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2019年7月29日~8月4日は「NewsPicksパブリッシング」「ジャパンサーチを使い倒せ」「図書館向けEブックの値段設定」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。
【目次】
国内
「金魚電話ボックス」訴訟で原告敗訴 なぜ「著作権侵害」と判断されなかった?〈弁護士ドットコムニュース(2019年7月28日)〉
ノアドット(nor./共同通信デジタルの子会社でヤフーの関連会社)経由で配信されている記事から、当メディアと親和性が高いものを厳選してピックアップし、「他メディアのおすすめ記事」として配信していくことにしました。当メディアで追い切れていない関連情報を補っていきたいと思います。こちらは著作権の“表現”と“アイデア”の境界についての、具体的な事例解説です。
読者と文脈を共有し「0.1秒の奪い合い」からの脱出を図る ~「本で、希望を灯す」NewsPicksパブリッシングが目指すこと〈HON.jp News Blog(2019年7月29日)〉
成相裕幸さんに取材・レポートいただきました。幻冬舎と連携している News Picks Book は“時代性に強い本”で、単独で行うこちらの News Picksパブリッシングは“普遍性に強い本”と、住み分けをしていくそうです。書店店頭での「0.1秒の奪い合い」から脱却したい、という気持ちはよくわかります。
BookLive、ボイジャー「BinB」の縦スクロール閲覧機能に対応〈HON.jp News Blog(2019年7月30日)〉
恥ずかしながら、このリリースまでボイジャー「BinB」が縦スクロールにも対応していたことを知らなかったため、この機会に詳しく書いてみようと思い、両社に取材してみました。縦スクロールに対応した電子書店には今後、「comico」などのウェブトゥーンが配信される可能性があることは頭に入れておきたいところ。
美術館、図書館、公文書館、博物館などのデジタルアーカイブを分野横断で検索できる「ジャパンサーチ」を使い倒せ!〈HON.jp News Blog(2019年7月31日)〉
先週いちばん読まれた記事。APIも提供されているとツイートしたところ、エンジニア系の方々を中心に拡散されていったようです。仕組みも制度もだんだん整ってきたので、そろそろあとはいかに活用するか? という段階に。試験版なのでCSSなどに若干まだ不具合があるようですが、見つけたらどんどんフィードバックしていきましょう。
利用率「伸び悩む」 電子書籍貸し出し導入1年 綾瀬〈神奈川新聞社(2019年7月31日)〉
2018年4月から「Rakuten OverDrive」が導入されている綾瀬市立図書館。蔵書1万3023点のうち青空文庫が1万1119点という数字に、2012年に楽天Koboが始まった直後が似たような状況だったことを思い出しました。まあ、ラインアップも重要ですが、いまはまだ「端末で本を読む」経験がない人のほうが多いと思うので、まずは体験してもらうことが重要でしょう。
利用者増へのハードルは、使い始めるために本館まで足を運んで電子図書館用カードを発行してもらう必要がある、という点に尽きるのではないでしょうか。「来館しなくても本が借りられる」という電子図書館の大きなメリットが、最初の時点でスポイルされてしまっているのです。
「漫画村」男女2人再逮捕 無断公開、運営関与疑い〈共同通信(2019年7月31日)〉
続報。フィリピンで拘束されている主犯格の星野路実容疑者は、真偽不明ですが、日本・ドイツ・イスラエルの三重国籍らしく、まだ日本へ引き渡しされていません。
作り手の楽しさが連鎖 「ZINE」イベントに28組出品 ネコのイラスト集や酒の冊子など 18日まで長崎〈長崎新聞(2019年7月31日)〉
長崎市で行われている個人出版イベント「チョージン」のレポート。地方で行われているこういったイベントにも興味はあるのですが、さすがに当メディアの現体制では追いかけられないので、このようにノアドットからピックアップしていきたいと思います。
音声認識AIで文字起こし「easy writer」正式サービス開始〈HON.jp News Blog(2019年8月1日)〉
AIによる文字起こしと同時に、形態素解析技術を用いて句読点と強制改行処理を行っている点が特徴です。Googleドキュメントの音声入力だと切れ目のない文章ができてしまうので、その手間が省けるのは意外と大きいかも。料金は月額2万円なので、月に数回文字起こしをするような編集部なら、元がとれる感じでしょうか。
