「NewsPicks Book終了」「読書バリアフリー法施行1年」など、出版関連気になるニュースまとめ #427(2020年6月8日~13日)

出版関連気になるニュースまとめ
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 2020年6月8日~13日は「NewsPicks Book終了」「読書バリアフリー法施行1年」」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版関連ニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

国内

【出版時評】役割重くなる業界シンクタンク〈文化通信デジタル(2020年6月8日)〉

https://www.bunkanews.jp/article/column/218516/
 全国出版協会が設立70周年を迎えたのを受け、星野渉氏が「業界シンクタンクの役割はますます重くなる」「政策立案能力ももつ存在となることを期待したい」と言祝いでいます。個人的には、そうなるためには取次-書店流通以外もスコープに入れなきゃダメだと思います。電子出版は、2014年からようやく対象になりましたが、出版社-読者や出版社-書店の直取引などは、いまだに調査対象外なわけで。出版社-Amazonの直取引社は、すでに66%にまで達してるわけですよね?

「NewsPicks Book」終了 幻冬舎・箕輪厚介氏のセクハラ問題で〈ITmedia NEWS(2020年6月9日)〉

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2006/08/news148.html
 昨年2月に、幻冬舎とのパートナーシップを解消しようとしたNewsPicksに対し、見城徹社長が激怒した、という事件がありました(↓)。そこから1年ちょっとで、結局終了することに。

 そのいっぽうで、NewsPicksの自社レーベル「NewsPicksパブリッシング」は、他の伝統的出版社と手を組んだりもして、なかなか面白い展開を見せています。出版ジャーナリストの成相裕幸氏によるレポートはこちら(↓)。

読書バリアフリー法施行1年 カギ握る書籍の電子データの扱い〈産経ニュース(2020年6月11日)〉

https://www.sankei.com/life/news/200611/lif2006110001-n1.html
 このデータ不正流出・海賊版への懸念というのは、根強いものがあるようです。昨年の出版学会の研究発表会で聴講した「学術書のアクセシビリティ ―― 手話翻訳動画、テキストデータ提供の実践から」のレポート(↓)にも書いたんですが、

 視覚障害者向けにテキストデータを用意してたら、他の出版社から「そういうことをされると困る」と反発されたことがある、というエピソードには本当に驚かされました。機械で読み上げが可能なEPUBリフローで電子出版すればかなり解決できるはずなのですが、まだまだ「売上が見込める本だけ電子書籍を出す」という出版社が多い現実も。コロナ禍を受け、良い変化が起きるといいのですが。

「少年ジャンプ」はどこまでジャンプできるのか 「ジャンプラ」と「ゼブラック」が読まれる理由〈ねとらぼ調査隊(2020年6月13日)〉

https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/28835/
 コロナ禍対応無料公開で、集英社など出版社系のマンガアプリユーザーがどれくらい増えたかを分析した記事。集英社がとくに強かったようです。若年層が「ゼブラック」で急増したということは、『ONE PIECE』や『NARUTO』の無料公開が効果的だったということなのでしょう。

 この記事は集英社が中心で、あまり他社には触れられていませんが、小学館「サンデーうぇぶり」も191%増と奮闘しています。『ハヤテのごとく!』『史上最強の弟子ケンイチ』『結界師』全巻無料公開とかやってましたからね。あとから『MAJOR』『らんま1/2』『みゆき』『うえきの法則』も全巻無料になるという大盤振る舞いでした。

オンライン授業で著作物「グレー運用」 改正法解釈、苦慮する学校〈西日本新聞(2020年6月14日)〉

https://this.kiji.is/644743988330005601?c=491375730748638305
 改正著作権法第35条の「授業目的公衆送信補償金制度」前倒し施行で、教育現場がいまどうなっているかをレポートした記事。文化庁著作権課への問い合わせが「既に公表されている内容ばかり」というのは、なんというか、なかなか言及しづらいものがあります。ちなみに4月10日にHON.jpで書いたこの解説コラム(↓)は、いまのところ4月以降の四半期でいちばんよく読まれた記事になっています。

海外

米・ニューヨーク公共図書館(NYPL)のマークス館長、新型コロナウイルス感染症拡大下における図書館のデジタルサービス拡充の必要性をNew York Times紙上で主張〈カレントアウェアネス・ポータル(2020年6月8日)〉

https://current.ndl.go.jp/node/41159
 物や場所を共有することが感染症拡大リスクに繫がる以上、遠隔で利用できるデジタルサービスへシフトするのは必然的なこと。日本でも図書館が再開する際、返却された資料を念のため数日放置してから配架するとか、紫外線消毒するための機械を導入するところも増えていますが、もちろんそういう対策も必要とは思いますが、まず電子図書館サービス導入しませんか?

OverDrive Holdings, Inc.の全株式譲渡完了のお知らせ〈楽天株式会社(2020年6月10日)〉

https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2020/0610_01.html
 最初にお知らせが出てから、売却まで半年かかりました。買った側のKKR(Aragorn Parent)については、大原ケイ氏が初報直後に詳細な解説をしてくれました(↓)。

 また、日本の電子図書館事業「OverDrive Japan」がどうなるか? についての解説はこちら(↓)。まあ端的に言えば、メディアドゥがきっちりやっていく、と。

Internet Archive(IA)、“National Emergency Library”の終了を早めることを発表〈カレントアウェアネス・ポータル(2020年6月12日)〉

https://current.ndl.go.jp/node/41213
 告訴され、予定より2週間早く終了へ。開始の報を見たとき、さすがにちょっとフェアユースの域を踏み越えてないか? でもコロナ禍を踏まえると期間限定ならギリギリ許容されるか? と判断に迷いました。正しいことだと信じてなされた本来の意味での「確信犯」なら、訴えられても堂々と法廷で争えばいいと思うのですが。今回の緊急図書館だけでなく、以前から行っていた制限付きデジタル貸し出し(CDL:controlled digital lending)まで訴えられてしまったのが、計算外だったのかもしれません。

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 運営体制変更に伴い、しばらくお休みし、企画を練り直します。

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CC BY-NC-SA 4.0
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※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。
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著者について

About 鷹野凌 823 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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