「消費者庁、アフィリエイト広告の大規模調査へ」「デジタル教科書利用制限撤廃へ」など、週刊ニュースまとめ&コラム #454(2020年12月20日~26日)

週刊ニュースまとめ&コラム
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 2020年12月20日~26日は「消費者庁、アフィリエイト広告の大規模調査へ」「デジタル教科書利用制限撤廃へ」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。

【目次】

国内

ネット広告アフィリエイト、大規模調査へ 消費者庁〈日本経済新聞(2020年12月21日)〉

 成果報酬型広告の広告主、広告作成者、仲介会社を対象に、消費者庁が大規模な調査を行う予定とのこと。景表法に引っかかる表記に、広告主が「アフィリエイターが勝手に書いた」と言い逃れしたり、仲介会社(ASP:アフィリエイト・サービス・プロバイダ)が「メールアドレスしか知らない」と放置したり、という事象はずいぶん前から問題になっていましたが、ようやく本腰を入れた対策に乗り出すようです。

 ちなみに、この界隈の闇と正攻法については、あびるやすみつ氏の『本気で稼ぐための「アフィリエイト」の真実とノウハウ』(秀和システム・2010年)が非常に参考になった記憶があります。もう10年前の本なんですね。紙は品切重版未定のようですが、電子版が出ています。

書協・雑協、総額表示に関するガイドラインを公開〈新文化(2020年12月21日)〉

 総額表示義務免除の継続・延長を求めてきたけど、対応せざるを得なくなった場合に備え、ガイドラインを公開したとのこと。「読者が出版物を開かずに一見して分かるよう」にする、というのが重要なポイントでしょう。

 少し前に、カバーの折り返し部分に「消費税が上がった場合の定価」をずらりと表示した本のことが話題になっていましたが(↓)、残念ながらこの表示方法では対応できていないということに。

デジタル教科書、21年4月から利用制限撤廃へ 政府方針〈日本経済新聞(2020年12月21日)〉

 現状、文部科学省令によりデジタル教科書の利用は、各教科の授業時間数の2分の1未満という制限が課せられているのですが、これを来年度から撤廃する方針というニュース。まあ、GIGAスクール構想の流れからすると、当然の話ですよね。善哉。

権利者の利益保護要請 図書館資料の複製送信で意見 文化庁に新聞協会〈日本新聞協会(2020年12月21日)〉

 パブリックコメントに、各団体から意見が寄せられています。日本新聞協会は、複写サービスの公衆送信対応から、発行当日の新聞や電子版の記事、有料の記事データベースを対象外とするよう求めています。補償金制度が導入されるのに……? 他の団体は以下のとおり。

日本図書館協会
日本弁護士連合会
日本ペンクラブ
図書館問題研究会

Audibleがオリジナルコンテンツを強化する理由〈ITmedia PC USER(2020年12月22日)〉

 11月に行われた“聴く映画”「アレク氏2120」制作記者会見の内容を中心に、Audibleの現状と今後の戦略についてまとめている記事です。「日本ではメンバー(有料会員)が前年比で2倍に増えた」という説明もあったんですね。成長率の推移グラフを見ると、5月以降急激に伸びているようです。来年に向けては「とにかく有料会員を2倍にしていきたい」とのこと。倍々で増えるといいですね。

Amazonへ目次情報の表示停止について申し入れを送りました〈版元ドットコム(2020年12月22日)〉

 アマゾンの書誌から目次情報が消えてしまったことについて、過去データを破棄せず保存しておいて欲しいなどの要望を伝えています。これが賛否両論の大反響。アマゾン的には「試し読み」(旧:なか見!検索)があるから良いではないか、という見解のようです。それ、不便じゃないかなあ……?

