《この記事は約 9 分で読めます(1分で600字計算)》
2020年7月5日~11日は「BLM運動が出版業界にも波及」「LINEノベルサービス終了」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版関連ニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。
【目次】
国内
コミティア実行委員会に聞く 日本最大級「創作オンリー」継続にかける思い〈J-CASTニュース(2020年7月6日)〉
https://this.kiji.is/652700089865978977?c=491375730748638305
COMITIA 133は、9月に東京ビッグサイトで開催予定と発表。同時に、もし年内開催がすべて中止になったら、経営的に今後の開催を継続することが難しくなる、ということも言及されています。リアルイベントは一カ所に集まることに価値があったわけで、感染症共生社会下での在り方は本当に難しい……。
コロナ禍で見えた図書館の課題 来られない人に「図書館員から歩み寄りを」〈ORICON NEWS(2020年7月7日)〉
https://www.oricon.co.jp/news/2166298/full/
映画『パブリック 図書館の奇跡』公開前イベント。メディア関係者として一足先に視聴させてもらいましたが、エンタメとしても充分に楽しめる作品だと思いました。図書館関係者の方も「レファレンスあるある」だけでなく、ちょうど1年前にスマッシュヒットしたフレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリー映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』と、通底する問題意識を感じ取ることもできるでしょう。
2夜連続のトークイベントでしたが、アメリカの「パブリック」と、日本の「公共」の違いについても言及する方が多く、改めて考えさせられました。ニューヨーク公共図書館についてのコラム(↓)でも書いたんですが、日本語で「公共」と言うと、国家や政府などから与えられるものというイメージがまずあって、共有、公知といった概念は2番目、3番目なのですよね。
DeNAとTBS、電子マンガ事業「マンガボックス」を合弁事業化 TBSがマンガボックスの第三者割当増資を引き受け株式の49%を取得〈Social Game Info(2020年7月7日)〉
https://gamebiz.jp/?p=270901
オリジナルマンガのIPを、映像にも展開していくという、狙いが明確な合弁事業化。これからどんな動きが始まるか、要注目です。
JEPA著作権委員会、電子出版の実態調査を実施〈日本電子出版協会(2020年7月7日)〉
https://www.jepa.or.jp/pressrelease/20200707/
こちらのアンケート、回答数が8社と少ないことから侮る声も散見されました。もちろん定量的に測れないのは確かなのですけど、定性的には非常に興味深い。電子出版に力を入れているけど、恐らくマンガは手がけていない中小出版社の実情を、垣間見ることができます。マンガ以外は、まだまだ辛いのが電子出版。
阿賀北の小説 チームで創作 敬和学園大が初開催 筆者と編集者、デザイナー募集へ〈新潟日報(2020年7月8日)〉
https://this.kiji.is/653442634187637857?c=491375730748638305
こちらのイベント、HON.jp は「NovelJam」の名称利用を許諾し「応援」しているという立ち位置なのですが、実際には関係者が何人もガッツリ関わっていて、そんなの応援以上の協力しないわけにはいかんでしょ! っていう状態です。東京以外での初開催というのに加え、コロナ禍を受けオンライン開催へ移行しているという意味でも要注目。東京からでも参加できますよ。
著作権は文化のためになっているか ~ 雑誌「広告」Vol.414(3月26日発売)より〈HON.jp News Blog(2020年7月9日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/29634
元記事がnoteで「7月9日12時まで無料公開」になっていて、でもCC BYということは、こりゃ「転載してください」と言ってるのも同然の誘い受けと判断、転載しました。ただ、念のため画像の出典を確認してみたところ、早稲田大学図書館古典籍総合データベースは無断利用厳禁で法的措置も辞さないとあり、疑似著作権的な主張にイラッとしたため、その旨を目立つように冒頭へ記載し、画像は転載しませんでした。雑誌「広告」が主張している「引用」だと、ちょっと通らないかも、という判断もあり。
「専用フォント」で電子書籍に“いまさら”参入する星海社の狙い〈Impress Watch(2020年7月9日)〉
https://www.watch.impress.co.jp/docs/topic/1263998.html
星海社10周年を期に、ようやく文字モノ電子書籍にも参入。いまは社長の太田克史氏が、2012年1月に「星海社は状況が整ったとさえ判断できれば明日にでも過去の全冊を電子出版できる体勢をすでに整えています。ご期待ください。」とツイートしていたことを思い出します(↓)。そこから8年。
ちなみに、記事で太田氏が言及しているフォント埋め込みにまつわる苦労話、KF8はかなり初期から埋め込みフォントに対応している旨が「Amazon Kindle Publishing Guidelines」に明記されていたはずなので「あれ?」と思ったんですが、実際にはそんな容易い話ではなく、相当な苦労があったようです。いずれ詳しい話が表に出てくる、かな?
