「ゴーストライターも下請法で守られる」「海賊版サイト対策の著作権法改正案衆院通過」など、出版関連気になるニュースまとめ #425(2020年5月25日~31日)

出版関連気になるニュースまとめ
noteで書く

《この記事は約 7 分で読めます(1分で600字計算)》

 2020年5月25日~31日は「ゴーストライターも下請法で守られる」「海賊版サイト対策の著作権法改正案衆院通過」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版関連ニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

国内

デジタルハリウッド大学、新入生研修を完全オンラインで実施 ~「コロナ後の未来を考える」をテーマに新入生300人が5日間で電子書籍を製作

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001813.000000496.html
 この“新入生300人が5日間で電子書籍を製作”というのは結構すごいことだと思うのですが、メディアの記事が見当たらないので、PR TIMESのリリースをピックアップしておきます。創作ハッカソン「NovelJam」主催団体である我々も、負けていられない!

「海賊版サイト」対策強化の著作権法改正案 衆院を通過〈NHKニュース(2020年5月26日)〉

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200526/k10012445381000.html
 一時は著者や出版社からも反対の声が挙がっていたダウンロード違法範囲拡大、成立まで秒読みという段階まで来ました。「本法の措置では対応ができないストリーミング形式等」への対応などの附帯決議も付いてます(↓)。

 1年前の強引さに比べたら今回はかなり丁寧に進めていて、さまざまなセーフティネットも追加されたこともあり、さすがに今回は批判の声もトーンダウンしている感があります。MIAUからは緊急声明が出ていましたが(↓)、保護強化ばかりが進められているという主張にはちょっと疑問符。今回も、写り込みの制限規定は従来より緩和されてますし。

 私は以前も書いたように(↓)、今回の改正で一番大きいのは、権利者側が「あそこは違法サイトです! ダウンロードしたらあなたも著作権侵害です!」とアナウンスできるようになること。そして、アナウンスすることが抑止効果にも繋がることだと思っています。違法だと断定できるのは権利者だけですが、いままでは存在に触れると宣伝になるだけ、逆効果でしたからね。

株式会社メディアドゥ、「電子図書館緊急導入支援キャンペーン」の対象を公共図書館にも拡大〈カレントアウェアネス・ポータル(2020年5月29日)〉

http://www.current.ndl.go.jp/node/41074
 学校向けに続き、公共図書館向けもキャンペーン開始。初期費と2020年度の運用費が無料となるので、初年度にかかる費用はコンテンツ購入費のみという大盤振る舞い。いまがチャンス。

“出版費用無料”の個人出版サービスで2万冊を売り上げた著者も~「ネクパブPODアワード2020」受賞者が決定〈INTERNET Watch(2020年5月29日)〉

https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1255771.html
 「著者向けPOD出版サービス」改め「ネクパブ・オーサーズプレス」のアワード授賞式が、今年はオンラインで開催。個人のPOD出版でも、「万」単位の販売事例が出てくるようになるとは。私も、またトライしてみようかな。

編集者依頼の代筆自伝、出版取り止めで原稿料未払いは下請法違反? ~ ライターが自分の身を守るためには〈HON.jp News Blog(2020年5月29日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/29520
 記事内では一切触れず一般論にしてありますが、文春オンラインによる幻冬舎・箕輪厚介氏の問題に関する報道(↓)を読んで、ウチにできることはなにか? を考えた結果のアウトプットです。

 セクハラはもちろんダメなんですが、そっちばかりに注目が集まってしまい、原稿料未払い問題が埋もれてしまうことを、私は危惧しました。続報(↓)でも「何がセクハラだよボケ」といった発言によって箕輪氏個人の問題になってしまっていて、肝心の「幻冬舎による原稿料未払い問題」は影をひそめてしまった感があります。

 実際のところ、似たような事例では以前、予告されていたマンガ連載が2日前に取り消された事件があり、弁護士ドットコムが「フリーランスも下請法で守られる」という趣旨の記事を出しています。

 ただ、書協・雑協の出している文書(↓)に「作家(執筆者)が創作する小説、随筆、論文等、および美術、写真、漫画等の作品」は下請取引の対象外という記述もあり、どこで線が引かれるんだろう? という疑問もありました。

 この際、専門家に尋ねてクリアにしておこうと、ツテを頼って独占禁止法や下請法などを専門とする弁護士にインタビューした、というのがこの記事の経緯です。明快な回答をいただいた池田毅氏、ご協力いただいた横田明美氏、ありがとうございました。

海外

ツイッター、トランプ大統領のツイートを初めてファクトチェック。ツイート内容を事実上、否定〈BuzzFeed Japan(2020年5月27日)〉

トランプ米大統領、ソーシャルメディアの保護弱める大統領令に署名〈ロイター(2020年5月29日)〉

ツイッター、大統領令に懸念表明 「言論の自由脅かす」、FBも〈共同通信(2020年5月29日)〉

SNS対権力:プラットフォームの免責がなぜ問題となるのか〈新聞紙学的(2020年5月30日)〉

https://kaztaira.wordpress.com/2020/05/30/executive_order_on_social_media_companies/
 Twitterが藪をつついて蛇を出してしまった感。4つ目はジャーナリスト・平和博氏による解説です。トランプ大統領は以前から、プラットフォーマーを免責する通信品位法230条を変えようとしていて、大統領令そのものの法的な実効性には疑問符が付くものの、すでに共和党議員が法案提出の構えを見せているそうで、予断を許さない状況になっています。アメリカの話ですが、日本でも提供されている越境サービスが多いですから、今後も目が離せません。

中国の著作権法修正案、賠償限度額10倍に〈AFPBB News〉

https://www.afpbb.com/articles/-/3284795
 中国が著作権侵害に懲罰的賠償制度を導入予定とのこと。悪質な場合は著作権使用料の最大5倍、金額では500万元(約7540万円)以下。日本には懲罰的賠償制度がなく、損害額が上限になっています。

ポッドキャスト

 運営体制変更に伴い、しばらくお休みし、企画を練り直します。

メルマガについて

 本稿は、HON.jpメールマガジンに掲載されている内容を、#80までは1週間遅れで、以降は同時に配信しています。最新情報をプッシュ型で入手したい場合は、ぜひメルマガに登録してください。無料です。

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0

※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。
noteで書く

広告

著者について

About 鷹野凌 829 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
タグ: / / / / / / / / / / / / / / /