「日テレ、ビーグリーにTOB」「東洋経済の出版業界特集」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #497(2021年11月7日~13日)

チームラボ どんぐりの森の呼応する生命

《この記事は約 14 分で読めます》

 2021年11月7日~13日は「日テレ、ビーグリーにTOB」「東洋経済の出版業界特集」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。

【目次】

政治

京アニ事件で虚偽記事掲載 まとめサイト編集長に2審も賠償命令 | アニメ会社放火〈NHKニュース(2021年11月9日)〉

【NHK】「京都アニメーション」の放火殺人事件にNHKのディレクターが関わったかのような虚偽の記事をインターネットのまとめサイトに…

 あたかもNHKのディレクターがこの事件に関わっているかのような匿名の声をまとめて記事化した行為が、悪質な名誉毀損だと認定。1審より賠償額が多くなっています。「まとめただけ」という言い訳は通じないことが明確になりました。

社会

“色加工しすぎ” ゼンリン SNSに投稿の紅葉写真 指摘認め陳謝 | IT・ネット〈NHKニュース(2021年11月12日)〉

【NHK】大手地図会社「ゼンリン」がおととい、北海道函館市の五稜郭公園が色鮮やかに紅葉していたとする写真をSNSに投稿したところ「…

 本件、そこらのゴシップメディアならともかく、「NHKが」ニュースとして取り上げるのか! という驚きがありました。さすがにこの写真は赤すぎる、とは思いつつ。色なんてちょっとした光の加減で変わっちゃいますから、「見たままの色」なんてあり得ないわけで。昔から「写真は真実を写しているわけではない」のはよく言われてきたことです。では、どこまでの加工なら許されるのか? そういう見極めも大切になってきている、ということなのでしょうね。

経済

絶好調の「マンガ業界」が、“さらなる飛躍”を遂げるための「2つの課題」(飯田 一史)〈現代ビジネス | 講談社(2021年11月7日)〉

1978年の統計開始以来過去最大の市場規模となる6126億円に達したコミック市場。その成長を牽引しているのは、電子書店とマンガアプリだが、さらなる成長のためのボトルネックとなっている2つの課題がある。

 以前、IT企業系のマンガアプリが躍進し始めたとき、自社で編集部機能を持ってオリジナル作品を育てていこうという動きがありました。しかし、結局「次のヒット作」がなかなか生み出せていないのが現状。つまりそういう編集部開発や変革の「ノウハウ」構築と、アプリ以外の新規流入経路確立が必要ではないか、という論考です。

 確かに、以前から「編集者を育てるのは難しい」という声はよく耳にします。マンガ以外はもちろん、同じ「マンガの編集者」でも、マンガのジャンルによって求められる能力が違ってくると思うのです。さらに言えば、紙の制作ノウハウが重要だった時代から、デジタル・ネットワークでの認知獲得や販売戦略が重要な時代へと移り変わっているわけで。編集者に求められる能力も、以前とは大きく変わってしまっているのではないかと。

ジェフ・ベゾスが甦らせた名門「ワシントン・ポスト」有料デジタル版が大成功した秘密〈dot.〉〈AERA dot. (アエラドット)(2021年11月8日)〉

 昨年から続くコロナ禍の影響で、世界中の飲食業や観光業など様々な業界が経営難にあえいでいるが、新聞などのメディア業界も例外ではない。アメリカではロ...

 コロナ禍で紙面広告は壊滅的だけど、以前からデジタル版サブスクに取り組んでいたメディアは成功しつつある、という記事。地方紙だったのがデジタル化で全国紙・グローバル紙へ変わったこと、対価に見合うだけの「質の高いジャーナリズム」が求められていること、という「そりゃそうだよね」話で、秘密というほどのことはありませんでした。浅い。

