの有料コンテンツを充実させたところ、2018年には会員が6000人増えたという。ガーディアン紙は、ドナルド・トランプ大統領のロシア疑惑の一端を担ったとされる、ケンブリッジ・アナリティカに関する調査報道により、アメリカからの読者を集めたのか、毎月一定額のサポートをする34万人の会員と、35万人から1回のみの寄付を獲得した。

参考リンク

ニーマン・ラボの記事

Lenfest Instituteによるレポート全文(PDF)

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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