「講談社、アマゾンとの直接取引を一部レーベルで開始」「児童生徒向け電子図書館や読み放題サービス続々」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #489(2021年9月12日~18日)

角川武蔵野ミュージアム

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 2021年9月12日~18日は「講談社、アマゾンとの直接取引を一部レーベルで開始」「児童生徒向け電子図書館や読み放題サービス続々」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。

【目次】

政治

「身を守れる盾がほしい」 フリーランスの労組、企業による突然の「中途解約」に規制もとめる〈弁護士ドットコム(2021年9月17日)〉

ウェブ漫画を連載していたところ、突然、打ち切りになり、それどころか、すでに納品していた分の原稿料すら払ってもらえなかった――。ある女性漫画家が9月16日、都内の記者会見で、オンラインで音声をつなぎ、この...

 ウェブ漫画の連載が突然打ち切られ、納品済みの原稿料を支払ってもらえない事態に陥ったため、国が出している「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」に解約規制を盛り込んで欲しいと国に要請書を提出したというニュース。このガイドラインにはすでに「(5)一方的な発注取消し」がありますが、さらに「正当な理由」を必要とすること、事前通告なく解約する場合の補償を定めることなどを求めているそうです。

 ちなみに、書協と雑協は2004年に「作家(執筆者)が創作する小説、随筆、論文等、および美術、写真、漫画等の作品は下請取引の対象外として扱われる」などという文書を出しています。しかし、独占禁止法・景品表示法・下請法などを専門とする弁護士・池田毅さんに確認したところ、雑誌連載なら下請法は適用されるそうです(↓)。そのうえで、フリーランスが自分の身を守るためには、受注時に「3条書面(依頼状や発注書など)」の交付を依頼しておくのが良いそうです。覚えておきましょう。

 出版社の編集者から著名人の“自伝”代筆を依頼され、いわゆる“ゴーストライター”として密着取材し数カ月がかりで原稿を執筆。ところが完成間際で出版取り止め、原稿料も支払ってもらえない ―― このような場合、ライターは下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)で守られるのだろうか? 独占禁止法・景品表示法・下請法などを専門とする弁護士・池田毅氏に話を伺った。下請法の対象は“特注品”―― 下請法とはどのような法律な...

中国 TPPへの加入 正式申請と発表 | 中国〈NHKニュース(2021年9月17日)〉

【NHK】中国政府は16日夜、日本をはじめとする11か国が参加するTPP=環太平洋パートナーシップ協定への加入を正式に申請したと発…

 アメリカはトランプ前大統領が就任直後にTPPを離脱してしまったわけですが、バイデン政権になっても復帰には慎重なまま。そこへ中国が加入申請です。なんというか、外交駆け引きのしたたかさに舌を巻きます。

 以前、北京大学・馬場公彦さんが中国民法典の改正(↓)や著作権法改正(↓↓)についてレポートしてくれましたが、これらの国内法整備はTPP加盟へ向けての布石だったのかもしれません。知財関連で残るネックは、著作権の保護期間は中国ではまだ50年間である点、でしょうか。日本が保護期間を延長した経緯を知っていると、少々皮肉な感じもしますが……。
https://hon.jp/news/1.0/0/30652

 中国では、新たに懲罰的損害賠償制度などが導入された改正著作権法が、6月から施行されます。改正法のポイントや影響などについて、馬場公彦さんにレポートいただきました。前後編でお届けします。[編注:今回の条文日本語訳は馬場公彦さんです]海賊版の横行に終止符? ないはずの電子版が出回り、原本そっくりのPDF版が製本され安価で売られ、図版や写真が許諾なしに掲載され……、これまで中国での海賊版や違法出版に悩ま...

社会

月に1冊も本を読まない中学生12.8% 対策は「電子図書館」〈朝日新聞デジタル(2021年9月14日)〉

 岡山県内の中学生を対象に県教育委員会が行った初めての読書調査で、月に1冊も読まない「不読率」(漫画、新聞、雑誌を除く)は12・8%に上った。ユーチューブの視聴やLINEでのやりとりなどに時間をとられ…

 岡山県の教育委員会による調査。中学生の不読率12.8%というのは、全国SLAと毎日新聞が長年行っている「学校読書調査」とほぼ同じ。朝日新聞は「読書をしなくなっている実態」なんて書いてますが、20世紀末までの中学生不読率は40%を超えていたわけですから、そのころと比べたら最近の中学生は「よく本を読んでいる」というのが本来の実態なんですよね。

 記事で興味深いのは後半の対策部分で、JDLS「LibrariE」を公共図書館ではなく県教委で導入した、という点。蔵書は約400点。6月に開始して8月中旬までに600件超の貸出と、なかなか好評なようです。ラインアップは第三者でも確認できます(↓)。

