「本屋大賞とマンガ大賞、ノミネート作を発表」「2019年の紙+電子出版市場は初のプラス成長」など、出版業界気になるニュースまとめ #408(2020年1月20日~26日)

出版業界気になるニュースまとめ

《この記事は約 7 分で読めます》

 2020年1月20日~26日は「本屋大賞とマンガ大賞、ノミネート作を発表」「2019年の紙+電子出版市場は初のプラス成長」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

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国内

LINEノベル、公式アプリをアップデート 〜 投稿作品TOPページと作品詳細ページのデザインをリニューアル〈HON.jp News Blog(2020年1月20日)〉

 LINE株式会社は1月14日、同社が展開する小説プラットフォーム「LINEノベル」公式アプリをアップデート、デザインをリニューアルしたことを発表した。iOS / Android版のどちらにも対応している。 デザインがリニューアルされたのは、投稿作品TOPページと作品詳細ページの2つ。自分好みの作品を見つけやすくなるなど、より多くの作品との出会いを創出するのが目的とのこと。 投稿作品TOPページでは、タブを横にスワイプするだ...

 LINEノベルのアプリが最初にリリースされたのは、去年の夏。そこから半年足らずで大幅なアップデートです。こういうやりかた、アジャイル開発って言うんでしたっけ。

2020年本屋大賞ノミネート作決定!『熱源』『ムゲンのi』『流浪の月』『ライオンのおやつ』など〈ほんのひきだし(2020年1月21日)〉

【2020/4/7】2020年(第17回)本屋大賞の受賞作が決定しました(記事はこちら) 1月21日(火)、2020年(第17回)本屋大賞のノミネート作 10タイトルが発表されました。 本屋大賞は、全国の書店員が投票によって「最も売りたい本」を決める賞。一次投票の結果、得票数の多かった上位10作がノミネート作として二次投票に進み、4月7日(火)の発表会で大賞が決定します。 今回ノミネートされたのは

マンガ大賞2020ノミネート作に『あした死ぬには、』『チェンソーマン』『スキップとローファー』など12作〈ほんのひきだし(2020年1月21日)〉

1月20日(月)、第13回となる「マンガ大賞2020」のノミネート作 12タイトルが発表されました。 一次選考で挙がった238タイトルから二次選考に進むのは、4月からTVアニメがスタートする『波よ聞いてくれ』、『子供はわかってあげない』の実写映画化が決定している田島列島さんの『水は海に向かって流れる』、「次にくるマンガ大賞2019」Webマンガ部門で第1位を獲得した『SPY×FAMILY』など。

 毎年この時期恒例の、本屋大賞とマンガ大賞、ノミネート作の発表です。そういえば以前、本屋大賞とマンガ大賞の電子化率を調べて個人ブログで公開したのを思い出しました(↓)。2013年のことです。見返して、7年前はマンガでさえこの有様だったのかと、改めて驚愕しました。さて、いまは?

本屋大賞ノミネート作品が発表されました。そこで、現時点での電子書籍化状況を調べてみました。
鷹野凌の個人ブログ。見て歩いて気になったこと。現在、リソースの大半は HON.jp に注がれています。

「マガジン☆WALKER」が3月31日でサービス終了、4月1日から「BOOK☆WALKER」で「マンガ・雑誌読み放題」サービスが開始〈HON.jp News Blog(2020年1月22日)〉

 株式会社ブックウォーカーは1月22日、運営する雑誌読み放題サービス「マガジン☆WALKER」を3月31日でサービス終了することを発表した。また同時に、4月1日から電子書店「BOOK☆WALKER」で「マンガ・雑誌読み放題」サービスを開始することも発表した。 「マガジン☆WALKER」は2016年にサービスを開始。マンガ誌、一般紙、アニメ・声優・ゲーム誌など、約80誌の最新号が読み放題で、月額500円(税別)だった。4月1日から開始する...

 サービス終了と同時にサービス開始。つまり、仕切り直しです。「マガジン☆WALKER」は、複数出版社のマンガ誌40誌以上、一般誌やアニメ・ゲーム・声優誌を合わせると80誌以上が、月額500円(税別)の定額読み放題で提供されるという、他にはないサービスだったのですが。それでも仕切り直しを余儀なくされるわけで、サブスクリプションのサービス運営って、ほんと難しいものなのですね。ところで、私はマンガ誌しか読んでませんでしたが、新サービスの案内では触れられていない一般誌やアニメ・ゲーム・声優誌はどうなるのか、若干気になるところです。

電通と朝日新聞社ら7社、ニュースやマンガ等「n次流通」収益化の研究に着手 ~スタートバーンのアート用ブロックチェーン×シビラの分散型ID〈仮想通貨 Watch(2020年1月23日)〉

電通は1月22日、ブロックチェーンを活用したコンテンツのマネタイズに関する共同研究の開始を発表した。「n次流通プロジェクト」と題された本研究では、ニュース、マンガ、アニメなどのコンテンツの2次創作以降の流通にて、原著作者へ権利料やn次創作者などの報酬が正しく発生する流通基盤の研究を行う。

