《この記事は約 3 分で読めます(1分で600字計算)》
株式会社ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所は10月26日、同社の進研ゼミ会員が自由に使える電子書籍貸出サービス「電子図書館まなびライブラリー」の利用データやアンケート調査などをもとに、読書が子供の学力や学びの姿勢にどのような影響を与えているかの変化を追跡する調査研究を発表した。調査は1年4カ月にわたって行われ、その間の読書量が多い子供ほど学力が向上していること、影響はとくに「算数」で見られること、学力下位者にプラスの効果が大きいことなどが明らかになったという。
調査対象は、2016年8月時点の小学5年生4万2696名。2017年12月までパネルデータを構築し、0冊の「読書無し」2万8359名、1~2冊の「読書少ない」5492名、3~9冊の「読書中くらい」5186名、10冊以上の「読書多い」3659名の4グループにわけて分析を行った。以下の図ではわかりやすさの観点から「読書中くらい」が除外されている。
読書量と学力の変化との関係
読書量が多い子供ほど、学力(4教科の偏差値平均)が伸びている。「読書多い」グループは平均+1.9ポイントに対し、「読書無し」グループは-0.7ポイントと偏差値を下げている。
読書量と各教科の学力との関係
教科別の偏差値変化は、国語、算数、理科、社会のいずれも「読書量」と「偏差値の変化」には有意差があり、「読書多い」が最も偏差値を高めている。なかでもとくに、「算数」の学力に大きな影響が見られる。
ベネッセ教育総合研究所はこの要因として、「文章中に与えられた問いや条件を正確に読み取る力」を高めていることや、読書習慣によって落ち着いた学習環境が整い「積み上げ型」の問題(計算問題など)にプラスの効果をもたらしたと推察している。
誰に効果があるのか
2016年8月の学力テストの結果をもとに子供たちを3グループにわけ、読書量によって偏差値がどの程度変化したかを確認したところ、下図のように学力下位者ほど、読書の効果が大きかった。
子供からみた読書の効果
2018年3月に「電子図書館まなびライブラリー」の利用に関するアンケートを実施、対象は小学5年生から6年生の3096名。「電子書籍を利用してよかったこと」を尋ねたところ、「授業で取り上げられた本を読んだ」「わからないことがあったら自分で調べるようになった」「本について家の人と話した」「友だちに本をすすめることができた」ことなどが上位となった。
ベネッセ教育総合研究所では今後、より詳細な読書履歴のデータを分析する予定とのこと。どのような子供が、いつ、どのような本を読んでいるのか、その体験がどのような資質・能力につながっているのか、といった研究を深め、明らかになったことを社会に発信し、子供たちのよりよい読書環境づくりに役立てていきたいとしている。
「電子図書館まなびライブラリー」は、進研ゼミ会員が自由に使える電子書籍貸出サービス。ラインアップは1000冊で、定期的に入れ替わる。利用者数は小中高校生約80万人で、毎月の利用者は平均約36万人とのこと。
参考リンク
ベネッセ教育総合研究所のニュースレター
https://berd.benesse.jp/special/bigdata/ebookanalysis.php
電子図書館まなびライブラリー