韓国型縦スクロールマンガと日本型ページめくりマンガは異なる表現メディア ―― デジタル出版論 第3章 第5節

デジタル出版論

デジタル出版論 第3章

《この記事は約 11 分で読めます》

マンガにも「デジタル巻物」の潮流

 第2章第1節で、ページ数がカウントできないリフロー形式のデジタル出版物は「デジタル巻物」のようなものだと説明しました。同じように、最近はマンガでもページ概念のない表現手法が広がりつつあります。韓国生まれの縦スクロールマンガです。

 一般的には「web」と「cartoon」の合成語である「ウェブトゥーン(webtoon)1京都精華大学 国際マンガ研究センター『日韓漫画研究』(国際マンガ研究、vol. 3)オンライン修正版 第3部 漫画の諸ジャンル 11 パク・スイン(朴秀寅)「韓国のウェブトゥーン」より。
http://imrc.jp/lecture/2011/10/3.html
と呼ばれることが多いのですが、NAVER WEBTOON Ltd.が2014年に商標登録2商標登録番号 第5718379号「webtoon(ウエブトゥーン)」
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2014-014994/BDF4A47EC27E074E28C2CFF7D81D2B96C46E7C73B80EEF1A186E9ED446B7FB3C/40/ja
第5718380号「webtoons(ウエブトゥーンズ)」
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2014-014995/808F2D850736FEADBD02019AF6CB5924A3DCE0C77C7D679492900BEC518747CC/40/ja
しているため、一般名詞としては縦スクロールマンガと呼称したほうがよいでしょう3「タテ読み」とも呼ばれるが、ページめくり方向が縦である場合との区別が難しい。切り替え操作なしで縦でも横でもページをめくることができる「ユニバーサルフリック」(メディアドゥ)という機能もある。
https://mediado.jp/service/1178/
このため本稿では、区別しやすい「縦スクロールマンガ」という呼称で統一することにした。

 伝統的な紙のマンガは、本のページを開いて読むことを前提とした「コマ割り」「見開き」といった表現スタイルが一般的です。これに対し日本のデジタル出版では、携帯電話(フィーチャーフォン)のパケット定額プランが登場した2003年以降に4ITmedia Mobile「EV-DOは4200円定額制~11月28日全国一斉開始」(2003年10月22日)
https://www.itmedia.co.jp/mobile/0310/22/n_evdo.html
いわゆる「ケータイコミック」が一世を風靡します5「電子書籍ビジネス調査報告書2011」によると、ケータイ向け市場は2010年度に572億円まで拡大していた。
https://www.impressrd.jp/news/detail/827

 当時の携帯電話の低解像度で小さな画面は、マンガをページ単位で表示するのが難しかったことから、コマ単位に分割して1コマずつ表示する手法が生み出されます。「コマ売り」「話作品」などとも呼ばれ、いまでも一部の電子書店では購入可能です6まんが王国「コマ売り」
https://comic.k-manga.jp/guides/help/027
コミックシーモア「話作品」
https://www.cmoa.jp/faq/30/
めちゃコミック「タップ読み」「スクロール読み」
https://mechacomic.jp/info/viewer_help2
honto「BSF版(BS Reader)」
https://help.honto.jp/?p=10236
BookLive!コミック「話作品」
https://faq.booklive.jp/faq/show/2334

 同時期に韓国では、アマチュア作家などを中心に、最初からウェブで公開することを前提とし、コマ割りを用いず、マンガ的な絵と短いナレーションのみで表現する手法が発達していきます7京都精華大学 国際マンガ研究センター『日韓漫画研究』(国際マンガ研究、vol. 3)オンライン修正版 第3部 漫画の諸ジャンル 11 パク・スイン(朴秀寅)「韓国のウェブトゥーン」より。
http://imrc.jp/lecture/2011/10/3.html
。ただ、大ゴマや見開きなどインパクトの強い表現手法が使えないこともあり、当初はストーリーマンガではなく、ささやかな日常生活を描く短いエピソードマンガが多かったそうです。

 スマートフォンが急激に普及し始めた2010年以降、日本のケータイ向け市場は「スマホシフト」で縮小し、紙のレプリカであるページマンガのデジタル市場が急拡大していきます。韓国の縦スクロールマンガは、2011年にネイバージャパンが日本への展開を開始するなどの先行事例もありますが8ITmedia eBook USER「ネイバーが韓国の人気Web漫画をアプリで無料配信:漫画も韓流?」(2011年12月16日)
https://www.itmedia.co.jp/ebook/articles/1112/16/news067.html
、一般に普及し始めたのは2013年にサービスを開始したNHN PlayArt(当時)92015年10月よりNHN comicoに商号変更。NHN PlayArtの名称は、スマートフォンゲーム事業を担当する新設分割会社が継承。
https://www.nhn-playart.com/press/index.nhn?m=read&docid=8866017
さらに、2017年6月よりNHN JAPANに商号変更。NHN comicoの名称は、電子コミック事業を担当する新設会社が継承。
http://www.nhn-comico.com/company.nhn
の「comico」がきっかけでした10NHN PlayArt 株式会社のプレスリリース「NHN PlayArt、電子書籍事業に新規参入。webコミックサービス『comico』を展開」(2013年10月17日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000008304.html

―― この続きは ――

《残り約1300文字》

続きは HON.jp Readers 登録ユーザー限定です。詳しくは「HON.jp Readersのご案内」をご覧ください。誰でも無料で登録できます


次へ

前へ

脚注

広告

著者について

About 鷹野凌 717 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学デジタル編集論非常勤講師 / 二松學舍大学エディティング・リテラシー演習非常勤講師 / 日本出版学会理事 / デジタルアーカイブ学会会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
タグ: / / / / / / / / / / / / / / / / /

0 コメント
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る