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2020年6月28日~7月4日は「電子図書館サービス貸出急増」「NAVERまとめサービス終了」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版関連ニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。
【目次】
国内
CA1975 – オルタナティブな情報を保存する:統計不正問題からこれからの図書館を考える / 福島幸宏〈カレントアウェアネス・ポータル(2020年6月20日)〉
https://current.ndl.go.jp/ca1975
ちょうど1年ほど前に行われた、月尾嘉男氏の記念講演「デジタルアーカイブの危機」のレポート記事(↓)の、私見部分が引用されていて鼻水吹きました。フェイクニュースかどうかを判断してアーカイブ対象を選別するのではなく、後でフェイクとわかったらそういうメタデータを追加すればいいのだ、という趣旨の箇所です。「記録の改竄」とか「記録の消去」なんてのは論外なんだけど、それがまかり通ってしまっているのも現実……。
電子書籍の貸し出し急増 図書館、臨時休館で存在感―急きょ導入も・新型コロナ〈時事ドットコム(2020年6月29日)〉
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020062900074&g=soc
未導入自治体からの問い合わせも増えているそうで、電子図書館(電子書籍貸出サービス)への風向きが急に変わった感があります。これからの時代、非来館サービスの充実は必須と言っていいのでは。
電子出版制作・流通協議会(電流協)、公共図書館と大学図書館における電子図書館・電子書籍サービスに関するアンケートを実施中〈カレントアウェアネス・ポータル(2020年6月29日)〉
https://current.ndl.go.jp/node/41377
上記のような状況が、毎年この時期行われている本調査に、どれくらい影響を及ぼすか。例年通りなら11月に報告書が出るはずですが、いまから楽しみです。
「honto with」での店頭受け取り利用が増加 売上は前年同月比の6割増に〈AdverTimes(2020年6月30日)〉
https://www.advertimes.com/20200630/article318178/
タイトルタグは「6倍」になっているので驚いたのですが、正しくは6割増でした。どうも初出時点から修正されたっぽい。利用者増は喜ばしいのですが、コロナ禍での外出自粛下という状況を踏まえると、店舗での滞在時間を減らすために店頭受取を選択しているような。指名買いばかりになってなければいいのですけど。
「NAVERまとめ」がサービス終了。「時代の節目」「一時代が終わる」〈BuzzFeed Japan(2020年7月1日)〉
https://this.kiji.is/650887896806949985?c=491375730748638305
記事中にもあるように、2016年11月のDeNA「WELQ」問題発覚後、無断転載だらけだった「NAVERまとめ」にも飛び火、チェック体制強化や投稿者のランク付けなどの対策を余儀なくされていたのを思い出します。当時、関連論考を「出版ニュース」2017年1月上・中旬号へ寄稿、個人ブログにも転載しています(↓)。その後、Googleのアルゴリズム改定もあってか、検索結果で「NAVERまとめ」をあまり見かけなくなっていました。ビジネス的には、それが一番の打撃だったのかも。
国立国会図書館(NDL)の「オンライン資料収集制度(eデポ)」が7周年:収集対象である新型コロナウイルス感染症に関するネット上のレポート・論文・記録集等の納入を依頼〈カレントアウェアネス・ポータル(2020年7月2日)〉
https://current.ndl.go.jp/node/41397
eデポ、7周年。「当面、無償かつDRM(技術的制限手段)のないものに限定して収集・保存を行なっています」という制度なのですが、これ、いつまで「当面」なのでしょうか? いい機会なので、力一杯蒸し返してみましょう。
国立国会図書館の「電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業」のページ(↓)に「令和2年1月末をもって終了しました」と表示されてからもうすぐ半年経ちますが、5年間もの長きに渡って行われていた実証実験事業の結果がどうなったのかは、まだ公表されていません。それは実証実験事業を受託した電書協側も同様。