技術書典9 開催のお知らせ〈技術書典ブログ(2020年7月10日)〉
https://blog.techbookfest.org/2020/07/10/tbf09-announce/
技術書典9は、完全オンラインイベントとして開催する予定を発表。3月初旬から1カ月間行われたオンラインの「応援祭」(↓)の経験を活かす、という方向へ舵を切っています。
『LINEノベル』サービス終了のお知らせ〈LINEノベル公式(2020年7月8日)〉
LINEノベルはなぜ成功しなかったのか? 新たな小説投稿サイトが勝ちにくい理由〈Real Sound|リアルサウンド ブック(2020年7月10日)〉
https://realsound.jp/book/2020/07/post-583406.html
どーんと派手な記者発表会を行ったのが2019年4月(↓)。iPhoneアプリが提供開始されたのは同8月からで、そこから1年経たずに終了のお知らせ。ヤフーとの経営統合があるとはいえ、いくらなんでも見切りが早すぎる。残念。独自IPの開発って、そんな一朝一夕にできるものではないだろうに。
海外
アメリカの人種差別問題は出版界をも変えつつある〈HON.jp News Blog(2020年7月8日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/29628
おなじみ大原ケイ氏の、アメリカ出版業界解説。BLM運動から派生して #PublishingPaidMe (出版社に支払ってもらった額)という動きもあったそうです。日本だと、在日韓国人/朝鮮人や日系ブラジル人、外国人技能実習制度あたりに、似たような格差問題がありそうです。あ、国籍関係なく、正規/非正規、常勤/非常勤でも大きな格差があるか……。
民主派書籍、閲覧不可に 国安法で図書館も統制―香港〈時事ドットコム(2020年7月4日)〉
「日本のアニメ『図書館戦争』と同じことが起きるなんて」香港の図書館、民主派の書籍を貸出停止に〈ハフポスト日本版(2020年7月6日)〉
香港の言論統制、学校教材も 図書館は民主派著作を撤去〈共同通信(2020年7月6日)〉
香港の学校、国安法違反の教材は使用すべきでない=当局〈ロイター(2020年7月7日)〉
香港での検閲要求、米高官が批判 独裁のオーウェル世界になぞらえ〈共同通信(2020年7月7日)〉
https://this.kiji.is/653078578500306017?c=491375730748638305
香港国家安全維持法施行により、言論統制も進行しています。学校教材での使用も禁じる動きも報じられており、独裁国家の恐怖を描いたジョージ・オーウェルの小説『1984年』になぞらえた批判もあるようです。
コロナ禍を受け中国教育現場がオンライン授業にどう対応したか? ~ 小中学校編「停課不停学(授業を止めても学習を止めない)」〈HON.jp News Blog(2020年7月10日)〉
コロナ禍を受け中国教育現場がオンライン授業にどう対応したか? ~ 大学編「停課不停学(授業を止めても学習を止めない)」〈HON.jp News Blog(2020年7月11日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/29652
おなじみ北京大学・馬場公彦氏による中国レポート。中国政府の発表によると、全国小中学校の98.4%で通信ネットワークが完備されているとのこと。強権発動できるとはいえ、インフラまわりの整備状況が日本とあまりに違っていて、頭がクラクラします。GIGAスクール構想が昨年末ではなく、あと数年早ければ……。
大学も、北京まで体を運ばなくても、遠隔で越境授業が成立してしまうという。私も前期、非常勤講師2コマありますが、大学へは1回も行ってません。「対面じゃないと」みたいな守旧派の抵抗もあるようですが、感染症共生社会下でそれは単に教育を止めるだけになってしまいそう。
ポッドキャスト
運営体制変更に伴い、しばらくお休みし、企画を練り直します。
メルマガについて
本稿は、HON.jpメールマガジンに掲載されている内容を、#80までは1週間遅れで、以降は同時に配信しています。最新情報をプッシュ型で入手したい場合は、ぜひメルマガに登録してください。無料です。