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2023年5月7日~13日は「pixivFANBOX、Fantia、DLsiteなどでAI生成作品が当面禁止に」「外部配信のカノニカル属性が非推奨に」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります(ISSN 2436-8237)。
【目次】
政治
俳優や音楽家が訴えるAIの恐怖 「他の人が自分を完コピして…」 [ChatGPT]〈朝日新聞デジタル(2023年5月8日)〉
こんどは著作権法で「実演家」と規定される、俳優、舞踊家、演奏家、歌手などからの訴えです。創作者の権利が著作権で守られるのに対し、実演家は「著作物の伝達」に重要な役割を果たしているとして、著作隣接権という少し異なる(少し弱い)権利で守られる形になっています。少し弱い立場ですから、より強い危機感を覚えても無理はありません。
しかし、記事にある元アップル米国本社副社長が言うように、生成AIの跋扈によって「逆にプロのアーティストへのリスペクトが高まる」可能性のほうが高いのではないか? と私も思います。過去の事例でも、たとえば初音ミクに代表されるバーチャルシンガーの隆盛は、「歌い手」のような従来とは異なる存在の誕生を促しました。
人間の手で実演する「演奏してみた」動画が、打ち込み音楽(DTM)とは次元の異なる価値を生み出すような事例もたくさんあります。「THE FIRST TAKE」のような一発撮りのパフォーマンスにも、従来より高い価値を見出している方が増えているように思います。
AIの次に来るのは「アナロジア」だ、なんて声もあります。デジタル技術の発達は、むしろアナログの価値を高めているのではないでしょうか。このコロナ禍の数年で急激にウェブ会議が普及しましたが、やはり直接会って表情を見たり肉声を聞いたりすることに比べたら、劣った体験なのですよね。もちろん、移動する時間やコストとのバランスを考えたら、オンラインのほうが良い場合も多々あるわけですが。
社会
ChatGPTで書かれた読書感想文が人間かAIなのか「判別難しい」は本当か コンクール主催者が覚えた違和感〈dot.〉〈AERA dot.(2023年5月6日)〉
全国学校図書館協議会の方が、ChatGPTにむしろ前向きな見解を述べています。私も、一定レベル以上の領域については、生成AIより人間のほうが質の高いアウトプットになると思います。人間かAIなのか判別が難しいのは、一定レベル以下の領域でしょう。ChatGPT登場前から、内容の薄いやっつけレポートが学生から提出されることは多々あったわけです。むしろ誤字脱字があるぶん、人間のアウトプットのほうが質の低いものになる可能性もあります。
もっと言えば、デジタル化が進む前なら「友達や先輩のノートを丸写し」とか、デジタル化後なら「Wikipediaコピペ」とか。学ぶことが目的なのではなく、単位を取得して大卒という身分を得ることが目的だから、なるべくラクがしたい。そのためにそういう手段が用いられるという、低い次元の話です。私自身がたいそう不真面目な学生だったので、因果応報だなあ……と苦笑いしているわけですが。
画像生成AIの「悪用」に絵師たちが反発、pixiv上でイラスト非公開に…福井健策弁護士に聞く〈弁護士ドットコム(2023年5月11日)〉
生成AIの学習用素材に使われたくないからと、pixivにアップロードしたイラストを非公開にする動きが起きています。実際のところ、非公開化によってAI学習を止める直接的な効果というより、pixivに嫌がらせへの対策を促すための抗議行動として非公開化している、という方が多いように思いました。それにより、pixivFANBOXでのAI生成作品の取り扱いが当面禁止となり、その余波を受けたFantiaやDLsiteなどでも禁止措置が採られる、ドミノ倒しのような現象が起きています。
そして、おなじみ弁護士・福井健策氏による明快かつロジカルな解説。やはりポイントとなるのは「ただし、著作権者の利益を不当に害する場合は除く」ですよね。官民でガイドラインの議論を始めるべきという提言には、私も強く賛成いたします。これ、政府も早々に動くんじゃないかなあ。あと、すかさずデジタルアーカイブの戦略に話を持っていくあたりも、さすがの一言であります。
経済
頼れなくなったソーシャルメディア流入、データから知る【Media Innovation Weekly】5/8号〈Media Innovation(2023年5月8日)〉
BuzzFeed Newsの閉鎖要因の一つとして、ソーシャルメディアからの流入が頼れなくなったことが挙げられています。HON.jp News Blogについて言えば、Facebookページの影響力はもともと小さかったので、さらに小さくなったけどあまり影響はありません。しかしTwitterは、以前は月間100万インプレッションを軽々超えていたのが、いまではせいぜい20万~30万くらい。アカウントの運用は以前とまったく同じなので、アルゴリズム変更の影響が顕著に出ているように思います。恐らく、Twitter Blueを契約すれば、以前のようなインプレッションに戻るのでしょう。CEOが変わったら、検討しようかな。
