枕詞のように「出版不況」と言われるが、実態は「雑誌不況」である ―― デジタル出版論 第3章 第1節

デジタル出版論

デジタル出版論 第3章
noteで書く

《この記事は約 5 分で読めます(1分で600字計算)》

第3章 出版ビジネスの現状と課題

 第2章では主要な情報メディアの定義やビジネスモデルについて考えました。第3章ではさらに「狭義の出版」領域に絞り込み、紙と電子の市場の現状や違い、メリットとデメリットなどについて概説します。

出版ビジネスの現状

 まず、紙の出版物と電子出版物の市場規模について。両方の推計を出しているのは、公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所です1出版科学研究所公式サイト https://shuppankagaku.com/。紙の市場は「取次ルート」のみ(出版社からユーザーへの直販や出版社と書店の直取引などは含まれない)、電子市場は「小売販売額」のみ(電子図書館サービスや電子ジャーナルなどは含まれない)であり、出版市場全体を表したものではない点に注意が必要です。なお、どちらも税抜きです。「広告」も含まれません。

紙の出版市場推移

 2021年の紙の出版物推定販売金額は1兆2080億円(対前年比1.3%減)でした2HON.jp News Blog「2021年紙+電子出版市場は1兆6742億円で3年連続プラス成長 ~ 出版科学研究所調べ」(2022年1月25日)より https://hon.jp/news/1.0/0/32230。うち、「書籍」が6804億円(同2.1%増)、「雑誌」が5276億円(同5.4%減)です。2016年に雑誌売上が書籍売上を下回り、それまで41年間「雑高書低」だったのが、「雑低書高」となりました。つまり、雑誌の減少率のほうが大きいのです。

 さらに言えば、第2章でも触れたように、「書籍」には「書籍扱いコミックス」が、「雑誌」には「雑誌扱いコミックス」が、それぞれ含まれています。「コミック」2645億円(書籍扱いコミックス238億円+雑誌扱いコミックス1849億円+コミック誌558億円)を除くと、「書籍(コミック除く)」は6566億円、「雑誌(コミック除く)」は2869億円です。

―― この続きは ――

《残り約1000文字》

続きは HON.jp Readers 登録ユーザー限定です。詳しくは「HON.jp Readersのご案内」をご覧ください。誰でも無料で登録できます。ユーザー登録済みの方はログインしてください。


次へ

前へ

脚注

noteで書く

広告

著者について

About 鷹野凌 824 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

1 コメント
高評価順
最新順 古い順
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る
Kae-1115
Reader
Kae-1115
2023年2月13日 21:34

よくわかりました!