デジタル参考書200冊以上を月額980円で読み放題に 学習管理のスタディプラスが新サービス〈ITmedia NEWS(2021年9月15日)〉

学習管理サービス「Studyplus」を手掛けるスタディプラスが、学習参考書などの電子書籍サービス「Studyplusブック」を2022年1月に提供する。月額980円で参考書200冊以上が読み放題になるサービスなどを用意する。

 旺文社、KADOKAWA、学研プラスなど、出版社18社が参画する参考書の読み放題サービス。同社が以前から提供していた「ポルト」は、こちらへ統合される計画とのことです。ポルトは4月に「18社200冊」というプレスリリース(↓)が出ており、社数・冊数・料金まで新サービスと同じ。切り替える理由は何だろう?

スタディプラスのプレスリリース(2021年4月22日 10時30分)スタディプラスの運営する電子参考書サブスクの提供冊数が200冊を突破しました

E2421 – 子どもの読書活動における電子書籍活用の現状〈カレントアウェアネス・ポータル(2021年9月16日)〉

 専修大学教授・野口武悟さんによる、学校での電子書籍活用に関する調査レポート。まだ利用率は低く、正直「これから」という感じではあります。ただ、現段階ですでに規模の大きい自治体のほうが利用割合が高いというのは、自治体間格差のさらなる拡大を予感させます。そういう意味で、JEPAの「学校デジタル図書館」提言(↓)は、実に“正しい”方向性ではある、のですが。

日本電子出版協会(JEPA)では、「学校デジタル図書館」を提言しています。これが実現するように国や文科省、図書館関係の方々、学校関係の方々、出版社の方々に働きかけをしています。実現のためには、皆さんの賛同が大きな力になります。

E2422 – ライセンスは誰のために:電子書籍をめぐる米国州法の動向〈カレントアウェアネス・ポータル(2021年9月16日)〉

 アメリカ・メリーランド州で成立した、出版社が電子書籍のライセンスを「合理的な条件」で公共図書館に提供することを求めたり、ライセンスを図書館に販売しない期間の設定を禁じる州法についての解説。同様の法律は、ニューヨーク州でも可決されています。電子書籍だと「お前には売ってやらない」という制御ができてしまう問題を、法律で規制する動きです。これ実は、ようやく広がり始めた日本の電子図書館サービスでも起きている問題。取材を進めていますので、もう少々お待ちください。

学校図書館を考える全国連絡会、文部科学大臣と総務大臣に要望書を提出〈カレントアウェアネス・ポータル(2021年9月17日)〉

 学校図書館関係の地方財政措置をさらに充実させること、各義務教育諸学校に学校司書を1名配置できるよう予算措置すること、文部科学省「学校図書館の現状に関する調査」を毎年実施することを求める要望書です。「ICT教育を支える情報リテラシーの育成は、学校図書館の機能がなくては実現できないこと」という記述は、以前、有山裕美子さんから寄稿いただいたコラム(↓)での問題提起と地続きだなあ、と思いました。

 新型コロナウイルス感染拡大を受け、全国の小中高校などが臨時休校となった。そんな中でも「学びを止めない」ため、学校図書館はどのような取り組みを行っているか? また、そこにはどのような問題があるのか? 司書教諭の有山裕美子氏(工学院大学附属中学校・高等学校)に寄稿いただいた。前中後編の短期集中連載でお届けする。改めて学校図書館を問い直す〈前編〉学校図書館の使命とは 私は学校図書館に関わり始めて、10...

児童書も電子書籍で 小中学生向けに読み放題サービス〈日本経済新聞(2021年9月18日)〉

紙の本の需要が根強い児童書や絵本の分野で、電子書籍化の取り組みが出てきている。ポプラ社が、小中学校向けに電子書籍の読み放題サービスを立ち上げた。同社の新サービス「Yomokka!(よもっか!)」は学校や自治体と契約。子どもたちはタブレット端末などを使い、ポプラ社のウェブサイト内で児童書や絵本の電子書籍を読める。7月に小学校を対象に無料体験版を始め、現在109校が試験導入している。10月には中学

 こちらはポプラ社の新サービス「Yomokka!(よもっか!)」について。今週はこういう「学校」と「電子図書館」や「読み放題」のニュースがやけに多い週でした。まあ、GIGAスクール構想で端末が一気に普及したわけですから、次はそこへ配信するコンテンツという話になるのは必然です。

経済

講談社とアマゾン、直接取引を開始へ 「異例の事態」に衝撃広がる〈朝日新聞デジタル(2021年9月16日)〉

 ネット通販大手アマゾンと出版大手・講談社が今月から、取次会社を経由しない「直接取引」を始めたことが関係者への取材で分かった。消費者に本を届ける日数の短縮やコスト削減を狙う。取次会社などに衝撃が広がっ…

