「赤松健さん参院選出馬の意志表明」「ガーディアンデジタルの有料読者が100万人突破」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #502(2021年12月12日~18日)

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 2021年12月12日~18日は「赤松健さん参院選出馬の意志表明」「ガーディアンデジタルの有料読者が100万人突破」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります(ISSN 2436-8237)。

【目次】

政治

インボイス制度は「フリーランスの生き方を踏みにじる」廃止求め3万人の署名提出〈税理士ドットコム(2021年12月16日)〉

2023年10月から始まる消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)の廃止を求め、フリーランスのライターやグラフィックデザイナーらでつくる有志団体が12月16日、3万1570人分の署名を財務省に提...

 署名活動が行われていたのを、提出したという記事で知りました。インボイス制度、免税事業者約500万人を直撃する問題です。ただ、フリーランスの立場じゃないとなかなかその厳しさが伝わらないかも。むしろ、いわゆる「益税」問題で、免税事業者には「私の払った消費税を懐に入れやがって」的な敵意が向けられている感もあります。制度が複雑なので、事務処理コストもさらに厳しくなることが予想されます。ううむ。

『ラブひな』作者・赤松健氏、自民党から参院選出馬の意志を表明「表現の自由を守るために」〈ORICON NEWS(2021年12月16日)〉

ニュース| 人気漫画『ラブひな』『魔法先生ネギま!』などで知られる漫画家・赤松健氏が16日、自身のツイッターを更新し、来年夏の参院選へ立候補の意思を伝えた。 ツイッターでは「一部報道にあるように、自民党本部で面談をさせて頂きました」とし、「私は表現の自由を守るために、来夏の参院選への立候補の意志を固めています。現在は選考過程の最中であり、党からの正式な発表がありましたら、改めて私の意思を皆様に伝...

 以前なにかのイベントで「国会議員選挙にいつ出るの?」と水を向けられ、「絶対出ません」と言っていたのを聞いた記憶があったので、第一報を見たときはちょっと驚きました。政権与党である自民党からの出馬で表現の自由を守れるのか? と違和感を覚えたり、反発したりする声が、それなりに観測されています。私はむしろ、山田太郎議員と同様、政権与党内の異分子として活躍して欲しいと思いました。そして野党にも同じように、表現の自由を守る議員がいて欲しい。国内より、海外からの圧力が怖いのです。ゲーム業界やアニメ業界からも、表現の自由を守る議員が出て欲しいですよ。

文化芸術活動における契約関係についてのアンケートへのご協力のお願い〈文化庁(2021年12月17日)〉

 文化庁が、文化芸術分野(文学、音楽、演劇、舞踊、美術、写真、デザイン、映画、マンガ、アニメーション、伝統芸能、大衆芸能、生活文化・国民娯楽など)において個人(フリーランス)で活動している方に対し、契約関係や取引条件などについてのアンケートを実施しています。〆切は12月27日。クリエイターだけでなく、企画、制作、技術者、施設の管理運営、保存活用(アーカイブ活動)なども含まれます。結構広い。検討会議の参考にするそうです。たとえば「依頼者や発注者との関係」において、「報酬や業務内容、条件等が明示されなかった」とか「業務内容や条件を一方的に変更された」といった経験の有無を尋ねています。酷い目に遭った経験のある方は、ぜひこの機会に文化庁へ教えてあげましょう。

社会

COVID-19パンデミック下の大学図書館における電子書籍の利用状況〈J-STAGE(2021年12月10日)〉

COVID-19により物理的な図書館の利用が制限された特殊状況下において,電子書籍の積極的な利用が期待されている。そこで本稿では,電子書籍のニーズを把握するために,パンデミック前とパンデミック下の九州大学の利用ログを対象に利用傾向を分析した。全体的な傾向として,パンデミック下では電子書籍の利用が増加 …

 九州大学で導入している「Maruzen eBook Library」のアクセス数が、パンデミック前の2019年1万1588回に対し2020年は3万1010回と2.7倍に増加した、等の分析を行っている論文。丸善雄松堂から匿名化された利用ログデータを提供してもらい、分析したそうです。

 それはいいんですが、そのあと行っているNDC分類での分析が「上位100冊の“主題”の傾向がどう変わったか?」といった、いささかじれったい感じ。たとえば「経済」分野の順位が4位から2位に上がった、と言われましても。上位100冊の集計での順位変動にどんな意味があるのか。

 サンプル調査ではなく全データなのですから、実数で比較して欲しい。シンプルに主題別の合計値を前年比較すればいい、と思うのですけど違うのかなあ? たとえば「経済分野の852冊は、2019年に計1万2042回、2020年に計3万8539回アクセスされました」みたいな(※この数字は適当です)。

小中高生の間で「ミステリーブーム」が起こっていた…!? 学校読書調査から見える“10代に人気の本”(飯田 一史)〈マネー現代(2021年12月12日)〉

毎日新聞社と全国学校図書館協議会(全国SLA)が全国の小中高生を対象に毎年実施している「学校読書調査」の結果が「学校図書館」2021年11月号(全国学校図書館協議会)に発表された。昨年はコロナウイルス流行の影響で実施されなかったため、2年ぶりの実施となる。コロナ禍によって読書傾向は変わったのか? 最近の子供は何を読んでいるのか? 調査の内容を分析する。