本屋が儲からない!出版業界を襲う深刻ジレンマ | メディア業界〈週刊東洋経済プラス(2021年11月9日)〉

――2020年の紙の出版市場は前年比0.9%の減少にとどまりました。出版市場の落ち込みは下げ止まっ…

「本の物流王」じり貧の出版で生き残る秘策の全容〈週刊東洋経済プラス(2021年11月10日)〉

――丸紅と出版大手3社による構想の発表をどう受け止めていますか。出版社から見た取次のパートナーとし…

「稼ぐ集英社」と「消える書店」、出版の残酷な明暗〈週刊東洋経済プラス(2021年11月11日)〉

紙媒体が不況続きの出版業界において、大手出版社と取次(出版業界の卸売業者)・書店の間の格差が浮き彫…

 9月にTSUTAYAのAI発注による返品削減、10月に富士山マガジンサービス社長インタビューと続いた「激動の出版」特集で、3日連続更新。いずれも無料会員登録で読めます。有隣堂社長インタビュー、日本出版販売社長インタビューと続いて、集英社の記事は匿名「関係者」の声が中心。「電子コミックで儲かってる大手出版社」と、儲かっていない中小出版社や取次・書店との分断を印象づけるような着地になってしまっているような気がします。ううむ。

「漫画アプリ」急成長市場の覇権をめぐる攻防戦〈週刊東洋経済プラス(2021年11月13日)〉

今年6月、ある企業が香港系投資ファンドを引受先とする第三者割当増資で600億円を調達した。その企業…

拡大する縦読み漫画「ウェブトゥーン」の破壊力〈週刊東洋経済プラス(2021年11月13日)〉

韓国発のドラマとしてネットフリックスで大きな話題となった『梨泰院クラス』。この作品の配信元になった…

漫画アプリ・ピッコマが目指す「紙とWEBの共存」〈週刊東洋経済プラス(2021年11月13日)〉

――ピッコマの足元の成長を支えているのが、スマホで読むのに最適化した縦読みフルカラー漫画「スマート…

 そしてこちらは「漫画アプリ 戦国時代」特集。社名を変更したカカオピッコマを中心に、マンガアプリ市場とウェブトゥーンの状況を概説。こちらも無料会員登録で読めます。前出のアエラ「ワシントン・ポスト」の記事に私が「浅い」と感じたのと同様、こちらも業界関係者からは「踏み込みが浅い」という声が散見されます。ただ、もっと詳しく語ってもらおうとなると、こんどは守秘義務が制約になるのですよね。なかなか難しい。

Twitterの有料機能「Twitter Blue」が新たに米国などで提供開始〈PC Watch(2021年11月10日)〉

 Twitterは10日(米国時間)、サブスクリプションサービス「Twitter Blue」を同日よりアメリカとニュージーランドで提供開始したと明らかにした。

 提携メディアが入稿した記事には広告が出ない、などのプレミアム機能。日本はまだです。YouTube Premiumのように、タイムラインに広告が出なくなるわけではないのを残念がる声を多数見かけました。Facebook Instant ArticlesやGoogle News Showcaseのように広告収益を分配するのではなく、会費の分配でパブリッシャーへ還元する、ということなのでしょう。このサービスで会費が集まるのか? というのが率直に疑問ではありますが。

文庫本陳列、出版社順から著者順へ県内も増/客は探しやすく店の管理は手間〈山口新聞 電子版(2021年11月11日)〉

「東野圭吾の本はどこにありますか」―。近年、書店で文庫本の陳列を出版社順から著者順に変える動きが進んでいる。...

 ジャンルやレーベルではなく、著者名順の棚にすることで、客が目当ての本を探しやすくなったとのこと。店員が「(並べ方を変えて)お客さまからの問い合わせが少なくなった。以前は探しにくかったのだと思う」と言っているのは、ポジティブに捉えるべきなのか、ネガティブに捉えるべきなのか。

 並べ方を変えたことで「売上が伸びた」ならポジティブなのですが、記事からはそう読み取れず。恐らくセレンディピティ(偶然の出会い)的にはマイナスだと思うのですよね。指名買いならネット通販で良いじゃん、ということになってしまうような気もするのですが……。