 二次創作以降のコンテンツ流通から、原著作者や関与したユーザーにも正当なインセンティブが発生するような流通基盤の研究に着手です。スタートバーンが開発している「アートブロックチェーンネットワーク」(ABN)と、角川アスキー総合研究所の「ePub Viewer for Twitter」を活用するとのこと。

 この記事では触れられていませんが、以前、経済産業省が「ブロックチェーン技術を活用したコンテンツビジネスに関する検討会」を開催、そこでこの「n次創作」について検討が行われていました(報告書はこちら↓)。

 その流れで、コンテンツグローバル需要創出等促進事業費補助金(J-LOD)のブロックチェーン技術を活用したコンテンツの流通に関するシステムの開発・実証に関する間接補助事業が公募され、スタートバーンのABNも採択事業に選ばれています。

 つまり、国が推進している流れに、電通、VOYAGE GROUP、角川アスキー総合研究所、朝日新聞社などが乗った、ということになるのでしょう。今後も要注目です。

2019年の紙+電子出版市場は初のプラス成長で1兆5432億円 ~ 出版科学研究所調べ〈HON.jp News Blog(2020年1月24日)〉

 公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所は1月24日、2019年の出版市場規模を発表した。紙+電子出版市場(推定販売金額)は1兆5432億円で、前年比0.2%増。出版科学研究所が電子出版市場推計を始めた2014年以降、紙+電子出版市場がプラスに転じるのは初めて。 紙の出版物推定販売金額は1兆2360億円(同4.3%減)で、書籍が6723億円(同3.8%減)、雑誌が5637億円(同4.9%減)となった。書籍は、ビジネス書や新書が前年を...

 ついにプラス成長へ。電子の市場占有率は約2割になりました。ただし、あくまでこれはパッケージ販売(読み放題含む)の市場規模で、広告は含まれないことに留意する必要があります。電通によると、日本のインターネット広告媒体費は2018年時点で1兆4480億円。2019年の数字はまだ出ていませんが、もしかしたら販売の市場を上回るのではないでしょうか。

海外

米最大手出版社が定額聴き放題サービスからオーディオブックを引き上げる〈HON.jp News Blog(2020年1月23日)〉

 ペンギン・ランダムハウスはこの1月15日付けで、定額聴き放題のプラットフォームから自社の本をすべて削除した。タイトルごとに購入したり、定額で一定のクレジットを買うオーディブルのようなサービスではまだ聞くことができる。 同社の本がなくなっているという報告は、「Storytel」や「Mofibo」といった北欧のサービスで聞かれ、アメリカでも「Scribd」で1万タイトル近いオーディオブックが聞けなくなっている。 ペンギ...

 ペンギン・ランダムハウスのアクションです。独自にやる計画はない、とのことですが、果たしてどうなるか。大原ケイさんのコラム(2)「大きくなって交渉力をつける」の、「そんな条件じゃ売らないよ」をガチで実行した例、と言えるでしょう。

 大原ケイ氏に、アメリカの書籍出版産業の過去10年と、これからの10年について解説いただきました。3日間連続更新の第2回は、「大きくなって交渉力をつけるか、小さくやってニッチを突くか」と「アメリカ出版業界の海賊版対策」です。第1回はこちら。大きくなって交渉力をつけるか、小さくやってニッチを突くか ここに私が指摘する出版社の二極化の理由がある。この10年で元々「ビッグ6」と呼ばれていた大手出版社6社のうち、...

 自社でコンテンツを生み出せないディストリビューター(販売代理店)は、こうやってコンテンツを引き上げられたら命脈を絶たれてしまうわけです。ニュースアグリゲーターも同様でしょう。出版社も、編プロに丸投げしていたようなところは……?

『ベストセラーはもういらない』のジョン・オークス氏が共同編集人を引退〈HON.jp News Blog(2020年1月23日)〉〉

 ORブックスの創設者のひとりであるジョン・オークスは、5月をもって共同編集人の地位から引退すると発表した。日々の経営からは退くが、編集者としての仕事は続け、理事の席にも残るという。他にも復刊したカウンターカルチャー誌「Evergreen Review」のサイトの発行人としても残る。 『ベストセラーはもういらない ニューヨーク生まれ 返本ゼロの出版社』(秦隆司著/ボイジャー)に登場するジョン・オークスは、グローブ...

 お疲れ様でした。来日公演が、ちょうど1年前でした。当時、電子専門出版社の成功事例としてコラムで取り上げさせていただきました。

 本稿は「出版ニュース」2019年3月上旬号へ寄稿した原稿の転載です。以下、縦書き原稿を横書きに変換してあるのと、リンクを張ったり改行を少し増やしたりしてありますが、文体は掲載時のまま(常体)です。 最終回は、明るい話題で締めくくりたい。[注:出版ニュースは3月下旬号にて休刊、筆者の連載はこれが最終回だった] 昨年末にボイジャーから刊行された、秦隆司著『ベストセラーはもういらない』を読んだ。アメリカ...

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CC BY-NC-SA 4.0
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※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。

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著者について

About 鷹野凌 728 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学デジタル編集論非常勤講師 / 二松學舍大学エディティング・リテラシー演習非常勤講師 / 日本出版学会理事 / デジタルアーカイブ学会会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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