ニュースビジネス は「不採算事業」となってしまうのか:BuzzFeed News とハフポストの比較〈DIGIDAY[日本版](2023年5月11日)〉
ただ、ソーシャルメディアのアルゴリズム変更だけが理由ではない、という意見もあるんですよね。同じニュース部門なのに、BuzzFeed Newsが赤字なのに対し、ハフポストは黒字化できています。要するに、ハフポストとの社内競争に負けたということではないか、と。ソーシャルメディアのアルゴリズム変更は、SWOT分析で言えば外部環境の「脅威」ですが、内部環境の「弱み」も閉鎖要因の一つでしょう。
たとえば身近なところでは、ヤフーの子会社になったeBookJapanが、Yahoo!ブックストアを統合してebookjapanになり、その後、LINEマンガのバックエンドも担当することになりました。これは恐らく、圧倒的な「強み」を持っていたからだと思うのです。外部環境だけに目を向けるのは、他責思考ですよね。
縦読み漫画「WebToon」投稿先はLINEマンガがトップ 実態調査の結果公開〈KAI-YOU.net(2023年5月9日)〉
MMD研究所による調査。「直近1年で制作した漫画」は、縦読み46.8%、横読み50.8%と、非常に拮抗した数字になっています。縦読み(縦スク)マンガを制作する人がそこまで増えているとは思っていなかったので、もしかしたら選択肢「縦読みのマンガ」に4コママンガが含まれているのでは? と疑ってしまいました。
ところがMMD研究所に取材してみたところ、ちゃんと4コママンガは区別できるようになっていました。実際の選択肢は「横読みのマンガ(単行本などにある従来の形式、画像の右側)」「縦読みのマンガ(縦読み形式・WEBTOON、画像の左側)」「上記以外(4コママンガ、1コマずつアップする形式など)」と、括弧書きやサンプル画像も提供されていたそうです。それなら回答者が誤解する可能性は限りなく低いでしょう。
つまり、縦読み(縦スク)マンガを制作する人が、横読みマンガを制作する人と拮抗するほど増えているのは事実である、と。ううむ、私の認識不足でした。改めます。もちろん複数回答可なので、両方制作する人もいるのでしょうけど。どちらかだけ、という人の率が気になります(そこまでは公開されていません)。MMD研究所によるレポートはこちら。5月23日に無料セミナーもあるそうです。
Kindleインディーズマンガ:「Amazon Fliptoon」コンテンツ向けサービス提供開始のお知らせ〈KDP Community(2023年5月10日)〉
予告されていたとおり、3月に開始された縦読み(縦スク)マンガの「Amazon Fliptoon」に、KDPから誰でも参入できるようになりました。これまで展開されてきた「Kindleインディーズマンガ」と同様に、インディーズ無料マンガ基金へ登録することにより、作品の人気度に応じて毎月分配金を受け取ることが可能となります。
KDPセレクトとは異なり、独占権の付与は不要なので、他で投稿している作品をこちらに載せることもできます。つまり「LINEマンガインディーズ」「comicoチャレンジ」「DAYS NEO」などと、クリエイターの争奪戦を繰り広げていくことになるのでしょう。それにしても、マンガは優遇されてるなあ。うらやましい。
‘Attack on Titan’ publisher Kodansha launches K Manga app in US〈TechCrunch(2023年5月10日)〉
年初予想の「コンテンツの輸出が拡大」関連の動き。こちらの講談社の動きは日本のメディアでもあちこちで報道されていましたが、あえて向こうのメディアをピックアップしておきます。「常に無料」「待てば無料」「チケットで読む」の、話単位配信モデルのようです。
Viz Media Simultaneously Releases Shogakukan Manga Titles in New VIZ Manga App – News〈Anime News Network(2023年5月9日)〉
で、集英社・小学館系のViz Mediaもほぼ同時に「VIZ Manga」というアプリをリリースしましたが、こちらは日本のメディアではあまり報道されていません。見つけられたのはアニメーションビジネス・ジャーナルくらい。なぜ。こちらは、月額1.99ドルの定額読み放題モデルのようです。
電子書籍流通額、4月は6.9%増 メディアドゥ調べ〈新文化オンライン(2023年5月12日)〉
メディアドゥが今期(2024年2月期)から「電子書籍流通額成長率レポート」を公開しています。バックエンドが移管された「LINEマンガ」向けの数値は除かれているので、素直に「現在の市場が1年前と比べてどうなのか?」を表わしたものだと捉えて良さそうです。
