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株式会社ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所は10月25日、同社の進研ゼミ会員が自由に使える電子書籍貸出サービス「電子図書館まなびライブラリー」の利用データやアンケート調査などをもとに、読書が子供の様々な力や学力にどのような影響を与えているかの変化を追跡する調査研究を発表した。
昨年の調査(記事)では主に読書の「量」の効果が分析されていたが、今年の調査では読書の「質」の効果が分析されている。つまり、子供が読んでいる本の種類に着目した研究だ。調査対象は、2018年8月時点の小学5年生で、6年生にかけての1年間、読書がどのような影響をもたらしたか、その変化を追跡している。
調査の結果、幅広い種類の読書をした子供ほど様々な力の高まりを感じており、本の読み方を工夫していることなどが明らかになった。また、学力の面では特に「社会」の成績が向上しているという。
分析1:幅広い種類の読書をした子供ほど読書の効果を感じている
こちらは「読書アンケート」に回答した1756名が対象。幅広い種類の読書をした子供は、そうでない子供と比較して興味や知識の広がりや、考える力の向上、創造性の養育といった効果を感じている。
また、「わからない言葉を調べたり、人に聞いたりしながら読む」「どこが大切かを考えながら読む」など、本の読み方を工夫していることが明らかになった。
分析2:多くのジャンルを読む子供ほど学力が向上している
こちらは「学力テスト」を受けた4万4608名を対象とし、「電子図書館まなびライブラリー」で1年間に1冊以上を読んだ子供2万0639名の読書履歴を、「お話・読み物」「自然・科学」「社会・歴史」「生き方」の4ジャンルで集計している。
読む本の種類が多い子供は、1〜2ジャンルしか読まなかったり全く読まない子供と比較して、偏差値の上昇幅が大きい。特に「社会」の上昇幅が大きく、「社会・歴史」といったジャンルの本を読むことが成績の上昇に効果をもっているようだ。
分析3:専門的な内容を分かりやすく扱った本が興味の幅を広げている
よく読まれた本は、定番の児童文学や、映画や人気コミックのノベライズといったものが上位にあがった。また、専門的な内容を分かりやすい切り口で扱った作品もよく読まれている。こういった作品は子供たちの多くが「お話・読み物」中心に読書をしているなかで、興味の幅を広げ、幅広い種類の本を読むことにつながっているようだ。
ベネッセ教育総合研究所では、引き続き読書が子供の多様な資質や能力の形成にどういった影響をもつのかといった研究を深め、明らかになったことを社会に発信し、子供たちのよりよい読書環境づくりに役立てていきたいとしている。
「電子図書館まなびライブラリー」は、進研ゼミ会員が自由に使える電子書籍貸出サービス。ラインアップは常時1000冊で、定期的に入れ替わる。2019年9月時点で利用する小・中・高校生は約85.6万人、毎月の利用者は平均約38.6万人とのこと。
参考リンク
ベネッセ教育総合研究所のニュースレター
https://berd.benesse.jp/special/bigdata/ebookanalysis.php
電子図書館まなびライブラリー