 個人的には、目次情報という重要なメタデータが「集積された場として、唯一無二の存在」にアマゾンをしてしまったこと自体が、恥ずべきことではないかとも思うのです。今後は、JPROで一元管理されるとしても、過去データがどうにもならない。国立国会図書館の書誌データにも、目次情報は数千件レベルでしか入力されていないようです。もちろんここに至るまでにはさまざまな経緯があったようなので、単純な批判はできないかもしれませんが(というか後知恵ですね)。

漫画原作者の男に有罪 女子中学生にわいせつ―東京地裁〈時事ドットコム(2020年12月23日)〉

 松木達哉被告に有罪判決。懲役1年6月、執行猶予3年です。公判では「悩みや不安を抱え、精神的におかしくなっていた」などと述べていたそうで、連載のプレッシャーもあったのかな、と。同情はできませんが。早く罪を償って、また新しい作品を生み出してください。

デジタル教科書 紙との二者択一は誤っている : 社説〈読売新聞オンライン(2020年12月23日)〉

 前出の、デジタル教科書利用制限撤廃方針に対し、紙を基本とし、デジタルは補完的に用いるべきだというご主張です。なんというか、こういう足の引っ張り方をするのですね。読売新聞は相変わらずだな、と苦笑いさせられた社説。

産経新聞が写真を無断転載 新潟日報から指摘、謝罪し記事取り消し〈毎日新聞(2020年12月24日)〉

産経新聞記者が新潟日報の写真を盗用 サイトから転載か〈朝日新聞デジタル(2020年12月24日)〉

 こちらのニュース、当事者である新潟日報と産経新聞が「無断引用」と記述しているのに引きずられたのか、読売新聞や共同通信まで「無断引用」と書いてしまっていたのが嘆かわしい。毎日新聞は「無断転載」、朝日新聞は「盗用」と、ちゃんと言い換えていたのが印象的でした。

新潟日報
産経新聞

 こういうときに「無断引用」と書いてしまうと、「引用」という行為があたかも無断でやってはいけないことかのような印象を与えてしまいます。正しい「引用」は、無断でやってもいい権利制限なのです。

「鬼滅の刃」が終幕を迎えてもヒットが続く理由 コンテンツデリバリーが変えた「終わるコンテンツ」ヒットの法則〈ITmedia NEWS(2020年12月24日)〉

 フリージャーナリスト・西田宗千佳氏による論考。作品の内容にはほとんど触れず、テレビ番組の構造変化や、映像配信、電子版まとめ買いなど、ビジネス環境の変化から今回の大ヒットを読み解くという面白いアプローチです。有料メルマガの一部を転載したものなのですね。

すれ違った人と「おすすめの本」交換 大阪ガスのアプリ〈朝日新聞デジタル(2020年12月25日)〉

 「taknal」というアプリ。大阪ガスの新規事業創造ユニット「NEXT TREND」が企画・立案/プロデュースを、ヱビス株式会社がデザイン/開発/運営を担っているそうです。公式サイトはこちら(↓)。少し試してみましたが、位置情報サービスで半径1Km以内にまだ利用者がいないようで、まだ1冊も出会えない……電車などで長距離移動する人向けかも。

「改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)」を公表〈著作物の教育利用に関する関係者フォーラム(2020年12月24日)〉

 今年度のみ暫定で無償、来年度から有償化が決まった、授業目的公衆送信補償金制度の新しい運用指針が公表されています。「必要と認められる限度」や「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」についてかなり詳しくなっているのと、初等中等教育での具体的な授業の場面を想定した「学校等における典型的な利用例」が追加されています。教員関係者は必読です。

国内向け「NetGalley」に関するお知らせ〈株式会社メディアドゥ(2020年12月24日)〉

 米国のNetGalley社から、バックアップファイルへの不正アクセスが原因で、日本を含む各国の会員個人情報と一部出版社情報が流出する被害が起きたとの報告があったそうです。流出した情報にはパスワードも含まれている(ハッシュ化されているかどうかは不明)ので、会員登録している方は早急に変更を。もし同じパスワードを使い回していたら、全パスの変更を。

令和3年1月1日施行 侵害コンテンツのダウンロード違法化について〈文化庁(2020年12月24日)〉

 来年1月1日から施行される改正著作権法の、侵害コンテンツのダウンロード違法範囲拡大について、文化庁から各種資料や解説が出ました。10月1日から施行済みのリーチサイト規制と写り込み制限規定範囲拡大と合わせた解説はこちら(↓)。

海賊版対策でスマホに制限機能 サイト接続抑止へ総務省〈共同通信(2020年12月25日)〉

 この報道と同日、総務省から「インターネット上の海賊版対策に係る総務省の政策メニュー」という資料が公表されています(↓)。そこに「セキュリティ事業者や携帯電話事業者が提供するセキュリティ対策ソフトにおいて全年齢に向けたアクセス抑止機能が導入されるよう働きかけ」という記述があるので、その件と思われます。