博報堂とLink-U、文字系コンテンツに特化した書店アプリサービス「まいどく」の提供を開始 〈HON.jp News Blog(2019年8月1日)〉
横書き・縦スクロールの文字モノ特化型アプリ。この横書き・縦スクロールという点に拒否反応を示す方もいるようですが、3000字程度のチャプターで分割配信されているということは、ディープな本読みはメインターゲットではない、と考えるのが自然でしょう。そういう人は、普通に本を買って読みますから。
これはむしろ、世の中の半分を占める“本を読まない層”へアプローチするためのメディアチェンジであり、紙の本を代替するようなものではありません。ちなみに、4月に発表され今夏に始まるLINEノベルも文字系特化で横書き・縦スクロールだったりします。そろそろアプリがリリースされるはず。
成人誌が主力の出版取次、日本雑誌販売(株)が破産申請〈TSR速報(2019年8月1日)〉
6月に、債務整理を弁護士に一任、今後法的手続きを申請するという報道(↓)がありましたが、その続報となります。
デジタル教科書や幼児教育アプリも 関西教育ICT展〈大阪日日新聞(2019年8月2日)〉
関西教育ICT展のレポート。デジタル教科書の展示や、大阪市立図書館の電子書籍貸出サービス(「Rakuten OverDrive」なので外国語図書が多い)などについて触れられています。
アルファポリス、絵本投稿サイト「絵本ひろば」公式アプリをリリース〈HON.jp News Blog(2019年8月2日)〉
ウェブでも無料で閲覧できる投稿絵本をなぜアプリで? と少し疑問に思ったのですが、アプリじゃないとリーチしない層があるのと、アプリ内には“アルファポリスから出版された絵本”の試し読みとネット書店での注文への誘導も付いていたので、なるほど、となりました。
マンガアプリ「GANMA!」が作家支援の一環で読切マンガ祭を開催〈HON.jp News Blog(2019年8月2日)〉
オリジナルだけで勝負している「GANMA!」による、連載ではなく読み切りマンガに特化したお祭りというのが興味深く、記事にしました。
「平和の少女像」撤去の可能性も 県や実行委と調整へ 津田氏「批判する人にこそ見てほしい」〈BuzzFeed News(2019年8月2日)〉
本件、中止決定前のこの記事の「テロ予告や脅迫を含む抗議電話が鳴り止まない状況」という記述を読んだ瞬間、直前に起きた京アニの凄惨な事件を想起してしまい、恥ずかしながら“気持ち的に無理”な状態になってしまいました。その後の報道で「ガソリン携行缶を持っていく」という脅迫FAXが届いていたことが明らかになっています(↓)。
他にもいろいろ論点はありますが、それらはすべて脇に置いて、これについては明らかに威力業務妨害ですから、警察の威信にかけても犯人を捕まえて欲しいところ。イベントが脅迫されるのはよくあること、のようですが、それをのさばらせてはなりません。
なお、マガジン航の編集発行人で、当法人の理事でもある仲俣暁生さんからも、暴力と恫喝によって中止に追い込まれたことについての抗議文が公開されています。
作家を応援するなら「古本ではなく新刊を」 古本扱う書店にまさかの掲示、その狙いは?〈Jタウンネット(2019年8月3日)〉
ブックスタマなので基本は新刊書店なのですが、話題になったツイートでは「古本屋なのに」と書かれており、そのギャップの解説と店長への取材を行った記事。新刊書店で古書を扱うところはまだ少数派なので、ある意味“免罪符”的なメッセージなのかな、という気もします。
海外
図書館向けEブックの値段設定に頭を悩ませるアメリカの出版社〈HON.jp News Blog(2019年7月30日)〉
大原ケイさんによるアメリカ出版業界解説。2013年開催の電流協フォーラムで、米国図書館協会(ALA)が整理した電子図書館サービスの貸出モデルが紹介されましたが(↓)、当時と比べ少しずつモデルが変わってきているようです。
アメリカではトランプ政権暴露本疲れの兆し〈HON.jp News Blog(2019年7月31日)〉
柳の下にドジョウがいなくなってしまったんでしょうか?
米連邦裁判所、ウィキリークスで公開された違法に盗まれた情報でも報道の自由ありと判断〈HON.jp News Blog(2019年8月1日)〉
情報の公共性が企業秘密の重要性を上回るという判断です。アメリカというのは、こういう判断ができる国なのだと、改めて感嘆。ひるがえって、本邦は……?
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