納本制度審議会開催状況・議事録のページ(↓)は、令和元年8月5日を最後に更新が途絶えたままです。審議会、行われていないのでしょうか? 平成31年3月18日の議事録には「有償の電子書籍等について、電書協が収集・保管・利用提供を行うリポジトリを立ち上げる」という、ちょっと驚くような申し出があったことが記されていますが。
ちなみにこの4月1日に就任した新館長の吉永元信氏は、挨拶で「有償の電子書籍・電子雑誌の収集・保存等についても検討を進めてまいります」と言っています(↓)。正直、5年間も実証実験事業をやった上で、さらに「検討を進めて」なんて言われると苛立たしくも思うのですが、本件について「言及した」だけでもマシだと思うべきなのでしょうか。
「週刊文春」上半期の実売部数が前年同期比104.4%に 定期購読も急増〈ITmedia ビジネスオンライン(2020年7月1日)〉
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2007/01/news144.html
この大変な状況下にあって、物理メディアを売り伸ばしているのは、お見事としか言えません。いや、ほんとお見事。
創文社の全書籍が絶版免れる 講談社がオンデマンド形式で出版へ〈東京新聞 TOKYO Web(2020年7月2日)〉
https://www.tokyo-np.co.jp/article/39332
すべてを講談社が引き取るわけではなく、「ハイデッガー全集」などは東京大学出版会が引き取ることが決まっていて、残りを講談社が引き取る、という話。学術系とオンデマンド出版は相性が良いと思うので、今後こういう動き(廃業出版社の資産を引き取る/ブランド名ごと引き継いだインプリントになる、など)は増えていくかもしれません。
近代科学社Digital「2020年夏の教科書発掘プロジェクト」原稿募集開始〈ICT教育ニュース(2020年7月3日)〉
https://ict-enews.net/2020/07/03kindaikagaku/
こちらもオンデマンド出版を活かしたプロジェクト。私もやってみたいけど、ちょっと手が回らないかも。実はいま、遠隔授業の準備が毎週めちゃくちゃ大変。スライド資料は元々作ってあったものを、多くは流用できます。ただ、自分がしゃべる内容をちゃんと固める意味で、自分用の台本を用意するようにしたことが、めっちゃ手間を増やしてます。毎週薄い本を1冊作っている、に近いような状態。これで骨格が定まれば、来年には教科書化できるかな……?
講談社、デジタルメディアの研究・開発に特化した新会社「KODANSHAtech合同会社」を設立〈Media Innovation(2020年7月3日)〉
https://media-innovation.jp/2020/07/03/kodanshatech-launched/
気になる動き。「現代ビジネス」「FRIDAYデジタル」「FRaU」「ViVi」「VOCE」「ブルーバックスアウトリーチ」などの運営が、この新会社へ移管されます。
海外
女性に優しいシャーロック・ホームズは著作権侵害 遺産管理団体がネトフリ提訴〈AFPBB News(2020年6月27日)〉
https://www.afpbb.com/articles/-/3290564
コナン・ドイルは没年1930年。死後90年経っているのになぜ……? と疑問に思うところ。ところがこれはNetflixによる映画化なので、アメリカ国内法の話。つまり、ミッキーマウスと同じく「発行後95年」ルールが適用されるため、最後期のシャーロック・ホームズにはまだ著作権が残っているということのようです。ややこしい。ちなみに日本では、戦時加算を考慮してもとっくに保護期間切れになっています。以前、弁護士・福井健策氏による解説を HON.jp News Blog に掲載したことがあるので、参考まで(↓)。
「Apple News」からThe New York Timesが撤退–読者と直接的な関係築けず〈CNET Japan(2020年6月30日)〉
https://japan.cnet.com/article/35156037/
Apple Newsに限らず、Yahoo!ニュースやSmartNewsといったニュースアグリゲーターは、多くの場合、記事の内容を多くの人に読んでもらう役には立ちます。ですが、配信元への流入量を増やすのではなく、転載してその場で読ませる形になっている以上、言い方を選ばなければ「配信元から読者を奪っている」わけで、配信元としては正直、痛し痒しだったりします。転載した見返りが充分ならまだ良いのですけどね。国内でも、外部配信を数に入れず「純PV」をアピールする媒体社が、徐々に増えているように感じています。
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