 2年ぶりの学校読書調査を、飯田一史さんが分析。平均読書冊数は過去最高を更新し、不読率は2000年以降続いている低水準を維持。20世紀の子供と比べたら、21世紀の子供は本を読んでいるという傾向は、コロナ禍でも変わらなかったと言えます。ただし、子供の「雑誌離れ」傾向は続いており、読書推進活動において一貫して雑誌が除外されてきたのは失敗だったのでは? と、飯田さんは分析しています。

 そもそもなぜマンガや雑誌を「読書」から除外してきたのか? という経緯が気になります。マンガは嫌われていたから、納得はできませんが理解はできる。雑誌は……ジャンルで制限するのが面倒で一律ダメにしちゃったんだろうか?

米国出版協会(AAP)、出版社に「合理的な条件」下で図書館への電子書籍ライセンス提供を求める法律に関して米・メリーランド州を提訴〈カレントアウェアネス・ポータル(2021年12月13日)〉

 出版社に対し、電子書籍の図書館向けライセンス提供を「合理的な条件」(reasonable terms)で求める法律が年明けから施行されるはずだったアメリカ・メリーランド州で、米国出版協会(AAP)が訴訟を起こしたというニュース。一般向けに販売されている電子書籍が、図書館向けには提供されていないケースに適用される予定だったようですが、どうもその「合理的な条件」というのが明確ではない、などの問題がある様子。以前、Amazon Publishingの刊行する電子書籍が図書館向けに提供されていないと批判され、米国デジタル公共図書館(DPLA)との契約締結に至ったというニュースがあったのを思い出しました

 日本の電子図書館サービスの現状について書いた記事で、図書館向けラインアップが少ないことの最大の要因であろうと推測した「出版社が図書館向けに卸してくれない(通称:お前らには売ってやらない)」問題ですが、アメリカでもあるんですね。物理メディアとは異なり、図書館での電子書籍貸出は日米ともに「すべて許諾が必要」な状態。そこでのせめぎ合いが、アメリカでは法廷闘争に至るほどに激しくなってきた、ということなのでしょう。

 コロナ禍によって非来館型サービスのニーズが高まり、ようやく公共図書館に「電子図書館」サービスが導入されるようになってきました。しかしすでに、次の課題が見え始めているようです。前提 本題へ入る前に、本稿の前提についてご説明します。「電子図書館」という用語と、関連する著作権法についてです。本稿で扱う「電子図書館」について 「青空文庫」トップページ 電子図書館という言葉の示す範囲は、存外に広いもので...

長野県立長野図書館 市町村と協力して「電子図書館」〈信濃毎日新聞デジタル(2021年12月16日)〉

 県立長野図書館(長野市)は2022年度、パソコンやスマートフォンで読める電子書籍を貸し出す「電子図書館」を県内市町村と協力して始める。専門書や学術書の電子閲覧ができるほか、一般図書の電子書籍の貸し出しも検討。全国で電子図書館は普及しているが…

 協力ってなにかと思えば、市町村が県に事業費の一部を払うことにより、県立図書館単独で県内住民をカバーする方式とのこと。県と市町村で重複するぶん余計に費用がかかりますから、コスト抑制を狙った広域連携の事例と言っていいでしょう。

 まあ、オンラインで利用申込みできるなら、利用者にとって県立か市町村立かは関係ないですもんね。一度そういう事例ができてしまうと、恐らく他の県でも追随するところが出てくるでしょう。提供側としては、行政区画による制限だけでなく、利用者数に応じた段階的な料金プランも用意する必要が出てくるはず。

 実は私、勤め人時代に、データベース提供のライセンス契約関連業務をやっていたことがありました。ユーザー側は少しでもコストを削減するため、いろんな手(海賊行為も含め)を使ってきます。提供側は対抗措置として、ガチガチのDRMで縛ったり、SaaSに切り替えたり、新サービス展開時に利用条件を厳しくしたり。いろいろあったなあ……懐かしい。

経済

「ソードアート・オンライン」編集者、三木一馬がソラジマに出資した理由。〈株式会社ソラジマ|note(2021年12月13日)〉

いまマンガコンテンツビジネスに、大きな地殻変動が起ころうとしている。 その震源地となっているのが、「Webtoon(ウェブトゥーン)」だ。 このグローバルトレンドを捉え、2021年8月、本格参入を果たしたのがソラジマだ。 参入と同時にリリースした『婚約を破棄された悪役令嬢は荒野に生きる。』は、漫画アプリcomico(コミコ)にて公開1週間でデイリーランキング&女性人気ランキングNo.1を獲得。さらに2021年12月には資金...

