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2019年11月11日~17日は「KCCSの公共図書館システムとオトバンクが連携」「ヤフーとLINE経営統合」「図書館総合展開催」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。
国内
電子図書館サービス導入数は86館89自治体に 〜 電流協『電子図書館・電子書籍貸出サービス調査報告2019』〈HON.jp News Blog(2019年11月11日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/26945
1年間で8館増。その前の年は17館増なので、ただでさえ全数が少ないのに、増加ペースが落ちています。ただ、同報告書第2章の図書館へのアンケートを見ると、電子書籍貸出サービスの導入希望は件数・比率とも大幅増加しており、少し潮目が変わってきた感があります。
WEB特集 漫画の原画が“第2の浮世絵”に?〈NHKニュース(2019年11月11日)〉
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191111/k10012169591000.html
手塚治虫のマンガ原画が海外のオークションで高値落札されたという話から、原画を23万枚保管する横手市増田まんが美術館の話や、美術品扱いされ相続税がかかってしまうかもしれないため処分するマンガ家もいる、という話まで。よくまとまっています。
KCCS、画像解析AIによる蔵書点検システムを開発、業務の負荷軽減と効率化〈週刊BCN+(2019年11月11日)〉
https://this.kiji.is/566490305309623393?c=491375730748638305
ICタグなどを使うのではなく、背表紙撮影→画像解析AIで蔵書点検を行うというシステム。つい先日、本棚に並んだ状態の背表紙を撮影するだけで買い取り価格が調べられる「VALUE BOOKS」の新サービス「本棚スキャン」の記事を書きました(↓)が、類似してますね。シンクロニシティ。
KCCSの公共図書館システム「ELCIELO」とオトバンク「audiobook.jp」が連携、来春からオーディオブック配信サービスを提供開始〈HON.jp News Blog(2019年11月12日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/26962
公共図書館システムと連携したオプションサービス。KCCS「ELCIELO」はウェブアプリケーションなので、いろいろ連携しやすいし導入のハードルも低いようです。パンフレットを見たら、なんと「TRC-DL」とも連携しているようで、ちょっと驚き。自社の「BookLooper」だけじゃないのですね。文教ソリューションということで、総合的なパッケージになっていってるようです。
[追記:メルマガ配信時点で、TRC-DLは公共図書館向け、BookLooperは企業・大学向けなので、驚くようなことではないとの指摘がありました。TRC-DLは公共図書館専用ではなく、大学・学校向けにも9館ほど提供されているのためBookLooperと競合する部分もあるのは事実ですが、確かに“主な”ターゲットは異なるため、相互補完するような関係性でもあると言えそうです。]
電子書籍の利用率は25.2% ~ 文化庁 平成30年度「国語に関する世論調査」より〈HON.jp News Blog(2019年11月12日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/26950
国語に関する世論調査は毎年やってますが、5年に1回のペースで「読書」についても尋ねています。電子書籍について尋ねている問15は、マンガ・雑誌も含まれるので、まあそれくらいだろうなという感じの数字。文字モノがもっと伸びて欲しい……。
「安全」を理由にした言論・表現の萎縮を招かないために(江川紹子)〈Yahoo!ニュース個人(2019年11月12日)〉
https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20191112-00150640/
作家・竹田恒康氏の講演会が「ガソリンを撒く」という脅迫電話で中止に。主義主張が異なる相手に対する異論反論はもちろん表現の自由の範疇ですが、脅迫は犯罪です。「あいちトリエンナーレ」と同様、このような脅迫行為は許されないため、犯人の1日も早い検挙を望みます。そして、江川紹子氏が言うように、電話1本で簡単にイベントが潰されてしまうような状況になってきていることを強く憂います。また、自団体の主催イベントに対し、こういう脅迫電話がかかってきたとき、どう対処すべきなのか。頭が痛いです。
ヤフーとLINE経営統合へ ネット国内首位に〈日本経済新聞(2019年11月13日)〉
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52139820T11C19A1I00000/
周囲の業界通が「やっぱりね」という反応だったので、すでにそういう噂が出ていたのでしょうか? 私はそういう噂話に疎いなあ、と改めて思いました。いろんなところへ手を伸ばしている両社ですが、出版に直接関連するサービスは、ebookjapan、LINEマンガ、LINEノベルあたり。もし経営統合したら、どうなることやら。なお、日経ビジネスオンライン(日経BP)には、独占禁止法の壁が突破できるか? という論考記事が出ています(↓)。
KADOKAWA、中間期の営業利益は123%増の63億円 電子書籍や映像・ゲーム好調 「ニコニコ」などWebサービスは1億円の赤字から15億円の黒字に〈Social Game Info(2019年11月14日)〉
https://gamebiz.jp/?p=253218
相変わらず出版事業はデジタルが好調。Webサービス事業(ニコニコ)は、コスト削減で黒字化。ひとまず緊急事態対処で出血を止めることには成功したものの、売上は減少しているので、予断を許さない感じです。なお、決算資料(↓PDF)で電子書籍・電子雑誌売上のグラフ(p30)を確認したところ、第1四半期より第2四半期は売上が微減している点が若干気がかり。なにが要因なのでしょうか?
朝日新聞「十分な検討行うべきだった」 専門家から指摘が相次いだ『ガンの新しい治療法』書籍広告について見解示す〈ねとらぼ(2019年11月14日)〉
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1911/14/news147.html
新聞の三八広告は以前から大変怪しい医療法の本がよく掲載されていて苦々しく思っていたのですが、専門家がSNSで声を挙げたら朝日新聞が非常に素早い対応を見せてちょっと驚きました。通常、新聞や雑誌の広告表現は、薬機法や景表法に引っかからないようわりと厳しく審査をされるはずなのですが、書籍タイトルに関しては「表現の自由」との絡みで野放しに近いような状態になっている感があります。本件をきっかけに、変わっていくのかどうか。
ちなみにこの本、アマゾンレビューで発売直後に20人ほど☆5つを付けているのですが(↓)、当該アカウントの投稿履歴をチェックしてみたら、ほとんどがこの本のレビューだけ。なんというか、うーん。
第21回図書館総合展が開催 ~ 展示会場フォトレポート〈HON.jp News Blog(2019年11月15日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/26993
図書館総合展の展示会場を、電子図書館系を中心にフォトレポートしました。
『少年ジャンプ』全世界対象のマンガアプリ配信の背景 海賊版サイトの脅威を「可能性に」〈ORICON NEWS(2019年11月15日)〉
https://www.oricon.co.jp/news/2148755/full/
週刊少年ジャンプの英語版とスペイン語版を無料で配信している「MANGA Plus」の戦略と海賊版サイト対策について、非常に興味深い講演でした。私も取材に行ってましたが、12時に終わったイベントのレポートを14時30分に公開って、早過ぎる。脱帽であります。私はどうやってまとめようかな……。
海外
米国で進む「アマゾン離れ」、過半数がウォルマート選ぶ〈Forbes JAPAN(2019年11月12日)〉
https://forbesjapan.com/articles/detail/30678
強い対抗馬が出てくるのは、消費者にとっては良いこと。サービス競争になりますからね。しかし、果たして「アマゾン離れ」はライバルだけの問題なのか。アメリカのアマゾンには、日本のようなレビュー汚染やマーケットプレイス汚染は起きていないのでしょうか?
ドイツで書籍の定価販売を良しとするレポート〈HON.jp News Blog(2019年11月13日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/26969
本は定価販売したほうが良い、という研究レポートです。定価販売をやめたイギリスとの比較をデータで示しているというのは面白い。若干、ポジショントーク臭を感じますが。
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