電子書籍のビーグリー、日テレと資本業務提携〈日本経済新聞(2021年11月12日)〉

電子書籍サイト「まんが王国」を運営するビーグリーは12日、日本テレビ放送網と資本業務提携を結ぶと発表した。日テレがビーグリー株の25%を市場からTOB(株式公開買い付け)で取得し、持ち分法適用会社とする。株式の取得額は28億円。作家の発掘などに強みのあるビーグリーが日テレと共同で作品を開発し、まんがやアニメ、ドラマな

 昨年、ぶんか社を買収したビーグリーが、こんどは日テレグループからTOB(株式公開買付け)される側に。ビーグリーのIRによると、このTOBには賛同しており、日テレを割当予定先とした第三者割当増資を実施予定とのことです。TOBというか、「ビーグリーが日テレから資金調達した」と考えたほうが分かりやすそう。

株式会社ビーグリーのIRについて掲載しております。

技術

コンテンツ監視に多額投資 旧Facebookは5年で1兆円〈日本経済新聞(2021年11月8日)〉

世界のテック企業や消費財メーカーがコンテンツの監視に多額の資金を投じている。米メタ(旧フェイスブック)は差別的な投稿やフェイクニュースの拡散を抑え切れていないとして批判を受けており、16年から5年間で130億ドル(1兆4300億円)以上もコンテンツ監視に投じた。消費財メーカーは消費者との交流の場であるSNS(交流サイト)への投稿を監視する必要に迫られている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界

 タイトルには「5年で1兆円」とありますが、より正確には5年間で130億ドル(1兆4300億円)以上の投資です。コンテンツ・モデレーションには相当な労力とコストがかかる、というのはなんとなく理解していたのですが、こうやって具体的な数字が出てくるとびびります。そして、Facebookがこれだけ投資していも、あの状態なのか、と。この記事は、AI技術によってコストを抑え安全性を高めようとしている、という方向性になっているので[技術]カテゴリーに入れました。

ブロックチェーン・NFT活用したマンガのファンコミュニティーサービス「GANMA!コミュニティ」正式版が提供開始〈TechCrunch Japan(2021年11月9日)〉

ブロックチェーンとエンターテインメントを結び付け、ファンコミュニティー事業を展開するGaudiy(ガウディ)は、11月9日、コミックスマートと共同でブロックチェーンを活用したファンコミュニティーサービス「GANMA!コミュニティ」正式版の提供開始を発表した。

 Gaudiyとコミックスマート「GANMA!」が進めていた「ブロックチェーン技術を活用したファンコミュニティ」サービス正式版が提供開始。たまたま先月、動向をいろいろ調べていて「続報が無い」としょんぼりしていたところだったので、タイムリーでした。Gaudiy×集英社『約束のネバーランド』のファンコミュニティ「みんなのネバーランド」がちょうど1年前にリリースされていますが、UIは今回のものとほとんど同じです。

株式会社Gaudiyのプレスリリース(2020年10月22日 13時50分)Gaudiy、週刊少年ジャンプ(集英社)の人気漫画にて、ブロックチェーンを活用したコミュニティサービスの提供を開始

 実は、プレスリリースや記事が出る数日前に偶然、オープンしていることに気付いたのですが、当初「ブロックチェーン」や「NFT」の記述が見つけられず、しばらくサイト内をさまよっていました。お知らせのデジタルトレカの説明に「ブロックチェーン技術を活用した、新しいデジタルトレーディングカード」や「トレカ1枚1枚に固有のシリアルナンバーが付与」と書いてあるのですが、画像なのでサイト内テキスト検索が機能しなかったのです。ぐぬぬ。

 なお、同じ座組みでブロックチェーンによる「データ所有型電子書籍」で二次流通まで可能にするプロジェクトも進められていますが、こちらは昨年7月のプレスリリース以来続報がないままです。むしろこっちの動向がその後どうなっているか? のほうが気になる、というのが正直なところ。NFT×トレカは、スクエニやメディアドゥなど他にも事例がありますからね。

株式会社Gaudiyのプレスリリース(2020年7月14日 11時00分)Gaudiy、をパブリック・ブロックチェーンで世界初の実現化へ。マンガ領域での開発・事業化をセプテーニグループでGANMA!を手がけるコミックスマートと共同で開始