 ウェブトゥーン市場へ参入するプレイヤーに対し、ストレートエッジの三木一馬さんがどういう思惑で出資したか、当事者たちへのインタビュー記事がオウンドメディア(note)で公開されています。いまウェブトゥーンには韓国勢だけでなく、日本勢もけっこうな勢いで参入が続いています。その結果、「レッドオーシャン化する」まではなんとなく予想していましたが、その先それが「多様性の第一歩になる」という三木さんの見解には膝を叩きました。もちろん競争は激しくなるけど、違った切り口の作品も生まれてくる、というわけです。なるほど。

“有料記事なし”の英ガーディアンデジタル版、有料読者が100万人を突破〈Media Innovation(2021年12月16日)〉

 ペイウォールなしで、100万人を突破。うち、広告非表示やアプリのプレミアム機能などが提供されるデジタルサブスクリプションが約42万人、残りの約58万人は定期的な寄付とのこと。素晴らしい! ガーディアンのプレスリリースを見たら、その直下にも「サポートしてね」という導線が張られていて、しっかりしているなあと思いました。すべての記事に出るフッターみたいですね。

The Guardian has surpassed 1 million digital subscriptions*, with digital subscriptions* in the US and Australia rising by 13% vs prior year. The company has grown its total digital recurring support by 87% in just three years.

技術

もし死んでもiPhone/iPadを家族・友人託せる ~Apple、「iOS 15.2」「iPadOS 15.2」を公開〈窓の杜(2021年12月14日)〉

 米Appleは12月13日(現地時間)、「iOS 15.2」「iPadOS 15.2」を公開した。新機能の追加や既存機能の改善を行ったマイナーアップデートで、セキュリティ関連の修正も含まれている。

 ついにデジタル遺産機能を搭載。死後、iCloudアカウントと個人情報にアクセスできる人を指定できるそうです。Apple IDで購入したデジタル資産以外でも、iCloud経由ならID・パスを渡す形で継承できる、ということになるでしょうか。もちろん規約的な問題はあると思いますが。

Adobe、無料の「Creative Cloud Express」投入。デザインの心得がなくても高品質コンテンツを簡単に作成可能に〈PC Watch(2021年12月14日)〉

 Adobeは、12月13日(現地時間、日本時間12月14日)に米国で記者会見を開催し、同社のサブスクリプション型クリエイターツールCreative Cloudの新しいファミリー製品となる「Creative Cloud Express」を発表した。基本機能を無料で利用できるのが特徴で、追加のクラウドストレージやプレミアムアセット/フォントなどが使えるプレミアムプランは月額1,078円、年額1万978円と比較的安価に用意されている。

 なんと無料! ちょっと触ってみましたが、非常に「Canva」を想起させられます。GIGAスクール端末普及により学校でも結構使われるようになった領域を、横綱が殴りにいった感。私もデジタル出版の演習授業で、ここ数年はいつも「Canva」を紹介していたのですが、今年はちょうど出たばかりのこちらも紹介することに。ただ、どうもまだ縦書きには非対応っぽいのですよね。「Canva」は縦書きにも対応しているのです。

西島大介が「西島大介.com」をShopifyで立ち上げ、読み放題プランも。『せかまほ』無料公開中!〈株式会社TOGLのプレスリリース(2021年12月17日)〉

株式会社TOGLのプレスリリース(2021年12月17日 11時00分)西島大介がをShopifyで立ち上げ、読み放題プランも。『せかまほ』無料公開中!

 恐らくファーストペンギン的な試みだと思うのでピックアップ。ECプラットフォームの「Shopify(ショッピファイ)」って物販だけでなく、デジタルコンテンツの定額読み放題までできるようになっていたのですね。知らなかった。

 ウチの出版物在庫のネット通販に利用している「Square」は、ヘルプを確認したら現時点でも「デジタル商品の提供はマニュアルでおこなう必要があります」「メールに添付してお客さまに送信することもできます」などという記述が。おおう、そりゃないぜ。

NPO法人HON.jpが発行している本や、協力企業/団体などから委託されている本の販売を行っています。オンデマンドではなく物理在庫なので、発注から数営業日でお届けできます。

イベント

 12月26日の HON.jp News Casting は2時間の年末特番! ITジャーナリストの西田宗千佳さんをゲストに迎え、2021年の出版関連ニュースをとくにテクノロジー的な観点で振り返り&掘り下げます。

12月26日は2時間の年末特番! ITジャーナリストの西田宗千佳さんをゲストに迎え、2021年の出版関連ニュースをとくにテクノロジー的な観点で振り返り&掘り下げます。【開催日時】... powered by Peatix : More than a ticket.

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雑記

 大学の講義で、これまで提出したレポートをWordファイルにまとめてEPUBを制作する、という演習をやっています。今年は少ししっかりチェックしてみようと思ったら、ちょっと気合いを入れ過ぎて50人分で2日半費やすことに。疲れた……(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0
※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

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著者について

About 鷹野凌 610 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学でデジタル編集論・二松學舍大学でエディティング・リテラシー演習担当の非常勤講師 / 日本出版学会員 / デジタルアーカイブ学会員 / 主な著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)/ プロフィール画像は©鈴木みそ氏
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