 私が確認した範囲で、読売・朝日・産経・日経・東京新聞がいずれも同じ日に「関係者への取材で分かった」という書き方をしているという、ちょっと異様な報道。大手ではKADOKAWAがずいぶん前から直接取引してますし、すでに2020年2月には3631社が直接取引しているという報道(↓)もあったので、私としては「あれ? 講談社ってまだやってなかったの?」くらいの感覚なのが正直なところ。

アマゾンジャパン(東京・目黒)は今春、書店向けに書籍などの卸販売を本格的に始める。地方の中小書店は従来の取次会社経由だと、人気書籍の仕入れに時間がかかるケースが増えている。アマゾンは電子商取引(EC)サイトとほぼ同額で卸販売する計画だが、自社物流網による迅速な配送を強みに、中小書店の需要を掘り起こせるとみている。販売低迷が続く紙の出版物で、サプライチェーンが変わる可能性が出てきた。2017年9

 しかも対象は「講談社現代新書」「ブルーバックス」「講談社学術文庫」の既刊だけ。ドル箱のマンガは対象外です。恐らくこれは、講談社ふじみ野工場でDSR(Digital Short Run)をやっているレーベルの一部だけテスト的に商流を変える、ということだと思うのです。冊数が多いなら既存の流通網(取次)をそのまま使ったほうが効率が良いけど、冊数が少ない場合は直送したほうが効率が良いかもしれない、ということなのかな、と。

 オフセット印刷とは異なり、DSRは500部前後の少部数増刷に向いています。「page2020」のカンファレンスで講談社の方が、バックリストの売上向上と絶版率の低減や、在庫費用の圧縮と廃棄コストの削減にも繫がっている、という話をしていました。その延長上にある話ではないかなあ。想像ですが。

 なお、元竹書房・竹村響さんの見解「Amazonとの直接取引は異例でも衝撃でもないんだぜ」も参考になります。要するに、そんなエモい話じゃなく、ビジネスなんだぜ? 騒ぎすぎだよ、と。「報道のエンタメ化」という指摘は、辛辣ですが的確。

Google、新ニュースサービス 記事適正対価に一歩〈日本経済新聞(2021年9月16日)〉

米グーグルは16日、報道機関のニュース記事を集めて配信する新サービスを、同日付で日本で始めたと発表した。新聞社や通信社など40社以上の記事を配信し、使用料を支払う。グーグルなど「プラットフォーマー」が報道各社のコンテンツに対価を支払う一歩となるが、料金算定の不透明さなどに課題も残る。グーグルが始めたのは「グーグル・ニュース・ショーケース」と名付けた配信サービスだ。グーグルのサイト、スマートフォ

 日本でもついに「Googleニュース・ショーケース」が開始。読売・朝日・毎日・産経・日経・共同・時事と、地方紙がたくさん参加しています。社数で言うと9割以上が、地方紙・地域紙とのこと。日経は「料金の算定基準が明確ではない」と不満げですが、Googleは各社のサイトへ誘導する仕組みなので、全文転載が前提となる「Yahoo!ニュース」や「Smartnews」より良い仕組みなのでは。サービス競争が起こると良いなあ。

 ところで、ウチはどうやったら参加できるんでしょうか? Google Publisher Center には以前から登録しているんですが、残念ながらお声がけいただけなかったみたいなのですよね。お呼びでない? こりゃまた失礼しましたー。

イベント

【特番】これからどうなる? 電子マンガ大躍進、けれど無くならない海賊版 ―― HON.jp News Casting / ゲスト:まつもとあつし(ジャーナリスト)〈HON.jp(オンライン)/9月26日〉

 9月26日は2時間の特番! ジャーナリストのまつもとあつしさんをゲストに迎え、「電子マンガ大躍進、けれど無くならない海賊版」をテーマに最近のトピックスを掘り下げます。アーカイブ配信もあります。チケットはこちらから!

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雑記

 助成金や補助金の申請は、事務手続が本当に大変です。うちは特定非営利活動法人なので、株式会社とは会計基準が異なります。ところが助成金や補助金の公募要領は、おおむね株式会社であることを前提に書かれています。そのため、必要とされている書類を言われるがままに提出すると、書類不備になってしまうのです。回数を重ねるうちにだんだん慣れてきましたが、それでも読み替えたり解釈する労力が余計にかかります。事業計画など、各種書類を準備するのもかなりの時間を要します。それにかまけて本業がおざなりになっては本末転倒。がんばらねば(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0
※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

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著者について

About 鷹野凌 596 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学でデジタル編集論・二松學舍大学でエディティング・リテラシー演習担当の非常勤講師 / 日本出版学会員 / デジタルアーカイブ学会員 / 主な著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)/ プロフィール画像は©鈴木みそ氏
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