 つまり以前大論争が起きたブロッキング――ではなく、フィルタリング機能の範囲拡大、という話だと私は理解しています。記事への反響には当時と同様、「検閲」「金盾」「通信の秘密」という声が散見されます。ただ、記事には「利用者の選択を尊重し、解除も可能となる方向」と明記されています。

 要するに、プロバイダーの「ぷらら」が「Winny」へのアクセスを遮断できる機能を提供しているのと同様の、任意機能ということでしょう。ちなみにぷららは当初、任意ではなく問答無用の強制遮断を始めて、総務省から怒られて任意に変えたという経緯があります(↓2006年5月の記事)。

出版業界2020年重大ニュース コロナ禍に揺れた1年〈文化通信デジタル(2020年12月25日)〉

 文化通信の選んだ「出版業界」重大ニュース10本。紙の話が中心ですが、Web商談会や電子図書館など、一部にデジタル系の話題も。ところで、なぜ「10大ニュース」ではないんだろう? 読みは同じですけど。

「鬼滅」ヒットの恩恵、郊外書店の売り上げが好調…出版物販売金額の減少幅縮小〈読売新聞オンライン(2020年12月25日)〉

 出版科学研究所「出版月報」12月号での発表数値。紙の出版物推定販売額は1兆2100億円台の見込みで、対前年比は約2%減。ここ数年に比べると減少幅が小さく、「健闘した1年だった」という見解が出ています。書籍は約1%減、雑誌は約2%減という見通し。

 なお1~11月では、コミックス(単行本)が約23%増という凄まじい伸び。『鬼滅の刃』が桁違いなのはもちろんですが、それ以外の作品も伸びているとのこと。また、例年通り電子出版市場の数字は、集計中で未発表です。1月25日を刮目して待つべし。

漫画無断掲載 海賊版サイト 被害額が過去最悪の規模に〈NHKニュース(2020年12月26日)〉

 新たに出現した海賊版サイトのアクセス数が伸びていて、漫画村が最も見られた時期を上回っているとのこと。一般社団法人ABJによる試算とのことですが、公式サイトにそういった発表は出ていないので、NHK独自取材でしょうか。

海外

オランダ発の新興メディア「コレスポンデント」が英語版サイトの活動停止へ コロナ禍で購読者減少(小林恭子)〈Yahoo!ニュース個人(2020年12月20日)〉

 速報をやらず広告も載せないデジタルメディアの「The Correspondent」が、英語圏でスタートして1年で活動停止に。有料購読者は、立ち上げ当初5万人だったのが、コロナ禍でキャンセルが相次ぎ、2万人にまで減ってしまっていたとのこと。うーん、広告のないメディアとしてロールモデルになると思っていたのですが、非常に残念。本国オランダは堅調のようですが。

中国は書店ブーム、上海に「ツタヤ」開店へ…欧米人用の社交場を改装〈読売新聞オンライン(2020年12月22日)〉

 蔦屋書店の新店舗が上海にオープン。今後、中国で100店舗の展開を目指すそうです。北京大学・馬場公彦氏による中国の出版事情レポートで、モダンな書店が巨大ショッピングモールに格安テナント料で入居しているという情報がありましたが(↓)、そういう流れに乗っているのでしょうか。

Facebookのインスタント記事を使用するパブリッシャーが増加中…2020年だけで5700社が採用〈Media Innovation(2020年12月25日)〉

 機能改善によりインプレッション収益(RPM)が改善、急激に採用者数が伸びる結果となったようです。以前、HON.jp News Blog を登録申請したらなぜか Website Verification が通らず、そのまますっかり存在を忘れていました。まあ、こちらも運用型広告なので「どんな広告が出るかわからない」問題はついて回るのだろうなとは思いますが。

ブロードキャスティング

 12月27日は年末特番で、フリージャーナリストの西田宗千佳さんをゲストに迎え、2020年を振り返りました。番組のアーカイブはこちら。

 1月10日のゲストはゲームデザイナーの山﨑剛さんです。ZoomではYouTubeへのライブ配信終了後、オンライン交流会を開催します。詳細や申込みは、Peatixのイベントページから。

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CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 829 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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