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国立国会図書館と内閣府知的財産戦略推進事務局は7月17日、分野横断型のデジタルアーカイブ検索ポータル「ジャパンサーチ」試験版の説明会を開催した。本稿では、まだ発展途上ではあるが、現時点でもいろいろ“楽しむ”ことが可能なジャパンサーチについて紹介する。
ジャパンサーチは、美術館(Galleries)、図書館(Libraries)、公文書館(Archives)、博物館(Museums)など、さまざまな分野の機関が保有するデジタルアーカイブと連携し、その名称や著者、サムネイル画像、所蔵機関、二次利用条件などのメタデータ(周辺情報)を、誰でも簡単に検索して利活用できるシステムだ。現在は試験版で、フィードバックを随時受け付けている段階。正式版は2020年に公開される予定だ。
説明会の時点では、国立国会図書館、国立公文書館、文化庁、国立文化財機構、国立美術館、映像産業振興機構、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館、国立科学博物館、神奈川県立生命の星・地球博物館、人間文化研究機構、立命館大学アート・リサーチセンター、放送番組センター、日本放送協会の13機関と連携し、45のデータベース約1800万件のメタデータが収録されている。また本稿執筆時点で、教育や商用で使えるコンテンツは43万6321点、インターネットで閲覧できるコンテンツは118万4320点と表示されている。
以下の埋め込み画像は、ジャパンサーチの「マイノート」機能から出力したウェブパーツだ。「夏」を検索し、結果一覧で目に付いた錦絵の右に表示されている「♡」をぽんぽんと適当にクリックしただけ。たった数分で、このような楽しげなギャラリーが完成する。コードの貼り付けが可能なブログであれば、誰でも簡単にこのような形でデジタルアーカイブのサムネイルをエンベッド(埋め込み)できる。クリックすると、画面は遷移せずそのまま拡大・詳細表示が可能だ。ぜひ試してみていただきたい。
ジャパンサーチはこのように、分野の特性を活かしたテーマ別の横断検索機能でデジタルアーカイブを「探す」こと、クリックするだけで「楽しむ」ことができる多様なコンテンツを紹介するギャラリー機能、そして、「活かす」ための基板となるAPIの提供やウェブパーツ機能などを提供する。このことによって、➀コンテンツの所在地等の明確化、②連携機関へのアクセス促進、③データの利活用促進、④連携機関への支援、⑤新規ビジネス・サービスの創出等を図ることを目指している。
利活用を後押しする法制度も整えられつつある。今年の1月から施行された改正著作権法(第47条)では、展示する著作物の画像がサムネイル(小さな画像)であれば、利用許諾なしでインターネットに公開できるようになった。従来、著作権保護期間内の作品画像をこのような形で公開しようと思うと、すべて事前に許諾を得る必要があったのだ。
一般社団法人日本写真著作権協会などが策定したガイドライン(PDF)によると、サムネイルとして許容されるのは3万2400画素(180×180px)以下とされているが、それでも許諾なしで公開できるようになったのは非常に大きい。検索結果一覧を見たとき、画像の有無は大きな差となることだろう。
仕組みも制度も徐々に整ってきた。あとはいかに活用するか? だ。説明会では例えば、同じ作品に寄与する作者のつながりを視覚化する「作者関連グラフ」や、『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』(通称「まいボコ」/山下泰平/柏書房)の参考文献を章ごとにまとめた「明治娯楽物語コレクション」といった事例が紹介された。
また、国立国会図書館は9月14日と15日に、美術館(Galleries)、図書館(Libraries)、公文書館(Archives)、博物館(Museums)の頭文字をとった「GLAMデータ」の利活用をテーマとしたハッカソンを開催する。GLAMデータを使った新しいウェブサービスやスマートフォン用アプリを開発したいエンジニアの方や、GLAMデータを使って仕事に役立つツールやコンテンツを試作したい学芸員や図書館員の方、データの可視化やマッシュアップを試みたい方などに、参加を呼びかけている。受付は8月25日まで。詳細は下記のリンク先をご確認いただきたい。
参考リンク
NDL Lab「GLAMデータを使い尽くそうハッカソンのご案内」ページ