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2024年1月7日~13日は「誹謗中傷対策でプロ責法改正へ」「日経BP有料会員15万人突破」「ワコム、生成AI利用疑惑で炎上」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります(ISSN 2436-8237)。
【目次】
総合
2024年出版関連の動向予想〈HON.jp News Blog(2024年1月10日)〉
年始の恒例、動向予想コラムです。Googleドキュメントの計測で約1万4000字、本文だけのカウントなら約1万字です。脚注とリンクでやや増量されています。しかし、毎年思いますが(記事本文にも書きましたが)予想は難しい。私は今年、こういう領域に注目していると捉えていただければ。とはいえ、たとえば法施行などほぼ確定した予定は、その影響でなにが起きるか比較的予想しやすいし、楽しいんですけどね。
政治
ネット上の誹謗中傷は迅速削除、SNS大手に義務付けへ…法改正で削除基準の透明化も〈読売新聞(2024年1月12日)〉
総務省「プラットフォームサービスに関する研究会」の「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」で議論が進められてきた対策です。プロバイダー責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)を改正し、名称も「特定電気通信による情報流通で発生する権利侵害等対処法」に改めるとのこと。
表現の自由に関わる規制ということもあり、記事への反響には批判的な声も散見されます。ただ、とりまとめ(案)を読む限り、かなり慎重な議論が行われてきた印象です。規制の対象範囲は「権利侵害情報の流通が生じやすい不特定者間の交流を目的とするサービスのうち、一定規模以上のものに対象を限定することが適当」(p12)とされています。MastodonやMisskeyのような「分散型SNSが死ぬ」みたいな心配は、恐らく杞憂と言っていいでしょう。
社会
鳥取県立図書館、電子書籍サービスにおける読書バリアフリーへの対応状況を報告〈カレントアウェアネス・ポータル(2024年1月9日)〉
記事内にも鳥取県立図書館の報告にもとくに言及はありませんが、恐らく昨年7月に公開された「電子図書館のアクセシビリティ対応ガイドライン1.0」を受けての動きだと思われます。たとえばバナーの位置変更は「6.1.1.3.11. フォーカス可能な要素への理解しやすい順序での移動」に沿ったものでしょう。
2024年予想にも書きましたが、こういう配慮が電子図書館サービスのみならず電子書店にも広がることを期待しています。制作側だけでなく、流通・利用の課程も対応が必要です。ちゃんと対応していれば、視覚障害者の方でも「購入」が可能なのですから。
新聞記事を社内ネットで閲覧するのは違法行為か? デジタル時代、企業の情報収集に潜む落とし穴 | リーダーシップ・教養・資格・スキル〈東洋経済オンライン(2024年1月9日)〉
勤め人ならこのタイトルを読んだだけで「許諾がなければ違法」と判断できなければいけません。個人なら私的使用目的の複製の権利制限でセーフですが、企業内は「私的使用」じゃないからアウトという罠。うっかりが起きやすいから、危ないんですよこれ。記事内では「ある鉄道会社が訴訟を起こされた」と匿名化されていますが、つくばエクスプレス著作権侵害事件のことでしょう。
ただ、この記事の結論は「日常業務でうっかり著作権侵害していないか、一度社内で確認することをお勧めします」まで。もう一歩先の、日本複製権センター(JRRC)と電磁的複製許諾の契約を結べば合法とか、クリッピングサービスを利用すれば合法、というところまで踏み込むべきだと感じました。
なお、JRRCとの契約で合法になるのはもちろん、JRRCに複製権の管理を委託している新聞社が発行する新聞記事に限ります。管理著作物検索で確認したところ、本稿執筆時点で読売・朝日・毎日・産経・日経は「電子化許諾可」でした。日経が許諾したのは2021年からと、わりと最近からなのですね。
学研、「まんがでよくわかるシリーズ」など子供向け電子書籍を無料公開 被災者支援で〈ITmedia NEWS(2024年1月11日)〉
「学研マナビスタライブラリー」の無料公開。素晴らしい。学研は、新型コロナウイルス感染拡大が始まった2020年のときも、非常に動きが素早かったのですよね。当時、政府から臨時休校要請が出たのが2月27日で、翌28日にはプレスリリースを配信しています。
経済
Xに蔓延する「インプレゾンビ」という病 広告収益ビジネスの構造的欠陥〈KAI-YOU.net(2024年1月10日)〉
うーん……広告収益配分プログラムを始める前までは「インプレゾンビ」と呼ばれるような忌むべき存在を誰もが認識するほどの状態にまでは至っていなかったわけですよね。以前なら「誰もが目立つと儲かる仕組みを用意しちゃった Google AdSense が悪い」と言えましたが、自分たち自身でもそういう仕組みを提供し始めちゃったら、同じ批判は免れないでしょう。根本的にはアテンション・エコノミーの問題なのは確かですが。
