「奈良と八王子の公共図書館にオーディオブック配信サービス」「海賊版対策の改正著作権法成立」など、出版関連気になるニュースまとめ #426(2020年6月1日~7日)

出版関連気になるニュースまとめ
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 2020年6月1日~7日は「奈良と八王子の公共図書館にオーディオブック配信サービス」「海賊版対策の改正著作権法成立」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版関連ニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

国内

全国学校図書館協議会(全国SLA)、「新型コロナウイルス感染症拡大防止対策下における学校図書館の活動ガイドライン」を公表〈カレントアウェアネス・ポータル(2020年6月1日)〉

https://current.ndl.go.jp/node/41098
 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、学校図書館がどう対応するかの基本的な在り方を示したガイドラインです。図書室という場所に関することや物理メディアの貸出関連に限らず、学校のウェブサイトを通じて情報発信しましょうとか、電⼦書籍サービスなどを活用しましょうなど、ICTの利活用にも踏み込んでいて、なかなか良いガイドラインだと思いました。

KCCSの「本を耳で聴く」配信サービス、奈良と八王子の市立図書館が導入〈ICT教育ニュース(2020年6月2日)〉

https://ict-enews.net/2020/06/02kccs/
 昨年11月の図書館総合展でKCCSブースに展示されていた(↓)、KCCSの公共図書館システム「ELCIELO」とオトバンクが提供する「audiobook.jp」を連携したオーディオブック配信サービスが、奈良と八王子の市立図書館に導入されました。読書バリアフリー法への対応の1つとのこと。コロナ禍で公共図書館向け電子図書館サービスがようやく注目されるようになってきた感がありますが、公共図書館向けオーディオブックもこれを期に広がっていくかも? 要注目。

凸版印刷、ICTを活用し在留外国人の日本語学習を支援〈ICT教育ニュース(2020年6月2日)〉

https://ict-enews.net/2020/06/02toppan/
 複数のメディアで記事が出ていて、いずれも主語が凸版印刷であることに頭を抱えてしまいました。これは文化庁国語課が推進する事業で、凸版印刷は受託事業者。「生活者としての外国人」のため、日本語教室空白地域の解消を図るための日本語学習サイト、という位置づけです。サイトは文化庁のサブドメインで、珍しくちゃんと「国がやってる」事業だというのが客観的にわかる形になっています。日本の人口が減りつつあるいま、日本で生まれ育った人以外にも日本語話者を増やしていくことは、非常に重要なこと。まさに国が取り組むべき事業と思います。ただ、レベル1でも漢字が多い(ルビがない)のはちょっと気になる……。

「禍の先に禍が待ち構えている」 コミケ中止を経ての「同人業界のいま」を同人誌印刷会社に聞いた〈ねとらぼ(2020年6月2日)〉

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2006/01/news030.html
 コロナ禍で即売会が相次いで中止になっているのに加え、1年延期された東京オリンピックで来年も展示会場の一部が利用できないという影響が待ち構えているという、踏んだり蹴ったりの状況。厳しい……。

海賊版漫画のダウンロード違法に 論文など全著作物に規制対象拡大〈共同通信(2020年6月5日)〉

海賊版に「対抗手段得た」と歓迎 著作権法改正で業界団体〈共同通信(2020年6月5日)〉

https://this.kiji.is/641549854499275873?c=491375730748638305
 参院も全会一致で可決、リーチサイト規制は10月1日から、ダウンロード違法範囲拡大は来年1月1日からの施行です。2月に書いた解説コラム(↓)が、ふたたび読まれています。

 ちなみに業界団体の声明には正規版を示す「ABJマーク」の利用促進に取り組むとありますが、越境電子書店勢のAmazon、Google、Appleが現時点でもなお、ホワイトリストに載っていないことは指摘しておきます。話が違うじゃないか。

創作者向けサービスBOOTHにも「情報商材」の魔手が 運営側は規約変更で対策〈J-CASTニュース(2020年6月5日)〉

https://this.kiji.is/641576869883987041?c=491375730748638305
 本件、当初BOOTH事務局から「ノウハウや情報を主体とする商品」「金融取引に関するツール及び関連商品」を登録禁止商品とするという規約変更のお知らせが届き、この書き方だとイラスト技法解説や技術書なども含まれてしまうのでは? と周囲がザワザワしていました。規約への文言追加と修正が行われ、これなら誤解されないだろうという形に落ち着きました。記事にもありますが、noteでも以前「情報商材」の締め出し騒動があったのを思い出します。こういう「場」を運営するのにあたって、どこで線を引くかは難しい問題です。

COVID-19の影響による図書館の動向調査(2020/06/06)について〈saveMLAK(2020年6月7日)〉

https://savemlak.jp/wiki/saveMLAK:%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9/20200607
 saveMLAKによる動向調査。全国的には、休館率は7%にまで減少しています。ただ、都道府県別で見ると、神奈川68%、東京49%、埼玉48%、千葉22%と、南関東一都三県にはまだ影響が強く残っています。

海外

Publishers Charge the Internet Archive with Copyright Infringement〈Publishers Weekly(2020年6月1日)〉

https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/publisher-news/article/83472-publishers-charge-the-internet-archive-with-copyright-infringement.html
 インターネット・アーカイブの「全米緊急図書館」が、とうとう訴えられました。HON.jp News Blogで5月19日に配信したコラム「アメリカの図書館はコロナ禍にどう立ち向かっているか?」(↓)で、大原ケイ氏が予想していた通り。Googleブックスキャン・プロジェクトのように、フェアユースか否かを争うことになるのでしょう。

ポッドキャスト

 運営体制変更に伴い、しばらくお休みし、企画を練り直します。

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CC BY-NC-SA 4.0
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※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。
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著者について

About 鷹野凌 829 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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