ツイッターが暗号技術チーム「Twitter Crypto」設立、ブロックチェーンとWeb3の研究拠点を目指す〈TechCrunch Japan(2021年11月11日)〉

TwitterがNFTを無料で配布したり、ビットコインによる投げ銭を可能にしたことを覚えているだろうか?創業者兼CEOのジャック・ドーシー氏のTwitterプロフィールが文字通り「#bitcoin」であることを考えれば、同社が暗号資産やその他の分散型技術に関心を持っていることは驚くことではない。

 短期的には暗号資産による投げ銭などの支払いやNFTギャラリー、中長期的には「分散型ソーシャルメディアのオープン標準」構築を目指すとのこと。前者はともかく、後者は面白そうではあるものの、デジタルタトゥー化の危険をどう回避するかが大きな問題になりそう。Twitter社のサーバーではなく、分散型ストレージにつぶやきが刻み込まれ、本人はおろかTwitter社自身でも消せない改竄できない状態になるわけですもんね。むしろ「NFTによってパクツイを防ぐ」みたいな方向性のほうが筋が良い気がするのですが。

Discordがユーザーの反発を受けて暗号資産やNFTの調査を一時中断〈TechCrunch Japan(2021年11月12日)〉

Discordの創業者でCEOのジェイソン・シトロン氏は米国時間10月10日、NFT(非代替性トークン)事業に手を出す差し迫った計画はないと発表し、ユーザーたちを安心させた。

 そんなTwitterに対し、Discordはチラ見せ段階でユーザーからの猛反発を受け「NFT事業に手を出す差し迫った計画はない」と発表しなければならなくなった、というニュース。暗号資産やNFTが「猛反発」を受ける状態になっている、ということにはしっかり目を向けておく必要があるでしょう。コンセプトや目的を明確にしないふわっとした情報開示では、誤解を招く可能性が高いように思います。

デジタルアートや投稿に破格の値がつく話題の「NFT」とはなにか?(西田 宗千佳)〈ブルーバックス | 講談社(2021年11月12日)〉

アートやコンテンツの世界で注目を集めている「NFT」。「Twitter」社の共同創設者として知られるジャック・ドーシー氏による初めてのツイートが、NFTを通じて約291万ドル(日本円でおよそ3億1500万円)もの価格で販売されたり、クエンティン・タランティーノ監督の初期の傑作『パルプ・フィクション』の未公開カットがNFTで販売されることが発表されるなどのニュースで話題になりました。主としてアートの世界で収益を得る新た...

 そもそもNFTってなんぞ? という人に、入門編として「まずこれを読んでおけ」と勧められる、信頼できる書き手による解説記事。とくに3ページ目以降で説明している「著作権は保護されない」とか「作品が消滅する可能性」といった、現時点での危険性を理解しておくことが非常に重要だと思います。

 実は私もこの記事の公開日と偶然同じ日に、電流協セミナー「コンテンツ流通分野のブロックチェーン活用の最新動向」で露払いとモデレーターを仰せつかっていたのでありました。どう説明したものか、どう進めるべきか、準備の段階で悪戦苦闘。時間も短いし、メディアドゥと集英社の事例に絞って話を進めたのですが、それが良かったのか悪かったのか。

 終了後、電流協の方から「分かりやすかったが、そもそものテーマ設定を間違えたかもしれない」と言われてちょっと脱力。うーん。いろんなことに活用できる技術基盤だから、結局のところサービス設計や哲学次第だと思うのですよね。出版分野ではどんなことに応用できるだろうか? がイメージさせられなかった、ということなのだろうなあ。ぐぬぬ。悔しい。

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雑記

 10月は急に寒くなったと思ったら、11月は暖かく過ごしやすい日々が続いています。昼と夜の寒暖差が大きくなっており、外出するとき着ていくものに悩む季節です。また急に寒くなったりするのかなあ(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0
※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

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著者について

About 鷹野凌 602 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学でデジタル編集論・二松學舍大学でエディティング・リテラシー演習担当の非常勤講師 / 日本出版学会員 / デジタルアーカイブ学会員 / 主な著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)/ プロフィール画像は©鈴木みそ氏
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