ヤフー広告の「無効クリック」、半年で140億円分 悪質な水増しも〈朝日新聞デジタル(2024年1月10日)〉
LINEヤフーが昨年末に公開した「広告サービス品質に関する透明性レポート」についての記事。アドフラウドももちろん問題ですが、私が気になったのは「性的な商品、サービス」基準での非承認が増加しているという記述。「電子書籍や出会い系サイトでの否承認が目立ちました」と、出会い系と並んで電子出版業界が名指しされているんですよね。
恐らく電子コミックの広告で、ギリギリでR18にならないラインを狙っているクリエイティブが審査に引っかかるという、言ってみれば「チキンレースに負けている」状態だと思われます。過激なクリエイティブのほうが目を惹きますから。でも、あまり過激なことをやってると規制論が強くなってしまいますから、ほどほどに。
JICDAQ認証企業を介したデジタル広告取引、アドフラウド発生率が大幅低減|JICDAQ23年度活動報告〈Web担当者Forum(2024年1月11日)〉
アドフラウド関連では、こういう報告もあったので併せてピックアップ。後半にはCODAによる海賊版対策の報告もあります。「漫画村」問題のときに指摘されていた、広告収入を断つ活動が実を結んでいるようです。善哉。
日経BPのデジタルメディア、有料会員数が15万人を突破〈日経BP(2024年1月10日)〉
2023年回顧記事の「サブスクは伸びた?」を書くときには無かった情報。サイト内を検索してみましたが、日経BPがデジタル有料会員数を発表するのは今回が初めてみたいです。4媒体合計ですが、NewsPicks19.6万に次ぐ数字ですね。
単独では、日経ビジネス電子版の有料会員が6万7510人。「日経ビジネス」のABC部数は14万8907部(2022年1〜12月)ですから、もう少しで半分のところまで迫りつつあることに。「2019年から年平均12%の増加」という成長率だそうです。
技術
Google、メール送信者に課す「ワンクリック登録解除」〈日本経済新聞(2024年1月10日)〉
この記事を見て、2024年予想で迷惑メール対策の強化について触れていなかったことを思い出しました。「ファンコミュニティ施策の重要性が高まる」のところで、メールアドレスを取得して情報をプッシュ型で直接ユーザーへ届けるやり方は有効だけど、迷惑メール対策も重要と書こうと思っていたんですけど、飛んじゃってました。しまった。
【AI疑惑が拡散】ワコムの広告イラスト使用中止 ⇒「AIではない」の証明が必須の社会に? 懸念の声も〈BuzzFeed – バズフィードジャパン(2024年1月11日)〉
ワコム米国支社がX(旧Twitter)へ投稿した新年祝賀イラストが「AI生成では?」と指摘され炎上した事件。Adobe Stockで「生成AIではない」イラストを購入し、一般的なAI検出ツールを複数使って確認したはずなのに……という飛び火まで起きています。ストックフォトサービスの利用には、今後はこういうリスクがあることも認識しておく必要があることになります。とほほ。
「生成AIではない」ことの証明という話は、昨年起きたあらいずみるい氏が「AI疑惑」をかけられた事件を思い出します。レイヤー構成を動画で公開してもなお納得しなかった方々が少なからずいたことが忘れられません。
このときは、AI検出ツールが誤判定していたことも「疑惑」を深めてしまった要因になっていた印象があります。そしてワコムの炎上は、AI検出ツールが役に立たなかった事例になってしまいました。そのうえで……
生成AIが書いた論文かどうかを見破る「生成AIチェッカー」を無償で提供開始〈株式会社ユーザーローカル(2024年1月12日)〉
こういう手軽に使えるツールの登場が、また新たな「冤罪」を生み出してしまうのではないか? という危惧を抱かずにはいられません。テキストはイラストより判定の難易度が高いと思うのですよね。OpenAI自身が提供していた判定ツールを「精度が低いため」と終了してしまったのを思い出します。
ツールの無償提供そのものは良いことだし素晴らしいとも思うのですが、使う人間の側が誤判定を鵜呑みにするのを避けるのも難しいだろうな、と。生成AIチェッカーで出た判定を根拠に発注元が値引き要求してくるとか、学生のレポートが誤判定されて教授が「お前に単位はやらん」と宣告しちゃう……みたいな未来が容易に想像できちゃいます。怖っ!
お知らせ
HON.jp News Casting
年末恒例の特番は、ニュースまとめ配信人の大西隆幸氏と菊池健氏と古幡瑞穂氏と鷹野凌が、司会の西田宗千佳氏とともに2023年の主な出版ニュースを振り返りました。アーカイブ視聴チケットは1月31日まで販売します。
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日刊出版ニュースまとめ
伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
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雑記
朝、放射冷却でぐっと冷え込む季節です。お布団から出るのに気合いが必要。でも日中はわりと暖かいので、気温差の激しさにやられそうです(鷹野)
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