で、個人的に非常に気になっているのが、「書籍」が2カ月連続で対前年比マイナスであること。出版科学研究所の発表で、2022年の電子書籍(文字もの)がマイナス成長だったのに衝撃を受けたのですが、このままなら2023年はさらに落ち込むと……? 書籍以外は堅調なのに、どうして。
うーん……考えられるのは、東野圭吾氏の特別解禁あたりでしょうか。2020年4月に7作品が電子化されましたが、以降は音沙汰がありません。「最初で最後かもしれない」と言われていただけのことはあります。新作が供給されないから、作家買いのユーザーが電子から離れていってしまった、と。あくまで想像ですが。
技術
配信コンテンツの重複コンテンツ防止に rel=canonical が非推奨になる〈海外SEO情報ブログ(2023年5月9日)〉
ちょっとそりゃないよGoogleさん、と残念に思ったニュース。いわゆる外部配信(コンテンツシンジケーション)は検索エンジンに重複コンテンツとして扱われてしまうため、配信先のほうがオリジナルより高く評価されてしまう(検索結果で上位表示される)のを防ぐために推奨されてきたのがこのカノニカル属性だったはず。それが突然「非推奨」に変わってしまったとのこと。
以前、サイバーエージェントの「新R25」が配信元にカノニカル属性を向ける形にすることを発表し、ホワイトハットなSEO界隈から「英断」だと高く評価されていたのを思い出しました。「スマートニュース」もオリジナル記事のURLがカノニカル属性に指定できる仕様になっていたので、だったら配信してもいいなと思った記憶があります。
しかし、日本では非常に影響力の強い「Yahoo!ニュース」は、配信先なのに自社ドメインへ向けた正規化を行っています。そのためか、検索結果でオリジナル記事がYahoo!ニュースに負けていることもあるという、残念な状態になっていました。もちろん、オリジナルのSEOが弱すぎる可能性もありますが。ただ、前述の「新R25」の英断をきっかけに、そういう事実が以前より認知されるようになってきた感もありました。
というのは、昨年11月に公正取引委員会がニュース利用料の調査を行うというニュースがありましたが、実は、公取委の事務総長はこのカノニカル属性についても「今回の調査のターゲットになっています」と明言していたんですよね。これは配信先(というかヤフー)の姿勢を変えるきっかけになるのでは? とひそかに期待していました。
ところがそのカノニカル属性が、いきなり「非推奨」になってしまったという。今後は配信先で記述されていても、無視されるだけの意味のないものになってしまいました。変更理由は明らかにされていませんが、実際のところほとんど有名無実化していたのかもしれません。だからといって、唯一残された手段であるnoindexを、配信先が自主的にやってくれることもないでしょう。
まあ、これによって、オリジナル記事を配信する側は「外部配信に頼るべきではない」という方向性がいままで以上に明確になったわけです。それはそれで、結果的には良いことなのかもしれません。
[速報]Google、責任あるAIを実現するとして、画像にウォーターマークとメタデータの埋め込みを進めると発表。Google I/O 2023〈Publickey(2023年5月11日)〉
今年のGoogle I/Oも、ハードからソフトまで数多くの発表がありました。中でもこのAI生成画像が判別可能な情報付与というのは、野放図なAI技術の広がりに対する懸念の声に応えるための動きであり、機を見るに敏という感があります。ただ、AI生成の画像だということを隠したい人は、ウォーターマークの付かない他の生成AIを使うでしょうから、根本的な解決には繋がらないのでしょうけど。
Google I/Oでの他の発表については、個人的にはPixel 7aを速攻で注文。ひさびさに復活したGoogle製タブレットにも心を揺れ動かされています。OpenAI「ChatGPT」とMicrosoft「Bing Chat」対抗の生成AI「Bard」(吟遊詩人)は、日本語対応が始まったので改めて少し試してみました。回答の速さは凄まじいものの、回答の質は、うーん……まあ、今後の進化に期待しましょうか。
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雑記
Google I/Oで発表されたPixel 7aがかなり良さげだったので、さっそく直営ショップで注文しました。税込6万2700円ですが、いままで使っていたPixel 4aの下取りが概算で1万2000円、さらにGoogleストアクレジットが1万円で、実質4万円ちょっとで買えたことに。また、あとから気付いたのですが、Pixel 4aのAndroidバージョンアップデートとセキュリティアップデートの提供保証期限がもうすぐ切れるところだったので、タイミング的にも申し分ない感じでした。むふふ(鷹野)
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